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正しく手洗い・消毒できている? 感染症を防ぐ3つの方法
正しく手洗い・消毒できている? 感染症を防ぐ3つの方法 妊活中、または妊娠中はいつもにも増して細菌やウイルスが気になるもの。手洗いや消毒を何となくやるより、効果的な方法を知ってウイルスを寄せつけない冬を過ごしましょう! ①冬だけじゃない!感染症は年中要注意 「感染症」と聞くとどうしても冬をイメージします。しかしこの夏にインフルエンザが流行したように、世界中の人が日本に訪れるようになると、今までの意識だけでは通用しないことが起こっています。さらに春夏にもさまざまなウイルスが活動し、手洗いや消毒の習慣は結局、一年中しておかなければならないのです。これからの季節はインフルエンザやノロウイルスに注意が必要。自分にも家族への二次感染を防ぐためにも正しい手洗いと消毒の知識を身につけましょう。 ②有効な“アルコール消毒剤”を見分ける ウイルスには左のように2種類あり、冬に流行するロタ、ノロウイルスは「ノンエンベロープウイルス」に属します。このウイルスは膜がなく一般的なアルコールへの抵抗力が強いため、リン酸でアルコールpH値を酸性にした酸性アルコール消毒剤が有効とされています。またアルコール消毒剤の有効濃度も重要です。その見分け方を知っておきましょう。 Check! アルコール消毒剤の選び方 ●エタノール60%以上のものを確かな効果を得るにはアルコール濃度が決め手。アルコール濃度60%以上のものを選びましょう。火気厳禁マークが目印。 ●「酸性アルコール消毒剤」を選ぶノロウイルスを含むノンエンベロープウイルスにも有効な酸性アルコール消毒剤なら、広範囲のウイルス、細菌に使えます。 ●「医薬部外品」を選ぶ「医薬部外品」とは医薬品ほど強くはありませんが、効能・効果を示す成分を含むことが認められた商品なので、安心して使うことができます。 ③正しい手洗い方法を知る せっかく手洗いをしても、汚れがちゃんと落ちていなければ意味がありません。また、手洗いだけではウイルスや汚れは落としきれない場合もあるので、タオルでしっかり拭いたあとに消毒する「衛生的手洗い」を身につけましょう。 さらにおうちの中をCheck! ●ドアノブやスイッチも要注意家族が触るドアノブやスイッチ、またキッチンまわりや便座などもこまめに除菌しておきましょう。 ●玄関・洗面所に消毒剤を置く洗面所はもちろんですが、外から帰ってきて玄関でシュッと消毒し、家庭内に持ち込まないようにするのも◎。 ●タオルを共有しない家庭内での二次感染予防のため、タオルは1人につき1枚用意して共有しないようにして。 ◆手洗い、消毒におすすめのアイテム 病院などの医療現場、食品工場、外食産業など、厳しい衛生管理が求められるプロの現場で選ばれる感染対策のプロが作った商品なら安心です。 泡立ちがよく手のすみずみまでしっかり洗え、広範囲のウイルス・細菌を除去。しっかり殺菌・消毒し手荒れにも配慮したうるおい処方。 ハンドラボ 薬用泡ハンドソープ (医薬部外品)300ml オープン価格 リン酸でpHを酸性にし、広範囲のウイルス・細菌に効く消毒スプレー&ジェル。うるおい成分配合で肌にやさしい。 ハンドラボ 手指消毒スプレーVH(左) (指定医薬部外品)300ml オープン価格 ハンドラボ 手指消毒ハンドジェル VS(右) (指定医薬部外品)300ml オープン価格 ドアノブやスイッチの細菌除去に。食品添加物なので、キッチンまわり、食器や調理器具などに使っても安心。 ノロアウト ウイルス・細菌除去スプレー 400ml オープン価格 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 正しく手洗い・消毒できている? 感染症を防ぐ3つの方法 妊活中、または妊娠中はいつもにも増して細菌やウイルスが気になるもの。手洗いや消毒を何となくやるより、効果的な方法を知ってウイルスを寄せつけない冬を過ごしましょう! ①冬だけじゃない!感染症は年中要注意 「感染症」と聞くとどうしても冬をイメージします。しかしこの夏にインフルエンザが流行したように、世界中の人が日本に訪れるようになると、今までの意識だけでは通用しないことが起こっています。さらに春夏にもさまざまなウイルスが活動し、手洗いや消毒の習慣は結局、一年中しておかなければならないのです。これからの季節はインフルエンザやノロウイルスに注意が必要。自分にも家族への二次感染を防ぐためにも正しい手洗いと消毒の知識を身につけましょう。 ②有効な“アルコール消毒剤”を見分ける ウイルスには左のように2種類あり、冬に流行するロタ、ノロウイルスは「ノンエンベロープウイルス」に属します。このウイルスは膜がなく一般的なアルコールへの抵抗力が強いため、リン酸でアルコールpH値を酸性にした酸性アルコール消毒剤が有効とされています。またアルコール消毒剤の有効濃度も重要です。その見分け方を知っておきましょう。 Check! アルコール消毒剤の選び方 ●エタノール60%以上のものを確かな効果を得るにはアルコール濃度が決め手。アルコール濃度60%以上のものを選びましょう。火気厳禁マークが目印。 ●「酸性アルコール消毒剤」を選ぶノロウイルスを含むノンエンベロープウイルスにも有効な酸性アルコール消毒剤なら、広範囲のウイルス、細菌に使えます。 ●「医薬部外品」を選ぶ「医薬部外品」とは医薬品ほど強くはありませんが、効能・効果を示す成分を含むことが認められた商品なので、安心して使うことができます。 ③正しい手洗い方法を知る せっかく手洗いをしても、汚れがちゃんと落ちていなければ意味がありません。また、手洗いだけではウイルスや汚れは落としきれない場合もあるので、タオルでしっかり拭いたあとに消毒する「衛生的手洗い」を身につけましょう。 さらにおうちの中をCheck! ●ドアノブやスイッチも要注意家族が触るドアノブやスイッチ、またキッチンまわりや便座などもこまめに除菌しておきましょう。 ●玄関・洗面所に消毒剤を置く洗面所はもちろんですが、外から帰ってきて玄関でシュッと消毒し、家庭内に持ち込まないようにするのも◎。 ●タオルを共有しない家庭内での二次感染予防のため、タオルは1人につき1枚用意して共有しないようにして。 ◆手洗い、消毒におすすめのアイテム 病院などの医療現場、食品工場、外食産業など、厳しい衛生管理が求められるプロの現場で選ばれる感染対策のプロが作った商品なら安心です。 泡立ちがよく手のすみずみまでしっかり洗え、広範囲のウイルス・細菌を除去。しっかり殺菌・消毒し手荒れにも配慮したうるおい処方。 ハンドラボ 薬用泡ハンドソープ (医薬部外品)300ml オープン価格 リン酸でpHを酸性にし、広範囲のウイルス・細菌に効く消毒スプレー&ジェル。うるおい成分配合で肌にやさしい。 ハンドラボ 手指消毒スプレーVH(左) (指定医薬部外品)300ml オープン価格 ハンドラボ 手指消毒ハンドジェル VS(右) (指定医薬部外品)300ml オープン価格 ドアノブやスイッチの細菌除去に。食品添加物なので、キッチンまわり、食器や調理器具などに使っても安心。 ノロアウト ウイルス・細菌除去スプレー 400ml オープン価格 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.13
コラム くらし
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妊活中は特に徹底的に予防を! 冬に流行する7つの感染症に注意
妊活中は特に徹底的に予防を! 冬に流行する7つの感染症に注意 佐藤 雄一 先生(佐藤病院) 冬に感染症が増えるのは、空気の乾燥が原因 そもそも冬になぜ感染症が増えるのでしょうか。原因の一つは空気の乾燥です。加えて他の季節に比べて水分摂取も減るため、体内の水分量はさらに少なくなりがち。つまり乾燥によって喉や気管支の粘膜が弱くなり、ウイルスの侵入を防ぐはずの喉や鼻の粘液も傷み、感染しやすくなるというわけです。 また冬は体温が下がるため代謝機能が低下し、免疫力が全体的にダウンするのも大きな原因です。一方、冬になると断然元気になるのがウイルス。低い気温と乾燥はウイルスにとっては非常に好環境で、感染力がよりいっそう強くなるのです。 感染経路としては飛沫感染、空気感染、接触感染、経口感染があります。飛沫感染の代表格はくしゃみと咳。風邪をひいている人が室内でくしゃみをすると約100万個のウイルスが飛散し、咳で出るウイルスは約10万個と言われています。空気感染も実は怖くて、湿度40%以下の乾燥した部屋ではウイルスは30分間漂い続けると言われています。また、接触感染で気をつけたいのは電車のつり革や不特定多数の人が使う道具や容器の使用。病原体が付着しているものを触り、手についた細菌やウイルスが口から入ると感染します。経口感染としては食べ物や水に注意が必要です。病原体の混入したものを食べたり汚染の可能性がある水を飲むと感染します。 ウイルス系の感染症に効く薬はありません 冬に流行する感染症で特に気をつけていただきたいのは、ウイルスが病原体の風邪、インフルエンザ、ノロウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、細菌が病原体のA群溶血性連鎖球菌咽頭炎(A群溶連菌)、そのどちらにもあてはまらない性質をもつ菌が原因となるマイコプラズマ肺炎の7つです。各感染症の症状は左ページの表を参考にしてください。 皆さんに一つ覚えておいてほしいのは、風邪やその他のウイルス性の感染症には、基本的に治療薬がないということです。対処薬として解熱剤、咳止め、鼻水止めなどがありますが、これらはあくまで症状を緩和するための薬であって、治すための薬ではありません。鼻水や痰、咳、発熱などの症状は、実は感染症を治すうえで必要なことだからです。体に備わっている免疫機能が自動的に働くことでそうした症状が出るのであり、ウイルスを退治している証しなのです。対処薬を飲んで症状を抑えてしまうとかえって病気の回復を遅らせてしまうことがあります。以前は風邪で抗生剤を処方する病院も多かったのですが、最近は風邪に効く治療薬はないことが認知されたこともあり、処方しなくなっています。 いずれにしてもウイルス疾患にかかってしまったら暖かくして寝ることで体を休め、症状が治まるのを待つのが最善の方法です。 インフルエンザやA群溶血性連鎖球菌咽頭炎とマイコプラズマ肺炎に関しては治療薬があります。早めに診断を受け、必要に応じて薬を処方してもらいましょう。 インフルエンザは要注意。風疹は冬だけでなく1年中警戒 冬の感染症で一番、かからないように気をつけたいのはインフルエンザです。妊活中に高熱を出すと、その月は排卵しないこともあり妊活の治療をストップさせることになってしまいます。 また、妊娠判定が出る時にインフルエンザにかかっていると、それによって流産したり、着床しなかったりといったことの可能性もゼロではありません。ですから妊活中でもインフルエンザの予防接種を受けておきましょう。少なくとも高熱、肺炎などの重症化を防げます。 それと冬に限ったものではないのですが絶対にかかってほしくない感染症があります。風疹です。特に妊娠初期の女性が風疹にかかると胎児が風疹ウイルスに感染してしまい、難聴、心疾患、白内障、精神や体の発達の遅れ等の障害をもった赤ちゃんが生まれる可能性が高くなるからです。流行するのは春先から初夏にかけてですが、冬の間も気をつけましょう。 感染症にかからないよう日常生活から気をつけよう 一番良いのは、感染症にかからないこと。そのためにも普段からの予防が大切です。外出先から帰宅した際には必ず手を洗い、うがいをしましょう。市販のマスクは病原体の防御にはなりませんが、喉を乾燥から守ることができます。感染防御のためにマスクをしたい場合は医療用マスクを使ってください。人混みを避けることも大事です。人が多いところほど、感染症にかかる可能性は高まります。スーパーなども人の少ない時間帯を選んで行くようにしましょう。また、感染症にかからないよう免疫力を高めるためにも正しい食生活と十分な睡眠が大切です。年末は何かと忙しく寝不足になりがち。そうすると体力が落ちやすくなってしまいます。 ノロウイルスによる食中毒にも気をつけてください。意外に冬に多いのです。生牡蠣などを食べる機会があるからでしょうか。冬でも万が一に備え、できるかぎり加熱したものを食べましょう。 積極的に摂取してほしいのはビタミンDです。免疫力をアップさせるだけではなく、不妊治療にも実は効果があり、着床率も卵子の質も良くすると言われています。魚介類やきのこ類をたくさん食べましょう。感染症にかからないための一番の薬、それはご自身の体に備わった免疫力です。だからこそ以上のようなことを心がけ、免疫力を落とさない生活を実践してください。 冬に流行する7つの感染症 ウイルス:治療薬なし。インフルエンザとロタ(乳児)のみ予防ワクチンあり。 ● 風邪 上気道炎を一般的に風邪と総称する。 【症状】 くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻の症状からはじまり、喉の痛み、咳、声枯れ、痰といった症状が出て発熱が起こります。血液中にウイルスが入ると頭痛、関節痛が、腸の粘膜にウイルスが付着すると腹痛、下痢などの症状が出ます。特に喉の痛み、咳がある場合は保湿が大事です。 ● インフルエンザ インフルエンザウイルスに感染することによって起こる急性感染症。 【症状】 38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身に症状が出るのが特徴。風邪よりやや症状が重いです。ワクチンで感染を完全に抑えることはできませんが、重症化を防ぐことができます。事前に予防接種を受けておくことをおすすめします。 ● ノロウイルス ノロウイルスによって発症する感染性胃腸炎や食中毒のこと。特に冬季に流行。 【症状】 手や指、食品を介して口から感染し、腸管でウイルスが増殖します。嘔吐、吐き気、腹痛、下痢、発熱などの症状が出ます。ただ、それらのどれかが1~2日続いた後、治癒します。後遺症の心配もありません。 ● ロタウイルス ロタウイルスによって引き起こされる急性の胃腸炎。 【症状】 主に子どもがかかりやすい病気ですが、大人が感染する場合もたまにあります。大人の場合、軽いむかつきか倦怠感程度。とはいえ、子どもと接する仕事の人は多少気をつけたほうがいいでしょう。 ● RSウイルス RSウイルス(respiratory syncytial virus)によって発症する呼吸器感染症。 【症状】 2歳までに発症することが多く、大人は鼻風邪程度で済む場合がほとんど。ただ、まれに大人も気管支炎や肺炎を起こすケースもあり、その場合は、38℃以上の発熱が5日程度続いたりします。 細菌:治療薬あり(抗生剤)。予防ワクチンなし。 ● A群溶血性連鎖球菌咽頭炎(A群溶連菌) A群溶血性連鎖菌によって引き起こされる感染症。 【症状】 突然の発熱、喉の痛みなどを発症します。喉が真っ赤になったり、喉の痛みが強くなり、嘔吐や吐き気をもよおすことも。初期の段階では舌が白いコケに覆われ、数日後には苺舌といって赤いぶつぶつができたりしますが、原因が菌なので、抗生剤で治すことができます。 その他:治療薬あり(抗生剤の一種)。予防ワクチンなし。 ● マイコプラズマ肺炎 肺炎マイコプラズマという細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症。 【症状】 発熱、全身倦怠感(だるさ)、頭痛、咳などの症状が出ます。咳は熱が下がった後も3~4週間ほど続くのが特徴です。患者の咳のしぶきを吸い込んだり、身近で接触したりすることで感染するので、かかっている人のそばに近寄らないように気をつけましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 佐藤 雄一 先生(佐藤病院) 医学博士·産婦人科専門医·日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医·日本生殖医学会生殖医療専門医。佐藤病院院長·高崎ARTクリニック理事長を務める。最近、テレビCMでも話題のトレーニングジムに入会したという佐藤先生。目的はダイエットではなく、2カ月で3〜5kgの筋肉増加。マラソン、ヒルクライム、トライアスロンときて次はムキムキ!?周囲から「いったい何を目指しているんだ?」と聞かれるのだとか。 ≫ 佐藤病院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 妊活中は特に徹底的に予防を! 冬に流行する7つの感染症に注意 佐藤 雄一 先生(佐藤病院) 冬に感染症が増えるのは、空気の乾燥が原因 そもそも冬になぜ感染症が増えるのでしょうか。原因の一つは空気の乾燥です。加えて他の季節に比べて水分摂取も減るため、体内の水分量はさらに少なくなりがち。つまり乾燥によって喉や気管支の粘膜が弱くなり、ウイルスの侵入を防ぐはずの喉や鼻の粘液も傷み、感染しやすくなるというわけです。 また冬は体温が下がるため代謝機能が低下し、免疫力が全体的にダウンするのも大きな原因です。一方、冬になると断然元気になるのがウイルス。低い気温と乾燥はウイルスにとっては非常に好環境で、感染力がよりいっそう強くなるのです。 感染経路としては飛沫感染、空気感染、接触感染、経口感染があります。飛沫感染の代表格はくしゃみと咳。風邪をひいている人が室内でくしゃみをすると約100万個のウイルスが飛散し、咳で出るウイルスは約10万個と言われています。空気感染も実は怖くて、湿度40%以下の乾燥した部屋ではウイルスは30分間漂い続けると言われています。また、接触感染で気をつけたいのは電車のつり革や不特定多数の人が使う道具や容器の使用。病原体が付着しているものを触り、手についた細菌やウイルスが口から入ると感染します。経口感染としては食べ物や水に注意が必要です。病原体の混入したものを食べたり汚染の可能性がある水を飲むと感染します。 ウイルス系の感染症に効く薬はありません 冬に流行する感染症で特に気をつけていただきたいのは、ウイルスが病原体の風邪、インフルエンザ、ノロウイルス、ロタウイルス、RSウイルス、細菌が病原体のA群溶血性連鎖球菌咽頭炎(A群溶連菌)、そのどちらにもあてはまらない性質をもつ菌が原因となるマイコプラズマ肺炎の7つです。各感染症の症状は左ページの表を参考にしてください。 皆さんに一つ覚えておいてほしいのは、風邪やその他のウイルス性の感染症には、基本的に治療薬がないということです。対処薬として解熱剤、咳止め、鼻水止めなどがありますが、これらはあくまで症状を緩和するための薬であって、治すための薬ではありません。鼻水や痰、咳、発熱などの症状は、実は感染症を治すうえで必要なことだからです。体に備わっている免疫機能が自動的に働くことでそうした症状が出るのであり、ウイルスを退治している証しなのです。対処薬を飲んで症状を抑えてしまうとかえって病気の回復を遅らせてしまうことがあります。以前は風邪で抗生剤を処方する病院も多かったのですが、最近は風邪に効く治療薬はないことが認知されたこともあり、処方しなくなっています。 いずれにしてもウイルス疾患にかかってしまったら暖かくして寝ることで体を休め、症状が治まるのを待つのが最善の方法です。 インフルエンザやA群溶血性連鎖球菌咽頭炎とマイコプラズマ肺炎に関しては治療薬があります。早めに診断を受け、必要に応じて薬を処方してもらいましょう。 インフルエンザは要注意。風疹は冬だけでなく1年中警戒 冬の感染症で一番、かからないように気をつけたいのはインフルエンザです。妊活中に高熱を出すと、その月は排卵しないこともあり妊活の治療をストップさせることになってしまいます。 また、妊娠判定が出る時にインフルエンザにかかっていると、それによって流産したり、着床しなかったりといったことの可能性もゼロではありません。ですから妊活中でもインフルエンザの予防接種を受けておきましょう。少なくとも高熱、肺炎などの重症化を防げます。 それと冬に限ったものではないのですが絶対にかかってほしくない感染症があります。風疹です。特に妊娠初期の女性が風疹にかかると胎児が風疹ウイルスに感染してしまい、難聴、心疾患、白内障、精神や体の発達の遅れ等の障害をもった赤ちゃんが生まれる可能性が高くなるからです。流行するのは春先から初夏にかけてですが、冬の間も気をつけましょう。 感染症にかからないよう日常生活から気をつけよう 一番良いのは、感染症にかからないこと。そのためにも普段からの予防が大切です。外出先から帰宅した際には必ず手を洗い、うがいをしましょう。市販のマスクは病原体の防御にはなりませんが、喉を乾燥から守ることができます。感染防御のためにマスクをしたい場合は医療用マスクを使ってください。人混みを避けることも大事です。人が多いところほど、感染症にかかる可能性は高まります。スーパーなども人の少ない時間帯を選んで行くようにしましょう。また、感染症にかからないよう免疫力を高めるためにも正しい食生活と十分な睡眠が大切です。年末は何かと忙しく寝不足になりがち。そうすると体力が落ちやすくなってしまいます。 ノロウイルスによる食中毒にも気をつけてください。意外に冬に多いのです。生牡蠣などを食べる機会があるからでしょうか。冬でも万が一に備え、できるかぎり加熱したものを食べましょう。 積極的に摂取してほしいのはビタミンDです。免疫力をアップさせるだけではなく、不妊治療にも実は効果があり、着床率も卵子の質も良くすると言われています。魚介類やきのこ類をたくさん食べましょう。感染症にかからないための一番の薬、それはご自身の体に備わった免疫力です。だからこそ以上のようなことを心がけ、免疫力を落とさない生活を実践してください。 冬に流行する7つの感染症 ウイルス:治療薬なし。インフルエンザとロタ(乳児)のみ予防ワクチンあり。 ● 風邪 上気道炎を一般的に風邪と総称する。 【症状】 くしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻の症状からはじまり、喉の痛み、咳、声枯れ、痰といった症状が出て発熱が起こります。血液中にウイルスが入ると頭痛、関節痛が、腸の粘膜にウイルスが付着すると腹痛、下痢などの症状が出ます。特に喉の痛み、咳がある場合は保湿が大事です。 ● インフルエンザ インフルエンザウイルスに感染することによって起こる急性感染症。 【症状】 38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身に症状が出るのが特徴。風邪よりやや症状が重いです。ワクチンで感染を完全に抑えることはできませんが、重症化を防ぐことができます。事前に予防接種を受けておくことをおすすめします。 ● ノロウイルス ノロウイルスによって発症する感染性胃腸炎や食中毒のこと。特に冬季に流行。 【症状】 手や指、食品を介して口から感染し、腸管でウイルスが増殖します。嘔吐、吐き気、腹痛、下痢、発熱などの症状が出ます。ただ、それらのどれかが1~2日続いた後、治癒します。後遺症の心配もありません。 ● ロタウイルス ロタウイルスによって引き起こされる急性の胃腸炎。 【症状】 主に子どもがかかりやすい病気ですが、大人が感染する場合もたまにあります。大人の場合、軽いむかつきか倦怠感程度。とはいえ、子どもと接する仕事の人は多少気をつけたほうがいいでしょう。 ● RSウイルス RSウイルス(respiratory syncytial virus)によって発症する呼吸器感染症。 【症状】 2歳までに発症することが多く、大人は鼻風邪程度で済む場合がほとんど。ただ、まれに大人も気管支炎や肺炎を起こすケースもあり、その場合は、38℃以上の発熱が5日程度続いたりします。 細菌:治療薬あり(抗生剤)。予防ワクチンなし。 ● A群溶血性連鎖球菌咽頭炎(A群溶連菌) A群溶血性連鎖菌によって引き起こされる感染症。 【症状】 突然の発熱、喉の痛みなどを発症します。喉が真っ赤になったり、喉の痛みが強くなり、嘔吐や吐き気をもよおすことも。初期の段階では舌が白いコケに覆われ、数日後には苺舌といって赤いぶつぶつができたりしますが、原因が菌なので、抗生剤で治すことができます。 その他:治療薬あり(抗生剤の一種)。予防ワクチンなし。 ● マイコプラズマ肺炎 肺炎マイコプラズマという細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症。 【症状】 発熱、全身倦怠感(だるさ)、頭痛、咳などの症状が出ます。咳は熱が下がった後も3~4週間ほど続くのが特徴です。患者の咳のしぶきを吸い込んだり、身近で接触したりすることで感染するので、かかっている人のそばに近寄らないように気をつけましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 佐藤 雄一 先生(佐藤病院) 医学博士·産婦人科専門医·日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医·日本生殖医学会生殖医療専門医。佐藤病院院長·高崎ARTクリニック理事長を務める。最近、テレビCMでも話題のトレーニングジムに入会したという佐藤先生。目的はダイエットではなく、2カ月で3〜5kgの筋肉増加。マラソン、ヒルクライム、トライアスロンときて次はムキムキ!?周囲から「いったい何を目指しているんだ?」と聞かれるのだとか。 ≫ 佐藤病院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.13
コラム 女性の健康
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俵先生に聞きました! ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相
ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。 Q:妊娠はうつるってホントですか? 結婚4年目で妊娠した親友は、旦那さんの職場に妊婦さんが3人いて、よくお腹を触らせてもらったそう。妊娠ってすごいパワーがあるのかも…と、私も親友のお腹を触らせてもらい、いつも身につけられるように、親友の携帯ストラップをもらってきちゃいました。ことり(主婦 / 28歳) A:あくまでもジンクスで科学的根拠はありません。高額な商品に騙されないよう、楽しんで取り入れて インターネットで、妊娠菌が付いた米を食べると子宝に恵まれる「子宝米」が販売され、詐欺だとして話題になりましたね。当然ながら、科学的根拠は一切ありませんが、妊娠を祈願したジンクスは、古くから存在します。たとえば、マトリョーシカやさるぼぼは子宝を願って作られたものですし、子宝にご利益のある神社は各地にあり、参拝する人も少なくありません。陣痛中の妊婦さんに富士山の絵を描いてもらうといい、というようなものも知られています。 ジンクスだと知りながら信じてしまう、そうした心の動きの多くは、社会心理学的に説明できます。自分に都合の良い意見のみを信じてしまうことは「確証のバイアス」という用語で説明されますし、妊娠したい自分と、なかなか妊娠しない現実に、お守りやジンクスをこじつけて解消しようとするのを「認知不協和の解消」と言います。つまり「子宝米」や「お腹を触ると妊娠する」も、妊娠を、ジンクスやお守りの効果として誤認していると考えられます。 とはいえ、これらは決して悪いことばかりではないのです。本来、お守りやジンクスは、精神的な支えを得るためのもの。お守りがあることで心の支えになったり、前向きな気持ちになって不安が和らいだりして、結果的に体調に良い影響を与える可能性は大いにあります。医学の世界にも「プラシーボ(偽薬)効果」といって、薬ではないビタミン剤等を与えたら、それを薬と信じて飲んだ人の痛みが治まった、という現象があります。ですから、お守りやジンクスを楽しめているのであれば、心の支えとして取り入れてもいいのではないでしょうか。ただし、くれぐれも不安や悩みに付け込んだ高額な商品や勧誘に騙されないよう気を付けてください。 Q:デブだと妊娠しにくいの? 結婚3年目ですがなかなか妊娠しません。これまで主人の両親からは何も言われたことがなかったのですが、先日主人が義父に、私が太ってるからでは? ダイエットさせなさいと言われたと聞き、昨夜はショックで涙が止まりませんでした。太っていると妊娠しにくいですか? ぶぅ子さん(主婦 / 35歳) A:肥満は妊娠に悪影響があるという報告があります。その後のライフサイクルのためにも体重コントロールを 体重と妊娠の関連性についてはこれまでさまざまな形で報告されています。およそ50万人のART患者を対象にした研究(2016年、アメリカ)。これによると、痩せすぎおよび肥満の女性は、標準体重の女性より妊娠率、出生率とも低く、どちらも低体重児と早産のリスクが高いことが明らかになっています。(※1) また、これもアメリカの研究ですが、約24万人の新鮮胚移植実施者を、痩せ、普通、肥満に分類し(BMIの数値では痩せBMI:18.4kg/m2以下、普通18.5~24.9kg/m2、肥満25.0kg/m2以上)、BMIが普通の人と肥満の人との妊娠結果を比較したところ、痩せや普通の女性に比べて、肥満の女性はBMIが高くなるほど妊娠率が低下し、逆に流産の確率が上がるという結果が公表されています。つまり、肥満女性のほうが、通常体重や痩せすぎの女性よりも妊娠しにくく、流産しやすいと言えます。(※2) そして何より、肥満による悪影響は、不妊治療や妊娠・出産だけに限ったことではありません。肥満は、脂質異常症や糖尿病、子宮内膜がんや乳がんのリスクに密接に結びついていることがわかっています。喫煙よりも肥満のほうが死亡率を高める重要な因子となるとさえ言われ、肥満であることは、その後の人生にも大きな影響を与える一因になっているのです。妊娠、出産はもちろんですが、それらを含めた女性のライフサイクルを長い目で見た時、やはり適正な体重コントロールが必要です。そうしたリスクを取り除き健康を保つには、BMIを20~24ぐらいに保つのがもっとも良いとされています。不妊治療の際には、そういった要素も視野に入れて、取り組んでいただければと思います。 ※1=出典/Fertility and Sterility vol.106,2016Dec,1742-1750 ※2=出典/Fertility and Sterility vol.105,2016Mar,663-669 Q:お酒は不妊の原因になる? 不妊治療3年目の主婦です。私はお酒が大好きで晩酌は毎晩、週末は必ず外に飲みに出かけます。不妊の原因になり得るだろうなと思いつつ、治療のストレスもありやめることができません。やはり子づくりをしようと思ったら飲んではいけませんか? サンさん(主婦 / 31歳) A:アルコール摂取量が多いと妊娠しづらいという研究結果も。男女とも、適量を意識して アルコール摂取量と妊娠の関連性について調べてみました。アメリカでタイミング指導を行った女性124人を調査したところ、自然妊娠では、お酒を飲まない人の妊娠率は24.5%、1週間に91g以上のアルコールを摂取した人の妊娠率は8.3%でした。1週間に90g以内の摂取量であれば、飲まない人との大きな差は見られませんでした。(※3) また、2545組4729周期のIVF実施女性のアルコール摂取状況を調べたところ、1週間に4ドリンク(56g)以上飲んでいた女性は、それ以下の女性に比べて出生率が16%低下。さらに、男女両方が1週間に4ドリンク飲んでいた場合は、出生率が21%低下していたと報告されています。(※4)アメリカの調査なので「1ドリンク=14g」となっていますが、日本では厚労省が日本人の適量な飲酒量として「1日平均純アルコール20g」を目安と定めています。これはビール中ビンなら1本(500ml)、缶チューハイ1缶(500ml)、ワインはグラス1杯(約180ml)に相当するため、いずれもこれと照らし合わせて考えることができます。 同様に、男性不妊への関与についての調査もあり、過去1年間に1週間のうち最低でも5日間あたり、アルコール度数40~50%のブランデーなどを最低でも180ml飲んでいた66人を調べると、精巣の構造や精子形成に影響を与えることがわかっています。(※5) お酒を飲むこと自体は、リラックス効果が得られるなどのメリットもありますが、やはり適量を心掛けていただきたいですね。覚えておきたいのは、男性より女性のほうがアルコール代謝能力が低いということ。顔が赤くなるかどうかは、お酒の強さの基準にはなりません。また、過剰な飲酒は乳がんや骨粗しょう症の影響も心配されます。 言うまでもありませんが、妊婦の飲酒は胎児性アルコール症候群や成長障害といった悪影響を及ぼしますので、絶対にやめてください。 ※3=出典/Hakim et al., Fertility&Sterility,1998 ※4=出典/Brook et al., Obstet Gynecol,2011 ※5=出典/Muthusami et al., Fertility&Sterility,2005 俵先生よりまとめ 「1人目出産後は妊娠しやすい」「こうしたら男女の産み分けができる」といった噂は多くあり、実際に学会で報告されたものも存在していますが、そのほとんどは確率、つまり単なる数字的なデータであり、医学的にはっきり証明された根拠はありません。お一人お一人不妊の背景や薬の反応は異なりますから、1つの方法がみんなに効果的とはいえないでしょう。やはり、検査や治療の結果をその都度見ながら、ご自身に合ったやり方で進めていくことが大切だと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転、リニューアルオープン。開業10周年に向け、内部スタッフがさらに充実。専門性の高い医師も増え、メンタルヘルスケアや妊娠初期管理にもますます力を注いでいる。 ≫ 俵IVFクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら ウソ! ホント? 妊娠にまつわるウワサの真相 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 「○○したら妊娠できた」「○○はNG!」といった妊娠にまつわる噂や俗説……。ウソなのか、ホントなのか、俵IVFクリニックの俵史子先生に医師の立場から解説していただきます。 Q:妊娠はうつるってホントですか? 結婚4年目で妊娠した親友は、旦那さんの職場に妊婦さんが3人いて、よくお腹を触らせてもらったそう。妊娠ってすごいパワーがあるのかも…と、私も親友のお腹を触らせてもらい、いつも身につけられるように、親友の携帯ストラップをもらってきちゃいました。ことり(主婦 / 28歳) A:あくまでもジンクスで科学的根拠はありません。高額な商品に騙されないよう、楽しんで取り入れて インターネットで、妊娠菌が付いた米を食べると子宝に恵まれる「子宝米」が販売され、詐欺だとして話題になりましたね。当然ながら、科学的根拠は一切ありませんが、妊娠を祈願したジンクスは、古くから存在します。たとえば、マトリョーシカやさるぼぼは子宝を願って作られたものですし、子宝にご利益のある神社は各地にあり、参拝する人も少なくありません。陣痛中の妊婦さんに富士山の絵を描いてもらうといい、というようなものも知られています。 ジンクスだと知りながら信じてしまう、そうした心の動きの多くは、社会心理学的に説明できます。自分に都合の良い意見のみを信じてしまうことは「確証のバイアス」という用語で説明されますし、妊娠したい自分と、なかなか妊娠しない現実に、お守りやジンクスをこじつけて解消しようとするのを「認知不協和の解消」と言います。つまり「子宝米」や「お腹を触ると妊娠する」も、妊娠を、ジンクスやお守りの効果として誤認していると考えられます。 とはいえ、これらは決して悪いことばかりではないのです。本来、お守りやジンクスは、精神的な支えを得るためのもの。お守りがあることで心の支えになったり、前向きな気持ちになって不安が和らいだりして、結果的に体調に良い影響を与える可能性は大いにあります。医学の世界にも「プラシーボ(偽薬)効果」といって、薬ではないビタミン剤等を与えたら、それを薬と信じて飲んだ人の痛みが治まった、という現象があります。ですから、お守りやジンクスを楽しめているのであれば、心の支えとして取り入れてもいいのではないでしょうか。ただし、くれぐれも不安や悩みに付け込んだ高額な商品や勧誘に騙されないよう気を付けてください。 Q:デブだと妊娠しにくいの? 結婚3年目ですがなかなか妊娠しません。これまで主人の両親からは何も言われたことがなかったのですが、先日主人が義父に、私が太ってるからでは? ダイエットさせなさいと言われたと聞き、昨夜はショックで涙が止まりませんでした。太っていると妊娠しにくいですか? ぶぅ子さん(主婦 / 35歳) A:肥満は妊娠に悪影響があるという報告があります。その後のライフサイクルのためにも体重コントロールを 体重と妊娠の関連性についてはこれまでさまざまな形で報告されています。およそ50万人のART患者を対象にした研究(2016年、アメリカ)。これによると、痩せすぎおよび肥満の女性は、標準体重の女性より妊娠率、出生率とも低く、どちらも低体重児と早産のリスクが高いことが明らかになっています。(※1) また、これもアメリカの研究ですが、約24万人の新鮮胚移植実施者を、痩せ、普通、肥満に分類し(BMIの数値では痩せBMI:18.4kg/m2以下、普通18.5~24.9kg/m2、肥満25.0kg/m2以上)、BMIが普通の人と肥満の人との妊娠結果を比較したところ、痩せや普通の女性に比べて、肥満の女性はBMIが高くなるほど妊娠率が低下し、逆に流産の確率が上がるという結果が公表されています。つまり、肥満女性のほうが、通常体重や痩せすぎの女性よりも妊娠しにくく、流産しやすいと言えます。(※2) そして何より、肥満による悪影響は、不妊治療や妊娠・出産だけに限ったことではありません。肥満は、脂質異常症や糖尿病、子宮内膜がんや乳がんのリスクに密接に結びついていることがわかっています。喫煙よりも肥満のほうが死亡率を高める重要な因子となるとさえ言われ、肥満であることは、その後の人生にも大きな影響を与える一因になっているのです。妊娠、出産はもちろんですが、それらを含めた女性のライフサイクルを長い目で見た時、やはり適正な体重コントロールが必要です。そうしたリスクを取り除き健康を保つには、BMIを20~24ぐらいに保つのがもっとも良いとされています。不妊治療の際には、そういった要素も視野に入れて、取り組んでいただければと思います。 ※1=出典/Fertility and Sterility vol.106,2016Dec,1742-1750 ※2=出典/Fertility and Sterility vol.105,2016Mar,663-669 Q:お酒は不妊の原因になる? 不妊治療3年目の主婦です。私はお酒が大好きで晩酌は毎晩、週末は必ず外に飲みに出かけます。不妊の原因になり得るだろうなと思いつつ、治療のストレスもありやめることができません。やはり子づくりをしようと思ったら飲んではいけませんか? サンさん(主婦 / 31歳) A:アルコール摂取量が多いと妊娠しづらいという研究結果も。男女とも、適量を意識して アルコール摂取量と妊娠の関連性について調べてみました。アメリカでタイミング指導を行った女性124人を調査したところ、自然妊娠では、お酒を飲まない人の妊娠率は24.5%、1週間に91g以上のアルコールを摂取した人の妊娠率は8.3%でした。1週間に90g以内の摂取量であれば、飲まない人との大きな差は見られませんでした。(※3) また、2545組4729周期のIVF実施女性のアルコール摂取状況を調べたところ、1週間に4ドリンク(56g)以上飲んでいた女性は、それ以下の女性に比べて出生率が16%低下。さらに、男女両方が1週間に4ドリンク飲んでいた場合は、出生率が21%低下していたと報告されています。(※4)アメリカの調査なので「1ドリンク=14g」となっていますが、日本では厚労省が日本人の適量な飲酒量として「1日平均純アルコール20g」を目安と定めています。これはビール中ビンなら1本(500ml)、缶チューハイ1缶(500ml)、ワインはグラス1杯(約180ml)に相当するため、いずれもこれと照らし合わせて考えることができます。 同様に、男性不妊への関与についての調査もあり、過去1年間に1週間のうち最低でも5日間あたり、アルコール度数40~50%のブランデーなどを最低でも180ml飲んでいた66人を調べると、精巣の構造や精子形成に影響を与えることがわかっています。(※5) お酒を飲むこと自体は、リラックス効果が得られるなどのメリットもありますが、やはり適量を心掛けていただきたいですね。覚えておきたいのは、男性より女性のほうがアルコール代謝能力が低いということ。顔が赤くなるかどうかは、お酒の強さの基準にはなりません。また、過剰な飲酒は乳がんや骨粗しょう症の影響も心配されます。 言うまでもありませんが、妊婦の飲酒は胎児性アルコール症候群や成長障害といった悪影響を及ぼしますので、絶対にやめてください。 ※3=出典/Hakim et al., Fertility&Sterility,1998 ※4=出典/Brook et al., Obstet Gynecol,2011 ※5=出典/Muthusami et al., Fertility&Sterility,2005 俵先生よりまとめ 「1人目出産後は妊娠しやすい」「こうしたら男女の産み分けができる」といった噂は多くあり、実際に学会で報告されたものも存在していますが、そのほとんどは確率、つまり単なる数字的なデータであり、医学的にはっきり証明された根拠はありません。お一人お一人不妊の背景や薬の反応は異なりますから、1つの方法がみんなに効果的とはいえないでしょう。やはり、検査や治療の結果をその都度見ながら、ご自身に合ったやり方で進めていくことが大切だと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 俵 史子 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学医学部卒業。2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、俵IVFクリニックを開業。2015年静岡駅前に移転、リニューアルオープン。開業10周年に向け、内部スタッフがさらに充実。専門性の高い医師も増え、メンタルヘルスケアや妊娠初期管理にもますます力を注いでいる。 ≫ 俵IVFクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.13
コラム 不妊治療
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初めての人もこれを読めば安心! 徳岡先生の不妊治療AtoZ (4)
事前に知識を少しもっていれば、先生の話もスムーズに入ってきて治療を進めやすくなるでしょう。そこでとくおかレディースクリニックの徳岡晋先生に不妊治療のAtoZを教えていただきます。
2017.11.13
コラム 不妊治療
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出生前診断!正しく聞いてみよう。
出生前診断!正しく聞いてみよう。 2017/11/13 宗田 聡 先生(広尾レディース) 「出生前診断」とはどういうもの? 妊婦さんであれば「出生前診断」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。ネットでは、「出生前診断」と検索するとセンセーショナルな病名が並び、驚かれる方も多いのですが、皆さんに知ってほしい大事なことは「出生前診断は“命の選別”ではなく、おなかの中にいる赤ちゃんの病気や奇形、染色体異常などがあるかないかを調べる検査」ということです。 例えば、赤ちゃんに心臓の病気があったとします。産院が田舎や個人病院で赤ちゃんの病気に対応できない場合には大きな病院に転院する、またお腹の中の赤ちゃんの胸に水がたまる病気が見つかったら妊娠中から胸水を抜くことができる、血液の流れで双子の赤ちゃんの発育に差がある場合、お腹の中でレーザーにより血管を焼くなどの治療ができる…など、病気や奇形がお腹の中にいるときにわかることで、「出産するまでの準備・治療ができ、対応できる」ことがメリットなのです。 「出生前診断」の世界の現状 日本で「出生前診断」を受けるには、今のところ年齢などいくつかの制限があります。一方世界では、ほとんどの国で希望すれば年齢に関係なくだれでも受けられる検査となっています。その理由としては、「染色体異常」の赤ちゃんが800人に1人という比較的高い確率で生まれてくること、もうひとつは母親の出産年齢が世界的にも上がっていて、「染色体異常」は年齢が上がるごとに確率が高くなっているという点にあります。事前に分かることで、家族は対応を考え、病気について学ぶ時間が作られるというメリットがあります。 日本でも年齢を問わず、「出生前診断」を希望される方が増えてきていますが、まだオープンに議論されていないという現状があります。 「出生前診断」は赤ちゃんのすべての病気が分かるものではない ネットではあらゆる情報があふれていて、「出生前診断を受けさえすれば赤ちゃんのすべての病気がわかる、赤ちゃんが健康だというお墨付きがもらえる」と勘違いされている方も少なくありませんが、そうではありません。生まれる前に見つけることのできる病気はまだまだ限られていて、ほとんどの病気は出産後に見つかります。 また、最近では「手軽な検査」を連想させるようなうたい文句で「出生前診断」を案内していている医療機関があるのも大きな問題です。赤ちゃんに奇形や染色体異常が見つかった場合、大事なのはアフターケア。各専門家と連携して赤ちゃんのケアをしていくことが大切なのに、検査を済ませたらあとは放置され、今後どうしたらいいのか相談もできずに行き場がなくなる妊婦さんがいるのも現状です。「出生前診断」はその場だけの検査ではなく、何か起こった場合に、「どう対応するのか」が最も大切な検査です。 お腹の赤ちゃんの将来にかかわる大切な問題ですから、専門家としっかり相談したうえで、受けるべき検査だと考えています。 お話を伺った先生のご紹介 宗田 聡 先生(広尾レディース) 筑波大学卒業後、同大産婦人科にて研修。平成9年より筑波大学講師として臨床・研究・教育に従事。Tufts大学(ボストン)遺伝医学特別研究員として留学後、水戸済生会総合病院産婦人科部長・茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)、 パークサイド広尾レディスクリニック院長を経て、平成24年 広尾レディース院長に就任。現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科非常勤講師。不妊、うつに関する著書も多数。著書に『これからはじめる周産期メンタルヘルス』等。 ≫ 広尾レディース 出生前診断!正しく聞いてみよう。 2017/11/13 宗田 聡 先生(広尾レディース) 「出生前診断」とはどういうもの? 妊婦さんであれば「出生前診断」という言葉を耳にしたことがある方は多いでしょう。ネットでは、「出生前診断」と検索するとセンセーショナルな病名が並び、驚かれる方も多いのですが、皆さんに知ってほしい大事なことは「出生前診断は“命の選別”ではなく、おなかの中にいる赤ちゃんの病気や奇形、染色体異常などがあるかないかを調べる検査」ということです。 例えば、赤ちゃんに心臓の病気があったとします。産院が田舎や個人病院で赤ちゃんの病気に対応できない場合には大きな病院に転院する、またお腹の中の赤ちゃんの胸に水がたまる病気が見つかったら妊娠中から胸水を抜くことができる、血液の流れで双子の赤ちゃんの発育に差がある場合、お腹の中でレーザーにより血管を焼くなどの治療ができる…など、病気や奇形がお腹の中にいるときにわかることで、「出産するまでの準備・治療ができ、対応できる」ことがメリットなのです。 「出生前診断」の世界の現状 日本で「出生前診断」を受けるには、今のところ年齢などいくつかの制限があります。一方世界では、ほとんどの国で希望すれば年齢に関係なくだれでも受けられる検査となっています。その理由としては、「染色体異常」の赤ちゃんが800人に1人という比較的高い確率で生まれてくること、もうひとつは母親の出産年齢が世界的にも上がっていて、「染色体異常」は年齢が上がるごとに確率が高くなっているという点にあります。事前に分かることで、家族は対応を考え、病気について学ぶ時間が作られるというメリットがあります。 日本でも年齢を問わず、「出生前診断」を希望される方が増えてきていますが、まだオープンに議論されていないという現状があります。 「出生前診断」は赤ちゃんのすべての病気が分かるものではない ネットではあらゆる情報があふれていて、「出生前診断を受けさえすれば赤ちゃんのすべての病気がわかる、赤ちゃんが健康だというお墨付きがもらえる」と勘違いされている方も少なくありませんが、そうではありません。生まれる前に見つけることのできる病気はまだまだ限られていて、ほとんどの病気は出産後に見つかります。 また、最近では「手軽な検査」を連想させるようなうたい文句で「出生前診断」を案内していている医療機関があるのも大きな問題です。赤ちゃんに奇形や染色体異常が見つかった場合、大事なのはアフターケア。各専門家と連携して赤ちゃんのケアをしていくことが大切なのに、検査を済ませたらあとは放置され、今後どうしたらいいのか相談もできずに行き場がなくなる妊婦さんがいるのも現状です。「出生前診断」はその場だけの検査ではなく、何か起こった場合に、「どう対応するのか」が最も大切な検査です。 お腹の赤ちゃんの将来にかかわる大切な問題ですから、専門家としっかり相談したうえで、受けるべき検査だと考えています。 お話を伺った先生のご紹介 宗田 聡 先生(広尾レディース) 筑波大学卒業後、同大産婦人科にて研修。平成9年より筑波大学講師として臨床・研究・教育に従事。Tufts大学(ボストン)遺伝医学特別研究員として留学後、水戸済生会総合病院産婦人科部長・茨城県周産期センター長(筑波大学産婦人科臨床准教授兼任)、 パークサイド広尾レディスクリニック院長を経て、平成24年 広尾レディース院長に就任。現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科非常勤講師。不妊、うつに関する著書も多数。著書に『これからはじめる周産期メンタルヘルス』等。 ≫ 広尾レディース
2017.11.13
コラム 妊娠・出産
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見て楽しい! 参考になる! つながれる! 注目のインスタグラマー
妊活中の人も多く利用しているInstagram。写真やイラスト、手描き文字を投稿して治療のことやその時の気持ちなどを発信しています。今回はその中でも人気が高く注目したいインスタグラマーさんを紹介します。 みき さん(mi_kifi) ★Profile私33歳、彼30歳。日々の出来事を漫画にしています。最近は頭の中が妊活一色なので、妊活の話が多めです。彼が描いた水彩画もオススメです! ★Instagramを始めたきっかけ結婚したら自然に妊娠するものだと思っていたのになかなか妊娠せずに、ちょっと産婦人科に検査に行ってみようと思ったら予約が全然取れない現実を知りびっくりしました。また風疹の注射も昔していたのに抗体がないことを知り、もっと早くからできることをしておけばよかったと後悔しました。いつかは赤ちゃんが欲しいと思っている女性のために少しでも情報提供ができたらいいなと思い、妊活の話も描くようになりました。 ★Instagramをやっていて良かったこと最初は、自分でもこの先どうなっていくのかわからないことを書いていくことに不安がありました。でも妊活の話を書き出すと不妊治療を受けた先輩方から温かいメッセージをいただいたり、同じ境遇にいる方からもメッセージをいただき、頑張っているのは自分だけじゃないとすごく支えられ希望をもつことができました。またインスタをきっかけにプライベートでも仲良くする友達ができ、感謝しています。≫ みきさんのインスタはこちら しらす さん(shi.ra.su) ★Profile都内で働く32歳。2015年に結婚、妊活スタートするも約2年授からず。ネガティブになりがちな不妊治療の中でもちょっと笑えるネタを探してます。 ★Instagramを始めたきっかけ身内や周りの友達は、結婚して妊娠・出産をした人ばかり。そのため不妊の悩みを吐き出せるところがなく、外で妊婦さんや子ども連れの方を見るたびに、うらやむ気持ちと「なんで自分は」という思いで押しつぶされそうな毎日でした。そんな時に、Instagramで恋愛の「手書きツイート」を見かけて、妊活の悩みや不安を同じように書きだしたら少しは気持ちが晴れるかも、と思ったのがきっかけです。 ★Instagramをやっていて良かったこと同じ悩みを抱えながら頑張っている人がたくさんいることに気づかされ、自分一人じゃないんだ、と実感することができました。そしてなにより、「わかる!」「そうそう!」と共感してもらえることが一番うれしいです。夫にはなかなか理解しづらい女性特有の気持ちもシェアできるので、抱えるストレスがだいぶ軽減されたと思います。≫ しらすさんのインスタはこちら n.t さん(natchanchi) ★Profile結婚2年目、共働き夫婦です。2017年1月から妊活スタートと同時にクロミッドⓇ&タイミング法を始めました。現在不妊治療専門クリニックへの転院を検討中です! ★Instagramを始めたきっかけ妊活について検索している時に妊活アカウントの存在を知りました。私は妊活していることは周囲にも話していますが、実際に妊活している人はいなくて、リアルな相談をすることができませんでした。インスタを通して同じくママになるために頑張っている方々と繋がれたら、そして私も少しでも誰かの参考になれば、という思いで始めました。 ★Instagramをやっていて良かったこと妊活をしている人の本当の気持ちは、同じく妊活をしている人にしかわからないと思います。前向きにと思ってはいても、時には悲しくなったり不安になったり愚痴を言いたくなったり。そういう時に周りには言えなくても、吐き出せる場所になるし、共感や励ましのコメントをいただけると、悩んでるのは私1人じゃない! とまた前を向くきっかけになる気がします。わかってくれる人がいるというのが一番心強い気がします。≫ n.tさんのインスタはこちら 2017_baby_12 さん(maruko0506) ★Profile30歳。結婚後5年間仕事や趣味に費やし、その後妊活を始めて初期流産を経験。黄体機能不全、精子無力症発覚! 人工授精挑戦中! 目指せポジティブ妊活! ★Instagramを始めたきっかけ妊活を始めてすぐに妊娠、その時にマタアカとしてこのアカウントを作りました。数日後に流産。そんな時、妊活アカウントを知り、同じ経験や思いを共感できる人たちが多くいること、赤ちゃんを授かるために情報交換や励ましあってる姿を見て私自身も勇気づけられ、また一から頑張ろうと妊活アカを始めました。通院を決めたのも、夫婦間での妊活温度差を埋められたのもアドバイスくださったフォロワーさんたちのおかげです! 日々感謝! ★Instagramをやっていて良かったこと妊活中はつらいことがいっぱい。友人や親族の妊娠報告に落ち込んだり、リセットのたびにまたダメだったかと涙を流したり、一番近くにいる主人にも理解してもらえない時だってあります。そんな時、インスタで吐き出したら同じ思いを経験した人たちが、「私も同じです」「一緒に頑張りましょうね」と声をかけてくださり、どれだけ救われたことか。治療や検査への不安もたくさんアドバイスいただいて毎度ベストな選択をできていると思います!≫ 2017_baby_12さんのインスタはこちら 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 妊活中の人も多く利用しているInstagram。写真やイラスト、手描き文字を投稿して治療のことやその時の気持ちなどを発信しています。今回はその中でも人気が高く注目したいインスタグラマーさんを紹介します。 みき さん(mi_kifi) ★Profile私33歳、彼30歳。日々の出来事を漫画にしています。最近は頭の中が妊活一色なので、妊活の話が多めです。彼が描いた水彩画もオススメです! ★ブログを始めたきっかけ結婚したら自然に妊娠するものだと思っていたのになかなか妊娠せずに、ちょっと産婦人科に検査に行ってみようと思ったら予約が全然取れない現実を知りびっくりしました。また風疹の注射も昔していたのに抗体がないことを知り、もっと早くからできることをしておけばよかったと後悔しました。いつかは赤ちゃんが欲しいと思っている女性のために少しでも情報提供ができたらいいなと思い、妊活の話も描くようになりました。 ★ブログをやっていて良かったこと最初は、自分でもこの先どうなっていくのかわからないことを書いていくことに不安がありました。でも妊活の話を書き出すと不妊治療を受けた先輩方から温かいメッセージをいただいたり、同じ境遇にいる方からもメッセージをいただき、頑張っているのは自分だけじゃないとすごく支えられ希望をもつことができました。またインスタをきっかけにプライベートでも仲良くする友達ができ、感謝しています。≫ みきさんのインスタはこちら しらす さん(shi.ra.su) ★Profile都内で働く32歳。2015年に結婚、妊活スタートするも約2年授からず。ネガティブになりがちな不妊治療の中でもちょっと笑えるネタを探してます。 ★ブログを始めたきっかけ身内や周りの友達は、結婚して妊娠・出産をした人ばかり。そのため不妊の悩みを吐き出せるところがなく、外で妊婦さんや子ども連れの方を見るたびに、うらやむ気持ちと「なんで自分は」という思いで押しつぶされそうな毎日でした。そんな時に、Instagramで恋愛の「手書きツイート」を見かけて、妊活の悩みや不安を同じように書きだしたら少しは気持ちが晴れるかも、と思ったのがきっかけです。 ★ブログをやっていて良かったこと同じ悩みを抱えながら頑張っている人がたくさんいることに気づかされ、自分一人じゃないんだ、と実感することができました。そしてなにより、「わかる!」「そうそう!」と共感してもらえることが一番うれしいです。夫にはなかなか理解しづらい女性特有の気持ちもシェアできるので、抱えるストレスがだいぶ軽減されたと思います。≫ しらすさんのインスタはこちら n.t さん(natchanchi) ★Profile結婚2年目、共働き夫婦です。2017年1月から妊活スタートと同時にクロミッドⓇ&タイミング法を始めました。現在不妊治療専門クリニックへの転院を検討中です! ★ブログを始めたきっかけ妊活について検索している時に妊活アカウントの存在を知りました。私は妊活していることは周囲にも話していますが、実際に妊活している人はいなくて、リアルな相談をすることができませんでした。インスタを通して同じくママになるために頑張っている方々と繋がれたら、そして私も少しでも誰かの参考になれば、という思いで始めました。 ★ブログをやっていて良かったこと妊活をしている人の本当の気持ちは、同じく妊活をしている人にしかわからないと思います。前向きにと思ってはいても、時には悲しくなったり不安になったり愚痴を言いたくなったり。そういう時に周りには言えなくても、吐き出せる場所になるし、共感や励ましのコメントをいただけると、悩んでるのは私1人じゃない! とまた前を向くきっかけになる気がします。わかってくれる人がいるというのが一番心強い気がします。≫ n.tさんのインスタはこちら 2017_baby_12 さん(maruko0506) ★Profile30歳。結婚後5年間仕事や趣味に費やし、その後妊活を始めて初期流産を経験。黄体機能不全、精子無力症発覚! 人工授精挑戦中! 目指せポジティブ妊活! ★ブログを始めたきっかけ妊活を始めてすぐに妊娠、その時にマタアカとしてこのアカウントを作りました。数日後に流産。そんな時、妊活アカウントを知り、同じ経験や思いを共感できる人たちが多くいること、赤ちゃんを授かるために情報交換や励ましあってる姿を見て私自身も勇気づけられ、また一から頑張ろうと妊活アカを始めました。通院を決めたのも、夫婦間での妊活温度差を埋められたのもアドバイスくださったフォロワーさんたちのおかげです! 日々感謝! ★ブログをやっていて良かったこと妊活中はつらいことがいっぱい。友人や親族の妊娠報告に落ち込んだり、リセットのたびにまたダメだったかと涙を流したり、一番近くにいる主人にも理解してもらえない時だってあります。そんな時、インスタで吐き出したら同じ思いを経験した人たちが、「私も同じです」「一緒に頑張りましょうね」と声をかけてくださり、どれだけ救われたことか。治療や検査への不安もたくさんアドバイスいただいて毎度ベストな選択をできていると思います!≫ 2017_baby_12さんのインスタはこちら 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.10
コラム 不妊治療
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この子にきょうだいを作ってあげたい!
上の子のケア、金銭面の両立が難しい「2人目の不妊治療」。託児所付きクリニックに救われました。 第1子を抱えながら2人目の治療をするには、1人目の治療とは違った悩みや問題が生じます。「秋山レディースクリニック」のサポートで2人目を授かったMさんの妊娠までのストーリー。 自分主導のタイミング療法に限界を感じて… 取材当日、1歳9カ月になる女の子と少し膨らみが目立ち始めたお腹で迎えてくれたMさん。ちょうど妊娠5カ月を経過したところです。 26歳という世間では適齢期と言われる年齢で結婚をしたMさん。お母様がMさんを産んだのが26歳だったので「結婚したらすぐにでも赤ちゃんが欲しい!」そう思ったものの、生理不順だったり、基礎体温がガタガタだったり…。なんとなく自分は妊娠しにくいのかも、そんな予感がしていたと言います。そこで、当時の家から近い不妊治療専門のクリニックを訪ねたところ、まずはタイミング療法をすすめられ始めてみることに。基本的にご主人のNさんは協力的な方だそうですが、「主人を夜中に無理矢理起こして“疲れているから…”と断られることもあり、だんだん喧嘩になることも増えて…。回を重ねるごとに気分的に追い詰められていきました」。タイミング療法を始めて10回。限界を感じたことと、気分転換も兼ね、Mさんはもう少し遠い都心のクリニックへの転院を決めました。 「原因不明の不妊」と診断され一気に顕微授精へ 転院したクリニックで一通りの検査を受けた結果では特定できるような疾患はなく「あえて言うならホルモンバランスが崩れている、排卵が遅い」ということでした。先生からは「あなたのような若い年齢の場合、この結果からはわからない何らかの原因があるはず。体外受精がいいでしょう」とはっきり言われたそうです。 まさか一気に体外受精をすすめられるとは…心の準備がなかったMさん。「え? 私って不妊なの?原因がわからないってどういうこと?」まさかの展開に驚き、その場で泣いてしまったそうです。 しかし、テキパキとしてとても決断力のあるMさん。「とにかく今やれることはやってみよう、タイミングのストレスを重ねるより体外受精に踏み切ったほうがいいのかも」と前向きに捉え、ご主人の合意も得ました。 体外受精にあたり、ご主人も採精の協力をしてくれましたが、病院から「精子の運動率が悪いので“顕微授精”にしましょう」との提案。次々と起こる展開にMさんご夫婦は戸惑いますが、走り出した以上は任せるしかありません。Mさんからは3個の卵子が採取できました。そして胚盤胞まで育った凍結胚を戻したところ、無事に妊娠! 短い期間に一気に物事が展開していったものの、先生を信じ、早い時期に結果が出たことに夫婦で喜び合ったそうです。 その後の妊娠期間はとても順調に進みました。ところが、いざ出産の日。赤ちゃんはなかなか出てこず、吸引、鉗子分娩へ。Mさんが疲れて寝てしまい目が覚めたとき、赤ちゃんは隣にはいませんでした。なんと、仮死状態で生まれた赤ちゃんは緊急で大学病院へ搬送されていたのです。「順調に進んでいた妊娠の最後にこんなことが待っているなんて…ショックでしたが、ここで主人がすごく頑張ってくれました。毎日娘の病院に行って写真を撮って私に見せてくれました。突然の展開で主人も記憶がないくらいだと言っています」。その後赤ちゃんは順調に回復。3週間後ようやく退院し、3人での生活がスタートしました。 2人目の治療は託児所のある「秋山レディースクリニックへ」 母乳育児をしたかったというMさん。1年は子育てに専念すると決めていたそうですが、きょうだいはどうしてもつくってあげたいとの思いがありました。というのも、Mさんは4人きょうだいの一番上のお姉さん。3人の弟がいます。自分が子どものころは喧嘩したり大変だったけれど、大人になった今はきょうだいのありがたさを感じ、そして何より4人を育てたお母さまへの尊敬の気持ちがあるそうです。 のんびりしていたら自分の出産の確率がどんどん落ちてしまうかも、とも考えMさんは次の出産の準備を始めます。ところがここで待っていたのが、通院中、上の子をどこに預けるか…という問題。なぜなら、最初に妊娠できたクリニックは「子連れNG」だったからです。「確かに自分が1人も授かっていなかったら、子連れで治療に来る人にはいい気持ちがしなかったと思います。“1人いるからいいじゃない”って。でも、1人産んで子どもの可愛さがわかったからこそ、なんとしてでももう1人欲しいという想いもあるんですよね…」。 前のクリニックへの未練もありつつ、致し方なくもう一度病院を探し始めたMさんは、インターネットで託児所がある「秋山レディースクリニック」の存在を知ります。「もう、私にはここしかない!! と思いました」。すぐに予約を入れ、カウンセリングへ。今までの経緯と事情、Mさんのすぐに体外受精をしてほしいという申し出を理解してくれたこと、何より広くきれいな託児ルームがあること、Mさんの2人目への想いが叶えられそうな場所が見つかりました。 早速、体外受精がスタート。採卵する前の受診で秋山先生に初対面。「いい意味で程よい距離感をもってくださる先生で安心できました」とMさん。上のお子さんも診療中は喜んでキッズルームで遊んでくれていたそう。そして今回は9個採卵でき、うち5個受精できたそうですが、1回目の移植では残念ながら陰性でした。 次がダメならしばらく見送ろう覚悟を決めた2度目の移植 専業主婦のMさん。この治療にあたっては自分の貯金を崩しながら臨んでいたそうです。「上の子でもお金がかかり、さらに自分の不妊治療。気持ちだけは意気込んでいても、やりくりするのは大変だと痛感し始めました。このまま続けていたら治療貧乏になっちゃうなって…。あくまでも“予定は未定”なんですよね」。そこで、「次の移植で妊娠できなかったらいったん治療はお休みしよう」と見切りをつけることにしたそうです。またお金を貯めたらスタートしよう、そう覚悟を決めて臨んだ2回目の移植。結果は嬉しい嬉しい2度目の妊娠でした。 「次はうまくいかなくても仕方がないと覚悟を決めていましたが、移植の日以外の受診日には子どもを預けて受診できる体制が整っていて、安心して通院できたのが本当に良かったです」とMさん。第2子が生まれる来年を待ちわびている今日この頃です。 「上の子を抱えつつの治療は大変ですが、逆に幼稚園などで時間制限があると余計に難しいはず。さらに不妊の疑いがあるなら1歳でも若いうちに治療を受けたほうがいい。だから万全の体制が作れるクリニックを探して早めに治療を進めて! 2人目にチャレンジする方にはそう伝えたいです」 From Doctor 治療を振り返って 「1人目の人も2人目の人も通える環境を目指しました」 父の代では、ここに小児科と産婦人科を併設していたのですが、私が継いでから不妊治療をされる方も通院されるようになり、小さいお子さんを連れた患者さんと不妊治療の患者さんが待ち合い室でいっしょになることがありました。そこで、不妊症や不育症の診療にも力を入れていくにあたって、1人目のお子さんができない方も、すでにお子さんがいらっしゃる方も気兼ねなく通えるよう、入口から分かれるような設計にしました。常時専任スタッフが2名いるので、お2人目を目指す方も安心して通ってくれています。 Mさんのように若くても原因不明で妊娠できない方は約3割くらいいらっしゃると言われています。2回目はタイミングから、という方もいますがMさんはご主人の合意も得たうえで体外受精をしたいとしっかりリクエストをいただいたので治療はとてもスムーズでした。時々、ご夫婦の意見がまとまらず、奥様のほうが板挟み状態のようになってしまう場合もあるので、ぜひお二人でしっかり話し合ったうえで治療を進めてほしいと思います。 先生のご紹介 秋山 芳晃 先生(秋山レディースクリニック) 東京慈恵会医科大学医学部卒。同大学付属病院産婦人科、美馬産婦人科院長を経て現職。妊孕性(妊娠する力)を守る力を訴え、体にやさしいホルモン治療、カウンセリング療法、抗酸化食事療法等を積極的に啓蒙。 ≫ 秋山レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 上の子のケア、金銭面の両立が難しい「2人目の不妊治療」。託児所付きクリニックに救われました。 第1子を抱えながら2人目の治療をするには、1人目の治療とは違った悩みや問題が生じます。「秋山レディースクリニック」のサポートで2人目を授かったMさんの妊娠までのストーリー。 自分主導のタイミング療法に限界を感じて… 取材当日、1歳9カ月になる女の子と少し膨らみが目立ち始めたお腹で迎えてくれたMさん。ちょうど妊娠5カ月を経過したところです。 26歳という世間では適齢期と言われる年齢で結婚をしたMさん。お母様がMさんを産んだのが26歳だったので「結婚したらすぐにでも赤ちゃんが欲しい!」そう思ったものの、生理不順だったり、基礎体温がガタガタだったり…。なんとなく自分は妊娠しにくいのかも、そんな予感がしていたと言います。そこで、当時の家から近い不妊治療専門のクリニックを訪ねたところ、まずはタイミング療法をすすめられ始めてみることに。基本的にご主人のNさんは協力的な方だそうですが、「主人を夜中に無理矢理起こして“疲れているから…”と断られることもあり、だんだん喧嘩になることも増えて…。回を重ねるごとに気分的に追い詰められていきました」。タイミング療法を始めて10回。限界を感じたことと、気分転換も兼ね、Mさんはもう少し遠い都心のクリニックへの転院を決めました。 「原因不明の不妊」と診断され一気に顕微授精へ 転院したクリニックで一通りの検査を受けた結果では特定できるような疾患はなく「あえて言うならホルモンバランスが崩れている、排卵が遅い」ということでした。先生からは「あなたのような若い年齢の場合、この結果からはわからない何らかの原因があるはず。体外受精がいいでしょう」とはっきり言われたそうです。 まさか一気に体外受精をすすめられるとは…心の準備がなかったMさん。「え? 私って不妊なの?原因がわからないってどういうこと?」まさかの展開に驚き、その場で泣いてしまったそうです。 しかし、テキパキとしてとても決断力のあるMさん。「とにかく今やれることはやってみよう、タイミングのストレスを重ねるより体外受精に踏み切ったほうがいいのかも」と前向きに捉え、ご主人の合意も得ました。 体外受精にあたり、ご主人も採精の協力をしてくれましたが、病院から「精子の運動率が悪いので“顕微授精”にしましょう」との提案。次々と起こる展開にMさんご夫婦は戸惑いますが、走り出した以上は任せるしかありません。Mさんからは3個の卵子が採取できました。そして胚盤胞まで育った凍結胚を戻したところ、無事に妊娠! 短い期間に一気に物事が展開していったものの、先生を信じ、早い時期に結果が出たことに夫婦で喜び合ったそうです。 その後の妊娠期間はとても順調に進みました。ところが、いざ出産の日。赤ちゃんはなかなか出てこず、吸引、鉗子分娩へ。Mさんが疲れて寝てしまい目が覚めたとき、赤ちゃんは隣にはいませんでした。なんと、仮死状態で生まれた赤ちゃんは緊急で大学病院へ搬送されていたのです。「順調に進んでいた妊娠の最後にこんなことが待っているなんて…ショックでしたが、ここで主人がすごく頑張ってくれました。毎日娘の病院に行って写真を撮って私に見せてくれました。突然の展開で主人も記憶がないくらいだと言っています」。その後赤ちゃんは順調に回復。3週間後ようやく退院し、3人での生活がスタートしました。 2人目の治療は託児所のある「秋山レディースクリニックへ」 母乳育児をしたかったというMさん。1年は子育てに専念すると決めていたそうですが、きょうだいはどうしてもつくってあげたいとの思いがありました。というのも、Mさんは4人きょうだいの一番上のお姉さん。3人の弟がいます。自分が子どものころは喧嘩したり大変だったけれど、大人になった今はきょうだいのありがたさを感じ、そして何より4人を育てたお母さまへの尊敬の気持ちがあるそうです。 のんびりしていたら自分の出産の確率がどんどん落ちてしまうかも、とも考えMさんは次の出産の準備を始めます。ところがここで待っていたのが、通院中、上の子をどこに預けるか…という問題。なぜなら、最初に妊娠できたクリニックは「子連れNG」だったからです。「確かに自分が1人も授かっていなかったら、子連れで治療に来る人にはいい気持ちがしなかったと思います。“1人いるからいいじゃない”って。でも、1人産んで子どもの可愛さがわかったからこそ、なんとしてでももう1人欲しいという想いもあるんですよね…」。 前のクリニックへの未練もありつつ、致し方なくもう一度病院を探し始めたMさんは、インターネットで託児所がある「秋山レディースクリニック」の存在を知ります。「もう、私にはここしかない!! と思いました」。すぐに予約を入れ、カウンセリングへ。今までの経緯と事情、Mさんのすぐに体外受精をしてほしいという申し出を理解してくれたこと、何より広くきれいな託児ルームがあること、Mさんの2人目への想いが叶えられそうな場所が見つかりました。 早速、体外受精がスタート。採卵する前の受診で秋山先生に初対面。「いい意味で程よい距離感をもってくださる先生で安心できました」とMさん。上のお子さんも診療中は喜んでキッズルームで遊んでくれていたそう。そして今回は9個採卵でき、うち5個受精できたそうですが、1回目の移植では残念ながら陰性でした。 次がダメならしばらく見送ろう覚悟を決めた2度目の移植 専業主婦のMさん。この治療にあたっては自分の貯金を崩しながら臨んでいたそうです。「上の子でもお金がかかり、さらに自分の不妊治療。気持ちだけは意気込んでいても、やりくりするのは大変だと痛感し始めました。このまま続けていたら治療貧乏になっちゃうなって…。あくまでも“予定は未定”なんですよね」。そこで、「次の移植で妊娠できなかったらいったん治療はお休みしよう」と見切りをつけることにしたそうです。またお金を貯めたらスタートしよう、そう覚悟を決めて臨んだ2回目の移植。結果は嬉しい嬉しい2度目の妊娠でした。 「次はうまくいかなくても仕方がないと覚悟を決めていましたが、移植の日以外の受診日には子どもを預けて受診できる体制が整っていて、安心して通院できたのが本当に良かったです」とMさん。第2子が生まれる来年を待ちわびている今日この頃です。 「上の子を抱えつつの治療は大変ですが、逆に幼稚園などで時間制限があると余計に難しいはず。さらに不妊の疑いがあるなら1歳でも若いうちに治療を受けたほうがいい。だから万全の体制が作れるクリニックを探して早めに治療を進めて! 2人目にチャレンジする方にはそう伝えたいです」 From Doctor 治療を振り返って 「1人目の人も2人目の人も通える環境を目指しました」 父の代では、ここに小児科と産婦人科を併設していたのですが、私が継いでから不妊治療をされる方も通院されるようになり、小さいお子さんを連れた患者さんと不妊治療の患者さんが待ち合い室でいっしょになることがありました。そこで、不妊症や不育症の診療にも力を入れていくにあたって、1人目のお子さんができない方も、すでにお子さんがいらっしゃる方も気兼ねなく通えるよう、入口から分かれるような設計にしました。常時専任スタッフが2名いるので、お2人目を目指す方も安心して通ってくれています。 Mさんのように若くても原因不明で妊娠できない方は約3割くらいいらっしゃると言われています。2回目はタイミングから、という方もいますがMさんはご主人の合意も得たうえで体外受精をしたいとしっかりリクエストをいただいたので治療はとてもスムーズでした。時々、ご夫婦の意見がまとまらず、奥様のほうが板挟み状態のようになってしまう場合もあるので、ぜひお二人でしっかり話し合ったうえで治療を進めてほしいと思います。 先生のご紹介 秋山 芳晃 先生(秋山レディースクリニック) 東京慈恵会医科大学医学部卒。同大学付属病院産婦人科、美馬産婦人科院長を経て現職。妊孕性(妊娠する力)を守る力を訴え、体にやさしいホルモン治療、カウンセリング療法、抗酸化食事療法等を積極的に啓蒙。 ≫ 秋山レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.10
コラム 不妊治療
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夫と二人で歩いて行く道を選ぶまで
仕事と不妊治療、どっちも中途半端な生活。「子どもがいないと不幸なの?」立ち止まり、自分の心の声を聞いて気づいたこと。 子どもが好き、でも仕事も大好き!「出産」と「キャリア」の両立が難しい時代、女性として一人の人間として選んだのは子どもがいない夫婦での生活でした。 仕事大好き人間だった私。子は自然に授かると信じ— その快活で聡明な話しぶりからわかるお人柄。誰もが心許し、ホッとする「姉」のような包容力と笑顔。それが今回の主人公、阿部博美さん(50代)の第一印象です。「多くの方に私たち夫婦が20年前に選択したような人生があることも知っていただきたくて」。 阿部さんはビジネスパートナーの女性と共に「女性目線」を大切にした企業マーケティング会社を経営。「女性ターゲットのモノやコトを売る会社でも、いまだに重要ポストにいるのは男性ばかり。私が30代の頃は今以上に男性社会。あの時、私の周りに女性がいたら人生は少しだけ変わっていたかもしれませんー」。 マスコミの人材派遣部門で企業と人をつなぐ仕事に情熱を燃やしていた若き日の阿部さん。営業として男性に交じり、がむしゃらに働いていました。30歳でご主人のNさんと結婚。転職したばかりということもあり、その頃が仕事にプライベートに最も多忙だった時期だといいます。 「私も夫も子どもは大好き。当たり前のように妊娠すると思っていたのですが、気がつけば3年経っていました」 医者である阿部さんの実兄から「一度調べてみては」とアドバイスを受けても「はぁ? 何言ってるの、と。でも『35歳はマルコー(高齢出産)だぞ』という言葉に押されて。当時は24歳はクリスマスイブ、それ以降は売れ残りなんて言われていた時代なんですから、失礼しちゃう」と笑います。結局はしぶしぶといった感じで会社の近くにある婦人科へ行くことになりました。まだこの時は自分にとって大きな問題と思っていなかったのです。 周囲に相談できぬまま仕事の合間に通院 「まず夫婦ともに検査をしましたが不妊の原因は不明、と。ここに行き着くまでに半年かかったことに本当に驚きました」。仕事大好き人間だった阿部さんにとって、検査だけでも時間を作るのは一苦労です。「外回り営業の合間を縫って病院へ行き、長い待ち時間を経て診察…その繰り返し。しかも会社の上司と同僚は男性と独身女性ばかりで、そんななか不妊治療を始めたなんてとても言い出せる雰囲気ではありませんでした」。誰にも吐き出せず、夫婦だけで耐えるしかなかった時期。初めての人工授精にトライするも撃沈。落ち込む阿部さんは、担当看護師のかける「たった1回で何言ってるの。そんな暗い声出して落ち込まないの」という言葉に深く傷つきました。 もうここにはいられない! 阿部さんはすぐにH病院に転院し、新たな環境で治療をはじめました。それでもまだ不妊治療に本腰を入れられなかった阿部さん。「仕事を休んでまで治療するという生活が考えられず、つい片手間で病院通いをしていましたね」と当時を振り返ります。 H病院では人工授精を3~4回行いましたが思うような結果は出ませんでした。「仕事のやりくりをし、病院で検査、その後3時間待ったのに『明日また来て』だなんて、エーッ! て。不妊治療にどんどん時間を取られるようになり、ストレスも溜まる一方でした」。 当時は不妊治療の情報も少なく、同じ境遇の人がどのような治療をどれだけの期間受けているのか知る由もありませんでした。「今となると、3年の不妊治療なんて短いかもしれない。でも私にとっては長くつらかった」と阿部さん。 なぜ男性の同僚はこんな思いをせず、バリバリと仕事に集中できるのか。周りに言えずなぜコソコソと不妊治療をしなければならないのか。営業先で既婚とわかると必ず聞かれる「お子さんは?」という無神経な質問に、涙した夜もありました。 医師からステップアップの提案を受け、阿部さんは体外受精にチャレンジすることに。承諾書や戸籍謄本など多くの書類を用意し、さあ後は3日の有給を取るばかりという時に、阿部さんは立ち止まり、心の声に耳を澄ませました。 “子どもがいない私は不幸な人間なの?” 体外受精とは、医師の手で精子を選び受精させること。阿部さんは「命に人の手が介入すること」に最後の最後になって納得がいかなかったと言います。そしてなぜ自分が「子ども」にこだわっていたのか気づいたのです。 「私は28歳で母を亡くしました。だから母のためにどうしても命を、母の血を繋いで行きたいという思いに無意識にがんじがらめになっていたのだと思います。もちろん子どもは好きです。でも子どもが欲しいのはそんな母への義務感だったのかもしれないと思い直したのです」。 血が繋がらない子どもたちも私たち日本の「未来の希望」 日々苦しい思いで治療をしている今の自分の姿を見て、亡き母は喜ぶだろうか…。体外受精をキャンセルし、今後の治療について迷っていたある日、義母から「不妊治療まだやっているの?」と尋ねられました。 「実はもうやめようかと…」すると義母は「もう、やめてしまいなさい」とピシャリ。 実は、不妊治療の特集記事が地元の新聞で連載されており、それを毎回読んでいた義母は「不妊治療は女性にとってこんなに大変なものなのか」と驚き、阿部さんの身を案じていたのだそう。 「大変だったでしょ、もうやらなくていいんだよ」 その瞬間、スッと肩の荷が下りたといいます。 「義母には感謝しかありません。治療をやめて体の負担はなくなっても、心は傷ついたままでした。治療をやめた後すぐ、36歳くらいが一番つらかったかな。次々と出産する同僚や友人たちを見ていられなくて。素直におめでとうと言えるようになったのは40歳になって今の会社を立ち上げ、しばらくしてからでしたね」と赤裸々に語ります。 「子どもがいない私と同じくらい、仕事で接する子持ちのママたちも苦労している。自分だけがつらいわけじゃないんだなって」。子どものいる生活を羨ましがるヒマがあればひとつでもいい仕事をして、世の中の役に立ってやろうと、さらに仕事への意欲は燃え上がりました。子育てしながらでもできる仕事を紹介して、企業だけでなくママたちの子育てをサポートできる、つまり「血が繋がっていなくても子育てしているのと同じ」と阿部さんは笑います。 子どものいる人を羨ましがるのはやめて、子どもがいなくて羨ましいと思われる夫婦になろう、と心がけているというお二人。「仕事のあと待ち合わせて一緒に帰ったり、週末はそのまま旅行に行くこともあります。二人の趣味が管弦楽なので、たまに一緒に練習することもあるんですよ」と、穏やかな暮らしを楽しんでいます。 「老後が寂しいのは子どもがいても巣立てば同じこと。動けなくなったらコレクティブハウスに入るのもいい」とご主人と話し合っているとか。 「子どもがいない人は身軽だからこそできる役割がある。子どもは日本の未来。それぞれの生き方で子どもの成長を見守っていける寛容な世の中であってほしいですね」 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 仕事と不妊治療、どっちも中途半端な生活。「子どもがいないと不幸なの?」立ち止まり、自分の心の声を聞いて気づいたこと。 子どもが好き、でも仕事も大好き!「出産」と「キャリア」の両立が難しい時代、女性として一人の人間として選んだのは子どもがいない夫婦での生活でした。 仕事大好き人間だった私。子は自然に授かると信じ— その快活で聡明な話しぶりからわかるお人柄。誰もが心許し、ホッとする「姉」のような包容力と笑顔。それが今回の主人公、阿部博美さん(50代)の第一印象です。「多くの方に私たち夫婦が20年前に選択したような人生があることも知っていただきたくて」。 阿部さんはビジネスパートナーの女性と共に「女性目線」を大切にした企業マーケティング会社を経営。「女性ターゲットのモノやコトを売る会社でも、いまだに重要ポストにいるのは男性ばかり。私が30代の頃は今以上に男性社会。あの時、私の周りに女性がいたら人生は少しだけ変わっていたかもしれませんー」。 マスコミの人材派遣部門で企業と人をつなぐ仕事に情熱を燃やしていた若き日の阿部さん。営業として男性に交じり、がむしゃらに働いていました。30歳でご主人のNさんと結婚。転職したばかりということもあり、その頃が仕事にプライベートに最も多忙だった時期だといいます。 「私も夫も子どもは大好き。当たり前のように妊娠すると思っていたのですが、気がつけば3年経っていました」 医者である阿部さんの実兄から「一度調べてみては」とアドバイスを受けても「はぁ? 何言ってるの、と。でも『35歳はマルコー(高齢出産)だぞ』という言葉に押されて。当時は24歳はクリスマスイブ、それ以降は売れ残りなんて言われていた時代なんですから、失礼しちゃう」と笑います。結局はしぶしぶといった感じで会社の近くにある婦人科へ行くことになりました。まだこの時は自分にとって大きな問題と思っていなかったのです。 周囲に相談できぬまま仕事の合間に通院 「まず夫婦ともに検査をしましたが不妊の原因は不明、と。ここに行き着くまでに半年かかったことに本当に驚きました」。仕事大好き人間だった阿部さんにとって、検査だけでも時間を作るのは一苦労です。「外回り営業の合間を縫って病院へ行き、長い待ち時間を経て診察…その繰り返し。しかも会社の上司と同僚は男性と独身女性ばかりで、そんななか不妊治療を始めたなんてとても言い出せる雰囲気ではありませんでした」。誰にも吐き出せず、夫婦だけで耐えるしかなかった時期。初めての人工授精にトライするも撃沈。落ち込む阿部さんは、担当看護師のかける「たった1回で何言ってるの。そんな暗い声出して落ち込まないの」という言葉に深く傷つきました。 もうここにはいられない! 阿部さんはすぐにH病院に転院し、新たな環境で治療をはじめました。それでもまだ不妊治療に本腰を入れられなかった阿部さん。「仕事を休んでまで治療するという生活が考えられず、つい片手間で病院通いをしていましたね」と当時を振り返ります。 H病院では人工授精を3~4回行いましたが思うような結果は出ませんでした。「仕事のやりくりをし、病院で検査、その後3時間待ったのに『明日また来て』だなんて、エーッ! て。不妊治療にどんどん時間を取られるようになり、ストレスも溜まる一方でした」。 当時は不妊治療の情報も少なく、同じ境遇の人がどのような治療をどれだけの期間受けているのか知る由もありませんでした。「今となると、3年の不妊治療なんて短いかもしれない。でも私にとっては長くつらかった」と阿部さん。 なぜ男性の同僚はこんな思いをせず、バリバリと仕事に集中できるのか。周りに言えずなぜコソコソと不妊治療をしなければならないのか。営業先で既婚とわかると必ず聞かれる「お子さんは?」という無神経な質問に、涙した夜もありました。 医師からステップアップの提案を受け、阿部さんは体外受精にチャレンジすることに。承諾書や戸籍謄本など多くの書類を用意し、さあ後は3日の有給を取るばかりという時に、阿部さんは立ち止まり、心の声に耳を澄ませました。 “子どもがいない私は不幸な人間なの?” 体外受精とは、医師の手で精子を選び受精させること。阿部さんは「命に人の手が介入すること」に最後の最後になって納得がいかなかったと言います。そしてなぜ自分が「子ども」にこだわっていたのか気づいたのです。 「私は28歳で母を亡くしました。だから母のためにどうしても命を、母の血を繋いで行きたいという思いに無意識にがんじがらめになっていたのだと思います。もちろん子どもは好きです。でも子どもが欲しいのはそんな母への義務感だったのかもしれないと思い直したのです」。 血が繋がらない子どもたちも私たち日本の「未来の希望」 日々苦しい思いで治療をしている今の自分の姿を見て、亡き母は喜ぶだろうか…。体外受精をキャンセルし、今後の治療について迷っていたある日、義母から「不妊治療まだやっているの?」と尋ねられました。 「実はもうやめようかと…」すると義母は「もう、やめてしまいなさい」とピシャリ。 実は、不妊治療の特集記事が地元の新聞で連載されており、それを毎回読んでいた義母は「不妊治療は女性にとってこんなに大変なものなのか」と驚き、阿部さんの身を案じていたのだそう。 「大変だったでしょ、もうやらなくていいんだよ」 その瞬間、スッと肩の荷が下りたといいます。 「義母には感謝しかありません。治療をやめて体の負担はなくなっても、心は傷ついたままでした。治療をやめた後すぐ、36歳くらいが一番つらかったかな。次々と出産する同僚や友人たちを見ていられなくて。素直におめでとうと言えるようになったのは40歳になって今の会社を立ち上げ、しばらくしてからでしたね」と赤裸々に語ります。 「子どもがいない私と同じくらい、仕事で接する子持ちのママたちも苦労している。自分だけがつらいわけじゃないんだなって」。子どものいる生活を羨ましがるヒマがあればひとつでもいい仕事をして、世の中の役に立ってやろうと、さらに仕事への意欲は燃え上がりました。子育てしながらでもできる仕事を紹介して、企業だけでなくママたちの子育てをサポートできる、つまり「血が繋がっていなくても子育てしているのと同じ」と阿部さんは笑います。 子どものいる人を羨ましがるのはやめて、子どもがいなくて羨ましいと思われる夫婦になろう、と心がけているというお二人。「仕事のあと待ち合わせて一緒に帰ったり、週末はそのまま旅行に行くこともあります。二人の趣味が管弦楽なので、たまに一緒に練習することもあるんですよ」と、穏やかな暮らしを楽しんでいます。 「老後が寂しいのは子どもがいても巣立てば同じこと。動けなくなったらコレクティブハウスに入るのもいい」とご主人と話し合っているとか。 「子どもがいない人は身軽だからこそできる役割がある。子どもは日本の未来。それぞれの生き方で子どもの成長を見守っていける寛容な世の中であってほしいですね」 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.10
コラム 不妊治療
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転院を決意させてくれた同級生の助言に感謝
不妊治療の卒業を視野に入れつつ最後のつもりで臨んだ3回目の移植。ついに、貴重な命を授かりました。—— 。 書家としての仕事に夢中で、慌しく過ぎ去った新婚時代。うまくいかないことすべてが自分のせいのように思えて思い悩むこともあった不妊治療期間。この10年間を振り返るマキさんは今、最高の笑顔です。 仕事が楽しくて楽しくて。国内外を飛び回る生活 日々アトリエで作品を制作し、時には出張してパフォーマンスを行うこともある、書家のマキさん。6年間頑張った不妊治療の結果、今、彼女のお腹は少しずつふくらみ始めています。 書のクリエイターとして広告会社に勤めていたマキさんは、仕事を通じて出会った今のご主人と29歳の時にご結婚されました。もともと子どもが好きで、いずれは自分の子どもをもちたいな…という思いはあったそうですが、当時はちょうど仕事にのめり込んでいた時期。書のパフォーマンスを披露するため、国内はもとより遠くヨーロッパや中米などにまで出向く機会もあったそうです。妊娠した状態で大きな仕事を受けることへの心配もあり、常に仕事を優先し、子どもについては後回しの状態になっていたのだとか。 あっという間に結婚4年目を迎え、そろそろ子どもを…と望んだご夫妻でしたが、いざ欲しいとなるとなかなかすんなりとはいきません。すでに子どもをもつ同年代のご友人に「できない、できない」と相談していたところ、不妊治療をすすめられたのだそうです。 「原因がわかればきっとできるよ!」というご友人の言葉に背中を押され、34歳の時に初めて不妊治療専門のクリニックを訪れました。 いざ不妊治療開始!迷いながら自分と向き合う 揃って検査を受けたご夫妻に、不妊の原因はマキさんの「多嚢胞性卵巣症候群」にあるという診断が下りました。また、おそらく多忙な生活に由来するという女性ホルモンの乱れも指摘され、服薬による改善を図ることに。 専門医に診てもらったという事実ができ、さらに原因がわかったという安心が重なったことで、夫妻の胸に期待が膨らみましたが、あっという間に一年が経過。タイミング法、人工授精と試していきましたが、妊娠に結びつくことはありませんでした。 あまり後ろ向きにならないようにと心がけてきたマキさんでしたが、大きな期待と大きな落胆とを繰り返したことで、どうしても全部が自分のせいのような気がして、気が塞ぐこともありました。 また、当時勤めていた会社では書だけでなく経理や事務などもこなしていたため残業も多く、仕事と治療との両立にも神経を使いました。「業務より治療を優先してね」と言ってもらえる環境だったそうですが、忙しい時に一人だけ抜けるのは気が引けてしまいなかなかできません。また、タバコの副流煙にさらされる環境も自分の体にいいとは思えず思い悩みました。考え抜いた末、書道だけをマイペースでやっていくことに決め、不妊治療を始めて1年後に退職。書家として独立することに。 それでもなかなかうまくいかない状況に、子どもをもたないという選択肢についてもご主人とたびたび話し合ったそうです。身近に、夫婦二人だけの暮らしを楽しみながら歳を重ねているご夫婦がいらっしゃったこともあり、マキさんの中にはそういう人生もいいものだと感じる気持ちもありました。 一方のご主人は子どもをもちたいという思いが非常に強く「二人の遺伝子を残さなくていいの? まだまだ頑張ろうよ」と声をかけ続けてくれたそうです。 ですが主治医から「次は体外受精に進みましょうか」という話が出た段階で、マキさんはこのままステップアップすることにためらいを感じました。自分で注射を打つなんて、怖い。 そんな自分の感覚を大切にして、病院での治療は少しお休みをすることに。しばらくは、自分たち自身でできることに重点を置くようにしました。 いいと聞いたことは片っ端からトライしてみました。気功を始めたり、体温を上げるために体にいいスパイスがあると聞いて遠く沖縄から取り寄せてみたり、白湯を飲むことを毎朝の日課にしたり、体が硬いのでストレッチに励んだり。それは、これまで食事や生活リズムを顧みずにがむしゃらに仕事をしてきたマキさんが、初めて自分の体と真正面から向き合った大切な時間でした。 同級生の経験談に心が動き思い切って転院を決意 そんな時同窓会で、あるご友人と再会したことでマキさんに転機が訪れました。彼女は13年にわたる不妊治療を経て待望の第一子を授かったばかり。主治医の「医療法人IVF詠田クリニック」詠田医師は、患者の心に寄り添い、彼女と一緒に涙を流してくれたほど、思いやりの深い先生だったそうです。 彼女の話にマキさんは心を動かされました。怖いと思っていた注射のことについても「私も経験したけど大丈夫、何も心配ないよ」と励まされ、心がほぐれたのだそう。 その後も「本当にいい病院だから、マキちゃんも行ってみなよ!」という彼女の言葉が心に残り、私もその先生にお願いしたい…と、転院を決意。 転院後、詠田医師は前の病院の資料も読み込んだうえで、さらに詳細な造影検査などを行い、多嚢胞性卵巣症候群以外にマキさんの卵管にも問題があること、また子宮の筋肉が発達しすぎて潰れたような状態にあることを突き止めます。 ですが「まず子宮をほぐしていきましょう。少し時間はかかるけれど、大丈夫!」と太鼓判を押してもらえ、胸をなでおろしました。 指示に従って子宮をほぐす薬を服薬してみたところ、3カ月で子宮はふっくらとした姿に。卵子の質も良くなり、そこで初めて採卵を行いました。その時採れた卵子のうちの一つが今、マキさんのお腹に宿っている命の元となったのです。 書をしたためる際には、直感を大切にひと息で仕上げるマキさん。伝統的な書のみならず企業ロゴ、墨絵など多岐にわたるお仕事を手がけられていらっしゃいます。どの作品にも誠実なお人柄が表れ、見入ってしまいます これで最後と決めていた3回目の移植で妊娠 詠田医師のもとでご夫妻は二度の移植にトライしましたが、残念ながらいい結果は出ませんでした。そして、三度目となる移植の日を迎える前にマキさんは「次を最後に、不妊治療を卒業しよう」と決意したそうです。 ご主人はこの先も諦めずに頑張ろうよ、と言ってくれましたが、40という年齢を考えるとキリがいいし、今後は今以上に良い卵が採れる見込みも薄い。また、ちょうど助成金の申請回数が上限に達する区切りの回でもありました。 それに当時、特に大きなストレスもなくゆったりと暮らしていたことから「今これだけ条件が整っている状態で頑張ってダメだったら、もう諦めてもいいかなって」。新しい命がやってきたのは、自分自身で線引きを決めていたその劇的なタイミングでした。 不妊治療だとかなり早い段階で妊娠がわかるため、妊娠初期には1日1日が過ぎるのが本当に長く感じたそうです。ですがその時期もすでに終わり、取材時には妊娠4カ月とちょっと。目下、順風満帆の妊娠生活を送るマキさんは今、ご自身の不妊治療のターニングポイントは転院にあったと振り返ります。 「転院というと、なんだか前の先生に悪いような気がして、やってはいけないことのように感じていました。でも、私の場合は転院して本当に良かったと思っています。もし今不妊治療をなさっていて、転院するかどうか迷っていらっしゃる方がいらしたら、一度思い切って他の病院にかかってみてもいいのではと、私は思いますよ」 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 不妊治療の卒業を視野に入れつつ最後のつもりで臨んだ3回目の移植。ついに、貴重な命を授かりました。—— 。 書家としての仕事に夢中で、慌しく過ぎ去った新婚時代。うまくいかないことすべてが自分のせいのように思えて思い悩むこともあった不妊治療期間。この10年間を振り返るマキさんは今、最高の笑顔です。 仕事が楽しくて楽しくて。国内外を飛び回る生活 日々アトリエで作品を制作し、時には出張してパフォーマンスを行うこともある、書家のマキさん。6年間頑張った不妊治療の結果、今、彼女のお腹は少しずつふくらみ始めています。 書のクリエイターとして広告会社に勤めていたマキさんは、仕事を通じて出会った今のご主人と29歳の時にご結婚されました。もともと子どもが好きで、いずれは自分の子どもをもちたいな…という思いはあったそうですが、当時はちょうど仕事にのめり込んでいた時期。書のパフォーマンスを披露するため、国内はもとより遠くヨーロッパや中米などにまで出向く機会もあったそうです。妊娠した状態で大きな仕事を受けることへの心配もあり、常に仕事を優先し、子どもについては後回しの状態になっていたのだとか。 あっという間に結婚4年目を迎え、そろそろ子どもを…と望んだご夫妻でしたが、いざ欲しいとなるとなかなかすんなりとはいきません。すでに子どもをもつ同年代のご友人に「できない、できない」と相談していたところ、不妊治療をすすめられたのだそうです。 「原因がわかればきっとできるよ!」というご友人の言葉に背中を押され、34歳の時に初めて不妊治療専門のクリニックを訪れました。 いざ不妊治療開始!迷いながら自分と向き合う 揃って検査を受けたご夫妻に、不妊の原因はマキさんの「多嚢胞性卵巣症候群」にあるという診断が下りました。また、おそらく多忙な生活に由来するという女性ホルモンの乱れも指摘され、服薬による改善を図ることに。 専門医に診てもらったという事実ができ、さらに原因がわかったという安心が重なったことで、夫妻の胸に期待が膨らみましたが、あっという間に一年が経過。タイミング法、人工授精と試していきましたが、妊娠に結びつくことはありませんでした。 あまり後ろ向きにならないようにと心がけてきたマキさんでしたが、大きな期待と大きな落胆とを繰り返したことで、どうしても全部が自分のせいのような気がして、気が塞ぐこともありました。 また、当時勤めていた会社では書だけでなく経理や事務などもこなしていたため残業も多く、仕事と治療との両立にも神経を使いました。「業務より治療を優先してね」と言ってもらえる環境だったそうですが、忙しい時に一人だけ抜けるのは気が引けてしまいなかなかできません。また、タバコの副流煙にさらされる環境も自分の体にいいとは思えず思い悩みました。考え抜いた末、書道だけをマイペースでやっていくことに決め、不妊治療を始めて1年後に退職。書家として独立することに。 それでもなかなかうまくいかない状況に、子どもをもたないという選択肢についてもご主人とたびたび話し合ったそうです。身近に、夫婦二人だけの暮らしを楽しみながら歳を重ねているご夫婦がいらっしゃったこともあり、マキさんの中にはそういう人生もいいものだと感じる気持ちもありました。 一方のご主人は子どもをもちたいという思いが非常に強く「二人の遺伝子を残さなくていいの? まだまだ頑張ろうよ」と声をかけ続けてくれたそうです。 ですが主治医から「次は体外受精に進みましょうか」という話が出た段階で、マキさんはこのままステップアップすることにためらいを感じました。自分で注射を打つなんて、怖い。 そんな自分の感覚を大切にして、病院での治療は少しお休みをすることに。しばらくは、自分たち自身でできることに重点を置くようにしました。 いいと聞いたことは片っ端からトライしてみました。気功を始めたり、体温を上げるために体にいいスパイスがあると聞いて遠く沖縄から取り寄せてみたり、白湯を飲むことを毎朝の日課にしたり、体が硬いのでストレッチに励んだり。それは、これまで食事や生活リズムを顧みずにがむしゃらに仕事をしてきたマキさんが、初めて自分の体と真正面から向き合った大切な時間でした。 同級生の経験談に心が動き思い切って転院を決意 そんな時同窓会で、あるご友人と再会したことでマキさんに転機が訪れました。彼女は13年にわたる不妊治療を経て待望の第一子を授かったばかり。主治医の「医療法人IVF詠田クリニック」詠田医師は、患者の心に寄り添い、彼女と一緒に涙を流してくれたほど、思いやりの深い先生だったそうです。 彼女の話にマキさんは心を動かされました。怖いと思っていた注射のことについても「私も経験したけど大丈夫、何も心配ないよ」と励まされ、心がほぐれたのだそう。 その後も「本当にいい病院だから、マキちゃんも行ってみなよ!」という彼女の言葉が心に残り、私もその先生にお願いしたい…と、転院を決意。 転院後、詠田医師は前の病院の資料も読み込んだうえで、さらに詳細な造影検査などを行い、多嚢胞性卵巣症候群以外にマキさんの卵管にも問題があること、また子宮の筋肉が発達しすぎて潰れたような状態にあることを突き止めます。 ですが「まず子宮をほぐしていきましょう。少し時間はかかるけれど、大丈夫!」と太鼓判を押してもらえ、胸をなでおろしました。 指示に従って子宮をほぐす薬を服薬してみたところ、3カ月で子宮はふっくらとした姿に。卵子の質も良くなり、そこで初めて採卵を行いました。その時採れた卵子のうちの一つが今、マキさんのお腹に宿っている命の元となったのです。 書をしたためる際には、直感を大切にひと息で仕上げるマキさん。伝統的な書のみならず企業ロゴ、墨絵など多岐にわたるお仕事を手がけられていらっしゃいます。どの作品にも誠実なお人柄が表れ、見入ってしまいます これで最後と決めていた3回目の移植で妊娠 詠田医師のもとでご夫妻は二度の移植にトライしましたが、残念ながらいい結果は出ませんでした。そして、三度目となる移植の日を迎える前にマキさんは「次を最後に、不妊治療を卒業しよう」と決意したそうです。 ご主人はこの先も諦めずに頑張ろうよ、と言ってくれましたが、40という年齢を考えるとキリがいいし、今後は今以上に良い卵が採れる見込みも薄い。また、ちょうど助成金の申請回数が上限に達する区切りの回でもありました。 それに当時、特に大きなストレスもなくゆったりと暮らしていたことから「今これだけ条件が整っている状態で頑張ってダメだったら、もう諦めてもいいかなって」。新しい命がやってきたのは、自分自身で線引きを決めていたその劇的なタイミングでした。 不妊治療だとかなり早い段階で妊娠がわかるため、妊娠初期には1日1日が過ぎるのが本当に長く感じたそうです。ですがその時期もすでに終わり、取材時には妊娠4カ月とちょっと。目下、順風満帆の妊娠生活を送るマキさんは今、ご自身の不妊治療のターニングポイントは転院にあったと振り返ります。 「転院というと、なんだか前の先生に悪いような気がして、やってはいけないことのように感じていました。でも、私の場合は転院して本当に良かったと思っています。もし今不妊治療をなさっていて、転院するかどうか迷っていらっしゃる方がいらしたら、一度思い切って他の病院にかかってみてもいいのではと、私は思いますよ」 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.10
コラム 不妊治療
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勇気を出して踏み出した一歩から急展開
若くても、身体的な原因が見つからなくても妊娠できない…。「ホルモンチェック」がきっかけで予想外の治療の道へ—— 。 偶然目にしたホルモン検査の広告から、加速度的に進んだ不妊治療。「自分で調べて悶々としているだけでは何も始まらない。とにかくクリニックへ行って良かった」妊娠に至った今、E・Sさんはそう振り返ります。 「早く赤ちゃんが欲しい」想いとは裏腹に妊娠できない 某企業の人事課に勤務しているというE・Sさん。取材に応じてくれたのはようやく産休に入ったばかりの日。大きくなったお腹を抱えながら対応してくれました。 仕事柄、社員が結婚して苗字が変わり、妊娠して休職して…そんな人生のドラマの一部を目の当たりにしてきたといいます。だから何となく自分も結婚したら1年くらいで妊娠するのかな…そんなふうに考えていました。 E・Sさんのご主人は2歳年下。自分の家族を大切にする、子どもが大好きな方なのだそうです。お二人は28歳、26歳という適齢期で結婚し、ご主人も「体に負担がかからない若いうちに赤ちゃんを…」と望んでいたそうですが、妊娠には至らず、入籍からいつしか約2年の月日が経過していました。 ネットでみつけた記事をきっかけにホルモン検査へ 一度不妊治療について考えたほうがいいのかな…そんなことを考えながら、パソコンでクリニックの検索をしていたある日、E・Sさんはたまたま東京・銀座の「はるねクリニック」で女性のホルモンチェックのプログラムがあることを知ります。 「銀座なら会社からでも通える距離。とりあえず私だけでも行ってみようと思って…」と検査を受けることにしました。 検査の結果は特に問題なし。その後、ご主人も精液検査を受けますが、こちらにも問題はありませんでした。 「年齢も若いから大丈夫、と言われてそのままタイミング法へと移行しました。クリニックに行くと次の予約を入れる形になり、あれよあれよという間に展開した感じです」 タイミング法では6周期チャレンジしたものの、なかなか結果には至りません。そのまま流れるように次は人工授精へ。 「このころからいよいよ医療行為が始まったという感覚。主人もいろいろ調べてくれたようで、“必要な時は仕事休むから”と前向きでした」 ところが、回を重ねても妊娠の兆候はありません。「私の体に問題があるわけでもなく、先生の指導の下、タイミングもベストなはずだからさすがに妊娠できると思っていたのに…。私って母親になる資格もないの?」 体には問題がない、でも全力を尽くしていても妊娠できない、これから治療が長引いて会社に迷惑をかけるのかも…。いろいろな思いが交錯し、だんだん気が滅入っていったE・Sさん。人工授精を6回繰り返した結果、先生からステップアップを勧められます。 今できることをやろう、体外受精へチャレンジ 走り出した不妊治療。ご主人とは「ここまできてやめてしまうのはもったいない。お金のことは考えず、できることを最優先しよう」と話し合ったそうです。この時、初めて会社の上司にも報告。お子さんがいて子育てにも積極的な上司は「仕事のことは気にしなくていいよ」と理解してくれたそうです。 初めての採卵では3個採卵できましたが、そのうち1個は分割が止まってしまいました。チャンスは2回。1回目の移植、「今度こそは…」と期待が募りました。しかしながら判定日の先生の答えは「このまま生理がくると思いますよ」という言葉。残る1個がダメならまた怖い採卵かと思うとE・Sさんの気持ちは落ち込んでいく一方でした。このころご主人にも変化が。 「同じ時期くらいに結婚してすでに赤ちゃんがいるファミリーのホームパーティに呼ばれても、理由をつけて断っていたようなんです。きっと私が家で注射をしている姿を見たりして、彼自身も気が滅入っていたのでしょうね」 次の周期を待って再び移植。判定日を待てずにE・Sさんは自分で妊娠検査をしてみたところ陽性反応が。「今度こそは妊娠できたかも!」淡い期待を抱いて臨んだ判定日でしたが、またもや結果は陰性。 「先生も万全の態勢で臨んでくれているのにどうして? と思うと申し訳なくなって…。先生の前では泣けませんでした。でも、この日初めて主人の前で耐えきれず泣いてしまいました」 仕事はフルタイム、休日は吹奏楽の団体でクラリネットを演奏しているE・Sさん。気の重い不妊治療も仕事や趣味で気持ちを紛らわしてきた一方、ふと現実に戻り悲しみが襲うことも増えてきました。 また、自分がたまたま行ったホルモン検査がきっかけになり、体外受精にまで進んだ体験を包み隠さず友人に話していたE・Sさん。時には友人に「私は不妊治療のフルコースやってるわよ!」と冗談混じりにアドバイスもしていたそう。ところがその友人は1、2回の通院であっという間に妊娠。「普通、少し通えば妊娠できるんだ…」アドバイスをしていたのに置いて行かれてしまったような焦燥感も重なってきました。 想定外の不妊治療が夫婦の絆を深めてくれたのかも 2回目の採卵では10個の卵子を採卵、そして移植。判定を待っていた待合室で、何の偶然か珍しくお母さまから「元気?」とメッセージが。突然の電話に気持ちが高まった直後に担当の先生から「良かったわね!」と待ちに待った一言が! 「混乱して、主人よりも母に一番に報告したかもしれません(笑)」とE・Sさん。 判定直後から早々につわりが始まり、「会社でもドアから廊下に出たとたんに吐きそうになっていました。でも、妊娠は“自己都合”ですから。もっとつらい人もいるはずと思って乗り切りました」となんともプロフェッショナル。家へ帰ると倒れこむように寝込んでいたE・Sさんに、食事を作ってくれたり、買い物に行ってくれたりとご主人は全力でサポートしてくれたそうです。 その後、切迫流産にも見舞われ心配は尽きませんでしたが、戌の日を機にご主人のご両親にも報告ができました。 「不妊治療をせずに妊娠、出産した人にはできない体験や想いがあったことは決して無駄にはならなかったと思います。諦めずに、いつか自分たちを選んでくれる赤ちゃんが来ると信じてきてよかった。私たち夫婦にとって気持ちを確かめ合える良い機会だったと思います」 E・Sさん夫婦に赤ちゃんが誕生するのはもう間もなくです。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 若くても、身体的な原因が見つからなくても妊娠できない…。「ホルモンチェック」がきっかけで予想外の治療の道へ—— 。 偶然目にしたホルモン検査の広告から、加速度的に進んだ不妊治療。「自分で調べて悶々としているだけでは何も始まらない。とにかくクリニックへ行って良かった」妊娠に至った今、E・Sさんはそう振り返ります。 「早く赤ちゃんが欲しい」想いとは裏腹に妊娠できない 某企業の人事課に勤務しているというE・Sさん。取材に応じてくれたのはようやく産休に入ったばかりの日。大きくなったお腹を抱えながら対応してくれました。 仕事柄、社員が結婚して苗字が変わり、妊娠して休職して…そんな人生のドラマの一部を目の当たりにしてきたといいます。だから何となく自分も結婚したら1年くらいで妊娠するのかな…そんなふうに考えていました。 E・Sさんのご主人は2歳年下。自分の家族を大切にする、子どもが大好きな方なのだそうです。お二人は28歳、26歳という適齢期で結婚し、ご主人も「体に負担がかからない若いうちに赤ちゃんを…」と望んでいたそうですが、妊娠には至らず、入籍からいつしか約2年の月日が経過していました。 ネットでみつけた記事をきっかけにホルモン検査へ 一度不妊治療について考えたほうがいいのかな…そんなことを考えながら、パソコンでクリニックの検索をしていたある日、E・Sさんはたまたま東京・銀座の「はるねクリニック」で女性のホルモンチェックのプログラムがあることを知ります。 「銀座なら会社からでも通える距離。とりあえず私だけでも行ってみようと思って…」と検査を受けることにしました。 検査の結果は特に問題なし。その後、ご主人も精液検査を受けますが、こちらにも問題はありませんでした。 「年齢も若いから大丈夫、と言われてそのままタイミング法へと移行しました。クリニックに行くと次の予約を入れる形になり、あれよあれよという間に展開した感じです」 タイミング法では6周期チャレンジしたものの、なかなか結果には至りません。そのまま流れるように次は人工授精へ。 「このころからいよいよ医療行為が始まったという感覚。主人もいろいろ調べてくれたようで、“必要な時は仕事休むから”と前向きでした」 ところが、回を重ねても妊娠の兆候はありません。「私の体に問題があるわけでもなく、先生の指導の下、タイミングもベストなはずだからさすがに妊娠できると思っていたのに…。私って母親になる資格もないの?」 体には問題がない、でも全力を尽くしていても妊娠できない、これから治療が長引いて会社に迷惑をかけるのかも…。いろいろな思いが交錯し、だんだん気が滅入っていったE・Sさん。人工授精を6回繰り返した結果、先生からステップアップを勧められます。 今できることをやろう、体外受精へチャレンジ 走り出した不妊治療。ご主人とは「ここまできてやめてしまうのはもったいない。お金のことは考えず、できることを最優先しよう」と話し合ったそうです。この時、初めて会社の上司にも報告。お子さんがいて子育てにも積極的な上司は「仕事のことは気にしなくていいよ」と理解してくれたそうです。 初めての採卵では3個採卵できましたが、そのうち1個は分割が止まってしまいました。チャンスは2回。1回目の移植、「今度こそは…」と期待が募りました。しかしながら判定日の先生の答えは「このまま生理がくると思いますよ」という言葉。残る1個がダメならまた怖い採卵かと思うとE・Sさんの気持ちは落ち込んでいく一方でした。このころご主人にも変化が。 「同じ時期くらいに結婚してすでに赤ちゃんがいるファミリーのホームパーティに呼ばれても、理由をつけて断っていたようなんです。きっと私が家で注射をしている姿を見たりして、彼自身も気が滅入っていたのでしょうね」 次の周期を待って再び移植。判定日を待てずにE・Sさんは自分で妊娠検査をしてみたところ陽性反応が。「今度こそは妊娠できたかも!」淡い期待を抱いて臨んだ判定日でしたが、またもや結果は陰性。 「先生も万全の態勢で臨んでくれているのにどうして? と思うと申し訳なくなって…。先生の前では泣けませんでした。でも、この日初めて主人の前で耐えきれず泣いてしまいました」 仕事はフルタイム、休日は吹奏楽の団体でクラリネットを演奏しているE・Sさん。気の重い不妊治療も仕事や趣味で気持ちを紛らわしてきた一方、ふと現実に戻り悲しみが襲うことも増えてきました。 また、自分がたまたま行ったホルモン検査がきっかけになり、体外受精にまで進んだ体験を包み隠さず友人に話していたE・Sさん。時には友人に「私は不妊治療のフルコースやってるわよ!」と冗談混じりにアドバイスもしていたそう。ところがその友人は1、2回の通院であっという間に妊娠。「普通、少し通えば妊娠できるんだ…」アドバイスをしていたのに置いて行かれてしまったような焦燥感も重なってきました。 想定外の不妊治療が夫婦の絆を深めてくれたのかも 2回目の採卵では10個の卵子を採卵、そして移植。判定を待っていた待合室で、何の偶然か珍しくお母さまから「元気?」とメッセージが。突然の電話に気持ちが高まった直後に担当の先生から「良かったわね!」と待ちに待った一言が! 「混乱して、主人よりも母に一番に報告したかもしれません(笑)」とE・Sさん。 判定直後から早々につわりが始まり、「会社でもドアから廊下に出たとたんに吐きそうになっていました。でも、妊娠は“自己都合”ですから。もっとつらい人もいるはずと思って乗り切りました」となんともプロフェッショナル。家へ帰ると倒れこむように寝込んでいたE・Sさんに、食事を作ってくれたり、買い物に行ってくれたりとご主人は全力でサポートしてくれたそうです。 その後、切迫流産にも見舞われ心配は尽きませんでしたが、戌の日を機にご主人のご両親にも報告ができました。 「不妊治療をせずに妊娠、出産した人にはできない体験や想いがあったことは決して無駄にはならなかったと思います。諦めずに、いつか自分たちを選んでくれる赤ちゃんが来ると信じてきてよかった。私たち夫婦にとって気持ちを確かめ合える良い機会だったと思います」 E・Sさん夫婦に赤ちゃんが誕生するのはもう間もなくです。 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.10
コラム 不妊治療
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胚盤胞のグレードについて
にこさん(34歳)胚盤胞のグレードについて教えてください。 アルファベットがabcの順番に良いのはわかりますが、数字は3よりも4、4よりも5、5よりも6という風に良いと考えられるのでしょうか? 初めての採卵で取れた胚盤胞が6ばかりでアルファベットはあまり良くはなく、心配しています。 渡辺 由美子 先生 (醍醐渡辺クリニック) 兵庫医科大学卒業。同大学附属病院、国立泉北病院、京都大学医学部附属病院、国立京都病院勤務を経て 醍醐渡辺クリニックで産婦人科医として勤務。同じ女性の患者様がリラックスして治療に臨めるような雰囲気作りを日々心がけているという渡辺先生。休日は本を読んだり、映画を観たりとゆったり過ごされることが多いとのことです。 ≫ 醍醐渡辺クリニック胚盤胞になると胚盤胞腔ができはじめ、将来胎児になるところの内細胞塊(ICM)と胎盤などになる部分の栄養外胚葉(TE)が作られていきます。胚盤胞腔が徐々に拡張し透明帯がうすくなります、そして栄養外胚葉が透明帯から脱出し始め、やがて完全に脱出します。 その胚の状態をグレードとして、胚盤胞腔の広がりと孵化の程度を数字の1~6で、内細胞塊や栄養外胚葉の様子はアルファベットのA、B、Cで表します。 孵化の程度は 1:胚盤胞腔ができはじめた状態 2:胚盤胞腔が半分以上できた状態 3:胚盤胞腔が全体にある状態 4:胚盤胞腔が拡張し透明帯が薄くなっている状態 5:栄養外胚葉が透明帯から脱出しはじめている状態 6:胚芽透明帯から完全に脱出した状態 内細胞塊の評価は A:細胞数が多く密になっている B:細胞数が少なく、接着が粗い C:細胞数が少ない 栄養外肺葉の評価は A:細胞数が多く、互いに接着している B:細胞数が少なく、結合が粗い C:細胞数が少ない と表します。 これらを「胚盤胞腔の広がり、内細胞塊・栄養外胚葉」の並びでグレードとして表現します。例えば拡張良好胚盤胞は4AAと表記されますし、完全脱出で内細胞塊の細胞数がやや少なめで栄養外胚葉が少ない胚は6BCとなります。 数字はあくまでもそのときの胚の形を表しているので、どちらかというと重要なのはABCの方です。A>B>Cの順で良好の程度を表します。当院ではBBより良い胚を移植対象としていますが、なかなか胚自体が採れない場合などは、ご希望によってBCやCBも凍結保存します。 胚のグレードは誘発方法によっても変わり、同じ人でもコンディションによって変わると言われています。病院によって誘発方法も違うので、毎回悪いグレードが続くのであれば転院を検討するのもひとつの方法です。
2017.11.7
専門医Q&A 女性の健康
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人工授精で妊娠しないのは、卵胞に問題が?
人工授精で妊娠しないのは、卵胞に問題が? 2017/11/7 石田徳人先生(菊名西口医院 院長) 相談者:あいさん(33歳) クリニックに通って1年、現在人工授精をしています。この前、生理3日目で、卵胞が6ミリ、4ミリで、右2つ、左2つの合計4個でした。3日目にしてこの大きさと数は正常でしょうか? 生理3日目から5日間、レトロゾール®を服用するように言われました。ちなみにAMHは5.24あり、多嚢胞では? と思っています。 次、人工授精5回目でダメだったら、体外受精にステップアップしましょうと言われているので、あせっています。アドバイスをお願いします。 生理3日目での卵胞検査。この大きさ、数は正常ですか。 詳しいことが書かれていないので推測になりますが、たぶん超音波卵巣計測で卵胞の大きさや数を測られたのでしょう。体外受精の場合は生理3日目に測ることもありますが、人工授精の場合では、月経周期の安定した方なら、当院では生理10日目前後で測ります。念のため、さらに2,3日後に測ることもあります。ご相談者のあいさんは、人工授精で生理3日目に測られたとのこと。特別な事情が考えられますので、この時期に計測した意図を、一度担当医におたずねになってはいかがでしょうか。 AMH5.24で、多嚢胞ではないかとも疑っています。 2,3個見えるなどというのはよくあること。ネックレスサインも認められていないようですし、多嚢胞の疑いもないでしょう。 妊娠にまつわる情報は過剰気味ですが、体調次第で理屈どおりに進まないのが不妊治療の難しいところです。ちょっとしたストレスや風邪を引いた程度で月経周期が乱れたりするのは、多くの女性が経験されているのではないでしょうか。同じ人でも、毎回同じように排卵するとは限らないのです。卵子の数が少なくても、受精卵が少々いびつでも妊娠する人はいますし、若くて何も問題がないのになかなか妊娠しない人もいます。AMHも1つの目安で、妊娠率と必ずしも相関するわけではありません。診断されていなければ、「多嚢胞かもしれない」と心配しすぎでは? 疑問点は率直に担当医に伝えて、納得した医療を受けてくださいね。 次、5回目の人工授精後はステップアップすべきですか。 人工授精を3回以上しても妊娠しなかったらステップアップしましょう、というのはスタンダードだとは思いますが、こればかりはご本人のご希望しだいです。確かに効率を考えればステップアップした方が妊娠する確率も高くなり、より早く赤ちゃんに会えるかもしれませんが、治療を受けるのはご本人ですので、治療法もご自分で選ぶ権利があります。「あせっています」と書かれていますが、「もうしばらくはステップアップしたくない、人工授精を10回までやりたい」などのご要望がある場合は、きちんと担当医に伝えましょう。 当院は、余計な検査、余計な治療はできるだけ避け、なるべく自然な形で妊娠へと導きたいというのがポリシーですので、あいさんのお気持ちもよくわかります。当院では、排卵されている方なら40歳の方にも排卵誘発剤は使用しないようにしています。それぞれクリニックにもポリシーや治療方針があるので、段階的な治療プランについて担当医と相談してください。 石田先生より まとめ 検査の必要性、排卵誘発剤の必要性、なぜレトロゾール®が処方されたのかなど、疑問に思うことは遠慮せずに担当医にたずねましょう。妊娠はマニュアルどおりにはいかないので、数値にこだわり過ぎて惑わされないこと。あいさんは33歳で排卵もあり、自然妊娠の可能性も大いにあると思うので、夫婦間のスキンシップも大切にしましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 石田徳人先生(菊名西口医院 院長) 医学博士。母体保護法指定医。日本産婦人科学会専門医。日本生殖医学学会会員。日本受精着床学会会員。高度生殖技術研究所会員。男女生み分け研究会会員。平成2年金沢医科大学卒業、聖マリアンナ医科大学産婦人科入局。平成8年同大学大学院修了、カナダMcGill大学生殖医学研究室客員講師。平成9年聖マリアンナ医科大学産婦人科医長、平成13年菊名西口医院開院。産婦人科専門医として、特に不妊治療を専門とし、妊娠から出産後の育児まで女性の健康を幅広くサポート。不妊治療ではで極力自然妊娠につながるよう、高度な不妊治療(ART=生殖補助技術)には安易に頼らず、タイミング指導に力を入れている。日々の激務に備え、週数回は2時間のジョギングで体力づくり。座右の銘は、「誠実・努力」。≫ 菊名西口医院 人工授精で妊娠しないのは、卵胞に問題が? 2017/11/7 石田徳人先生(菊名西口医院 院長) 相談者:あいさん(33歳) クリニックに通って1年、現在人工授精をしています。この前、生理3日目で、卵胞が6ミリ、4ミリで、右2つ、左2つの合計4個でした。3日目にしてこの大きさと数は正常でしょうか? 生理3日目から5日間、レトロゾール®を服用するように言われました。ちなみにAMHは5.24あり、多嚢胞では? と思っています。 次、人工授精5回目でダメだったら、体外受精にステップアップしましょうと言われているので、あせっています。アドバイスをお願いします。 生理3日目での卵胞検査。この大きさ、数は正常ですか。 詳しいことが書かれていないので推測になりますが、たぶん超音波卵巣計測で卵胞の大きさや数を測られたのでしょう。体外受精の場合は生理3日目に測ることもありますが、人工授精の場合では、月経周期の安定した方なら、当院では生理10日目前後で測ります。念のため、さらに2,3日後に測ることもあります。ご相談者のあいさんは、人工授精で生理3日目に測られたとのこと。特別な事情が考えられますので、この時期に計測した意図を、一度担当医におたずねになってはいかがでしょうか。 AMH5.24で、多嚢胞ではないかとも疑っています。 2,3個見えるなどというのはよくあること。ネックレスサインも認められていないようですし、多嚢胞の疑いもないでしょう。 妊娠にまつわる情報は過剰気味ですが、体調次第で理屈どおりに進まないのが不妊治療の難しいところです。ちょっとしたストレスや風邪を引いた程度で月経周期が乱れたりするのは、多くの女性が経験されているのではないでしょうか。同じ人でも、毎回同じように排卵するとは限らないのです。卵子の数が少なくても、受精卵が少々いびつでも妊娠する人はいますし、若くて何も問題がないのになかなか妊娠しない人もいます。AMHも1つの目安で、妊娠率と必ずしも相関するわけではありません。診断されていなければ、「多嚢胞かもしれない」と心配しすぎでは? 疑問点は率直に担当医に伝えて、納得した医療を受けてくださいね。 次、5回目の人工授精後はステップアップすべきですか。 人工授精を3回以上しても妊娠しなかったらステップアップしましょう、というのはスタンダードだとは思いますが、こればかりはご本人のご希望しだいです。確かに効率を考えればステップアップした方が妊娠する確率も高くなり、より早く赤ちゃんに会えるかもしれませんが、治療を受けるのはご本人ですので、治療法もご自分で選ぶ権利があります。「あせっています」と書かれていますが、「もうしばらくはステップアップしたくない、人工授精を10回までやりたい」などのご要望がある場合は、きちんと担当医に伝えましょう。 当院は、余計な検査、余計な治療はできるだけ避け、なるべく自然な形で妊娠へと導きたいというのがポリシーですので、あいさんのお気持ちもよくわかります。当院では、排卵されている方なら40歳の方にも排卵誘発剤は使用しないようにしています。それぞれクリニックにもポリシーや治療方針があるので、段階的な治療プランについて担当医と相談してください。 石田先生より まとめ 検査の必要性、排卵誘発剤の必要性、なぜレトロゾール®が処方されたのかなど、疑問に思うことは遠慮せずに担当医にたずねましょう。妊娠はマニュアルどおりにはいかないので、数値にこだわり過ぎて惑わされないこと。あいさんは33歳で排卵もあり、自然妊娠の可能性も大いにあると思うので、夫婦間のスキンシップも大切にしましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 石田徳人先生(菊名西口医院 院長) 医学博士。母体保護法指定医。日本産婦人科学会専門医。日本生殖医学学会会員。日本受精着床学会会員。高度生殖技術研究所会員。男女生み分け研究会会員。平成2年金沢医科大学卒業、聖マリアンナ医科大学産婦人科入局。平成8年同大学大学院修了、カナダMcGill大学生殖医学研究室客員講師。平成9年聖マリアンナ医科大学産婦人科医長、平成13年菊名西口医院開院。産婦人科専門医として、特に不妊治療を専門とし、妊娠から出産後の育児まで女性の健康を幅広くサポート。不妊治療ではで極力自然妊娠につながるよう、高度な不妊治療(ART=生殖補助技術)には安易に頼らず、タイミング指導に力を入れている。日々の激務に備え、週数回は2時間のジョギングで体力づくり。座右の銘は、「誠実・努力」。≫ 菊名西口医院
2017.11.7
専門医Q&A 不妊治療
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ジネコ妊活セミナー9月10日 「不妊治療を始めるにあたっての夫婦にかかわり方について」
2017年9月10日に行われたジネコ 妊活セミナーより 不妊治療を始めるにあたっての夫婦にかかわり方について 2017年9月10日(日)、東京日本橋にて「ジネコ妊活セミナー」を開催しました。第1部では、医療法人愛慈会 松本レディースクリニック看護師長で、助産士、体外受精コーディネーター、不妊カウンセラーとして活躍中の松永久美江さんに「不妊治療全般」について、第2部では同クリニック院長松本和紀先生に「体外受精の現在・過去・未来」についてお話いただきました。今回は第1部の内容を第1弾としてお届けします。 まず妊娠のメカニズムを把握しておく 図1をご覧ください。女性の生殖器の断面図です。男性の精子は女性の膣に射精されると子宮を通過し、卵管を目指します。そして卵管の中の卵管膨大部というところで卵子を待ちます。女性の卵巣は左右両方にあるので、毎月、どちらかが働きます。卵巣には卵胞といって卵子を蓄える袋がありますが、この袋は女性ホルモンの影響で成熟し、20ミリ以上になると排卵がおきます。 排卵した卵子は骨盤やお腹の中に出ていきます。精子は先ほどお話したように卵管の中の、卵管膨大部というところで卵子を待っていますので、卵子が卵管に入ってくれないと妊娠には結びつきません。そのため卵管の先の、手のような形をした卵管采が卵子を卵管に取り入れます。これを卵のピックアップといいます。それがうまくいったときに受精が成立します。その後、受精卵(胚)となって卵管を通る過程で成長を続け、最後、子宮にたどりついて着床、妊娠判定に結びつきます。 受精が毎月うまくいってくれればいいのですがなかなか簡単ではありません。なぜかというと、このイラストのように卵巣は平面ではないからです。立体なので卵管よりも遠いところで排卵してしまうこともあります。1回あたりの妊娠率は25歳位のカップルでも25%~30%です。卵管に入る確率は2カ月に1回と言われています。ですから、どんなに妊娠率が高くても、毎月は難しいわけです。 妊娠に結びつけるために必要な検査 こうした妊娠の仕組みをうまく機能させることができるかどうかを知るために実施するのが不妊検査です。図2を見てください。基礎体温と検査のスケジュールをまとめたものです。 <基礎体温をつける> 妊娠を願う女性の多くは基礎体温をつけていると思われますが、まだの方はまず基礎体温をつけることから始めていただきたいと思います。女性の体の状態を知るうえでとても大切な検査の一つです。 婦人体温計を使い、毎朝、目覚めたとき、起き上がる前、布団の中で計るのがポイントです。同じ時間に口の中の舌の下に入れて計ってください。 基礎体温をつけてグラフにしていただくと、体温が低い時期と高い時期がわかります。よく「こんなきれいなグラフにならない」と言われるのですが、確かに実際はガタガタしていて、きれいなグラフになることはないかもしれません。 ただし、毎日の温度ではなく、大きな目でグラフを見ていただくと、体温が低いとき、高いときで温度差は0.3度以上あれば、2相性のグラフと考え、排卵していると思われます。 <ホルモン検査> 不妊治療を行う前に基礎体温とともにホルモン検査を実施しています。体温が低いときと高いときと2回、月経周期に合わせて行います。月経周期は生理の始まった日が1日目です。一度目は体温が低温気(低温相)、月経の2日目から5日目にホルモン検査を行います。ここでは卵巣の働きを確認します。二度目は高温期(高温相)に行い、妊娠に必要なホルモンが十分出ているかどうかをみます。 <超音波検査> 基礎体温を計っていただきながら、今度は排卵の時期、どの時期にうまくタイミングをとったらいいかを調べるため、超音波検査を行います。子宮はにわとりの卵大くらい、卵巣は親指の第一関節くらいしかないので、内科などで受けるお腹の上からの超音波では検査できませんので、経膣超音波という膣からの超音波を受けることになります。月経周期にもよりますが28日周期の方であれば、生理が始まった12日目前後に経膣超音波をお受けいただき、卵巣のなかの卵胞の大きさを見ていきます。十分な大きさになったときが、ご夫婦生活のタイミングといえます。 <子宮卵管造影検査> 子宮卵管造影は、子宮や卵管を造影剤という薬を使って調べる検査です。体内の様子を見るもので卵管閉塞、水腫などの有無を調べます。痛いというイメージを持たれていますが、個人差があるので、怖がらずに受けていただけたらと思います。 <男性の精液検査> 女性の不妊検査だけで済ますご夫婦がいますが、妊娠は精子と卵子が出会うことから始まります。男性側の検査は唯一精液検査のみとなります。ぜひ男性も精液検査を受けていただきたいです。 <AMH検査> 不妊治療方針の中にもうひとつ大切な検査があります。AMH(アンチミューラ管ホルモン)という検査で、卵巣の予備力の目安となるものです。女性は母親の胎内にいるときにすでに卵胞を持っています。妊娠7カ月のときに700万個くらいだと言われています。それが産まれるころには100万個。初潮を迎え、コンスタントに排卵できるようになる高校生の頃には多い人で30~50万個、少ない人では10~20万個と減っています。卵巣の卵胞というのは年齢とともに少しずつ減っていきます。1個の卵子が排卵するのに1日で20~30個、1カ月で1000個くらいの卵子が自然になくなっていると考えられています。 また、歳を重ねると卵子も年を重ねます。今のご自分の年齢が卵の年齢になります。卵巣の中の状況、卵子の質が妊娠率に大きく影響していきますので、ぜひAMH検査を早めに受けていただくことをおすすめします。もし、ご自分の年齢要素よりもAMHの値が低い場合、妊娠ができないのではなく、妊娠でき得る期間が短くなっていると考えられます。 <検査ではわからないこと> 検査でわかることもありますが、わからないこともまだまだあります。たとえば、卵管に卵子が入っているのか、卵管に入ったあと、精子と出会い、受精が行われているのかどうか、そして受精後に受精卵(胚)となって、きちんと成長できているのかはわからない部分です。ですから、不妊治療の検査ですべてクリアになるわけではないということを、まずご夫婦で十分理解していただいたうえで検査に臨んでいただきたいと思います。 不妊治療を進めるにあたって夫婦のかかわり方 いろいろな検査のお話をしましたが、不妊治療はすぐに結果がでるわけではなく、出口が見えない、どこか暗いトンネルの中をあてもなく歩くのに似ています。しかも治療を受けるのは女性側、奥様が中心。治療を始めてもなかなか妊娠できないことへの不安、焦りに加え、ご自分の仕事との両立や義父母や自身の両親からのプレッシャー、周りからの心ない言葉などに傷つきいら立つことも多かったりします。奥様が孤独に悩んだり、自分を責めたり、不安を抱えたりしないようご主人のサポートがとても大切です。ぜひ奥様が病院へ行った日は「今日、病院だったよね、どうだった?」と声をかけてあげてください。また、治療のステップアップなどの時は、できれば奥様だけでなく、ご夫婦で説明を聞いていただき、不妊治療にご夫婦でかかわっていただくようにしてほしいと思います。 病院で奥様がこの日が排卵日だと言われ、ご自宅に戻り、ご主人に「今日排卵日なので」と伝えると、「えー、今日って言われても疲れちゃっているしさ、無理だよ」と言われてしまい、涙する方もいらっしゃいます。確かにお仕事もあるので、難しいこともあるかと思いますが、そこは夫婦二人で協力しあってほしいと思います。 今、不妊に悩んでいるカップルは6組に1組と言われています。しかも不妊症の割合は世界平均9%ですが、日本は16%と言われています。もし、不妊ではないかと悩んでいらっしゃるのなら不妊治療専門のクリニックを受診していただくことをおすすめします。 検査や治療のなかで、今まで知らなかったこと、知りたくなかったこと、言われたくなかったことなどいろいろあるかもしれません。それでもいつかそのお時間がお二人にとって、かけがえのない時間になるようにまずはお互いのお気持ちを伝え合いながら、そして、思いやりながら、今後のお時間を過ごしていただきたいと思います。 最後に2つお願いがあります。赤ちゃんを望んでいるなら、タバコをお吸いになっている方は今すぐやめてください。女性は卵管が悪くなったり閉経が早まることもあります。赤ちゃんが女の子だった場合、その子の卵胞の数にも影響します。また喫煙は精子に大きなダメージを与えます。 そして、女性には葉酸をぜひお取りいただきたいです。妊娠を望んでいるときから妊娠3カ月までです。アボカドだと1日6個くらい、アスパラだと13本くらいです。さすがに毎日食べるわけにはいかないので、厚生労働省からも葉酸のサプリメントは推奨されています。まずは、できることから妊活を始めてみましょう。 松永久美江 看護師長 (医療法人 愛慈会 松本レディースクリニック)平成13年1月より松本レディースクリニックに勤務。現在、看護師長、体外受精コーディネーター、不妊カウンセラーとして日々患者様の心に寄り添うケアを心がけて診療に携わっている。看護師、助産師の資格あり。 ジネコ妊活セミナー 2017年9月10日に行われたジネコ 妊活セミナーより 不妊治療を始めるにあたっての夫婦にかかわり方について 2017年9月10日(日)、東京日本橋にて「ジネコ妊活セミナー」を開催しました。第1部では、医療法人愛慈会 松本レディースクリニック看護師長で、助産士、体外受精コーディネーター、不妊カウンセラーとして活躍中の松永久美江さんに「不妊治療全般」について、第2部では同クリニック院長松本和紀先生に「体外受精の現在・過去・未来」についてお話いただきました。今回は第1部の内容を第1弾としてお届けします。 まず妊娠のメカニズムを把握しておく 図1をご覧ください。女性の生殖器の断面図です。男性の精子は女性の膣に射精されると子宮を通過し、卵管を目指します。そして卵管の中の卵管膨大部というところで卵子を待ちます。女性の卵巣は左右両方にあるので、毎月、どちらかが働きます。卵巣には卵胞といって卵子を蓄える袋がありますが、この袋は女性ホルモンの影響で成熟し、20ミリ以上になると排卵がおきます。 排卵した卵子は骨盤やお腹の中に出ていきます。精子は先ほどお話したように卵管の中の、卵管膨大部というところで卵子を待っていますので、卵子が卵管に入ってくれないと妊娠には結びつきません。そのため卵管の先の、手のような形をした卵管采が卵子を卵管に取り入れます。これを卵のピックアップといいます。それがうまくいったときに受精が成立します。その後、受精卵(胚)となって卵管を通る過程で成長を続け、最後、子宮にたどりついて着床、妊娠判定に結びつきます。 受精が毎月うまくいってくれればいいのですがなかなか簡単ではありません。なぜかというと、このイラストのように卵巣は平面ではないからです。立体なので卵管よりも遠いところで排卵してしまうこともあります。1回あたりの妊娠率は25歳位のカップルでも25%~30%です。卵管に入る確率は2カ月に1回と言われています。ですから、どんなに妊娠率が高くても、毎月は難しいわけです。 妊娠に結びつけるために必要な検査 こうした妊娠の仕組みをうまく機能させることができるかどうかを知るために実施するのが不妊検査です。図2を見てください。基礎体温と検査のスケジュールをまとめたものです。 <基礎体温をつける> 妊娠を願う女性の多くは基礎体温をつけていると思われますが、まだの方はまず基礎体温をつけることから始めていただきたいと思います。女性の体の状態を知るうえでとても大切な検査の一つです。 婦人体温計を使い、毎朝、目覚めたとき、起き上がる前、布団の中で計るのがポイントです。同じ時間に口の中の舌の下に入れて計ってください。 基礎体温をつけてグラフにしていただくと、体温が低い時期と高い時期がわかります。よく「こんなきれいなグラフにならない」と言われるのですが、確かに実際はガタガタしていて、きれいなグラフになることはないかもしれません。 ただし、毎日の温度ではなく、大きな目でグラフを見ていただくと、体温が低いとき、高いときで温度差は0.3度以上あれば、2相性のグラフと考え、排卵していると思われます。 <ホルモン検査> 不妊治療を行う前に基礎体温とともにホルモン検査を実施しています。体温が低いときと高いときと2回、月経周期に合わせて行います。月経周期は生理の始まった日が1日目です。一度目は体温が低温気(低温相)、月経の2日目から5日目にホルモン検査を行います。ここでは卵巣の働きを確認します。二度目は高温期(高温相)に行い、妊娠に必要なホルモンが十分出ているかどうかをみます。 <超音波検査> 基礎体温を計っていただきながら、今度は排卵の時期、どの時期にうまくタイミングをとったらいいかを調べるため、超音波検査を行います。子宮はにわとりの卵大くらい、卵巣は親指の第一関節くらいしかないので、内科などで受けるお腹の上からの超音波では検査できませんので、経膣超音波という膣からの超音波を受けることになります。月経周期にもよりますが28日周期の方であれば、生理が始まった12日目前後に経膣超音波をお受けいただき、卵巣のなかの卵胞の大きさを見ていきます。十分な大きさになったときが、ご夫婦生活のタイミングといえます。 <子宮卵管造影検査> 子宮卵管造影は、子宮や卵管を造影剤という薬を使って調べる検査です。体内の様子を見るもので卵管閉塞、水腫などの有無を調べます。痛いというイメージを持たれていますが、個人差があるので、怖がらずに受けていただけたらと思います。 <男性の精液検査> 女性の不妊検査だけで済ますご夫婦がいますが、妊娠は精子と卵子が出会うことから始まります。男性側の検査は唯一精液検査のみとなります。ぜひ男性も精液検査を受けていただきたいです。 <AMH検査> 不妊治療方針の中にもうひとつ大切な検査があります。AMH(アンチミューラ管ホルモン)という検査で、卵巣の予備力の目安となるものです。女性は母親の胎内にいるときにすでに卵胞を持っています。妊娠7カ月のときに700万個くらいだと言われています。それが産まれるころには100万個。初潮を迎え、コンスタントに排卵できるようになる高校生の頃には多い人で30~50万個、少ない人では10~20万個と減っています。卵巣の卵胞というのは年齢とともに少しずつ減っていきます。1個の卵子が排卵するのに1日で20~30個、1カ月で1000個くらいの卵子が自然になくなっていると考えられています。 また、歳を重ねると卵子も年を重ねます。今のご自分の年齢が卵の年齢になります。卵巣の中の状況、卵子の質が妊娠率に大きく影響していきますので、ぜひAMH検査を早めに受けていただくことをおすすめします。もし、ご自分の年齢要素よりもAMHの値が低い場合、妊娠ができないのではなく、妊娠でき得る期間が短くなっていると考えられます。 <検査ではわからないこと> 検査でわかることもありますが、わからないこともまだまだあります。たとえば、卵管に卵子が入っているのか、卵管に入ったあと、精子と出会い、受精が行われているのかどうか、そして受精後に受精卵(胚)となって、きちんと成長できているのかはわからない部分です。ですから、不妊治療の検査ですべてクリアになるわけではないということを、まずご夫婦で十分理解していただいたうえで検査に臨んでいただきたいと思います。 不妊治療を進めるにあたって夫婦のかかわり方 いろいろな検査のお話をしましたが、不妊治療はすぐに結果がでるわけではなく、出口が見えない、どこか暗いトンネルの中をあてもなく歩くのに似ています。しかも治療を受けるのは女性側、奥様が中心。治療を始めてもなかなか妊娠できないことへの不安、焦りに加え、ご自分の仕事との両立や義父母や自身の両親からのプレッシャー、周りからの心ない言葉などに傷つきいら立つことも多かったりします。奥様が孤独に悩んだり、自分を責めたり、不安を抱えたりしないようご主人のサポートがとても大切です。ぜひ奥様が病院へ行った日は「今日、病院だったよね、どうだった?」と声をかけてあげてください。また、治療のステップアップなどの時は、できれば奥様だけでなく、ご夫婦で説明を聞いていただき、不妊治療にご夫婦でかかわっていただくようにしてほしいと思います。 病院で奥様がこの日が排卵日だと言われ、ご自宅に戻り、ご主人に「今日排卵日なので」と伝えると、「えー、今日って言われても疲れちゃっているしさ、無理だよ」と言われてしまい、涙する方もいらっしゃいます。確かにお仕事もあるので、難しいこともあるかと思いますが、そこは夫婦二人で協力しあってほしいと思います。 今、不妊に悩んでいるカップルは6組に1組と言われています。しかも不妊症の割合は世界平均9%ですが、日本は16%と言われています。もし、不妊ではないかと悩んでいらっしゃるのなら不妊治療専門のクリニックを受診していただくことをおすすめします。 検査や治療のなかで、今まで知らなかったこと、知りたくなかったこと、言われたくなかったことなどいろいろあるかもしれません。それでもいつかそのお時間がお二人にとって、かけがえのない時間になるようにまずはお互いのお気持ちを伝え合いながら、そして、思いやりながら、今後のお時間を過ごしていただきたいと思います。 最後に2つお願いがあります。赤ちゃんを望んでいるなら、タバコをお吸いになっている方は今すぐやめてください。女性は卵管が悪くなったり閉経が早まることもあります。赤ちゃんが女の子だった場合、その子の卵胞の数にも影響します。また喫煙は精子に大きなダメージを与えます。 そして、女性には葉酸をぜひお取りいただきたいです。妊娠を望んでいるときから妊娠3カ月までです。アボカドだと1日6個くらい、アスパラだと13本くらいです。さすがに毎日食べるわけにはいかないので、厚生労働省からも葉酸のサプリメントは推奨されています。まずは、できることから妊活を始めてみましょう。 松永久美江 看護師長 (医療法人 愛慈会 松本レディースクリニック)平成13年1月より松本レディースクリニックに勤務。現在、看護師長、体外受精コーディネーター、不妊カウンセラーとして日々患者様の心に寄り添うケアを心がけて診療に携わっている。看護師、助産師の資格あり。 ジネコ妊活セミナー
2017.11.6
レポート 不妊治療
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生理のこと
みぃさん(36歳)これなら妊活を始めるものです。 いまだかつて試したことがないのて漠然と悩んでる状態です。 まずは生理のこと。もともと生理自体軽い方でしたが、最近は2日ほど出血し、3日目には終わってしまう月があります。2日間の出血も少なくなったような気がします。基礎体温はおそらく二層、高温期も14日あります。おりものはあります。生理痛は大抵ありませんが、筋腫があると言われています。(1センチと2センチのもの) 年齢的なものなのでしょうか?もしくはホルモンバランスがよくないのでしょうか? 経血量がすくないと妊娠しにくいですか? また、増やすことはできますか? 過少月経なのか、ただ軽いほうなのか見分けれず悩んでいます。 佐藤雄一 先生 (佐藤病院) 順天堂大学医学部大学院を卒業後、順天堂大学付属病院勤務を経て、平成12年より産科婦人科舘出張佐藤病院勤務。大学病院時代には、生殖内分泌特に受精に関する研究に従事し、順天堂大学で初の顕微授精の成功に携わる。また腹腔鏡(内視鏡)手術を専門とし、子宮筋腫や子宮内膜症に対する多くの手術を手がけている。 医学博士。順天堂大学産婦人科非常勤講師。日本産婦人科学会認定医。日本生殖医学会生殖医療指導医。日本産婦人科内視鏡学会技術認定医。 ≫ 佐藤病院30歳代も半ばを過ぎると、経血の量が少なくなるのは一般的です。子宮内膜が剥がれて月経血となり、外に出るので、出血が少ないと「子宮内膜が薄いのではないか」、さらには「だから妊娠しづらいのではないか」と不安に思われるかもしれませんが、子宮と卵巣の働きはまったく別。きちんと排卵さえしていれば、妊娠は可能です。基礎体温の記録で低温期と高温期の二相性が確認され、高温期も14日間あるのなら、おそらく排卵もしていると考えて良いと思います。 もしかしたら本当に子宮内膜が十分な厚さではないこともありますし、生理があっても排卵していないというケースもあります。また、ご年齢が35歳以上であること、生理周期が28~23日周期というのも気になります。周期にバラつきがあるということは、女性ホルモンバランスが崩れかけているとも考えられます。 妊活をスタートさせるなら、まずは婦人科などで詳しく検査されることをおすすめします。早くお子さんを望むのであれば、なおさらです。自己判断では、おっしゃるとおり「漠然と悩む」しかありません。筋腫の経過なども確かめ、問題がないと判れば悩む必要はありません。もし問題があったとしても、早期に見つけ、早期に治療することが大切です。 周期は安定していたほうがいいのですが、経血量を増やす必要はまったくありません。経血量は少ない方が貧血にもなりにくく、生理痛もないに越したことはありません。 ご自身でできることとしては、できるだけ適正体重を維持することぐらいです。痩せ過ぎや肥満気味だと、排卵障害や生理不順といったことが起きやすくなります。とくに肥満は糖尿病などの引き金にもなりかねず、妊娠中にも影響します。妊活中の今から、食事内容や生活習慣を見直し、適正体重に近づけるよう心がけてください。 まずは、婦人科などで検査を受けること。しっかり排卵しているか、過去に見つかった筋腫の経過なども調べてもらうと良いでしょう。排卵さえあれば妊娠は可能で、経血量の少なさなどは影響しません。ただ、生理周期は安定させたいので、生理不順や排卵障害の原因となる、やせ過ぎ・肥満には要注意を。妊活中の今から、食事内容や生活習慣を改善して、適正体重に近づける努力をしましょう。
2017.11.5
専門医Q&A 女性の健康
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肌トラブルに負けない丈夫な肌へ 潤いのバリアで、赤ちゃんの肌をまもろう!(前編)
肌トラブルに負けない丈夫な肌へ潤いのバリアで、赤ちゃんの肌をまもろう!(前編) 生まれたばかりの赤ちゃんの肌は、とてもデリケート。なのに、おむつかぶれやよだれ、食べこぼし、汗、これからの季節は乾燥など、日常生活には肌荒れの原因がいっぱい!さらに、アトピー性皮膚炎などの心配も。しかし、保湿&保護を心がければ、多くの肌トラブルは防げることもわかってきました。どうすればより効果的に赤ちゃんの肌をまもれるか、佐藤病院の佐藤先生、新井先生にうかがいました。 佐藤病院 佐藤 雄一先生医学博士・産婦人科専門医・日本生殖医学会生殖医療専門医・日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。佐藤病院院長・高崎ARTクリニック理事長を務める。専門分野だけでなく、栄養学や抗加齢医学などの知識も深く、患者さんにも積極的に「食の重要性」を指導。自身も食生活に気を配り、日本体育協会公認スポーツドクターでもあるので運動も欠かさない。今年は東京マラソンを見事完走! 佐藤病院 新井 弥生先生医学博士・日本小児科学会専門医 特定医療法人博仁会第一病院 常勤医師 赤ちゃんからお年寄りまで、その方の生活に根差した全人的医療を心がけ、日々診療にあたっている。プライベートでは2児(男児)の母 新生児からの保湿ケアで、肌トラブルを防ごう! 佐藤先生:私は婦人科医ですので、本日は赤ちゃんの肌トラブルについて詳しい当院小児科の新井先生にもお越しいただきました。まず、赤ちゃんの肌の特徴は?新井先生:赤ちゃんの肌はみずみずしく見えますが、皮膚は大人の半分ほどの厚さしかなく、水分量や皮脂量も少なく、大人よりもずっと乾燥しやすいのです。佐藤先生:清潔好きのママはとくに、おむつ替えのときなどつい拭き過ぎたりしがちですが、皮膚の薄い赤ちゃんにはそれも負担になりそうですね。新井先生:“こする”といった刺激も肌トラブルの原因になります。赤ちゃんのスキンケアでは、「桃のように扱ってください」と指導させて頂いています。もちろん清潔に保つことも大切ですが、お風呂上りや、おしりやお口周りをやさしく拭いた後には、欠かさず保湿することを習慣づけていただきたいですね。カサつきがちならもちろん、健康な肌であっても赤ちゃんにはスキンケアが必要です。実は近年、スキンケアで保湿&保護を心がけることにより、多くの肌トラブルが防げることがわかってきました。 肌をまもることで、食物アレルギーの対策にも 新井先生:まずは、「アトピー性皮膚炎」について。国立成育医療研究センターの研究報告によると、新生児に出生直後から毎日保湿剤を塗ったところ、約8カ月後のアトピー性皮膚炎の発症率が統計学的に有意に低下したとのことでした。さらに同センターは、保湿によって「食物アレルギー」も防げる可能性があるとも。アトピー性皮膚炎やそれ以外の原因によって皮膚に炎症があると、そこからアレルゲン(抗原)が入り込み、食物アレルギーの発症のきっかけが起きるとのこと。皮膚の表面に潤いのバリアをつくり、アレルゲンの侵入を防ぐことが肝心としています。佐藤先生:“食べる”ではなく、アレルゲンが“荒れた皮膚の間から入り込む”ことで、食物アレルギーが発症するとは意外でした。実は私には甲殻類の食物アレルギーがあり、エビやカニなどが食べられず、娘にも同じ症状が。“アレルギー体質”と言われるように、体質は親子だから似て仕方ないと思っていたのですが、新生児の頃からしっかり保湿をしてあげていれば防げたのかもしれません。 できるだけ早く始めたい、赤ちゃんの“保湿” 佐藤先生そもそも、乾燥はどうして肌に悪影響をおよぼすのですか?新井先生:皮膚の角質細胞を傷つけ、表皮のバリア機能を低下させてしまうからです。また肌には、ターンオーバー(一定の周期で古い角質が自然に剥がれ落ち、新しい皮膚に入れ替わる)という機能が備わっていて、大人なら約30日、子どもや赤ちゃんならもっと速いサイクルで肌が生まれ変わるようにできています。しかし、乾燥や“こする”といった刺激などで表皮が傷つくと、部分的に角質が古くなる前に剥がれ落ちてしまい、未成熟な皮膚に覆われることになります。未成熟な皮膚はさらに乾燥や刺激に弱く、ダメージを受けて速く剥がれ落ち、また未成熟な皮膚が表れ……と悪循環を繰り返してしまうのです。予防には、角質層をしっかり保湿し、水分を溜め込むことが大切。“潤い”というバリアが表皮にあれば、その下で新しい皮膚がきちんと育ちます。正常なターンオーバーに整うことで、健全な皮膚に生まれ変わることができるのです。佐藤先生“潤いのバリア”があれば、肌は自然治癒力を発揮し、正常な肌サイクルを保てるということですね。新生児からの保湿が大切、とよくわかりました。保湿&保護で、肌トラブルに負けない丈夫な肌に育ててあげたいですね。肌トラブルに負けない丈夫な肌へ 潤いのバリアで、赤ちゃんの肌をまもろう!(後編)はこちら 昨シーズンは、品切れ続出でゴメンナサイ!新発想のスキンケア「ファムズベビー」の詳細はコチラ▼「Fam’s Baby」公式サイト http://fams-skin.com/ 肌トラブルに負けない丈夫な肌へ潤いのバリアで、赤ちゃんの肌をまもろう!(前編) 生まれたばかりの赤ちゃんの肌は、とてもデリケート。なのに、おむつかぶれやよだれ、食べこぼし、汗、これからの季節は乾燥など、日常生活には肌荒れの原因がいっぱい!さらに、アトピー性皮膚炎などの心配も。しかし、保湿&保護を心がければ、多くの肌トラブルは防げることもわかってきました。どうすればより効果的に赤ちゃんの肌をまもれるか、佐藤病院の佐藤先生、新井先生にうかがいました。 佐藤病院 佐藤 雄一先生医学博士・産婦人科専門医・日本生殖医学会生殖医療専門医・日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医。佐藤病院院長・高崎ARTクリニック理事長を務める。専門分野だけでなく、栄養学や抗加齢医学などの知識も深く、患者さんにも積極的に「食の重要性」を指導。自身も食生活に気を配り、日本体育協会公認スポーツドクターでもあるので運動も欠かさない。今年は東京マラソンを見事完走! 佐藤病院 新井 弥生先生医学博士・日本小児科学会専門医 特定医療法人博仁会第一病院 常勤医師 赤ちゃんからお年寄りまで、その方の生活に根差した全人的医療を心がけ、日々診療にあたっている。プライベートでは2児(男児)の母 新生児からの保湿ケアで、肌トラブルを防ごう! 佐藤先生:私は婦人科医ですので、本日は赤ちゃんの肌トラブルについて詳しい当院小児科の新井先生にもお越しいただきました。まず、赤ちゃんの肌の特徴は?新井先生:赤ちゃんの肌はみずみずしく見えますが、皮膚は大人の半分ほどの厚さしかなく、水分量や皮脂量も少なく、大人よりもずっと乾燥しやすいのです。佐藤先生:清潔好きのママはとくに、おむつ替えのときなどつい拭き過ぎたりしがちですが、皮膚の薄い赤ちゃんにはそれも負担になりそうですね。新井先生:“こする”といった刺激も肌トラブルの原因になります。赤ちゃんのスキンケアでは、「桃のように扱ってください」と指導させて頂いています。もちろん清潔に保つことも大切ですが、お風呂上りや、おしりやお口周りをやさしく拭いた後には、欠かさず保湿することを習慣づけていただきたいですね。カサつきがちならもちろん、健康な肌であっても赤ちゃんにはスキンケアが必要です。実は近年、スキンケアで保湿&保護を心がけることにより、多くの肌トラブルが防げることがわかってきました。 肌をまもることで、食物アレルギーの対策にも 新井先生:まずは、「アトピー性皮膚炎」について。国立成育医療研究センターの研究報告によると、新生児に出生直後から毎日保湿剤を塗ったところ、約8カ月後のアトピー性皮膚炎の発症率が統計学的に有意に低下したとのことでした。さらに同センターは、保湿によって「食物アレルギー」も防げる可能性があるとも。アトピー性皮膚炎やそれ以外の原因によって皮膚に炎症があると、そこからアレルゲン(抗原)が入り込み、食物アレルギーの発症のきっかけが起きるとのこと。皮膚の表面に潤いのバリアをつくり、アレルゲンの侵入を防ぐことが肝心としています。佐藤先生:“食べる”ではなく、アレルゲンが“荒れた皮膚の間から入り込む”ことで、食物アレルギーが発症するとは意外でした。実は私には甲殻類の食物アレルギーがあり、エビやカニなどが食べられず、娘にも同じ症状が。“アレルギー体質”と言われるように、体質は親子だから似て仕方ないと思っていたのですが、新生児の頃からしっかり保湿をしてあげていれば防げたのかもしれません。 できるだけ早く始めたい、赤ちゃんの“保湿” 佐藤先生そもそも、乾燥はどうして肌に悪影響をおよぼすのですか?新井先生:皮膚の角質細胞を傷つけ、表皮のバリア機能を低下させてしまうからです。また肌には、ターンオーバー(一定の周期で古い角質が自然に剥がれ落ち、新しい皮膚に入れ替わる)という機能が備わっていて、大人なら約30日、子どもや赤ちゃんならもっと速いサイクルで肌が生まれ変わるようにできています。しかし、乾燥や“こする”といった刺激などで表皮が傷つくと、部分的に角質が古くなる前に剥がれ落ちてしまい、未成熟な皮膚に覆われることになります。未成熟な皮膚はさらに乾燥や刺激に弱く、ダメージを受けて速く剥がれ落ち、また未成熟な皮膚が表れ……と悪循環を繰り返してしまうのです。予防には、角質層をしっかり保湿し、水分を溜め込むことが大切。“潤い”というバリアが表皮にあれば、その下で新しい皮膚がきちんと育ちます。正常なターンオーバーに整うことで、健全な皮膚に生まれ変わることができるのです。佐藤先生“潤いのバリア”があれば、肌は自然治癒力を発揮し、正常な肌サイクルを保てるということですね。新生児からの保湿が大切、とよくわかりました。保湿&保護で、肌トラブルに負けない丈夫な肌に育ててあげたいですね。肌トラブルに負けない丈夫な肌へ 潤いのバリアで、赤ちゃんの肌をまもろう!(後編)はこちら 昨シーズンは、品切れ続出でゴメンナサイ!新発想のスキンケア「ファムズベビー」の詳細はコチラ▼「Fam’s Baby」公式サイト http://fams-skin.com/
2017.11.1
コラム 子育て・教育
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排卵前後の超音波による内膜と卵胞について
排卵前後の超音波による内膜と卵胞について 2017/10/31 矢野 直美 先生(池下レディースクリニック吉祥寺) アコさん(34歳) 排卵前後の超音波による内膜と卵胞について タイミング指導で妊娠を目指しています。クロミッド®を3周期使い、どれも卵胞が育たなかったので4周期目はセキソビットに変えました。スピードは遅いですが、なんとか育ってd25で内膜7.5卵胞19.4になりました。二日後のd27の朝9時にhcgを打ちました。(内膜9.4卵胞23) タイミング指導では同日と翌日にと言われています。hcgを打つ前に超音波で視たのですが、内膜が白く写っていました。今まではどこに内膜が写っているのか分からないくらいだったのがちゃんとわかるくらいでした。 内膜が白いのは排卵後と聞いたことがあるのですが、もしかして排卵後だったのでしょうか? 卵胞も真ん丸ではなく少し上がへこんだ形でした。輪郭ははっきりで白いモヤとかもありませんでした。立て23mm横18mmです。hcgを打つ前日のd26に体温が36.05で最低体温になり、昼頃から子宮やその横が微妙に痛みがありました。伸びるおりものも出ました。 hcg当日も伸びるおりものは出ましたが前日より量が少なかった気がします。 とりあえず先生に言われたように当日夜にタイミングはとったのですが、ずっとモヤモヤしています。 矢野直美先生(池下レディースクリニック吉祥寺 院長) 典型的な場合、排卵して黄体ホルモンが作用すると子宮内膜は超音波で高輝度に(白く)描出されます。しかし、超音波像は、その方の子宮の位置や子宮筋層の厚さの影響で排卵前でも白く見える場合があります。やや変形していても卵胞が写っていたのであれば、排卵前か排卵直後ではないでしょうか。排卵後半日ぐらいでしたら、性交渉して妊娠する可能性があります。 排卵を逃していないか今後も心配になるようでしたら、早めの時期から市販の排卵検査薬を使用し、陽性にでたら予定を早めて受診されたらいかがでしょうか。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 矢野直美先生(池下レディースクリニック吉祥寺 院長) 医学博士、生殖医療専門医、女性ヘルスケア専門医。東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院、武蔵野赤十字病院、池下レディースクリニック広小路などに勤務後、平成21年に池下レディースクリニック吉祥寺院長に就任。出身地である地元・吉祥寺の街で高度生殖医療に従事しつつ、女性の健康をサポート。≫ 池下レディースクリニック吉祥寺 排卵前後の超音波による内膜と卵胞について 2017/10/31 矢野 直美 先生(池下レディースクリニック吉祥寺) アコさん(34歳) 排卵前後の超音波による内膜と卵胞について タイミング指導で妊娠を目指しています。クロミッド®を3周期使い、どれも卵胞が育たなかったので4周期目はセキソビットに変えました。スピードは遅いですが、なんとか育ってd25で内膜7.5卵胞19.4になりました。二日後のd27の朝9時にhcgを打ちました。(内膜9.4卵胞23) タイミング指導では同日と翌日にと言われています。hcgを打つ前に超音波で視たのですが、内膜が白く写っていました。今まではどこに内膜が写っているのか分からないくらいだったのがちゃんとわかるくらいでした。 内膜が白いのは排卵後と聞いたことがあるのですが、もしかして排卵後だったのでしょうか? 卵胞も真ん丸ではなく少し上がへこんだ形でした。輪郭ははっきりで白いモヤとかもありませんでした。立て23mm横18mmです。hcgを打つ前日のd26に体温が36.05で最低体温になり、昼頃から子宮やその横が微妙に痛みがありました。伸びるおりものも出ました。 hcg当日も伸びるおりものは出ましたが前日より量が少なかった気がします。 とりあえず先生に言われたように当日夜にタイミングはとったのですが、ずっとモヤモヤしています。 矢野直美先生(池下レディースクリニック吉祥寺 院長) 典型的な場合、排卵して黄体ホルモンが作用すると子宮内膜は超音波で高輝度に(白く)描出されます。しかし、超音波像は、その方の子宮の位置や子宮筋層の厚さの影響で排卵前でも白く見える場合があります。やや変形していても卵胞が写っていたのであれば、排卵前か排卵直後ではないでしょうか。排卵後半日ぐらいでしたら、性交渉して妊娠する可能性があります。 排卵を逃していないか今後も心配になるようでしたら、早めの時期から市販の排卵検査薬を使用し、陽性にでたら予定を早めて受診されたらいかがでしょうか。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 矢野直美先生(池下レディースクリニック吉祥寺 院長) 医学博士、生殖医療専門医、女性ヘルスケア専門医。東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院、武蔵野赤十字病院、池下レディースクリニック広小路などに勤務後、平成21年に池下レディースクリニック吉祥寺院長に就任。出身地である地元・吉祥寺の街で高度生殖医療に従事しつつ、女性の健康をサポート。≫ 池下レディースクリニック吉祥寺
2017.10.31
専門医Q&A 不妊治療
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子宮外妊娠の手術を受けました
子宮外妊娠の手術を受けました。 2017/10/31 矢野 直美 先生(池下レディースクリニック吉祥寺) 爽健さん(30歳) 子宮外妊娠の手術を受けました。 何周たっても子宮、その他になにも見えず 胞状奇胎と言われるものだと言われ、来週手術予定にしていました。 しかし、週末に突然 身動きのとれないほどの痛みに襲われ、緊急搬送。目が覚めたときには左、右の卵管が摘出されておりました。子宮内にも700ミリ以上の出血があり、破裂に近く、危ない状態だったと・・・。痛みなどで全く記憶がなく、自分のことに感じられませんでした。 胞状奇胎なら焦ることはないとのことで、のんびり過ごしていた結果で、かなり不安が込み上げてきております。 退院したら不妊治療にかかってくださいとのことで、これからどういった治療を続けていくのでしょうか? 矢野直美先生(池下レディースクリニック吉祥寺 院長) 記載された内容だけでは、どのような経緯だったのか判らないところがありますが、結果的に両側の卵管妊娠だったということでしょうか。両側ということですと、稀なケースとなりますが、切除した卵管の病理検査をおこなっているはずですので、担当医に確認されてはいかがでしょう。 今後の不妊治療としては、体外受精が必要となります。 年齢も若いので十分妊娠のチャンスはあると思います。専門医を受診して相談されることをお勧めします。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 矢野直美先生(池下レディースクリニック吉祥寺 院長) 医学博士、生殖医療専門医、女性ヘルスケア専門医。東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院、武蔵野赤十字病院、池下レディースクリニック広小路などに勤務後、平成21年に池下レディースクリニック吉祥寺院長に就任。出身地である地元・吉祥寺の街で高度生殖医療に従事しつつ、女性の健康をサポート。≫ 池下レディースクリニック吉祥寺 子宮外妊娠の手術を受けました。 2017/10/31 矢野 直美 先生(池下レディースクリニック吉祥寺) 爽健さん(30歳) 子宮外妊娠の手術を受けました。 何周たっても子宮、その他になにも見えず 胞状奇胎と言われるものだと言われ、来週手術予定にしていました。 しかし、週末に突然 身動きのとれないほどの痛みに襲われ、緊急搬送。目が覚めたときには左、右の卵管が摘出されておりました。子宮内にも700ミリ以上の出血があり、破裂に近く、危ない状態だったと・・・。痛みなどで全く記憶がなく、自分のことに感じられませんでした。 胞状奇胎なら焦ることはないとのことで、のんびり過ごしていた結果で、かなり不安が込み上げてきております。 退院したら不妊治療にかかってくださいとのことで、これからどういった治療を続けていくのでしょうか? 矢野直美先生(池下レディースクリニック吉祥寺 院長) 記載された内容だけでは、どのような経緯だったのか判らないところがありますが、結果的に両側の卵管妊娠だったということでしょうか。両側ということですと、稀なケースとなりますが、切除した卵管の病理検査をおこなっているはずですので、担当医に確認されてはいかがでしょう。 今後の不妊治療としては、体外受精が必要となります。 年齢も若いので十分妊娠のチャンスはあると思います。専門医を受診して相談されることをお勧めします。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 矢野直美先生(池下レディースクリニック吉祥寺 院長) 医学博士、生殖医療専門医、女性ヘルスケア専門医。東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部附属病院、武蔵野赤十字病院、池下レディースクリニック広小路などに勤務後、平成21年に池下レディースクリニック吉祥寺院長に就任。出身地である地元・吉祥寺の街で高度生殖医療に従事しつつ、女性の健康をサポート。≫ 池下レディースクリニック吉祥寺
2017.10.31
専門医Q&A 不妊治療
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多核胚につきまして
「多核胚由来の胚盤胞で妊娠出産の可能性はありますか?また、移植するとしたらどのグレードからがいいと思いますか?」
2017.10.28
専門医Q&A 女性の健康
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病院主導の産後ケアは、高齢出産する女性の強い味方
妊娠・お産という大仕事を終えて、初めて育児を始める女性は不安がいっぱい。そんなとき、心強い味方になってくれるのが産後ケアです。東峯婦人クリニック院長/産前産後ケアセンター 東峯サライセンター長の松峯寿美先生にお聞きしました。
2017.10.27
インタビュー 妊娠・出産
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心因性頻尿とチョコレート嚢胞がある場合、移植をどう乗り越えれば?
心因性頻尿とチョコレート嚢胞がある場合、移植をどう乗り越えれば? 2017/10/25 下川理世先生(赤坂レディースクリニック) さおさん(34歳) 心因性頻尿とチョコレート嚢胞がある場合、移植をどう乗り越えれば? 先日、初めて凍結胚移植を行いました。私が通院する不妊治療専門の病院は、尿をためてから移植を行うところでした。 実は10年ほど前、心因性頻尿の症状が出て心療内科に通っていたのですが、担当医と相性が合わず、嫌な思いをしたのでそれ以降、通っていません。何かをする前に必ずトイレを済ませたり、トイレの場所を確認することで安心を得るようにしたりなど自分なりの対処法で過ごしていました。 しかし、今回の凍結胚移植では「尿をためる」という状態で臨まなければいけませんでした。医師や看護師に「尿をためたり我慢するのが苦手」と訴えたのですが理解されず、何回もパニックに陥り、1度目はダメでトイレに行ったりしたものの何とか耐えて移植を終えました。精神的にとてもつらかったです。 それと私は両方の卵巣に5㎝ほどのチョコレート嚢胞があり、その手術の前に体外受精をしたほうがいいということで今回、移植を行いました。まだ、結果待ちですが、もしダメだった場合、年齢的にも早めに次の体外受精をしたい。でもまた、パニックに陥るのが心配です。先に心療内科に通った方がいいのでしょうか? 尿をためないでも移植できる方法があれば、教えてください。 下川理世先生(赤坂レディースクリニック) 凍結胚移植はエコーで移植の位置を確認しながら行うのですが、エコーをお腹にあてる場合は、子宮の内部を見やすくするため、膀胱に尿をためていただきます。ただ、私のところのように経膣エコーだけを使っている医師や病院も多いです。経膣エコーの場合、逆に排尿してもらうことになるので、次回は経膣エコーにしてもらえばいいのではないでしょうか。どちらの方法かは医師や病院によって異なります。今の病院で難しければ、他の病院をあたるのも選択の一つです。 ただ、心因性頻尿に関しては早めに心療内科に通い、改善することをおすすめします。不妊治療のことだけでなく日常生活も大変だと思うので。以前の病院にこだわらず、他をあたったらいいと思います。 気になるのは両側にある5㎝のチョコレート嚢胞。結構大きいです。ただ、手術で取ってしまうと卵巣機能がガクンと落ちてしまう恐れがあります。手術が先か、妊娠が先か。難しいところですが、私はAMHと年齢で判断します。AMHが年齢相応の数値であれば、先に手術するかもしれません。 データによると35歳の方が5回の累積移植で約9割の方が体外受精に成功しています。移植では毎回1個ずつ使いますから、胚盤胞という凍結胚が5個以上あると安心です。さおさんの場合、34歳で一度体外受精を経験されて流れもわかっているので、次回は5個くらい凍結胚をつくっておき、移植前にチョコレート嚢胞の摘出手術を行うのが良いのではないでしょうか。 チョコレート嚢胞は切除しないと治らない病気で、放置すると後々ガンの母体になってしまいます。抱えたままだと刺激物質を腹腔内にずっと置くことになるので、そのままの状態で妊娠するのもあまり良くないと私は思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 下川理世先生(赤坂レディースクリニック) 福岡県出身。山口大学医学部卒。 2000年慶応義塾大学医学部産婦人科入局。その後、静岡赤十字病院産婦人科、市川総合病院産婦人科リプロダクションセンター、湘南IVFクリニック(現メディカルパーク湘南)を経て、2016年4月、赤坂レディースクリニックを開業。婦人科診療から不妊治療まで総合的に行っている。不妊治療に関しては一般不妊治療から体外受精、顕微授精など高度生殖補助技術まで行う。「負担が少なく、医学的根拠に基づく的確でスピーディな医療」をモットーに不妊治療をサポート。≫ 赤坂レディースクリニック 心因性頻尿とチョコレート嚢胞がある場合、移植をどう乗り越えれば? 2017/10/25 下川理世先生(赤坂レディースクリニック) さおさん(34歳) 心因性頻尿とチョコレート嚢胞がある場合、移植をどう乗り越えれば? 先日、初めて凍結胚移植を行いました。私が通院する不妊治療専門の病院は、尿をためてから移植を行うところでした。 実は10年ほど前、心因性頻尿の症状が出て心療内科に通っていたのですが、担当医と相性が合わず、嫌な思いをしたのでそれ以降、通っていません。何かをする前に必ずトイレを済ませたり、トイレの場所を確認することで安心を得るようにしたりなど自分なりの対処法で過ごしていました。 しかし、今回の凍結胚移植では「尿をためる」という状態で臨まなければいけませんでした。医師や看護師に「尿をためたり我慢するのが苦手」と訴えたのですが理解されず、何回もパニックに陥り、1度目はダメでトイレに行ったりしたものの何とか耐えて移植を終えました。精神的にとてもつらかったです。 それと私は両方の卵巣に5㎝ほどのチョコレート嚢胞があり、その手術の前に体外受精をしたほうがいいということで今回、移植を行いました。まだ、結果待ちですが、もしダメだった場合、年齢的にも早めに次の体外受精をしたい。でもまた、パニックに陥るのが心配です。先に心療内科に通った方がいいのでしょうか? 尿をためないでも移植できる方法があれば、教えてください。 下川理世先生(赤坂レディースクリニック) 凍結胚移植はエコーで移植の位置を確認しながら行うのですが、エコーをお腹にあてる場合は、子宮の内部を見やすくするため、膀胱に尿をためていただきます。ただ、私のところのように経膣エコーだけを使っている医師や病院も多いです。経膣エコーの場合、逆に排尿してもらうことになるので、次回は経膣エコーにしてもらえばいいのではないでしょうか。どちらの方法かは医師や病院によって異なります。今の病院で難しければ、他の病院をあたるのも選択の一つです。 ただ、心因性頻尿に関しては早めに心療内科に通い、改善することをおすすめします。不妊治療のことだけでなく日常生活も大変だと思うので。以前の病院にこだわらず、他をあたったらいいと思います。 気になるのは両側にある5㎝のチョコレート嚢胞。結構大きいです。ただ、手術で取ってしまうと卵巣機能がガクンと落ちてしまう恐れがあります。手術が先か、妊娠が先か。難しいところですが、私はAMHと年齢で判断します。AMHが年齢相応の数値であれば、先に手術するかもしれません。 データによると35歳の方が5回の累積移植で約9割の方が体外受精に成功しています。移植では毎回1個ずつ使いますから、胚盤胞という凍結胚が5個以上あると安心です。さおさんの場合、34歳で一度体外受精を経験されて流れもわかっているので、次回は5個くらい凍結胚をつくっておき、移植前にチョコレート嚢胞の摘出手術を行うのが良いのではないでしょうか。 チョコレート嚢胞は切除しないと治らない病気で、放置すると後々ガンの母体になってしまいます。抱えたままだと刺激物質を腹腔内にずっと置くことになるので、そのままの状態で妊娠するのもあまり良くないと私は思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 下川理世先生(赤坂レディースクリニック) 福岡県出身。山口大学医学部卒。 2000年慶応義塾大学医学部産婦人科入局。その後、静岡赤十字病院産婦人科、市川総合病院産婦人科リプロダクションセンター、湘南IVFクリニック(現メディカルパーク湘南)を経て、2016年4月、赤坂レディースクリニックを開業。婦人科診療から不妊治療まで総合的に行っている。不妊治療に関しては一般不妊治療から体外受精、顕微授精など高度生殖補助技術まで行う。「負担が少なく、医学的根拠に基づく的確でスピーディな医療」をモットーに不妊治療をサポート。≫ 赤坂レディースクリニック
2017.10.25
専門医Q&A 不妊治療