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情熱のカルテ 山口レディスクリニック 山口一雄 先生
不妊で悩む多くの方の力になりたいと決意 ―先生が不妊治療に携わるようになったきっかけを教えてください。 「父が産婦人科医で、その背中を見て育ったこともあり、妊娠や出産という多くの人の喜びに触れる仕事を志すことは、私にとって何の疑いもないあたりまえの道でした。 不妊治療との本格的な出会いは名古屋大学に入ってから。約5年の研修医期間を経て、大学に帰局した際にたまたま配属されたのが、当時、中部地区で唯一、体外受精を行っていた研究グループでした。まだ顕微授精もない頃でしたが、そこで初めて、不妊症や体外受精についての知識をきちんと得て、女性不妊の画期的な治療として興味を持ったのが始まりです。 実際に不妊治療の現場に入って感じたのは、妊娠に至るまでの間にこんなにも多くの方が苦労しておられるのだということ。父と同じ産婦人科医になるのなら、私はその方々の悩みを手助けできる医者になりたいと強く思いました」 子宮内膜症や月経困難症の方が増えています ―近年、不妊で悩む方は増えていますが、クリニックに相談にこられる方のここ数年の傾向などがあれば教えてください。 「やはり一番は女性の晩婚化、妊娠の高齢化です。私が不妊治療に携わり始めた当時は、40歳以上の女性が子供を作りたいということ自体があり得ない時代でした。 もう1点は、現代の女性は生理の回数が増えているということ。私たちの母親やおばあさんくらいの時代では、15歳くらいで生理が始まって50歳くらいで閉経するのが平均的で、生理があるのは約35年間です。その間に5人も子供を産んで母乳で育てれば、約10年間は生理がないわけですから、一生の内に25年くらいしか生理がないということになります。ところが、今の女性は10歳くらいで初潮を迎え、閉経年齢も55歳くらいまで延びています。仮に1人も子供を産まないとすれば、約45年間生理があるということで、その期間は昔の人の約2倍です。 それが原因かどうかはわかりませんが、10~20年前に比べると子宮内膜症がすごく増えているなと思います。また、内膜症の前段階であるような、月経困難症が若年層でも増えている印象もあります。内膜症と診断されますとやはり不妊の原因にもなりますから、そういった意味でも不妊の方は増えているのではないでしょうか」 できるだけ患者さんの希望に沿った治療を行いたい ―先生のクリニックの治療方針や理念を教えてください。 「当院では偏りのないオールマイティな治療法で、できるだけ患者さんの希望に沿った治療を行うことをモットーとしています。自然妊娠したい方は一般不妊治療からスタートしますし、どうしても難しい方には早めのステップアップを勧めます。 ただ、35歳を過ぎますと、同じ治療をやっていてもなかなか結果は得づらくなりますから、35~38歳の方でしたら、一般不妊治療はやっても半年くらいでなるべく長引かせないで進めていきます。38歳を過ぎてしまいますと、できるだけ体外受精を早めに進めて、確率の高い時期に確率の高い方法で結果を出すよう努力しています。 体外受精はあくまでも最終治療としているため、適応のない人に最初から体外受精を勧めることはしません。患者さんの話を十分に聞いて、インフォームドコンセントを大事にしながら治療をしたいと思っています」 長年、不妊治療に携わるからこそわかることも多い ―これまでの治療で印象に残っているケースはありますか? 「新婚当時に旦那さんが交通事故で脊髄を損傷し、車椅子の生活になって、普通の性行為もできなくなってしまったご夫婦がいます。マスターベーションは可能なのですが、分泌物中には精子がいるときといないときがあるという状態でした。そこで、卵子凍結をして、精子が採れたら顕微授精をしてという形で3人のお子さんを授かったケースがあります。20代でまだ若いご夫婦ですが、こういったご夫婦の愛の形もあるのだなと感服しています。3番目のお子さんは半年くらい前に産まれたばかりです。 また、当院は35歳未満なら人工授精を5~6回、38歳くらいで3回くらいの施術回数を目安にしてお話をしているのですが、患者さんがどうしてもと望まれれば、無理にステップアップはできません。人工授精に必要な精子は1千万くらいといわれていますが、なかには100万くらいしかない精子でも、何度目かの人工授精で妊娠したケースがあります。 女性の妊娠年齢の上限についても、42歳までは半分くらいの方が妊娠して赤ちゃんの出産までいける流れがあるのですが、43歳を過ぎると8~9割の方が妊娠しても初期の段階で流産してしまいます。ところがこれが自然妊娠になると、意外と45歳くらいの方でも妊娠・出産までたどり着けるケースがあります。もちろん個体差はあるのでしょうが、自然妊娠の方が幅が広いのかなと思うこともあり、長年、治療の現場にいるからこそ医療というのはデータ通りにはいかないものだということも実感します」 正しい情報を手に入れていい結果に早く出会ってほしい ―これから治療を始めたいという方に向けて、クリニックを選ぶ際のポイントやアドバイスをお願いします。 「産婦人科というのは、大きく3つに分かれています。ひとつは分娩を中心にした産科クリニック、ふたつめは、一般不妊治療程度は行うけれど体外受精までは行わない一般的な婦人科、そして当院のように不妊治療に力を入れた専門的なクリニックです。 ただ、それは患者さんにとってはなかなか分かりづらいところ。診療科目の標榜方法として、看板には産婦人科、産科、婦人科としか表記できませんから、不妊症なのに産科クリニックに行ってしまい、無駄な時間とお金と労力を使うことにもなりかねません。 不妊症の患者さんはおよそ二通りで、ネットなどですごく勉強されている方もいれば、まったく知識のない方もいます。ネット上の情報がすべて真実とはいえませんので、あまり情報過多になってもいけませんが、クリニックのHPなどでどんな治療ができるのかを確認することはお勧めします。産婦人科だからどこへ行っても一緒だろうと思っていると、それは全然違うのです。 また、中学生や高校生でも月経困難症で受診される方がいますが、今のお母さんの世代はどうしてもピルという言葉に抵抗があるようです。現在、日本で認可されているOC(低容量ピル)・LEP(低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤)は、全世界でも広く使用されて安全性も十分に保証されている月経困難症などの治療薬です。OC・LEPでは、月経を排卵のない消退出血にして、上記のようにもともと多すぎる月経の回数を減らして卵巣を少し休ませることができるため、将来的な子宮内膜症などの予防にも繋がります。そういった正しい知識も広く認知されるといいですね。 当院では電話やFAXなどで、来院前の事前相談も受け付けています。そのような気軽な相談ツールを活用し、患者さん自身も情報管理を大事にして、確かな治療でいい結果に早く出会ってほしいと思います」 お話を伺った先生のご紹介 山口 一雄 先生(山口レディスクリニック) 順天堂大学医学部卒業。名古屋第一赤十字病院にて研修後、名古屋大学医学部付属病院産婦人科にて不妊症、内分泌の研究に携わり医学博士号を取得。社会保険中京病院産婦人科医長、名古屋記念病院内科勤務を経て、平成12年より現職。趣味は休日の午前中や日曜、祝日のテニスという先生。通勤や昼休みには自転車を愛用し、「いつでも万全の体制で患者さんのお役に立つため、常に健康には気をつけています」とのこと。 ≫ 山口レディスクリニック 不妊で悩む多くの方の力になりたいと決意 ―先生が不妊治療に携わるようになったきっかけを教えてください。 「父が産婦人科医で、その背中を見て育ったこともあり、妊娠や出産という多くの人の喜びに触れる仕事を志すことは、私にとって何の疑いもないあたりまえの道でした。 不妊治療との本格的な出会いは名古屋大学に入ってから。約5年の研修医期間を経て、大学に帰局した際にたまたま配属されたのが、当時、中部地区で唯一、体外受精を行っていた研究グループでした。まだ顕微授精もない頃でしたが、そこで初めて、不妊症や体外受精についての知識をきちんと得て、女性不妊の画期的な治療として興味を持ったのが始まりです。 実際に不妊治療の現場に入って感じたのは、妊娠に至るまでの間にこんなにも多くの方が苦労しておられるのだということ。父と同じ産婦人科医になるのなら、私はその方々の悩みを手助けできる医者になりたいと強く思いました」 子宮内膜症や月経困難症の方が増えています ―近年、不妊で悩む方は増えていますが、クリニックに相談にこられる方のここ数年の傾向などがあれば教えてください。 「やはり一番は女性の晩婚化、妊娠の高齢化です。私が不妊治療に携わり始めた当時は、40歳以上の女性が子供を作りたいということ自体があり得ない時代でした。 もう1点は、現代の女性は生理の回数が増えているということ。私たちの母親やおばあさんくらいの時代では、15歳くらいで生理が始まって50歳くらいで閉経するのが平均的で、生理があるのは約35年間です。その間に5人も子供を産んで母乳で育てれば、約10年間は生理がないわけですから、一生の内に25年くらいしか生理がないということになります。ところが、今の女性は10歳くらいで初潮を迎え、閉経年齢も55歳くらいまで延びています。仮に1人も子供を産まないとすれば、約45年間生理があるということで、その期間は昔の人の約2倍です。 それが原因かどうかはわかりませんが、10~20年前に比べると子宮内膜症がすごく増えているなと思います。また、内膜症の前段階であるような、月経困難症が若年層でも増えている印象もあります。内膜症と診断されますとやはり不妊の原因にもなりますから、そういった意味でも不妊の方は増えているのではないでしょうか」 できるだけ患者さんの希望に沿った治療を行いたい ―先生のクリニックの治療方針や理念を教えてください。 「当院では偏りのないオールマイティな治療法で、できるだけ患者さんの希望に沿った治療を行うことをモットーとしています。自然妊娠したい方は一般不妊治療からスタートしますし、どうしても難しい方には早めのステップアップを勧めます。 ただ、35歳を過ぎますと、同じ治療をやっていてもなかなか結果は得づらくなりますから、35~38歳の方でしたら、一般不妊治療はやっても半年くらいでなるべく長引かせないで進めていきます。38歳を過ぎてしまいますと、できるだけ体外受精を早めに進めて、確率の高い時期に確率の高い方法で結果を出すよう努力しています。 体外受精はあくまでも最終治療としているため、適応のない人に最初から体外受精を勧めることはしません。患者さんの話を十分に聞いて、インフォームドコンセントを大事にしながら治療をしたいと思っています」 長年、不妊治療に携わるからこそわかることも多い ―これまでの治療で印象に残っているケースはありますか? 「新婚当時に旦那さんが交通事故で脊髄を損傷し、車椅子の生活になって、普通の性行為もできなくなってしまったご夫婦がいます。マスターベーションは可能なのですが、分泌物中には精子がいるときといないときがあるという状態でした。そこで、卵子凍結をして、精子が採れたら顕微授精をしてという形で3人のお子さんを授かったケースがあります。20代でまだ若いご夫婦ですが、こういったご夫婦の愛の形もあるのだなと感服しています。3番目のお子さんは半年くらい前に産まれたばかりです。 また、当院は35歳未満なら人工授精を5~6回、38歳くらいで3回くらいの施術回数を目安にしてお話をしているのですが、患者さんがどうしてもと望まれれば、無理にステップアップはできません。人工授精に必要な精子は1千万くらいといわれていますが、なかには100万くらいしかない精子でも、何度目かの人工授精で妊娠したケースがあります。 女性の妊娠年齢の上限についても、42歳までは半分くらいの方が妊娠して赤ちゃんの出産までいける流れがあるのですが、43歳を過ぎると8~9割の方が妊娠しても初期の段階で流産してしまいます。ところがこれが自然妊娠になると、意外と45歳くらいの方でも妊娠・出産までたどり着けるケースがあります。もちろん個体差はあるのでしょうが、自然妊娠の方が幅が広いのかなと思うこともあり、長年、治療の現場にいるからこそ医療というのはデータ通りにはいかないものだということも実感します」 正しい情報を手に入れていい結果に早く出会ってほしい ―これから治療を始めたいという方に向けて、クリニックを選ぶ際のポイントやアドバイスをお願いします。 「産婦人科というのは、大きく3つに分かれています。ひとつは分娩を中心にした産科クリニック、ふたつめは、一般不妊治療程度は行うけれど体外受精までは行わない一般的な婦人科、そして当院のように不妊治療に力を入れた専門的なクリニックです。 ただ、それは患者さんにとってはなかなか分かりづらいところ。診療科目の標榜方法として、看板には産婦人科、産科、婦人科としか表記できませんから、不妊症なのに産科クリニックに行ってしまい、無駄な時間とお金と労力を使うことにもなりかねません。 不妊症の患者さんはおよそ二通りで、ネットなどですごく勉強されている方もいれば、まったく知識のない方もいます。ネット上の情報がすべて真実とはいえませんので、あまり情報過多になってもいけませんが、クリニックのHPなどでどんな治療ができるのかを確認することはお勧めします。産婦人科だからどこへ行っても一緒だろうと思っていると、それは全然違うのです。 また、中学生や高校生でも月経困難症で受診される方がいますが、今のお母さんの世代はどうしてもピルという言葉に抵抗があるようです。現在、日本で認可されているOC(低容量ピル)・LEP(低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤)は、全世界でも広く使用されて安全性も十分に保証されている月経困難症などの治療薬です。OC・LEPでは、月経を排卵のない消退出血にして、上記のようにもともと多すぎる月経の回数を減らして卵巣を少し休ませることができるため、将来的な子宮内膜症などの予防にも繋がります。そういった正しい知識も広く認知されるといいですね。 当院では電話やFAXなどで、来院前の事前相談も受け付けています。そのような気軽な相談ツールを活用し、患者さん自身も情報管理を大事にして、確かな治療でいい結果に早く出会ってほしいと思います」 お話を伺った先生のご紹介 山口 一雄 先生(山口レディスクリニック) 順天堂大学医学部卒業。名古屋第一赤十字病院にて研修後、名古屋大学医学部付属病院産婦人科にて不妊症、内分泌の研究に携わり医学博士号を取得。社会保険中京病院産婦人科医長、名古屋記念病院内科勤務を経て、平成12年より現職。趣味は休日の午前中や日曜、祝日のテニスという先生。通勤や昼休みには自転車を愛用し、「いつでも万全の体制で患者さんのお役に立つため、常に健康には気をつけています」とのこと。 ≫ 山口レディスクリニック
2017.10.23
コラム 不妊治療
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これから妊活を始める方にーー女性編
これから妊活を始める方にーー女性編 婚約が整った、または、新婚の方がぼんやりと考えていることのひとつに 「赤ちゃん、どうしようかしら?」というのがあるのではないでしょうか。また、「そろそろ赤ちゃんが欲しいけど、その兆しがなさそう」と、ちょっと不安になっている方もいるでしょう。 そんな妊活を考え始めている方が、最初に行って欲しいことは、基礎体温をつけて自分のホルモンのバランスを知っていただくことです。 基礎体温は2相性になっていますか? また、排卵日や排卵日までのおりものがわかるかなど、基本的なことを確認してみましょう。 女性には初経が始まって閉経するまで毎月繰り返される、月経周期のリズムがあります。月経周期によって女性ホルモンの分泌が異なり、体調も変化するのです。このリズムが整っていなければ、基礎体温サイクルも乱れてしまいます。 基礎体温のパターンは正常型以外にダラダラ型、凸状型、高温期低温型など、大きく9つのパターンがあるのです。妊活ではそれぞれの状況を考慮して、自分にあった適切な対応が必要になります。 妊活中は最低週1回の夫婦生活が望ましく、さらに排卵日5日前から2〜3回、つまり1日おきにタイミングをとってほしいのです。正確な排卵日が知りたいと、排卵チェッカーで確認するのは構いませんが、それに頼りすぎるのは考えものです。できるなら基礎体温とおりもので排卵をみてください。排卵したことを知ることと、妊娠しやすいタイミングをとることは異なります。 36度以下の低体温の女性は女性ホルモンの働きが活発ではないので冷え性対策が必要です。お腹、へそ下、仙骨、太もも辺りが冷たくなっているケースが多いので重点的にケアします。冷え性のケアというと、カイロ、厚着などを考えがちですが、このように外側から温めるのは逆効果ですのでご注意ください。体表を温めることは、結果として深部の血流の不足傾向を生みます。冷え性は体の中から温めることが必要です。漢方と鍼灸の組み合わせでケアすると、体の中から温まっていく感じが実感できるはずです。 「ひょっとして不妊症かな」と悩んだ時、高度医療の方が力強い、分かりやすいというイメージがあるようです。自分の不妊の原因がどこにあるのかを診るのには高度医療がとても役立つと思います。 しかし、そこにあまりにも大きな期待をかけすぎず、あわせて自分の体を大切にすることや、夫婦のタイミングの取り方、生活の仕方を振り返って見る必要があるのではないでしょうか。基本をないがしろにして高度医療を受けるのは本末転倒な気がします。 中医学の素晴らしさ 皆さんは中医学をご存知ですか? 漢方薬や鍼灸治療・薬膳・気功など様々なコンテンツがありますね。特に治療に関わる場合、漢方薬と鍼灸のことを指します。日本では別々に治療するケースが多いのですが、本来の治療では組み合わせることがとても重要です。 1+1は2ではありません。中医学では漢方薬と鍼灸治療の組み合わせることで、とても素晴らしい効果を発揮しています。 漢方薬は患部に届いて初めて効果が出ます。だから、弱った臓器の血流を鍼灸で回復させる。 ぜひ、あなたに合った組み合わせ方法を中医学の誠心堂へご相談ください。 株式会社誠心堂薬局代表取締役 西野 裕一先生株式会社誠心堂薬局代表取締役。 薬剤師・鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓発・普及させる活動に尽力。著書多数。≫ 誠心堂薬局 関連コラム ≫ くりかえす12週までの流産の3割は防ぐことができる ≫ 誠心堂での妊活レポート−3 ≫ 誠心堂での妊活レポート−2 ≫ 誠心堂での妊活レポート−1 ≫ 更年期の尿モレは漢方薬と鍼灸で相談を ≫ 尿モレの情報は出産前に収集しておこう ≫ 三焦調整法で卵子の質を守る-2 <外部サイト>店舗で相談してみる→ 誠心堂薬局 http://www.seishin-do.co.jp/rd/ これから妊活を始める方にーー女性編 婚約が整った、または、新婚の方がぼんやりと考えていることのひとつに 「赤ちゃん、どうしようかしら?」というのがあるのではないでしょうか。また、「そろそろ赤ちゃんが欲しいけど、その兆しがなさそう」と、ちょっと不安になっている方もいるでしょう。 そんな妊活を考え始めている方が、最初に行って欲しいことは、基礎体温をつけて自分のホルモンのバランスを知っていただくことです。 基礎体温は2相性になっていますか? また、排卵日や排卵日までのおりものがわかるかなど、基本的なことを確認してみましょう。 女性には初経が始まって閉経するまで毎月繰り返される、月経周期のリズムがあります。月経周期によって女性ホルモンの分泌が異なり、体調も変化するのです。このリズムが整っていなければ、基礎体温サイクルも乱れてしまいます。 基礎体温のパターンは正常型以外にダラダラ型、凸状型、高温期低温型など、大きく9つのパターンがあるのです。妊活ではそれぞれの状況を考慮して、自分にあった適切な対応が必要になります。 妊活中は最低週1回の夫婦生活が望ましく、さらに排卵日5日前から2〜3回、つまり1日おきにタイミングをとってほしいのです。正確な排卵日が知りたいと、排卵チェッカーで確認するのは構いませんが、それに頼りすぎるのは考えものです。できるなら基礎体温とおりもので排卵をみてください。排卵したことを知ることと、妊娠しやすいタイミングをとることは異なります。 36度以下の低体温の女性は女性ホルモンの働きが活発ではないので冷え性対策が必要です。お腹、へそ下、仙骨、太もも辺りが冷たくなっているケースが多いので重点的にケアします。冷え性のケアというと、カイロ、厚着などを考えがちですが、このように外側から温めるのは逆効果ですのでご注意ください。体表を温めることは、結果として深部の血流の不足傾向を生みます。冷え性は体の中から温めることが必要です。漢方と鍼灸の組み合わせでケアすると、体の中から温まっていく感じが実感できるはずです。 「ひょっとして不妊症かな」と悩んだ時、高度医療の方が力強い、分かりやすいというイメージがあるようです。自分の不妊の原因がどこにあるのかを診るのには高度医療がとても役立つと思います。 しかし、そこにあまりにも大きな期待をかけすぎず、あわせて自分の体を大切にすることや、夫婦のタイミングの取り方、生活の仕方を振り返って見る必要があるのではないでしょうか。基本をないがしろにして高度医療を受けるのは本末転倒な気がします。 中医学の素晴らしさ 皆さんは中医学をご存知ですか? 漢方薬や鍼灸治療・薬膳・気功など様々なコンテンツがありますね。特に治療に関わる場合、漢方薬と鍼灸のことを指します。日本では別々に治療するケースが多いのですが、本来の治療では組み合わせることがとても重要です。 1+1は2ではありません。中医学では漢方薬と鍼灸治療の組み合わせることで、とても素晴らしい効果を発揮しています。 漢方薬は患部に届いて初めて効果が出ます。だから、弱った臓器の血流を鍼灸で回復させる。 ぜひ、あなたに合った組み合わせ方法を中医学の誠心堂へご相談ください。 株式会社誠心堂薬局代表取締役 西野 裕一先生株式会社誠心堂薬局代表取締役。 薬剤師・鍼灸師。北里大学薬学部卒。東京医療福祉専門学校鍼灸科卒。中国漢方普及協会会長。日本中医学会評議員。漢方・鍼灸をはじめとする中医学の有用性を啓発・普及させる活動に尽力。著書多数。≫ 誠心堂薬局 関連コラム ≫ くりかえす12週までの流産の3割は防ぐことができる ≫ 誠心堂での妊活レポート−3 ≫ 誠心堂での妊活レポート−2 ≫ 誠心堂での妊活レポート−1 ≫ 更年期の尿モレは漢方薬と鍼灸で相談を ≫ 尿モレの情報は出産前に収集しておこう ≫ 三焦調整法で卵子の質を守る-2 <外部サイト>店舗で相談してみる→ 誠心堂薬局 http://www.seishin-do.co.jp/rd/
2017.10.20
コラム 不妊治療
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胚移植 ホルモン値
「色々調べてるとe2がとても低いような気がします…しかし医師からは移植おっけーとされ移植しました。」
2017.10.17
専門医Q&A 女性の健康
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黄体機能不全でのIVF
黄体機能不全でのIVF 五十嵐 俊夫 先生(いがらしクリニック) 相談者:シャネさん(29歳) 黄体機能不全でのIVF 不妊治療を4年続けています。かつては30歳までには出産したいと夢見ていましたが、かれこれ4年経ってしまい、30歳目前となってしまいました。周囲が次々と妊娠・出産するのを見て、毎日家で泣いてばかりで疲れてしまいました。夫にも申し訳ない気持ちでいっぱいです。子連れを見てひがんでしまう自分もすごく嫌いで、子宝グッズが溜まる一方の生活にも飽き飽きしました。 これからIVF(体外受精)に進むつもりなのですが、私は黄体機能不全です。黄体機能不全の方で、体外受精で妊娠され、出産された方がいましたら、何度目のIVFで妊娠されたのかが知りたいです。 黄体機能不全はIVFの妨げになりますか。 IVFで黄体機能不全が問題になるのは、新鮮胚移植を行うときとホルモン補充周期で凍結胚融解移植を行うときです。この場合は誰でもみんな黄体機能不全になると考えられています。すでに不妊治療で通院されているのなら、今までのデータも参考にして担当医がきちんと黄体ホルモンを補充してコントロールしてくれるので、安心してください。黄体機能不全であっても、妊娠・出産された方はたくさんいらっしゃいますから、大いに希望を持ってIVFに進んでください。 黄体機能不全は不妊の原因になり得ますか。 一般的にはこれまで、基礎体温の高温期が12日より短い、0.3℃以上体温が上がらない、プロゲステロンの数値が10以下などであると、黄体機能不全と診断されてきました。そのため、改善のために黄体ホルモンを補充するなどしてきたのですが、実は近年では「黄体機能不全」という概念そのものがなくなりつつあります。 なぜなら、黄体ホルモンは1日の内でも変動が激しく、正確な数値を測るのがとても困難で、診断を下すのが難しいからです。2015年に発表された論文でも、「不妊を引き起こす独立した疾患としての黄体機能不全は確認されていない」と報告されました。 黄体機能の異常は存在しますが、甲状腺機能の異常、乳漏症といった疾患をともなわない限りは、黄体機能不全は治療の対象になりません。自然周期においても、「黄体機能不全症に対する治療を試みても、妊娠率の上昇は得られない」と論文は述べています。 つまり、甲状腺機能異常によるTSHの上昇や乳漏症によるプロラクチンの上昇は、黄体機能不全を起こし不妊の原因になり得ますが、それ以外は治療の対象とはならないのです。 今後の治療において、相談者さんにアドバイスを! シャネさんは治療期間が4年で、「これからIVFに進む」とありますが、これまでどのような治療をされてきたのでしょうか? ご主人の精子データをはじめ、検査結果の記載がないので何とも言えませんが、必要な検査はきちんと受けて、担当医とよく話し合うことが大切です。もしかしたら、「まだ20代だから」とちょっと治療をお休みしたりされていたのかもしれませんね。きちんと通院したのに結果が出ずに「毎日泣いてばかり」ということでしたら、気持ちを前向きに切り替えてIVFに進んでください。 ストレスは、不妊はもちろん健康を脅かす大敵ですから、どうか明るい家庭を心がけ、ご主人とも仲良くしてください。 五十嵐先生より まとめ 黄体機能不全は、妊娠の妨げとなる決定的な疾患ではなくなりました。IVFに進むにあたってはホルモンのコントロールも同時に行われるので、黄体機能不全を問題視する必要はありません。心配し過ぎず、担当医とよく話し合って治療を進めてください。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 五十嵐 俊夫 先生(いがらしクリニック 院長) 産婦人科専門医、日本生殖医学会会員、母体保護法指定医。昭和60年埼玉医科大学卒業、日本医科大学産婦人科入局。平成5年 日本医科大学大学院卒業、医学博士取得。日本医科大学千葉北総病院を経て平成13年より現職。一般不妊、高度生殖医療はもとより、更年期や婦人科系がん検診などにも手厚く、女性の一生を幅広くサポート。ご趣味はスポーツ全般で、フルマラソン5回完走。この夏休みは約30年ぶりに米国カリフォルニア州で過ごされ、トレッキングや湖畔でのキャンプなどで自然を満喫されたそう。 ≫ いがらしクリニック 黄体機能不全でのIVF 五十嵐 俊夫 先生(いがらしクリニック) 相談者:シャネさん(29歳) 黄体機能不全でのIVF 不妊治療を4年続けています。かつては30歳までには出産したいと夢見ていましたが、かれこれ4年経ってしまい、30歳目前となってしまいました。周囲が次々と妊娠・出産するのを見て、毎日家で泣いてばかりで疲れてしまいました。夫にも申し訳ない気持ちでいっぱいです。子連れを見てひがんでしまう自分もすごく嫌いで、子宝グッズが溜まる一方の生活にも飽き飽きしました。 これからIVF(体外受精)に進むつもりなのですが、私は黄体機能不全です。黄体機能不全の方で、体外受精で妊娠され、出産された方がいましたら、何度目のIVFで妊娠されたのかが知りたいです。 黄体機能不全はIVFの妨げになりますか。 IVFで黄体機能不全が問題になるのは、新鮮胚移植を行うときとホルモン補充周期で凍結胚融解移植を行うときです。この場合は誰でもみんな黄体機能不全になると考えられています。すでに不妊治療で通院されているのなら、今までのデータも参考にして担当医がきちんと黄体ホルモンを補充してコントロールしてくれるので、安心してください。黄体機能不全であっても、妊娠・出産された方はたくさんいらっしゃいますから、大いに希望を持ってIVFに進んでください。 黄体機能不全は不妊の原因になり得ますか。 一般的にはこれまで、基礎体温の高温期が12日より短い、0.3℃以上体温が上がらない、プロゲステロンの数値が10以下などであると、黄体機能不全と診断されてきました。そのため、改善のために黄体ホルモンを補充するなどしてきたのですが、実は近年では「黄体機能不全」という概念そのものがなくなりつつあります。 なぜなら、黄体ホルモンは1日の内でも変動が激しく、正確な数値を測るのがとても困難で、診断を下すのが難しいからです。2015年に発表された論文でも、「不妊を引き起こす独立した疾患としての黄体機能不全は確認されていない」と報告されました。 黄体機能の異常は存在しますが、甲状腺機能の異常、乳漏症といった疾患をともなわない限りは、黄体機能不全は治療の対象になりません。自然周期においても、「黄体機能不全症に対する治療を試みても、妊娠率の上昇は得られない」と論文は述べています。 つまり、甲状腺機能異常によるTSHの上昇や乳漏症によるプロラクチンの上昇は、黄体機能不全を起こし不妊の原因になり得ますが、それ以外は治療の対象とはならないのです。 今後の治療において、相談者さんにアドバイスを! シャネさんは治療期間が4年で、「これからIVFに進む」とありますが、これまでどのような治療をされてきたのでしょうか? ご主人の精子データをはじめ、検査結果の記載がないので何とも言えませんが、必要な検査はきちんと受けて、担当医とよく話し合うことが大切です。もしかしたら、「まだ20代だから」とちょっと治療をお休みしたりされていたのかもしれませんね。きちんと通院したのに結果が出ずに「毎日泣いてばかり」ということでしたら、気持ちを前向きに切り替えてIVFに進んでください。 ストレスは、不妊はもちろん健康を脅かす大敵ですから、どうか明るい家庭を心がけ、ご主人とも仲良くしてください。 五十嵐先生より まとめ 黄体機能不全は、妊娠の妨げとなる決定的な疾患ではなくなりました。IVFに進むにあたってはホルモンのコントロールも同時に行われるので、黄体機能不全を問題視する必要はありません。心配し過ぎず、担当医とよく話し合って治療を進めてください。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 五十嵐 俊夫 先生(いがらしクリニック 院長) 産婦人科専門医、日本生殖医学会会員、母体保護法指定医。昭和60年埼玉医科大学卒業、日本医科大学産婦人科入局。平成5年 日本医科大学大学院卒業、医学博士取得。日本医科大学千葉北総病院を経て平成13年より現職。一般不妊、高度生殖医療はもとより、更年期や婦人科系がん検診などにも手厚く、女性の一生を幅広くサポート。ご趣味はスポーツ全般で、フルマラソン5回完走。この夏休みは約30年ぶりに米国カリフォルニア州で過ごされ、トレッキングや湖畔でのキャンプなどで自然を満喫されたそう。 ≫ いがらしクリニック
2017.10.16
コラム 不妊治療
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胚盤胞移植の位置について
「エコー写真を見る限りでは厚みのある奥の方ではなく、入口付近であまり厚くないところに戻されていました。これでちゃんと着床するのか不安になり質問させて頂きました。」
2017.10.14
専門医Q&A 女性の健康
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AMHが0.16以下ですが、妊娠可能ですか?
相談者:ひろみんさん(38歳) AMHが0.16以下ですが、妊娠可能ですか? クリニックに通って約2年。タイミング4回、人工授精3回、体外受精(新鮮胚グレード3を2個)を1回試みましたが、妊娠しませんでした。人工授精3回を終えてからAMHを測ったところ、0.16以下という数値が。担当医から「どうされますか?この数値なら、諦める方もいらっしゃいますよ」と言われ、頭の中が“?”でいっぱいになりました。 諦めることなどできません! しかし、採卵しても2つしか採取できないのも事実。次もまた採卵からになります。夫に問題はありません。培養士さんは「体外受精でなくとも大丈夫では?」と言ってくださいましたが、次回も体外受精にするか、ホルモン補充をしながら人工授精にするか、迷っています。やれることはやろう!と夫とも話し合い、鍼治療にもと取り組もうかと思っています。どうか、アドバイスをお願いします。 AMHの数値が0.16以下、とはどのような状態ですか。 測定器によって、測れる範囲に違いがあります。0.16“以下”という数値は、おそらくその測定器が測れる最低限度なのだと思います。かなり低い数値ではありますが、AMHの値はあくまでも目安です。AMHの値は卵子化が見込まれる原子卵胞の数を示す数値であり、発育卵胞は含まれません。ひろみんさんの場合は、現段階では採卵が可能で、それも2個採卵できているのですから、それほど悲観的になる必要はないと思います。とはいえ、時間的なゆとりはありませんし、卵子の数は生まれたときから限られています。諦めなければならない理由は見当たりませんが、残された卵子をより有効に活かすには、IVF(体外受精)からさらにステップアップし、ICSI(顕微授精)をご検討されてはとも思います。やれることはやろうと決めたのなら、ぜひ検討してみてください。妊娠の可能性は今のところ十分にあると思われるので、どうぞ諦めずに治療を続けてください。 担当医からは、「諦める人もいますよ」と。 担当医も悪気があって言ったわけではなく、「現実的に厳しい状態にはある」ということをお伝えしたかったのだと思います。女性の体は複雑で、自分自身の体であってもわかっていない女性が多くいます。余談になりますが、「月経があるうちは妊娠可能」と思われがちですが、それも大きな間違い。初潮は12歳、閉経は51歳が平均ですが、初潮から2,3年は排卵しないし、45歳あたりを過ぎると排卵はない。月経=排卵ではないのです。妊娠には確かにタイムリミットがありますが、38歳のひろみんさんならまだ可能性はあります。「できることはすべてやりたい」というお気持ちは、大切になさってください。 鍼治療などにもトライしたい、とあります。 鍼灸治療の効果まではわかりかねますが、ご自分が「気持ちが良い」と思われるなら、取り入れて悪いことはないと思います。でも、「しなければならない」と思うとストレスとなって逆効果になることもあるのでご注意を。治療でも、「失敗したらどうしよう」「妊娠しなかったらどうしよう」と考え過ぎるのもよくないので、不安などはナースなどに打ち明けてください。私にお話しくださっても結構ですが、当院のナースは特に聞き上手ですので、お役に立つと思います。また、ご主人ともぜひ仲良くしてください。妊娠の基本は夫婦間のセックスです。排卵があるのですから、自然妊娠も可能。赤ちゃんが欲しいからという目的ありきではなく、日常的にスキンシップしてほしいですね! 松本先生より まとめ AMHの値はあくまでも目安なので、数値に惑わされないこと。採卵もできているのだから、妊娠は可能。ICSIなどの高度生殖医療を取り入れながらも、自然妊娠の可能性があることも視野に入れ、夫婦間のセックスも大切にしましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 松本 和紀 先生(松本レディースクリニック 院長・理事長) 日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本生殖医学会生殖医療専門医。昭和54年、東京慈恵会医科大学卒。昭和58年、同大学院博士課程修了。昭和60年、医学博士号学位受領。昭和63年~平成2年、英国ロンドン大学ガイズ病院リサーフェロー「脱落膜組織の免疫担当細胞の動態」について研究。平成2年から、東京慈恵会医科大学産婦人科助手、同大産婦人科副医局長・医局長・産婦人科講師(不妊・生殖班班長)兼診療医長を経て、平成11年にクリニック開設。平成24年、医療法人社団愛慈会を設立しリニューアル。 ≫ 松本レディースクリニック AMHが0.16以下ですが、妊娠可能ですか? 松本 和紀 先生(松本レディースクリニック) 相談者:ひろみんさん(38歳) AMHが0.16以下ですが、妊娠可能ですか? クリニックに通って約2年。タイミング4回、人工授精3回、体外受精(新鮮胚グレード3を2個)を1回試みましたが、妊娠しませんでした。人工授精3回を終えてからAMHを測ったところ、0.16以下という数値が。担当医から「どうされますか?この数値なら、諦める方もいらっしゃいますよ」と言われ、頭の中が“?”でいっぱいになりました。 諦めることなどできません! しかし、採卵しても2つしか採取できないのも事実。次もまた採卵からになります。夫に問題はありません。培養士さんは「体外受精でなくとも大丈夫では?」と言ってくださいましたが、次回も体外受精にするか、ホルモン補充をしながら人工授精にするか、迷っています。やれることはやろう!と夫とも話し合い、鍼治療にもと取り組もうかと思っています。どうか、アドバイスをお願いします。 AMHの数値が0.16以下、とはどのような状態ですか。 測定器によって、測れる範囲に違いがあります。0.16“以下”という数値は、おそらくその測定器が測れる最低限度なのだと思います。かなり低い数値ではありますが、AMHの値はあくまでも目安です。AMHの値は卵子化が見込まれる原子卵胞の数を示す数値であり、発育卵胞は含まれません。ひろみんさんの場合は、現段階では採卵が可能で、それも2個採卵できているのですから、それほど悲観的になる必要はないと思います。とはいえ、時間的なゆとりはありませんし、卵子の数は生まれたときから限られています。諦めなければならない理由は見当たりませんが、残された卵子をより有効に活かすには、IVF(体外受精)からさらにステップアップし、ICSI(顕微授精)をご検討されてはとも思います。やれることはやろうと決めたのなら、ぜひ検討してみてください。妊娠の可能性は今のところ十分にあると思われるので、どうぞ諦めずに治療を続けてください。 担当医からは、「諦める人もいますよ」と。 担当医も悪気があって言ったわけではなく、「現実的に厳しい状態にはある」ということをお伝えしたかったのだと思います。女性の体は複雑で、自分自身の体であってもわかっていない女性が多くいます。余談になりますが、「月経があるうちは妊娠可能」と思われがちですが、それも大きな間違い。初潮は12歳、閉経は51歳が平均ですが、初潮から2,3年は排卵しないし、45歳あたりを過ぎると排卵はない。月経=排卵ではないのです。妊娠には確かにタイムリミットがありますが、38歳のひろみんさんならまだ可能性はあります。「できることはすべてやりたい」というお気持ちは、大切になさってください。 鍼治療などにもトライしたい、とあります。 鍼灸治療の効果まではわかりかねますが、ご自分が「気持ちが良い」と思われるなら、取り入れて悪いことはないと思います。でも、「しなければならない」と思うとストレスとなって逆効果になることもあるのでご注意を。治療でも、「失敗したらどうしよう」「妊娠しなかったらどうしよう」と考え過ぎるのもよくないので、不安などはナースなどに打ち明けてください。私にお話しくださっても結構ですが、当院のナースは特に聞き上手ですので、お役に立つと思います。また、ご主人ともぜひ仲良くしてください。妊娠の基本は夫婦間のセックスです。排卵があるのですから、自然妊娠も可能。赤ちゃんが欲しいからという目的ありきではなく、日常的にスキンシップしてほしいですね! 松本先生より まとめ AMHの値はあくまでも目安なので、数値に惑わされないこと。採卵もできているのだから、妊娠は可能。ICSIなどの高度生殖医療を取り入れながらも、自然妊娠の可能性があることも視野に入れ、夫婦間のセックスも大切にしましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 松本 和紀 先生(松本レディースクリニック 院長・理事長) 日本産科婦人科学会専門医、母体保護法指定医、日本生殖医学会生殖医療指導医。昭和54年、東京慈恵会医科大学卒。昭和58年、同大学院博士課程修了。昭和60年、医学博士号学位受領。昭和63年~平成2年、英国ロンドン大学ガイズ病院リサーフェロー「脱落膜組織の免疫担当細胞の動態」について研究。平成2年から、東京慈恵会医科大学産婦人科助手、同大産婦人科副医局長・医局長・産婦人科講師(不妊・生殖班班長)兼診療医長を経て、平成11年にクリニック開設。平成24年、医療法人社団愛慈会に所属しリニューアル。 ≫ 松本レディースクリニック
2017.10.13
コラム 不妊治療
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妊娠期の栄養管理について
妊娠期の栄養管理について 2017/10/10 田村 和司 先生(たむらレディースクリニック) 妊娠したからといって、栄養を摂りすぎない 妊娠中はお腹の赤ちゃんの成長のためだけではなく、妊婦の方自身の健康を維持するために食べ物や飲み物に気を配る必要があります。といっても、特に食事内容を変えることはありません。例えば仕事で忙しい方が、妊娠したから食事をすべて手づくりするというわけにもいかないでしょう。栄養バランスに気を配りながら、今までと同様の食事をしてください。 それよりも注意したいのは『赤ちゃんの分と二人分の栄養を摂らなくては』という間違った考え方。これは、親世代の方や年配の方から言われることが多いようです。しかし、妊娠初期には、妊娠前に比べて一日あたり150キロカロリー増やせばいいとされており、これは小さなお茶碗にごはん軽く一杯程度の量です。妊娠すると栄養吸収率が上がり運動量が減るので、どうしてもふっくらされる方が多いです。出産時までに、標準体型の方なら体重10キロ増までが目安とされていますから、必要以上に栄養を摂りすぎないことが大切です。 アルコールは避け、乳製品、肉や魚の加工方法にも注意して とはいえ、避けなくてはならない食品もあります。赤ちゃんの発育に悪影響を与えるリスクがあるアルコールは控え、カフェインの摂取もほどほどにしましょう。また、加熱処理されていない乳製品、生ハムなどの食肉加工食品、スモークサーモンなどの魚介類加工品は食中毒のリスクがあり、レアステーキやレバ刺しなど、加熱不十分な肉はトキソプラズマ感染の恐れがあるので避けたほうがいいでしょう。妊婦が感染すると赤ちゃんにも感染する恐れが生じ、これが流産や早産などの原因となる場合もあります。 サプリメントを上手に活用して葉酸の補充を 一方で妊娠中には特に意識して摂りたい栄養素もあります。まず、鉄分です。妊娠中は貧血になりやすく、歩いている時にふらつくと危険なので、小松菜や大豆食品などで鉄分を多く摂取して貧血対策をとりましょう。 そして葉酸の摂取も大切です。妊娠初期に葉酸の摂取量が不足すると、赤ちゃんの神経管閉塞障害などのリスクが高まります。葉酸はブロッコリーやホウレン草、イチゴなどに多く含まれていますが、当院では手軽に確実に摂取できる方法としてサプリメントの飲用を勧めています。 さらに、赤ちゃんの骨や歯をつくるカルシウムも、妊婦中にきちんと摂りたい栄養素です。乳製品や小魚などに多く含まれています。 妊娠する前から、栄養バランスのいい食事を心がけたい 妊娠したら食生活を見直すのではなく、健康管理のためにも日頃からバランスのいい食生活を心がけることが大切です。また、初めての妊娠ではネットの情報や周りの人たちの意見に振り回されやすいので、気になることは医師や看護師に直接相談してください。心配だからといって自分で情報を集めすぎて、逆に混乱してしまう方もいらっしゃいます。 サプリメントの是非についても、当院ではていねいに説明し、納得したうえで利用してもらっています。正しい情報を得るために、我々のような妊娠出産の専門家を上手に活用してください。 お話を伺った先生のご紹介 田村 和司 先生(たむらレディースクリニック院長) 昭和大学医学部卒業後、昭和大学病院、共立蒲原総合病院、国立伊東温泉病院など地域中核病院を経て平成12年にクリニック開業。妊娠、出産から産後まで、常にお母さんと赤ちゃんが心身ともに健康でリラックスして過ごせるよう、トータルなサポートを提供している。 自他ともに認めるガンダムファン。趣味はゴルフ。雄大な富士山を望む地元のゴルフ場でプレーを楽しんでいる。 ≫ たむらレディースクリニック 妊娠期の栄養管理について 2017/10/10 田村 和司 先生(たむらレディースクリニック) 妊娠したからといって、栄養を摂りすぎない 妊娠中はお腹の赤ちゃんの成長のためだけではなく、妊婦の方自身の健康を維持するために食べ物や飲み物に気を配る必要があります。といっても、特に食事内容を変えることはありません。例えば仕事で忙しい方が、妊娠したから食事をすべて手づくりするというわけにもいかないでしょう。栄養バランスに気を配りながら、今までと同様の食事をしてください。 それよりも注意したいのは『赤ちゃんの分と二人分の栄養を摂らなくては』という間違った考え方。これは、親世代の方や年配の方から言われることが多いようです。しかし、妊娠初期には、妊娠前に比べて一日あたり150キロカロリー増やせばいいとされており、これは小さなお茶碗にごはん軽く一杯程度の量です。妊娠すると栄養吸収率が上がり運動量が減るので、どうしてもふっくらされる方が多いです。出産時までに、標準体型の方なら体重10キロ増までが目安とされていますから、必要以上に栄養を摂りすぎないことが大切です。 アルコールは避け、乳製品、肉や魚の加工方法にも注意して とはいえ、避けなくてはならない食品もあります。赤ちゃんの発育に悪影響を与えるリスクがあるアルコールは控え、カフェインの摂取もほどほどにしましょう。また、加熱処理されていない乳製品、生ハムなどの食肉加工食品、スモークサーモンなどの魚介類加工品は食中毒のリスクがあり、レアステーキやレバ刺しなど、加熱不十分な肉はトキソプラズマ感染の恐れがあるので避けたほうがいいでしょう。妊婦が感染すると赤ちゃんにも感染する恐れが生じ、これが流産や早産などの原因となる場合もあります。 サプリメントを上手に活用して葉酸の補充を 一方で妊娠中には特に意識して摂りたい栄養素もあります。まず、鉄分です。妊娠中は貧血になりやすく、歩いている時にふらつくと危険なので、小松菜や大豆食品などで鉄分を多く摂取して貧血対策をとりましょう。 そして葉酸の摂取も大切です。妊娠初期に葉酸の摂取量が不足すると、赤ちゃんの神経管閉塞障害などのリスクが高まります。葉酸はブロッコリーやホウレン草、イチゴなどに多く含まれていますが、当院では手軽に確実に摂取できる方法としてサプリメントの飲用を勧めています。 さらに、赤ちゃんの骨や歯をつくるカルシウムも、妊婦中にきちんと摂りたい栄養素です。乳製品や小魚などに多く含まれています。 妊娠する前から、栄養バランスのいい食事を心がけたい 妊娠したら食生活を見直すのではなく、健康管理のためにも日頃からバランスのいい食生活を心がけることが大切です。また、初めての妊娠ではネットの情報や周りの人たちの意見に振り回されやすいので、気になることは医師や看護師に直接相談してください。心配だからといって自分で情報を集めすぎて、逆に混乱してしまう方もいらっしゃいます。 サプリメントの是非についても、当院ではていねいに説明し、納得したうえで利用してもらっています。正しい情報を得るために、我々のような妊娠出産の専門家を上手に活用してください。 お話を伺った先生のご紹介 田村 和司 先生(たむらレディースクリニック院長) 昭和大学医学部卒業後、昭和大学病院、共立蒲原総合病院、国立伊東温泉病院など地域中核病院を経て平成12年にクリニック開業。妊娠、出産から産後まで、常にお母さんと赤ちゃんが心身ともに健康でリラックスして過ごせるよう、トータルなサポートを提供している。 自他ともに認めるガンダムファン。趣味はゴルフ。雄大な富士山を望む地元のゴルフ場でプレーを楽しんでいる。 ≫ たむらレディースクリニック
2017.10.10
インタビュー 妊娠・出産
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超高齢出産と子どもへの影響について
超高齢出産と子どもへの影響について 2017/10/10 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:高齢ママさん(主婦/44歳) 主人共々、全ての検査で問題なしと診断され、最終的に残った妊娠しにくい原因は、最初から予想していましたが、やはり私の年齢でした。1人目は自然妊娠+出産で39歳(40歳目前)で、先日顕微授精で妊娠判定をいただき、現在5週に入ります。毎回検査のたびに「流産したらどうしよう?」との不安がよぎりますが、今のところ何とか順調です。このまま継続できるかは、本当に神のみぞ知る、でわからないのですが、最近私のような高齢(超高齢といった方がよいかも)で出産した場合、子どもへの影響はどうなるのだろうと、不安を感じるようになりました。妊娠を望んでいたのに、こんな不安を感じるのは矛盾しているのですが。先日同じように治療をしていて出産された方が、障害のあるお子さんを出産されたことを知りました。障害の原因は、治療なのか高齢なのか、誰にも知ることはできないと思います。とてもぶしつけな質問になってしまうのですが、超高齢出産での子どもへの影響は、どのようなものがあるのでしょうか。 高齢妊娠における染色体異常、流産の確率は? 高齢妊娠での最初のリスクとして考えられるのは、染色体異常の割合が高いということです。染色体異常の中でもっとも頻度の高い胎児の疾患はダウン症といわれていますが、子どもがダウン症になる確率は25歳で約1250人に1人、35歳で約380人に1人、45歳で約30人に1人といわれており、高齢になればなるほどその確率は上がっていきます。 染色体異常に関してご心配のようでしたら、遺伝カウンセリングを受けるという方法もあります。羊水検査などを受けて出生前診断をするかどうかに関しては、最終的にはご夫婦で決められるのがいいと思うのですが、「高齢だと染色体異常のリスクが高くなる」ということは理解したうえで、決定したほうがいいでしょう。 また、年齢が高くなると流産率も上昇します。妊娠初期の流産率は全体でみると15%程度。年齢が高くなるとどんどん高くなり、45歳になると流産の割合は半数以上といわれているので、今後、定期的な経過観察が必要になってくると思います。 ほかにもリスクはありますが? 40歳半ば、いわゆる中高年という世代になると高血圧や糖尿病などの疾患を持つ方も増えてくるので、そういった合併妊娠である場合、もしくは妊娠することによって血圧や血糖が高くなる妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病も年齢が高くなることでリスクが上昇するので、そういった注意も必要になってくるでしょう。 また、臨床の印象だと、高齢の方は子宮が繊維化して硬くなってくるので、年齢が若い方に比べると出産後の出血量が多くなるような気がします。 村林先生より まとめ 高齢で妊娠しても、元気なお子さんを出産している方もいらっしゃいます。しかし、母体や赤ちゃんへのさまざまな影響やリスクは、若い人に比べて高まることは確かなので、ただ心配するだけでなく、正しい事実をきちんと知って、自覚を持ったうえで妊娠・出産に臨みましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック 超高齢出産と子どもへの影響について 2017/10/10 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:高齢ママさん(主婦/44歳) 主人共々、全ての検査で問題なしと診断され、最終的に残った妊娠しにくい原因は、最初から予想していましたが、やはり私の年齢でした。1人目は自然妊娠+出産で39歳(40歳目前)で、先日顕微授精で妊娠判定をいただき、現在5週に入ります。毎回検査のたびに「流産したらどうしよう?」との不安がよぎりますが、今のところ何とか順調です。このまま継続できるかは、本当に神のみぞ知る、でわからないのですが、最近私のような高齢(超高齢といった方がよいかも)で出産した場合、子どもへの影響はどうなるのだろうと、不安を感じるようになりました。妊娠を望んでいたのに、こんな不安を感じるのは矛盾しているのですが。先日同じように治療をしていて出産された方が、障害のあるお子さんを出産されたことを知りました。障害の原因は、治療なのか高齢なのか、誰にも知ることはできないと思います。とてもぶしつけな質問になってしまうのですが、超高齢出産での子どもへの影響は、どのようなものがあるのでしょうか。 高齢妊娠における染色体異常、流産の確率は? 高齢妊娠での最初のリスクとして考えられるのは、染色体異常の割合が高いということです。染色体異常の中でもっとも頻度の高い胎児の疾患はダウン症といわれていますが、子どもがダウン症になる確率は25歳で約1250人に1人、35歳で約380人に1人、45歳で約30人に1人といわれており、高齢になればなるほどその確率は上がっていきます。 染色体異常に関してご心配のようでしたら、遺伝カウンセリングを受けるという方法もあります。羊水検査などを受けて出生前診断をするかどうかに関しては、最終的にはご夫婦で決められるのがいいと思うのですが、「高齢だと染色体異常のリスクが高くなる」ということは理解したうえで、決定したほうがいいでしょう。 また、年齢が高くなると流産率も上昇します。妊娠初期の流産率は全体でみると15%程度。年齢が高くなるとどんどん高くなり、45歳になると流産の割合は半数以上といわれているので、今後、定期的な経過観察が必要になってくると思います。 ほかにもリスクはありますが? 40歳半ば、いわゆる中高年という世代になると高血圧や糖尿病などの疾患を持つ方も増えてくるので、そういった合併妊娠である場合、もしくは妊娠することによって血圧や血糖が高くなる妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病も年齢が高くなることでリスクが上昇するので、そういった注意も必要になってくるでしょう。 また、臨床の印象だと、高齢の方は子宮が繊維化して硬くなってくるので、年齢が若い方に比べると出産後の出血量が多くなるような気がします。 村林先生より まとめ 高齢で妊娠しても、元気なお子さんを出産している方もいらっしゃいます。しかし、母体や赤ちゃんへのさまざまな影響やリスクは、若い人に比べて高まることは確かなので、ただ心配するだけでなく、正しい事実をきちんと知って、自覚を持ったうえで妊娠・出産に臨みましょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック
2017.10.10
専門医Q&A 妊娠・出産
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妊娠糖尿病について伺いたいです
妊娠糖尿病について伺いたいです 2017/10/10 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:トマトさん(主婦/32歳) 今日ブドウ糖検査で妊娠糖尿病と診断されました。現在10週です。まずは食事療法といわれましたが、今つわりで、食べてるものといえば素麺やパンなど質素なものしか食べていません。この状態で妊娠糖尿病と診断されたのに、食事療法をして改善するのでしょうか? また初期に妊娠糖尿病だと奇形の確率が高くなるとネットに書いてあったため、不安で不安で仕方ありません。初期に妊娠糖尿病と診断されてご出産された方がおられましたら、どのような生活をすればよいか教えていただけないでしょうか? 妊娠糖尿病の診断法は? 妊娠中の初期と中期の2回、スクリーニング検査をして、妊娠糖尿病ではないかどうか確認します。この検査で陽性と判断された場合、トマトさんのようにブドウ糖負荷試験を行って確定診断をするのですが、もともと日本人はインスリン分泌が少ない人種であることに加え、高齢妊娠も増えてきているので、最近は妊娠糖尿病と診断される人が増えてきています。割合でいえば全体の8.5%程度。11~12人に1人くらいは妊娠糖尿病になるといわれているのですね。 妊娠初期に関しては、基本的には随時血糖値(食事をしていても構わない)をみているところが多く、95または100mg/dl以上という値が診断基準となっています。 妊娠糖尿病が胎児に与える影響は? トマトさんは胎児の先天異常の心配をされていますが、先天異常は初期の血糖コントロールが非常に悪い場合に確率が高くなるといわれています。有名なところでは、四肢欠損とか脊椎の下のほうがうまく形成されないような異常ですね。 1つの指標になるのがHbA1cという値。この値が6.4%以上だと先天異常の割合が5.4%、7.4%以上だと17.4%という報告も。妊娠糖尿病と診断されたけれど、値が正常範囲内であれば、先天異常の割合は妊娠糖尿病でない人と同程度といわれています。 このようにHbA1cの値が上がるにつれて先天異常のリスクも高くなるので、通常の血糖値だけではなく、HbA1cにも着目していただくといいかと思います。 また、妊娠初期だけでなく、血糖がずっと高い状態だと赤ちゃんが大きく育ちすぎてしまったり、逆に栄養状態が悪くて育たなくなってしまうことも。肺の成熟が遅れる、生まれてから黄疸になりやすくなる、低血糖になるなどのリスクも考えられます。 お母さん、赤ちゃんともに健康な状態で妊娠継続、出産するためには、きちんと血糖コントロールをすることが重要になってきます。 妊娠糖尿病の治療法は? 治療としては、トマトさんも指導されたようにまずは食事療法ということになります。食事療法を開始し、必要であれば血糖測定をして、血糖値が基準値よりも高い状態が何度か出てくるようであれば、インスリン治療を行います。 インスリンは分子量が大きく胎盤を通過しないので、妊娠中でも使用できるのですが、注射でしか使うことができないので、1日何回もとなると妊婦さんにとっては負担になるかもしれません。ですから、まずは食事でしっかりコントロールしていくのが最初の選択になるでしょう。 食事療法は、やみくもにカロリーを制限したらいいというものではありません。糖尿病というと糖質制限を考えますが、炭水化物は赤ちゃんの唯一の栄養になってくるので、バランスよくコントロールしていくことが必要です。 村林先生より まとめ 妊娠糖尿病の治療は食事療法が基本。体重過多でダイエットが必要だったり、つわりできちんと食事が摂れない場合、何を食べたらいいか迷ってしまう人も多いと思います。不安な時は通院している施設や保健所などに相談して、管理栄養士による栄養指導を受けてみましょう。適切なメニュー提案や必要な栄養素など、わかりやすく指導してもらえると思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック 妊娠糖尿病について伺いたいです 2017/10/10 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:トマトさん(主婦/32歳) 今日ブドウ糖検査で妊娠糖尿病と診断されました。現在10週です。まずは食事療法といわれましたが、今つわりで、食べてるものといえば素麺やパンなど質素なものしか食べていません。この状態で妊娠糖尿病と診断されたのに、食事療法をして改善するのでしょうか? また初期に妊娠糖尿病だと奇形の確率が高くなるとネットに書いてあったため、不安で不安で仕方ありません。初期に妊娠糖尿病と診断されてご出産された方がおられましたら、どのような生活をすればよいか教えていただけないでしょうか? 妊娠糖尿病の診断法は? 妊娠中の初期と中期の2回、スクリーニング検査をして、妊娠糖尿病ではないかどうか確認します。この検査で陽性と判断された場合、トマトさんのようにブドウ糖負荷試験を行って確定診断をするのですが、もともと日本人はインスリン分泌が少ない人種であることに加え、高齢妊娠も増えてきているので、最近は妊娠糖尿病と診断される人が増えてきています。割合でいえば全体の8.5%程度。11~12人に1人くらいは妊娠糖尿病になるといわれているのですね。 妊娠初期に関しては、基本的には随時血糖値(食事をしていても構わない)をみているところが多く、95または100mg/dl以上という値が診断基準となっています。 妊娠糖尿病が胎児に与える影響は? トマトさんは胎児の先天異常の心配をされていますが、先天異常は初期の血糖コントロールが非常に悪い場合に確率が高くなるといわれています。有名なところでは、四肢欠損とか脊椎の下のほうがうまく形成されないような異常ですね。 1つの指標になるのがHbA1cという値。この値が6.4%以上だと先天異常の割合が5.4%、7.4%以上だと17.4%という報告も。妊娠糖尿病と診断されたけれど、値が正常範囲内であれば、先天異常の割合は妊娠糖尿病でない人と同程度といわれています。 このようにHbA1cの値が上がるにつれて先天異常のリスクも高くなるので、通常の血糖値だけではなく、HbA1cにも着目していただくといいかと思います。 また、妊娠初期だけでなく、血糖がずっと高い状態だと赤ちゃんが大きく育ちすぎてしまったり、逆に栄養状態が悪くて育たなくなってしまうことも。肺の成熟が遅れる、生まれてから黄疸になりやすくなる、低血糖になるなどのリスクも考えられます。 お母さん、赤ちゃんともに健康な状態で妊娠継続、出産するためには、きちんと血糖コントロールをすることが重要になってきます。 妊娠糖尿病の治療法は? 治療としては、トマトさんも指導されたようにまずは食事療法ということになります。食事療法を開始し、必要であれば血糖測定をして、血糖値が基準値よりも高い状態が何度か出てくるようであれば、インスリン治療を行います。 インスリンは分子量が大きく胎盤を通過しないので、妊娠中でも使用できるのですが、注射でしか使うことができないので、1日何回もとなると妊婦さんにとっては負担になるかもしれません。ですから、まずは食事でしっかりコントロールしていくのが最初の選択になるでしょう。 食事療法は、やみくもにカロリーを制限したらいいというものではありません。糖尿病というと糖質制限を考えますが、炭水化物は赤ちゃんの唯一の栄養になってくるので、バランスよくコントロールしていくことが必要です。 村林先生より まとめ 妊娠糖尿病の治療は食事療法が基本。体重過多でダイエットが必要だったり、つわりできちんと食事が摂れない場合、何を食べたらいいか迷ってしまう人も多いと思います。不安な時は通院している施設や保健所などに相談して、管理栄養士による栄養指導を受けてみましょう。適切なメニュー提案や必要な栄養素など、わかりやすく指導してもらえると思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック
2017.10.10
専門医Q&A 妊娠・出産
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妊娠初期の出血について
妊娠初期の出血について 2017/10/5 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:ねこむすめさん(主婦/31歳) 現在妊娠6週前半なのですが、出血があって不安です。 4週頃から着床出血らしい出血が少量続くことがあったりして、病院でも、多少の出血や茶色のおりものは正常の範囲だといわれて、その後も時々茶色のおりものが続いていても、「大丈夫かな」と思っていました。 でも、一昨日の夜から出血が増えて昨日慌てて病院に行ったら、超音波写真を見て「胎のうの側で出血していますね。赤ちゃんの姿もまだ見えていませんね。これが正常の範囲か、流産の可能性があるかは何ともいえません」といわれてしまいました。 病院から帰った後も一時出血が増えていましたが、だんだん色が赤から茶色に変わってきていて量も減ったので、とりあえず今は家で安静にして過ごしています。 でも茶色の血に粘膜みたいなものも混じっていることがあって、「これは何?」という感じです。こんな出血があっても、無事に赤ちゃんが生まれたよ、という話が聞ければ少しは安心できるのですが……。 これはどんな状態だといえるのでしょうか? 病名をつけるとすると、切迫流産という状態になります。妊娠初期、子宮の入り口は閉じているのですが、子宮からの出血が起こってきている。そのような状況を全部まとめて、切迫流産という病名で呼んでいます。ただ、出血が起こったから必ず流産するというわけではなく、その後、出血が止まっていけば妊娠継続が可能になることもあります。 ねこむすめさんは胎のうの横に出血があるそうですが、これは絨毛膜下血腫といわれるもので、切迫流産に伴って認められることがあるのですね。絨毛膜下血腫がある人とない人を比べると、ある人のほうが流産になる確率は高く、全体の2割くらいといわれています。今後、出血が増えていかないかどうか、注意して観察していく必要があるでしょう。 出血したら流産を疑ったほうがいいのですか? 出血自体が流産の原因ではなく、出血を来す状態というのが流産につながる場合が多いということで、その量が増えていけば流産の確率も高まります。 下着に少し付着するくらいの出血で、その後増えていかなければ、様子を見ていただく方向でいいと思うのですが、普段の生理くらいの量になってくる場合には、一度かかっている施設に連絡して状況の説明を。 出血量が多いと血液の色は赤くなるのですが、量が少ない場合、ちょっと時間が経ってから出てきた血液なので、酸化により茶色になったり、ちょっと黒っぽくなったりします。ねこむすめさんの今の状態は、出血が減ってきていると考えていいでしょう。 出血した場合、対処法は? 安静にしているくらいしか対処法はないのですが、絨毛膜下血腫がある人は、安静にしなかった人に比べて安静にしていた人のほうが流産率は下がったという報告もあるので、やはりこの間は安静を心がけるように。 終日ベッドで寝たきりで過ごすまでではなく、遠出や旅行、運動などは避けて、いつもよりは少し安静を心がける程度と考えていただければいいと思います。 村林先生より まとめ 出血も注意が必要ですが、今後、胎のうが大きくなっていくか、赤ちゃんの心拍が見えてくるかどうか、妊娠継続について最終的にはそこが一番重要になってくるかと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック 妊娠初期の出血について 2017/10/5 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:ねこむすめさん(主婦/31歳) 現在妊娠6週前半なのですが、出血があって不安です。 4週頃から着床出血らしい出血が少量続くことがあったりして、病院でも、多少の出血や茶色のおりものは正常の範囲だといわれて、その後も時々茶色のおりものが続いていても、「大丈夫かな」と思っていました。 でも、一昨日の夜から出血が増えて昨日慌てて病院に行ったら、超音波写真を見て「胎のうの側で出血していますね。赤ちゃんの姿もまだ見えていませんね。これが正常の範囲か、流産の可能性があるかは何ともいえません」といわれてしまいました。 病院から帰った後も一時出血が増えていましたが、だんだん色が赤から茶色に変わってきていて量も減ったので、とりあえず今は家で安静にして過ごしています。 でも茶色の血に粘膜みたいなものも混じっていることがあって、「これは何?」という感じです。こんな出血があっても、無事に赤ちゃんが生まれたよ、という話が聞ければ少しは安心できるのですが……。 これはどんな状態だといえるのでしょうか? 病名をつけるとすると、切迫流産という状態になります。妊娠初期、子宮の入り口は閉じているのですが、子宮からの出血が起こってきている。そのような状況を全部まとめて、切迫流産という病名で呼んでいます。ただ、出血が起こったから必ず流産するというわけではなく、その後、出血が止まっていけば妊娠継続が可能になることもあります。 ねこむすめさんは胎のうの横に出血があるそうですが、これは絨毛膜下血腫といわれるもので、切迫流産に伴って認められることがあるのですね。絨毛膜下血腫がある人とない人を比べると、ある人のほうが流産になる確率は高く、全体の2割くらいといわれています。今後、出血が増えていかないかどうか、注意して観察していく必要があるでしょう。 出血したら流産を疑ったほうがいいのですか? 出血自体が流産の原因ではなく、出血を来す状態というのが流産につながる場合が多いということで、その量が増えていけば流産の確率も高まります。 下着に少し付着するくらいの出血で、その後増えていかなければ、様子を見ていただく方向でいいと思うのですが、普段の生理くらいの量になってくる場合には、一度かかっている施設に連絡して状況の説明を。 出血量が多いと血液の色は赤くなるのですが、量が少ない場合、ちょっと時間が経ってから出てきた血液なので、酸化により茶色になったり、ちょっと黒っぽくなったりします。ねこむすめさんの今の状態は、出血が減ってきていると考えていいでしょう。 出血した場合、対処法は? 安静にしているくらいしか対処法はないのですが、絨毛膜下血腫がある人は、安静にしなかった人に比べて安静にしていた人のほうが流産率は下がったという報告もあるので、やはりこの間は安静を心がけるように。 終日ベッドで寝たきりで過ごすまでではなく、遠出や旅行、運動などは避けて、いつもよりは少し安静を心がける程度と考えていただければいいと思います。 村林先生より まとめ 出血も注意が必要ですが、今後、胎のうが大きくなっていくか、赤ちゃんの心拍が見えてくるかどうか、妊娠継続について最終的にはそこが一番重要になってくるかと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック
2017.10.5
専門医Q&A 妊娠・出産
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【医師取材】妊娠高血圧症候群かも?その原因と可能性とは?
高齢、肥満、塩分過多の食生活を送っている人は妊娠性高血圧症候群のリスクが高まりますが、そのような条件に当てはまらなくてもなることがあります。俵IVFクリニック村林奈緒先生にお聞きしました。
2017.10.5
コラム 女性の健康
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出生前診断を受けるべきか
出生前診断を受けるべきか 2017/10/3 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:タンスさん(主婦/35歳) 産院で出生前診断の案内をされ、こういう検査を受けるかどうかはどう判断すればいいのだろうかと悩んでいます。全員に説明しているそうです。 私は4年の不妊治療で5回目のIVFの末にやっと授かったので、異常があってもあきらめることなんてとてもできないと思っています。でもこの考えは甘いのか?とも……。 羊水検査で障害がわかったのに産むのは、一生苦しむことになる子供には迷惑でしかなく、親のエゴのような気もします。 といいつつ、今15週ですでに胎動が始まっているので、心情的にますますさよならするのはつらい。でも、特に21トリソミーで長生きだった場合、並大抵の苦労ではないでしょうから、あとから後悔なんてしたりするかもしれない? 覚悟がないなら受けない、あるなら受ければいい、という話も聞きますが……。 受ける・受けないの判断はどうすればいいのかわかりません。 出生前診断の対象になる人は? タンスさんが通っている病院では妊婦さん全員に説明しているようですね。染色体異常は高齢妊娠で確率が高くなってきます。施設によって考え方が異なると思いますが、35歳以上、あるいは40歳以上など、ある程度高齢の方に情報提供している場合が多いと思います。 当院では35歳以上の方に検査の説明を、40歳以上の方については「お子さんの染色体異常の確率がかなり高くなります」ということをお伝えしています。積極的にすすめるのではなく、あくまでも情報を提供するという形ですね。 なかには「自分には染色体異常がないことを確認するために受けたい」という方もいらっしゃいますが、陽性に出る確率はある一定の割合であるので、自分が陽性である可能性というのも想定したうえで、検査を受けるか受けないかを決めていただきたいと思います。 出生前診断ではどんな検査をするのですか? 種類としては、胎児の異常を形態的に診断する超音波検査、血液検査、羊水を採って調べる羊水検査などがあります。今回のケースではおそらく、羊水検査を受けるかどうかで悩まれているのではないでしょうか。羊水検査では、染色体異常の中でもっとも多いダウン症の有無を調べることが可能で、その診断精度は98~99%といわれています。 検査を受ける・受けないの診断は? 検査を受けたほうがいいかどうかというのは、非常に難しい問題だと思います。「もし染色体異常の子が生まれたら?」という状況をご主人とよく話し合い、育てていけるのかどうかなど今後のこともしっかり考えたうえで、決めていただくのがいいかと思います。 それでも迷われているようなら、検査を受けて結果を知った時点でもう一度、「妊娠継続すべきか」ということを考えるのも1つの方法なのではないかと思います。 村林先生より まとめ 40歳を過ぎると出生前診断を受ける方の割合は増えます。とはいえ、長い不妊治療を経て妊娠された場合は「どんな子でも受け入れる」と、検査を受けない選択をされる方も。考え方はお一人おひとり違うので、ご家族ともよく話し合ったうえで決めることをおすすめします。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック 出生前診断を受けるべきか 2017/10/3 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:タンスさん(主婦/35歳) 産院で出生前診断の案内をされ、こういう検査を受けるかどうかはどう判断すればいいのだろうかと悩んでいます。全員に説明しているそうです。 私は4年の不妊治療で5回目のIVFの末にやっと授かったので、異常があってもあきらめることなんてとてもできないと思っています。でもこの考えは甘いのか?とも……。 羊水検査で障害がわかったのに産むのは、一生苦しむことになる子供には迷惑でしかなく、親のエゴのような気もします。 といいつつ、今15週ですでに胎動が始まっているので、心情的にますますさよならするのはつらい。でも、特に21トリソミーで長生きだった場合、並大抵の苦労ではないでしょうから、あとから後悔なんてしたりするかもしれない? 覚悟がないなら受けない、あるなら受ければいい、という話も聞きますが……。 受ける・受けないの判断はどうすればいいのかわかりません。 出生前診断の対象になる人は? タンスさんが通っている病院では妊婦さん全員に説明しているようですね。染色体異常は高齢妊娠で確率が高くなってきます。施設によって考え方が異なると思いますが、35歳以上、あるいは40歳以上など、ある程度高齢の方に情報提供している場合が多いと思います。 当院では35歳以上の方に検査の説明を、40歳以上の方については「お子さんの染色体異常の確率がかなり高くなります」ということをお伝えしています。積極的にすすめるのではなく、あくまでも情報を提供するという形ですね。 なかには「自分には染色体異常がないことを確認するために受けたい」という方もいらっしゃいますが、陽性に出る確率はある一定の割合であるので、自分が陽性である可能性というのも想定したうえで、検査を受けるか受けないかを決めていただきたいと思います。 出生前診断ではどんな検査をするのですか? 種類としては、胎児の異常を形態的に診断する超音波検査、血液検査、羊水を採って調べる羊水検査などがあります。今回のケースではおそらく、羊水検査を受けるかどうかで悩まれているのではないでしょうか。羊水検査では、染色体異常の中でもっとも多いダウン症の有無を調べることが可能で、その診断精度は98~99%といわれています。 検査を受ける・受けないの診断は? 検査を受けたほうがいいかどうかというのは、非常に難しい問題だと思います。「もし染色体異常の子が生まれたら?」という状況をご主人とよく話し合い、育てていけるのかどうかなど今後のこともしっかり考えたうえで、決めていただくのがいいかと思います。 それでも迷われているようなら、検査を受けて結果を知った時点でもう一度、「妊娠継続すべきか」ということを考えるのも1つの方法なのではないかと思います。 村林先生より まとめ 40歳を過ぎると出生前診断を受ける方の割合は増えます。とはいえ、長い不妊治療を経て妊娠された場合は「どんな子でも受け入れる」と、検査を受けない選択をされる方も。考え方はお一人おひとり違うので、ご家族ともよく話し合ったうえで決めることをおすすめします。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック
2017.10.3
専門医Q&A 妊娠・出産
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ダウン症について教えてください
ダウン症について教えてください 2017/10/3 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:まなさん(主婦/30歳) 先週、不妊治療をし、やっと主人の姉(39歳)が出産しました。以前、子宮筋腫でお腹を切ったことがあるので、帝王切開で出産しました。生まれてすぐに、義姉の旦那さんが、先生に呼ばれ、「お子さんは、ダウン症の疑いがあり、心臓疾患もある」と言われたそうです。義姉夫婦は、とてもショックを受けていたそうです。 今は、赤ちゃんと無事に何事もなく、病院から退院し、ミルクや母乳をゴクゴク飲んで、元気だそうです。顔は、ちょっと目が吊り上がっているかな?って感じで、普通の赤ちゃんと変わりないです。 ダウン症の赤ちゃんは、あまりミルクや母乳を飲むのが下手で、あまり体重も増えない、と聞いたことがあります。ひょっとしたら、何かの間違い?かもしれないと、周りの私たちは思っているのですが……。 ダウン症児と疑う身体的特徴や疾患は? ダウン症は染色体異常の中でもっとも頻度の高い疾患といわれています。特徴的な顔貌は、目がつり上がっている、鼻が大きめ、舌が長いなど。顔以外では「猿線」といって、手相が横に1本の線になっているような特徴が見られます。 ミルクについては、確かにダウン症児の場合、飲みが悪くなることが多いようです。 また、担当医の先生から「心臓疾患もある」というご説明があったようですが、ダウン症の子というのは心臓の病気や血液の病気などを合併することも多いので、顔つきと心臓の病気、両方の要素があることから、疑いという形になったのではないでしょうか。 子どもがダウン症になる確率はどれくらい? お子さんがダウン症になる確率は35歳で380人に1人、40歳で100人に1人といわれており、高齢になればなるほどその確率は上がっていきます。 年齢の要素が一番大きいのですが、それ以外では、今まで生まれた子に染色体異常の子がいる、あるいはご両親に染色体の転座があったりすると、リスクが高まることがあります。 確定診断は必要ですか? 顔つきはあくまでも人の印象で、結果的にその子の個性の範囲内だったということもあるので、顔貌だけでダウン症だと診断することはありません。確定診断をするには、採血による染色体検査を行うことになります。 現状、健康に問題がないのなら、その検査を絶対にしなければいけないかどうかの判断は難しいのですが、心臓疾患を持っているというのが気になります。心臓の病気も染色体異常がある子とない子とでは予後が変わってくることもあるので、検査をするかしないか、必要なのかどうかも含め、一度相談だけはしっかりされることをおすすめします。 村林先生より まとめ ダウン症の疑いがある場合、まずご両親に詳しくご説明して、染色体検査という流れになるかと思います。検査結果が出るのは1ヵ月、もしくはそれ以上かかることも。戸惑いもあると思いますが、この間、ご家族でもきちんと話し合い、気持ちを確認しておくことが大切だと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック ダウン症について教えてください 2017/10/3 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 相談者:まなさん(主婦/30歳) 先週、不妊治療をし、やっと主人の姉(39歳)が出産しました。以前、子宮筋腫でお腹を切ったことがあるので、帝王切開で出産しました。生まれてすぐに、義姉の旦那さんが、先生に呼ばれ、「お子さんは、ダウン症の疑いがあり、心臓疾患もある」と言われたそうです。義姉夫婦は、とてもショックを受けていたそうです。 今は、赤ちゃんと無事に何事もなく、病院から退院し、ミルクや母乳をゴクゴク飲んで、元気だそうです。顔は、ちょっと目が吊り上がっているかな?って感じで、普通の赤ちゃんと変わりないです。 ダウン症の赤ちゃんは、あまりミルクや母乳を飲むのが下手で、あまり体重も増えない、と聞いたことがあります。ひょっとしたら、何かの間違い?かもしれないと、周りの私たちは思っているのですが……。 ダウン症児と疑う身体的特徴や疾患は? ダウン症は染色体異常の中でもっとも頻度の高い疾患といわれています。特徴的な顔貌は、目がつり上がっている、鼻が大きめ、舌が長いなど。顔以外では「猿線」といって、手相が横に1本の線になっているような特徴が見られます。 ミルクについては、確かにダウン症児の場合、飲みが悪くなることが多いようです。 また、担当医の先生から「心臓疾患もある」というご説明があったようですが、ダウン症の子というのは心臓の病気や血液の病気などを合併することも多いので、顔つきと心臓の病気、両方の要素があることから、疑いという形になったのではないでしょうか。 子どもがダウン症になる確率はどれくらい? お子さんがダウン症になる確率は35歳で380人に1人、40歳で100人に1人といわれており、高齢になればなるほどその確率は上がっていきます。 年齢の要素が一番大きいのですが、それ以外では、今まで生まれた子に染色体異常の子がいる、あるいはご両親に染色体の転座があったりすると、リスクが高まることがあります。 確定診断は必要ですか? 顔つきはあくまでも人の印象で、結果的にその子の個性の範囲内だったということもあるので、顔貌だけでダウン症だと診断することはありません。確定診断をするには、採血による染色体検査を行うことになります。 現状、健康に問題がないのなら、その検査を絶対にしなければいけないかどうかの判断は難しいのですが、心臓疾患を持っているというのが気になります。心臓の病気も染色体異常がある子とない子とでは予後が変わってくることもあるので、検査をするかしないか、必要なのかどうかも含め、一度相談だけはしっかりされることをおすすめします。 村林先生より まとめ ダウン症の疑いがある場合、まずご両親に詳しくご説明して、染色体検査という流れになるかと思います。検査結果が出るのは1ヵ月、もしくはそれ以上かかることも。戸惑いもあると思いますが、この間、ご家族でもきちんと話し合い、気持ちを確認しておくことが大切だと思います。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 村林 奈緒 先生(俵IVFクリニック) 浜松医科大学、三重大学大学院医学系研究科(博士課程)卒業。浜松医科大学「生殖周産期医学講座」准教授。俵IVFクリニックでは不妊治療全般に加え、毎週月曜日・木曜日の午後、生殖周産期外来(妊娠初期の健康管理)を担当。 ≫ 俵IVFクリニック
2017.10.3
専門医Q&A 子育て・教育
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一つだけ大きい卵胞があると、受精率が下がるのでしょうか?
一つだけ大きい卵胞があると、受精率が下がるのでしょうか? 花岡 嘉奈子 先生(はなおかIVFクリニック品川) 相談者:ひーろさん(37歳) 遺残卵胞(?)がある場合の採卵について 不妊専門クリニックに通っています。D3の診察で12mmの卵胞が見え、E2は70位でした。大きな卵胞の他は小さい卵が7つ位見えました。今周期も普通通り採卵周期に入ると言われたのですが、大きい卵胞がある場合受精率が下がるとネットなどで目にします。先生に問題はないか聞いたところ、「良くはないが、この程度の大きさなら問題はない。生理周期が26日と短いから、前の周期の卵胞ではない。良い卵が取れる可能性はある」と言われました。4回目の採卵で、無駄にしたくありません。先生のおっしゃることは正しいのでしょうか?? D3で12㎜の大きな卵胞が1つあるとのことですが、どうして1つだけ大きくなるのでしょうか。 通常D3だと10㎜くらいなので、少し気になりますね。 卵子は排卵の3カ月前から育ち始めています。それぞれの卵子の成長のペースが違い、足並みが揃わないことはあります。また、前の周期も採卵しているのであれば、その周期の卵子が残っていることもありますし、卵胞ではなく水たまりのようなものができているだけということもあります。もう少し育ててみれば、それが何なのかがはっきりわかると思います。 ただ、ひーろさんの場合、前周期の卵胞ではないといわれているとのことなので、1つだけ勢いよく育ったのではないかと思われます。 ネットなどで、大きな卵胞があると受精率が悪くなるといううわさがあるようですが、本当ですか? 大きな卵胞があるからといって、他にいい卵子ができないということはありません。ネット上の噂だけの話ですね。 受精率が低くなるというのは、おそらく大きな卵胞に合わせて採卵をしたために、卵胞の小さい未熟な卵子を採卵してしまっているからだと思います。体外受精だと翌日に受精を確認するまでは成熟卵だったかどうかがわかりません。精子を振りかけて、次の日受精していなければ未成熟卵だった可能性がある、とその時わかるわけです。 顕微授精であれば、授精させる時に卵子の殻をむくので、成熟しているかどうかが受精させる前にわかります。未成熟卵が多ければ採卵の時期が早かったのだということになります。 多くの卵子が成熟するまで待って採卵すれば、一つの大きな卵胞が原因で受精率が低くなるということはありません。 このような場合、採卵はどのようにしたらよいでしょうか? 考えられる方法として、カウフマンで一度リセットをしてまた新たに卵子を育てるか、小さいほうの卵胞が育つまで待ってから採卵する方法があります。 採卵を小さいほうの卵胞に合わせるためには、アンタゴニストなどを使って排卵を抑えます。今12㎜の卵胞が20㎜になった時、他の小さな卵胞は15mmくらいだったとします。その時点でアンタゴニストを使って排卵を抑え、小さい卵胞たちが育つのを待ちます。大きい卵胞が28㎜、小さい卵胞が22㎜くらいになるまで待って採卵すれば、より多くの成熟した状態の卵子を採卵できると思います。 また別の方法として、排卵のトリガーである点鼻薬やHCGを打った後、通常の36時間後ではなく、2時間くらい採卵の時間を遅らせると、成熟卵が多く採れる可能性が高くなります。ただしこの場合は、排卵してしまう可能性もあるということを理解しておく必要があります。 花岡先生より まとめ 大きな卵胞が一つあるからといって、受精率が低くなるということはありません。小さいほうの卵子が成熟するまで待ってから採卵すれば、成熟卵が多く採れて受精の確率も上がると思います。周期が短く排卵が早い人は、早めに採卵しようとするため未成熟卵が多くなりがちです。排卵を抑える薬を使いながら、卵子が成熟するのを待ったほうがいいでしょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 花岡 嘉奈子 先生(はなおかIVFクリニック品川) 1993年東邦大学医学部卒。東邦大学医学部第一産婦人科学教室入局。 大森赤十字病院産婦人科出向、東邦大学医療センター産婦人科、キネマアートクリニックを経て、2008年はなおかレディースクリニック院長に。2012年より現職。 医学博士。産婦人科専門医。生殖医療専門医。 クリニックで一番大切にしているのは、患者さんが誰にでも声をかけやすい雰囲気をつくること。患者さんには日頃から「納得いくまでは帰らないでね」と声をかけているそう。 ≫ はなおかIVFクリニック品川 一つだけ大きい卵胞があると、受精率が下がるのでしょうか? 花岡 嘉奈子 先生(はなおかIVFクリニック品川) 相談者:ひーろさん(37歳) 遺残卵胞(?)がある場合の採卵について 不妊専門クリニックに通っています。D3の診察で12mmの卵胞が見え、E2は70位でした。大きな卵胞の他は小さい卵が7つ位見えました。今周期も普通通り採卵周期に入ると言われたのですが、大きい卵胞がある場合受精率が下がるとネットなどで目にします。先生に問題はないか聞いたところ、「良くはないが、この程度の大きさなら問題はない。生理周期が26日と短いから、前の周期の卵胞ではない。良い卵が取れる可能性はある」と言われました。4回目の採卵で、無駄にしたくありません。先生のおっしゃることは正しいのでしょうか?? D3で12㎜の大きな卵胞が1つあるとのことですが、どうして1つだけ大きくなるのでしょうか。 通常D3だと10㎜くらいなので、少し気になりますね。 卵子は排卵の3カ月前から育ち始めています。それぞれの卵子の成長のペースが違い、足並みが揃わないことはあります。また、前の周期も採卵しているのであれば、その周期の卵子が残っていることもありますし、卵胞ではなく水たまりのようなものができているだけということもあります。もう少し育ててみれば、それが何なのかがはっきりわかると思います。 ただ、ひーろさんの場合、前周期の卵胞ではないといわれているとのことなので、1つだけ勢いよく育ったのではないかと思われます。 ネットなどで、大きな卵胞があると受精率が悪くなるといううわさがあるようですが、本当ですか? 大きな卵胞があるからといって、他にいい卵子ができないということはありません。ネット上の噂だけの話ですね。 受精率が低くなるというのは、おそらく大きな卵胞に合わせて採卵をしたために、卵胞の小さい未熟な卵子を採卵してしまっているからだと思います。体外受精だと翌日に受精を確認するまでは成熟卵だったかどうかがわかりません。精子を振りかけて、次の日受精していなければ未成熟卵だった可能性がある、とその時わかるわけです。 顕微授精であれば、授精させる時に卵子の殻をむくので、成熟しているかどうかが受精させる前にわかります。未成熟卵が多ければ採卵の時期が早かったのだということになります。 多くの卵子が成熟するまで待って採卵すれば、一つの大きな卵胞が原因で受精率が低くなるということはありません。 このような場合、採卵はどのようにしたらよいでしょうか? 考えられる方法として、カウフマンで一度リセットをしてまた新たに卵子を育てるか、小さいほうの卵胞が育つまで待ってから採卵する方法があります。 採卵を小さいほうの卵胞に合わせるためには、アンタゴニストなどを使って排卵を抑えます。今12㎜の卵胞が20㎜になった時、他の小さな卵胞は15mmくらいだったとします。その時点でアンタゴニストを使って排卵を抑え、小さい卵胞たちが育つのを待ちます。大きい卵胞が28㎜、小さい卵胞が22㎜くらいになるまで待って採卵すれば、より多くの成熟した状態の卵子を採卵できると思います。 また別の方法として、排卵のトリガーである点鼻薬やHCGを打った後、通常の36時間後ではなく、2時間くらい採卵の時間を遅らせると、成熟卵が多く採れる可能性が高くなります。ただしこの場合は、排卵してしまう可能性もあるということを理解しておく必要があります。 花岡先生より まとめ 大きな卵胞が一つあるからといって、受精率が低くなるということはありません。小さいほうの卵子が成熟するまで待ってから採卵すれば、成熟卵が多く採れて受精の確率も上がると思います。周期が短く排卵が早い人は、早めに採卵しようとするため未成熟卵が多くなりがちです。排卵を抑える薬を使いながら、卵子が成熟するのを待ったほうがいいでしょう。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 花岡 嘉奈子 先生(はなおかIVFクリニック品川) 1993年東邦大学医学部卒。東邦大学医学部第一産婦人科学教室入局。 大森赤十字病院産婦人科出向、東邦大学医療センター産婦人科、キネマアートクリニックを経て、2008年はなおかレディースクリニック院長に。2012年より現職。 医学博士。産婦人科専門医。生殖医療専門医。 クリニックで一番大切にしているのは、患者さんが誰にでも声をかけやすい雰囲気をつくること。患者さんには日頃から「納得いくまでは帰らないでね」と声をかけているそう。 ≫ はなおかIVFクリニック品川
2017.10.2
専門医Q&A 不妊治療
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2017.8.27 ジネコ妊活セミナー in 福岡
2017年8月27日に行われたジネコ 妊活セミナーより 不妊治療を経験したドクターが教える間違いだらけの不妊治療 2017年8月27日(日)、福岡でに妊活セミナーを開催。「不妊治療を経験したドクターが教える間違いだらけの不妊治療」と題して、井上善仁先生にお話いただきました。その様子を一部ご紹介いたします。 なぜ不妊になるのか 人間は妊孕性がとても低い動物であることをご存知ですか。人間に近いマントヒヒは80%、うさぎは90%、ネズミは一晩オスとメスをケージに入れておけば100%妊娠します。しかし人間の妊娠率はわずか20%にしか過ぎません。妊娠までにはある程度時間がかかるのが普通と考えておくことも大切です。 不妊とは「1年間通常通り性交渉を持っても妊娠しないこと」と定義づけられています。いまは7~8組のカップルに1組が不妊と言われており、日本で約120万組の不妊カップルがいる計算になります。私が婦人科医になった当時は10組にひとり、訪れる人もほとんどが20代でしたが、現在は30代後半から40代が多くを占めます。そのうち1/4が不妊治療を受け、成功するのはその中のおよそ3割程度です。そして現在、不妊治療を受けて誕生した子どもの25人に1人が体外受精児と言われています。 女性は生まれる前から「卵胞」が作られます。卵巣に含まれる原始卵胞の数は減るばかりで、胎児のときには700万個ある卵胞も、生まれたときにはすでに200万個に減り、初経をむかえる平均年齢12歳頃には数十万個になっています。20代の妊娠適齢期で10万個、不妊治療を開始する事が多い35歳くらいになると2.5万個にまで減少。そして47歳くらいで1000個になります。原始卵胞の数が1000個を切ると排卵が起こらなくなり、無月経や不正出血が続きます。加齢に伴い、妊娠率が低下し、流産率が上昇するのはこのせいです。すべての卵子は生まれた時にすでにあり、新しく作られることはありません。つまり40歳に排卵した卵子は、20歳のときに排卵した卵子より20年老化した卵子であるという認識が必要です。そのため、遺伝子異常や染色体異常などの確率も上がってしまうのです。 また、女性の社会進出が進み、キャリア形成記と妊娠しやすい年齢が重なってしまい、キャリアを先に選ぶと出産年齢があがることで妊娠適齢期を逃してしまう人が増えているのも不妊原因の一つです。 妊娠の能力を持った方で20%、不妊症の方は0~5%くらいしか妊娠できません。体外受精の場合34歳未満の方で40%、30代後半になると30%、40代前半で19%、40代後半で5%となってきます。不妊治療は、ある程度早くから長く続けることで妊娠の可能性を増やすことはできます。 男性不妊の経験を語る 子宮筋腫や内膜ポリープ、抗精子抗体など不妊には様々な原因がありますが、女性原因40%、男女ともに原因20%、男性原因24%、その他不明となっており、男性因子の不妊は4割以上を占めています。だからこそカップルでの検査、診療が不可欠なのです。 私事ではありますが、結婚11年目まで子どもができませんでした。妻が34歳になった時、このままではいけないと知り合いの医師に相談し、夫婦で検査を受けたところ私に大きな問題があることがわかりました。男性不妊ですね。体外受精が必要となり、顕微鏡受精にステップアップしました。結果は品胎妊娠、3つ子です。今は高校二年生になりました、スマホばかりいじって他の同級生たちと何ら変わりはありません。 自分自身でこのような経験をして学んだことは、不妊治療は女性だけでは無理。男性の協力が不可欠ということです。我が家の場合男性不妊でしたが、ある意味「妻に何かあるより自分が原因で良かった」ということです。もちろん嬉しくはありませんが、妻が辛い思いをするより気は楽でした。 不妊治療はとてもストレスフルですよね。だからストレスを発散するなにかを持っておくことが重要です。男性は発散の場が仕事の場合もあるでしょう、不妊治療だけに心を奪われないようにすることが大切です。 また、みなさんインターネットをよく見られていますがネットの情報は珠玉混合。すべてを鵜呑みにせず、疑問はすべて担当医に聞いてみることです。身内からの心無い言葉があっても「自分は自分」と流してしまいましょう。短期間で結果を出そうと思わず「人間は妊娠しにくい動物だ」と開き直り、長めのスパンで取り組んでほしいと思います。 井上 善仁 先生(井上善レディースクリニック 院長)昭和59年 3月 九州大学医学部卒業 同年 4月 九州大学医学部婦人科学産科学教室入局 昭和59年 6月〜 昭和60年9月 宮崎県立宮崎病院産婦人科研修医 昭和60年 10月〜昭和61年3月 九州大学医学部附属病院産婦人科研修医 昭和61年 4月 九州大学大学院医学系研究科博士課程入学 平成2年 1月 同上修了(医学博士) 平成2年 2月〜 平成4年3月 米国シンシナティー大学医学部生理学教室留学(visiting scientist: 訪問研究員) 平成4年 4月〜 平成5年3月 福岡市立福岡市民病院産婦人科医長 平成5年 4月〜 平成5年9月 九州大学医学部附属病院産婦人科医員 平成5年 10月 同上助手 平成8年 7月 同上併任講師 平成10年 4月 福岡大学医学部産婦人科併任講師 平成11年 10月 福岡大学医学部産婦人科講師 平成20年 4月 福岡大学病院准教授 平成21年 10月〜 平成28年6月 国家公務員共済組合連合会浜の町病院産婦人科部長 平成28年 7月 井上善レディースクリニック開院 ジネコ妊活セミナー 2017年8月27日に行われたジネコ 妊活セミナーより 不妊治療を経験したドクターが教える間違いだらけの不妊治療 2017年8月27日(日)、福岡でに妊活セミナーを開催。「不妊治療を経験したドクターが教える間違いだらけの不妊治療」と題して、井上善仁先生にお話いただきました。その様子を一部ご紹介いたします。 なぜ不妊になるのか 人間は妊孕性がとても低い動物であることをご存知ですか。人間に近いマントヒヒは80%、うさぎは90%、ネズミは一晩オスとメスをケージに入れておけば100%妊娠します。しかし人間の妊娠率はわずか20%にしか過ぎません。妊娠までにはある程度時間がかかるのが普通と考えておくことも大切です。 不妊とは「1年間通常通り性交渉を持っても妊娠しないこと」と定義づけられています。いまは7~8組のカップルに1組が不妊と言われており、日本で約120万組の不妊カップルがいる計算になります。私が婦人科医になった当時は10組にひとり、訪れる人もほとんどが20代でしたが、現在は30代後半から40代が多くを占めます。そのうち1/4が不妊治療を受け、成功するのはその中のおよそ3割程度です。そして現在、不妊治療を受けて誕生した子どもの25人に1人が体外受精児と言われています。 女性は生まれる前から「卵胞」が作られます。卵巣に含まれる原始卵胞の数は減るばかりで、胎児のときには700万個ある卵胞も、生まれたときにはすでに200万個に減り、初経をむかえる平均年齢12歳頃には数十万個になっています。20代の妊娠適齢期で10万個、不妊治療を開始する事が多い35歳くらいになると2.5万個にまで減少。そして47歳くらいで1000個になります。原始卵胞の数が1000個を切ると排卵が起こらなくなり、無月経や不正出血が続きます。加齢に伴い、妊娠率が低下し、流産率が上昇するのはこのせいです。すべての卵子は生まれた時にすでにあり、新しく作られることはありません。つまり40歳に排卵した卵子は、20歳のときに排卵した卵子より20年老化した卵子であるという認識が必要です。そのため、遺伝子異常や染色体異常などの確率も上がってしまうのです。 また、女性の社会進出が進み、キャリア形成記と妊娠しやすい年齢が重なってしまい、キャリアを先に選ぶと出産年齢があがることで妊娠適齢期を逃してしまう人が増えているのも不妊原因の一つです。 妊娠の能力を持った方で20%、不妊症の方は0~5%くらいしか妊娠できません。体外受精の場合34歳未満の方で40%、30代後半になると30%、40代前半で19%、40代後半で5%となってきます。不妊治療は、ある程度早くから長く続けることで妊娠の可能性を増やすことはできます。 男性不妊の経験を語る 子宮筋腫や内膜ポリープ、抗精子抗体など不妊には様々な原因がありますが、女性原因40%、男女ともに原因20%、男性原因24%、その他不明となっており、男性因子の不妊は4割以上を占めています。だからこそカップルでの検査、診療が不可欠なのです。 私事ではありますが、結婚11年目まで子どもができませんでした。妻が34歳になった時、このままではいけないと知り合いの医師に相談し、夫婦で検査を受けたところ私に大きな問題があることがわかりました。男性不妊ですね。体外受精が必要となり、顕微鏡受精にステップアップしました。結果は品胎妊娠、3つ子です。今は高校二年生になりました、スマホばかりいじって他の同級生たちと何ら変わりはありません。 自分自身でこのような経験をして学んだことは、不妊治療は女性だけでは無理。男性の協力が不可欠ということです。我が家の場合男性不妊でしたが、ある意味「妻に何かあるより自分が原因で良かった」ということです。もちろん嬉しくはありませんが、妻が辛い思いをするより気は楽でした。 不妊治療はとてもストレスフルですよね。だからストレスを発散するなにかを持っておくことが重要です。男性は発散の場が仕事の場合もあるでしょう、不妊治療だけに心を奪われないようにすることが大切です。 また、みなさんインターネットをよく見られていますがネットの情報は珠玉混合。すべてを鵜呑みにせず、疑問はすべて担当医に聞いてみることです。身内からの心無い言葉があっても「自分は自分」と流してしまいましょう。短期間で結果を出そうと思わず「人間は妊娠しにくい動物だ」と開き直り、長めのスパンで取り組んでほしいと思います。 井上 善仁 先生(井上善レディースクリニック 院長)昭和59年 3月 九州大学医学部卒業 同年 4月 九州大学医学部婦人科学産科学教室入局 昭和59年 6月〜 昭和60年9月 宮崎県立宮崎病院産婦人科研修医 昭和60年 10月〜昭和61年3月 九州大学医学部附属病院産婦人科研修医 昭和61年 4月 九州大学大学院医学系研究科博士課程入学 平成2年 1月 同上修了(医学博士) 平成2年 2月〜 平成4年3月 米国シンシナティー大学医学部生理学教室留学(visiting scientist: 訪問研究員) 平成4年 4月〜 平成5年3月 福岡市立福岡市民病院産婦人科医長 平成5年 4月〜 平成5年9月 九州大学医学部附属病院産婦人科医員 平成5年 10月 同上助手 平成8年 7月 同上併任講師 平成10年 4月 福岡大学医学部産婦人科併任講師 平成11年 10月 福岡大学医学部産婦人科講師 平成20年 4月 福岡大学病院准教授 平成21年 10月〜 平成28年6月 国家公務員共済組合連合会浜の町病院産婦人科部長 平成28年 7月 井上善レディースクリニック開院 ジネコ妊活セミナー
2017.10.2
レポート 不妊治療
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子どもが癒合歯と診断され悩んでいます
子どもが癒合歯と診断され悩んでいます 2017/10/2 斎藤 敏昭 先生(大名矯正歯科クリニック) 癒合歯とは?その問題点は 癒合歯(ゆごうし)とは耳慣れない言葉ですが、小児歯科の世界では決して珍しい事例ではありません。出現率は4%という報告もあり、つまり1クラス40人のうち1~2人は癒合歯の子どもがいる計算です。歯肉の中で歯の卵である「歯胚」が成長して乳歯になるのですが、その歯胚のときに原因不明で隣同士の歯がくっつき、そのまま生えてくる状態が癒合歯です。癒合歯を見つけたとしても大きな問題はありませんが、あえて言うなら歯の見た目に少し違和感があるかもしれません。咀嚼にもほとんど影響はなく、歯磨きをしっかりしていれば虫歯になりやすいわけでもありません。 癒合歯で一番考えるべきは次の歯、つまり乳歯が抜けた後に生えてくる永久歯が欠損している場合があるということです。2本生えるべき所に1本だけという方が半数近くの確率でおられるのが特徴です。 なぜ癒合歯になるのか その昔、縄文時代の頃の私たちは硬いものを食べ、顎が発達していたこともあり「親知らず」を含めて32本の永久歯がしっかりはえて機能していたそうです。しかし火を使い始め、食べ物が変わっていくにつれ、顎がどんどん小さくなり乱ぐい歯になってきました。このように歯は生活習慣によってどんどん変化していきます。本来の歯が揃ったままなら現代人の顎におさまりきらないでしょう。そこで親知らずは生えて来にくくなり、欠損歯の子どもが増えてきたのではという説もあります。つまり歯が癒合したり、欠損することは進化の一つであるという考えもあります。ちなみに、癒合歯になりやすいのは下顎の前歯が多いと言われています。 癒合歯を見つけたら何をしたらいい? 乳歯の時にはあまり気に病むことはありません。5~6歳の生え変わりの時期がポイントです。ただ、顎が小さくなってきている原因と考えられる食物の軟性化は時代の流れでどうしようもないことです。そこで、少しでも固いものを噛む習慣をつけることが大切だと思います。小さいころから食物をよく噛み、固い食物もバランスよく食べる習慣をつけることが必要です。その上で、歯の生え変わりの時期には、虫歯の予防と一緒に咬み合わせのチェックも習慣づけてください。小学校にあがったらレントゲンをとり、次の歯の様子を確認しましょう。この時に、乳歯を抜く、そのまま様子を見るなど専門家が判断します。もし癒合歯のあとが欠損歯の可能性であれば、その後矯正をしたり、差し歯をするなどの方法があります。 実は私も下顎の歯が2本少ないんです。けれど綺麗に収まって見た目に違和感がないところをみると、私はこのほうがいいと進化したのでしょう(笑)。私は「癒合歯は個性」だと思っています。背が高い低い、天然パーマである、二重瞼である。それと同じ個性に過ぎません。癒合歯だから永久歯が欠損するかも…と思い悩まず、その子の個性であり必要な進化である、とおおらかに受け止め、生え変わりの時期はなるべくしっかりと様子を見守ってください。 斎藤先生より まとめ お子様の癒合歯について大変お悩みの方も多いそうですが、妊婦時代の過ごし方のせいなどで癒合歯になるわけではなく、原因は不明です。日本人の半数は乱ぐい歯といって歯がガタガタで、その場合、健康な歯を何本か抜いて矯正することもよくあります。もし癒合歯のあとに永久歯が生えてこなかったとしてもそれを生かして歯並びを治せることもあり、前向きな気持ちも大切です。まずは5~6歳、つぎは小学校6年生くらいが歯並びのチェック時期。親子でお気軽にクリニックに相談してください。 お話を伺った先生のご紹介 斎藤 敏昭 先生 (大名矯正歯科クリニック) 九州歯科大卒。歯学博士。日本大学歯学部矯正学教室、神奈川歯科大学歯科矯正学教室を経て福岡歯科大学講師。福岡市矯正歯科専門医院副医院長から2008年に大名矯正歯科クリニックをオープン。「笑顔は、その人だけではなく周りの人を幸せにする」をモットーに最新・最良の矯正治療を提供。 子どもが癒合歯と診断され悩んでいます 2017/10/2 斎藤 敏昭 先生(大名矯正歯科クリニック) 癒合歯とは?その問題点は 癒合歯(ゆごうし)とは耳慣れない言葉ですが、小児歯科の世界では決して珍しい事例ではありません。出現率は4%という報告もあり、つまり1クラス40人のうち1~2人は癒合歯の子どもがいる計算です。歯肉の中で歯の卵である「歯胚」が成長して乳歯になるのですが、その歯胚のときに原因不明で隣同士の歯がくっつき、そのまま生えてくる状態が癒合歯です。癒合歯を見つけたとしても大きな問題はありませんが、あえて言うなら歯の見た目に少し違和感があるかもしれません。咀嚼にもほとんど影響はなく、歯磨きをしっかりしていれば虫歯になりやすいわけでもありません。 癒合歯で一番考えるべきは次の歯、つまり乳歯が抜けた後に生えてくる永久歯が欠損している場合があるということです。2本生えるべき所に1本だけという方が半数近くの確率でおられるのが特徴です。 なぜ癒合歯になるのか その昔、縄文時代の頃の私たちは硬いものを食べ、顎が発達していたこともあり「親知らず」を含めて32本の永久歯がしっかりはえて機能していたそうです。しかし火を使い始め、食べ物が変わっていくにつれ、顎がどんどん小さくなり乱ぐい歯になってきました。このように歯は生活習慣によってどんどん変化していきます。本来の歯が揃ったままなら現代人の顎におさまりきらないでしょう。そこで親知らずは生えて来にくくなり、欠損歯の子どもが増えてきたのではという説もあります。つまり歯が癒合したり、欠損することは進化の一つであるという考えもあります。ちなみに、癒合歯になりやすいのは下顎の前歯が多いと言われています。 癒合歯を見つけたら何をしたらいい? 乳歯の時にはあまり気に病むことはありません。5~6歳の生え変わりの時期がポイントです。ただ、顎が小さくなってきている原因と考えられる食物の軟性化は時代の流れでどうしようもないことです。そこで、少しでも固いものを噛む習慣をつけることが大切だと思います。小さいころから食物をよく噛み、固い食物もバランスよく食べる習慣をつけることが必要です。その上で、歯の生え変わりの時期には、虫歯の予防と一緒に咬み合わせのチェックも習慣づけてください。小学校にあがったらレントゲンをとり、次の歯の様子を確認しましょう。この時に、乳歯を抜く、そのまま様子を見るなど専門家が判断します。もし癒合歯のあとが欠損歯の可能性であれば、その後矯正をしたり、差し歯をするなどの方法があります。 実は私も下顎の歯が2本少ないんです。けれど綺麗に収まって見た目に違和感がないところをみると、私はこのほうがいいと進化したのでしょう(笑)。私は「癒合歯は個性」だと思っています。背が高い低い、天然パーマである、二重瞼である。それと同じ個性に過ぎません。癒合歯だから永久歯が欠損するかも…と思い悩まず、その子の個性であり必要な進化である、とおおらかに受け止め、生え変わりの時期はなるべくしっかりと様子を見守ってください。 斎藤先生より まとめ お子様の癒合歯について大変お悩みの方も多いそうですが、妊婦時代の過ごし方のせいなどで癒合歯になるわけではなく、原因は不明です。日本人の半数は乱ぐい歯といって歯がガタガタで、その場合、健康な歯を何本か抜いて矯正することもよくあります。もし癒合歯のあとに永久歯が生えてこなかったとしてもそれを生かして歯並びを治せることもあり、前向きな気持ちも大切です。まずは5~6歳、つぎは小学校6年生くらいが歯並びのチェック時期。親子でお気軽にクリニックに相談してください。 お話を伺った先生のご紹介 斎藤 敏昭 先生 (大名矯正歯科クリニック) 九州歯科大卒。歯学博士。日本大学歯学部矯正学教室、神奈川歯科大学歯科矯正学教室を経て福岡歯科大学講師。福岡市矯正歯科専門医院副医院長から2008年に大名矯正歯科クリニックをオープン。「笑顔は、その人だけではなく周りの人を幸せにする」をモットーに最新・最良の矯正治療を提供。
2017.10.2
インタビュー 子育て・教育
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クリニックの転院について
モモカワさん(39歳)今年の7月で39歳になりました。 35歳の時に、初めての人工受精で第一子を妊娠、出産しました。 40歳を前に諦めきれないと思い、治療を再開しました。 今月初めての体外受精に挑みました。 クロミッド、プレマリンによる低刺激の排卵誘発で、採卵の日には既に排卵済。 何とか1つ採卵しましたが、未成熟卵で受精しませんでした。 こちらのクリニックは、受精しなかった場合は、あと2回無料で採卵して貰えます。 ただ、卵胞が小さく、排卵を推定するのが難しいと言われました。 歳のこともあり、一周期も無駄にしたくありません。 そこで、無料の採卵は放棄して、刺激法を取り入れたクリニックに転院した方が良いか迷っています。どう思われますか? 生理2日目の血液検査は以下の通りです。 E2 53.6 LH 3.05 FSH 5.99 AMHは計測して貰えない為、分かりません。 山下 能毅 先生 (うめだファティリティークリニック) 趣味・特技:ゴルフ・映画鑑賞・ピアノ 大阪医科大学医学部卒業、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科学講師・宮崎レディースクリニック副院長を経て、2017年4月うめだファティリティクリニック院長就任 ≫ うめだファティリティークリニック実際、体外受精は、自費診療であるため、一般不妊治療に比較し高額です。「体外受精で受精しなかった場合は2回無料」とありますが、受精障害が起こりうることを事前に説明した上で治療を行っていると思いますので、次の治療を無料にするのではなく、受精しなかった原因と対策を講じて、次の治療を行うことが重要であると思います。 日本では自然周期による治療が多く行われており、そのため採卵周期数は世界一といわれています。しかし、ヨーロッパ生殖医学会「ESHRE(エシュレ)」などでは、刺激周期による治療を基本とし、自然周期を推奨していません。その理由として、自然周期は1採卵あたりの妊娠率が低いことがあります。さらに、その周期の採卵がキャンセルになることも多く、毎月採卵を繰り返す必要があります。一方で、刺激周期は1回の採卵でたくさんの卵子を採って、受精卵を凍結保存することで、移植を繰り返すことができますので、1採卵周期あたりの妊娠率が高くなります。ただ、医原性疾患である、卵巣過剰刺激症候群を予防するためにも、治療前にAMHを測定し、適切な刺激法を選択する必要があります。 当院では、体外受精治療を希望された場合、まずAMHの値を測定し、その数値に応じた刺激周期を検討します。たとえば、AMHが正常であればロング法、やや低い人にはショート法、卵巣機能が低下して刺激周期で採卵できなかった場合や40代以上の方の場合については、レトロゾールを使用したマイルドな刺激周期を行っています。 モモワカさんはエストロゲンの情報しかないのでわかりにくいのですが、まだ39歳と若いですし、お子さんも1人いらっしゃいます。卵巣機能もそれほど低下していないと思いますので、一度、体に合った調節卵巣刺激を受けられて採卵してはいかがでしょうか。
2017.10.1
専門医Q&A 女性の健康
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不妊治療の病院に関して
「働きながらも、妊娠された方はどのようにして病院を探しているのでしょうか?不妊治療をする際の労働可能時間とかはあるのでしょうか?」
2017.9.25
専門医Q&A 女性の健康
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乳歯の歯並びが気になる…。いつ相談すれば良いですか?
乳歯の歯並びが気になる…。いつ相談すれば良いですか? 2017/9/21 秦雄 一郎 先生(はた矯正歯科) 乳歯で注意しておきたいこと 乳歯は生後6~7ヶ月ではえ始めます。その後2歳~2歳半くらいで上下合わせて20本生えそろいます。乳歯で注意しないといけないのが「歯の間が詰まっていること」、「受け口」、「歯の数の異常(欠損歯、過剰歯、癒合歯)」などです。 まず「歯の間が詰まっていること」、つまり歯全体がぎちぎちに詰まっていて隙間がない状態は一見問題なさそうに見えます。しかし乳歯の時期は、歯の間に隙間があるすきっ歯の状態が正常です。乳歯の間に隙間がないと乳歯より大きな永久歯のはえる隙間が不足します。結果的にガタガタの歯並びになりやすくなります。 「受け口」は下の歯が上の歯より前で噛んでいる状態で、下あごが前に突き出ることで噛み合わせの問題だけではなく、顔つきにも影響してきます。また「さしすせそ」などの発音がしにくく、語学の発育にも影響があります。受け口は遺伝も関係しますが、歯の生え方やおしゃぶりの癖など環境にも影響されます。 「欠損歯」は歯の本数が足りないこと、「過剰歯」は逆に多いことをいいます。原因はわかっていませんが、乳歯が欠損している子どもは永久歯も足りない場合があります。欠損歯の数はほとんど1~2本ですが、まれに5~6本足りないまま成長してしまうお子さんもおられます。過剰歯は並ぶことができずにガタガタに生えたり、生えることができずに骨の中に埋まったままになったりします。「癒合歯:ゆごうし」は、本来別々の歯がくっついて生えてくることをいいます。 注意しておきたいことを放置するとどうなる? 乳歯時代におおよそ将来の歯並びが見えるのは事実です。 「歯の間が詰まっている」お子さんは永久歯が口の中に収まりきらず、最後に生えかわる事が多い犬歯が前に出っ張り、八重歯になりやすいです。「受け口」は、成長につれて治るお子さんも一部いますが、そのままの方がほとんどです。子供のうちはあごの成長をコントロールする矯正治療が可能ですが、成長が落ち着く思春期以降は困難になるため外科手術を併用した矯正治療が必要になることもあります。「歯の数の異常(欠損歯、過剰歯、癒合歯)」は永久歯への正常な生え変わりが邪魔されるため、すきっ歯や、ガタガタの歯並びの原因になります。 予防はできないの? 歯の生える隙間の問題については、「良く噛む工夫」をすることで予防にもつながります。食事に加工食品が増えた結果「噛まなくなった」ことで歯の生える “あご”はどんどん小さくなっています。硬いものばかり食べるというのは現実的ではありませんので「よく噛む工夫」をしてはいかがでしょう。例えば食材を大きくカットすることで食べごたえも大きく変わりますし、いりこやナッツ、キシリトール入りのガムなどをおやつにするのもいいでしょう。よく噛んで唾液をたっぷり出すことも口腔内を健康に保つひとつの方法です。 専門家に相談するタイミングはいつ? 3歳児までは検診時になにかお子様の歯に問題があれば必ず指摘があると思います。3,4歳児以降なら歯科医院での診察も十分可能ですので、何か気になることがあればその時点でお近くの歯科医や矯正専門医へご相談ください。5~6歳ごろには永久歯が下の前歯から生えてきます。歯並びに大変気を使うアメリカでは、7歳になるとまず1度矯正専門医に診てもらうそうです。そこで問題が見つかれば、治療や矯正をはじめます。歯並びに問題があると虫歯や歯周病などにかかりやすく将来にわたって歯の問題で苦労する可能性が高くなります。理容室で髪を切るように、お子様も気軽に歯科医院に行ってほしいですね。 歯のケアで何か自分でできることはある? まれに歯肉炎など歯茎に問題があるお子様も。歯ブラシをえんぴつのように持ち、歯茎に圧力をかけず優しく磨きましょう。食事のあと30分たってからフッ素入りの歯磨きを使ってください。乳幼児はガーゼで優しく歯をふくだけで。そんな日常のケアとこまめなクリニック通いを心がけてみてください。 お話を伺った先生のご紹介 秦 雄一郎 先生 (はた矯正歯科) 福岡歯科大卒。歯学博士。福岡歯科大学講師から伊東歯科口腔病院矯正歯科部長を経て2017年にはた矯正歯科をオープン。矯正歯科医師だった父の遺志を継ぎ「地元である福岡の多くの方々の歯並びが美しくなり、豊かな生活が送れるように全力でがんばります」 乳歯の歯並びが気になる…。いつ相談すれば良いですか? 2017/9/21 秦雄 一郎 先生(はた矯正歯科) 乳歯で注意しておきたいこと 乳歯は生後6~7ヶ月ではえ始めます。その後2歳~2歳半くらいで上下合わせて20本生えそろいます。乳歯で注意しないといけないのが「歯の間が詰まっていること」、「受け口」、「歯の数の異常(欠損歯、過剰歯、癒合歯)」などです。 まず「歯の間が詰まっていること」、つまり歯全体がぎちぎちに詰まっていて隙間がない状態は一見問題なさそうに見えます。しかし乳歯の時期は、歯の間に隙間があるすきっ歯の状態が正常です。乳歯の間に隙間がないと乳歯より大きな永久歯のはえる隙間が不足します。結果的にガタガタの歯並びになりやすくなります。 「受け口」は下の歯が上の歯より前で噛んでいる状態で、下あごが前に突き出ることで噛み合わせの問題だけではなく、顔つきにも影響してきます。また「さしすせそ」などの発音がしにくく、語学の発育にも影響があります。受け口は遺伝も関係しますが、歯の生え方やおしゃぶりの癖など環境にも影響されます。 「欠損歯」は歯の本数が足りないこと、「過剰歯」は逆に多いことをいいます。原因はわかっていませんが、乳歯が欠損している子どもは永久歯も足りない場合があります。欠損歯の数はほとんど1~2本ですが、まれに5~6本足りないまま成長してしまうお子さんもおられます。過剰歯は並ぶことができずにガタガタに生えたり、生えることができずに骨の中に埋まったままになったりします。「癒合歯:ゆごうし」は、本来別々の歯がくっついて生えてくることをいいます。 注意しておきたいことを放置するとどうなる? 乳歯時代におおよそ将来の歯並びが見えるのは事実です。 「歯の間が詰まっている」お子さんは永久歯が口の中に収まりきらず、最後に生えかわる事が多い犬歯が前に出っ張り、八重歯になりやすいです。「受け口」は、成長につれて治るお子さんも一部いますが、そのままの方がほとんどです。子供のうちはあごの成長をコントロールする矯正治療が可能ですが、成長が落ち着く思春期以降は困難になるため外科手術を併用した矯正治療が必要になることもあります。「歯の数の異常(欠損歯、過剰歯、癒合歯)」は永久歯への正常な生え変わりが邪魔されるため、すきっ歯や、ガタガタの歯並びの原因になります。 予防はできないの? 歯の生える隙間の問題については、「良く噛む工夫」をすることで予防にもつながります。食事に加工食品が増えた結果「噛まなくなった」ことで歯の生える “あご”はどんどん小さくなっています。硬いものばかり食べるというのは現実的ではありませんので「よく噛む工夫」をしてはいかがでしょう。例えば食材を大きくカットすることで食べごたえも大きく変わりますし、いりこやナッツ、キシリトール入りのガムなどをおやつにするのもいいでしょう。よく噛んで唾液をたっぷり出すことも口腔内を健康に保つひとつの方法です。 専門家に相談するタイミングはいつ? 3歳児までは検診時になにかお子様の歯に問題があれば必ず指摘があると思います。3,4歳児以降なら歯科医院での診察も十分可能ですので、何か気になることがあればその時点でお近くの歯科医や矯正専門医へご相談ください。5~6歳ごろには永久歯が下の前歯から生えてきます。歯並びに大変気を使うアメリカでは、7歳になるとまず1度矯正専門医に診てもらうそうです。そこで問題が見つかれば、治療や矯正をはじめます。歯並びに問題があると虫歯や歯周病などにかかりやすく将来にわたって歯の問題で苦労する可能性が高くなります。理容室で髪を切るように、お子様も気軽に歯科医院に行ってほしいですね。 歯のケアで何か自分でできることはある? まれに歯肉炎など歯茎に問題があるお子様も。歯ブラシをえんぴつのように持ち、歯茎に圧力をかけず優しく磨きましょう。食事のあと30分たってからフッ素入りの歯磨きを使ってください。乳幼児はガーゼで優しく歯をふくだけで。そんな日常のケアとこまめなクリニック通いを心がけてみてください。 お話を伺った先生のご紹介 秦 雄一郎 先生 (はた矯正歯科) 福岡歯科大卒。歯学博士。福岡歯科大学講師から伊東歯科口腔病院矯正歯科部長を経て2017年にはた矯正歯科をオープン。矯正歯科医師だった父の遺志を継ぎ「地元である福岡の多くの方々の歯並びが美しくなり、豊かな生活が送れるように全力でがんばります」
2017.9.21
インタビュー 子育て・教育
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2017.6.18 ジネコ妊活セミナー in 大阪
2017年6月18日に行われたジネコ 妊活セミナーより 「不妊治療全般について」 第2弾 2017年6月18日(日)、大阪梅田にて「ジネコ妊活セミナー」を開催しました。第1部では、医療法人オーク会の培養士 天野奈美子さんに「不妊治療全般」について、第2部では「最先端不妊治療の紹介」として、医療法人オーク会 医師 田口早桐先生にお話いただきました。今回は第1部の内容の第2弾をお届けします。 体外受精の特殊技術 ☆顕微授精(ICSI) 運動精子数が基準に満たない場合や、運動精子数に問題が無くてもコンベンショナル体外受精では受精しない(=受精障害がある)場合は、顕微授精が必要です。現在の顕微授精は、卵細胞質内精子注入法(ICSI)という、卵に針を刺して細胞質内に精子を注入する方法です。まず、動いている精子をそのまま卵子に入れても受精しないので、精子尾部を顕微授精の針で押さえて擦り、精子の不動化をおこないます。すると、精子は生きてはいますが動かなくなるので、その精子を針の中に吸い、卵子に針を刺していきます。成熟した卵子には、極体という小さな丸い細胞があり、その周辺には染色体など重要な構造物が集まっているので、それらを傷つけないように極体を真上もしくは真下にして右から針を刺します。そして卵子の細胞質を針の中に少し吸い、その細胞質と一緒に精子を卵子に注入します。 ☆ヒアルロン酸精子選別 顕微授精の精子を選ぶ際の特殊技術に、ヒアルロン酸精子選別法があります。 成熟した精子の頭部には、卵丘細胞や透明帯の主成分であるヒアルロン酸に結合するレセプターがあり、精子はそのレセプターを介して卵子の透明帯に付着します。未成熟な精子はレセプターが無いため透明帯に付着することができません。この特徴を利用してヒアルロン酸に結合した精子を用いることで、成熟精子をICSIに供することができます。 ☆カルシウムイオノフォア(Ca2+ ionophore) 顕微授精での受精障害や重度の男性不妊の症例では、カルシウムイオノフォアという技術を用いることがあります。 受精ではカルシウムがとても重要な働きをします。精子が卵子表面の透明帯を通過して卵の中に入り、卵細胞膜に接着し融合して膜融合が起こるとき、精子頭部から放出されるPLCζ(ゼータ)という物質が卵子内のカルシウムを上昇させます。カルシウムが卵細胞内を波状に伝わっていく間に卵子内では受精に必要な様々な変化が起こり、最終的に2個の前核が形成され、受精が完了します。 顕微授精で卵子の活性化が不十分な場合に有効なのがカルシウムイオノフォアです。ICSI後の卵子をカルシウムイオノフォアの培養液で一定時間培養することにより、卵細胞質内のカルシウム濃度を上昇させて卵子活性化を誘導することができます。 ☆人工孵化補助(アシステッドハッチング、AHA) 移植時の特殊技術のひとつにアシステットハッチング(人工孵化補助)という技術があります。卵子の殻の部分である透明帯が硬い場合や分厚い場合に受精卵が自力でハッチングできず、着床できないことがあります。それを防ぐため移植前に透明帯に人口的に穴を開け、孵化(ハッチング)しやすくする技術です。レーザー法が主流です。 天野奈美子さん (医療法人オーク会 胚培養士)胚培養士歴14年。培養室業務や患者様への説明をはじめ、培養士の育成、セミナー講師なども務めます。欧州生殖医学会やアメリカ生殖医学会などの海外の学会に参加して最新技術を取り入れ、自らも研究発表を積極的に行なっています。 ジネコ妊活セミナー 2017年6月18日に行われたジネコ 妊活セミナーより 「不妊治療全般について」 第2弾 2017年6月18日(日)、大阪梅田にて「ジネコ妊活セミナー」を開催しました。第1部では、医療法人オーク会の培養士 天野奈美子さんに「不妊治療全般」について、第2部では「最先端不妊治療の紹介」として、医療法人オーク会 医師 田口早桐先生にお話いただきました。今回は第1部の内容の第2弾をお届けします。 体外受精の特殊技術 ☆顕微授精(ICSI) 運動精子数が基準に満たない場合や、運動精子数に問題が無くてもコンベンショナル体外受精では受精しない(=受精障害がある)場合は、顕微授精が必要です。現在の顕微授精は、卵細胞質内精子注入法(ICSI)という、卵に針を刺して細胞質内に精子を注入する方法です。まず、動いている精子をそのまま卵子に入れても受精しないので、精子尾部を顕微授精の針で押さえて擦り、精子の不動化をおこないます。すると、精子は生きてはいますが動かなくなるので、その精子を針の中に吸い、卵子に針を刺していきます。成熟した卵子には、極体という小さな丸い細胞があり、その周辺には染色体など重要な構造物が集まっているので、それらを傷つけないように極体を真上もしくは真下にして右から針を刺します。そして卵子の細胞質を針の中に少し吸い、その細胞質と一緒に精子を卵子に注入します。 ☆ヒアルロン酸精子選別 顕微授精の精子を選ぶ際の特殊技術に、ヒアルロン酸精子選別法があります。 成熟した精子の頭部には、卵丘細胞や透明帯の主成分であるヒアルロン酸に結合するレセプターがあり、精子はそのレセプターを介して卵子の透明帯に付着します。未成熟な精子はレセプターが無いため透明帯に付着することができません。この特徴を利用してヒアルロン酸に結合した精子を用いることで、成熟精子をICSIに供することができます。 ☆カルシウムイオノフォア(Ca2+ ionophore) 顕微授精での受精障害や重度の男性不妊の症例では、カルシウムイオノフォアという技術を用いることがあります。 受精ではカルシウムがとても重要な働きをします。精子が卵子表面の透明帯を通過して卵の中に入り、卵細胞膜に接着し融合して膜融合が起こるとき、精子頭部から放出されるPLCζ(ゼータ)という物質が卵子内のカルシウムを上昇させます。カルシウムが卵細胞内を波状に伝わっていく間に卵子内では受精に必要な様々な変化が起こり、最終的に2個の前核が形成され、受精が完了します。 顕微授精で卵子の活性化が不十分な場合に有効なのがカルシウムイオノフォアです。ICSI後の卵子をカルシウムイオノフォアの培養液で一定時間培養することにより、卵細胞質内のカルシウム濃度を上昇させて卵子活性化を誘導することができます。 ☆人工孵化補助(アシステッドハッチング、AHA) 移植時の特殊技術のひとつにアシステットハッチング(人工孵化補助)という技術があります。卵子の殻の部分である透明帯が硬い場合や分厚い場合に受精卵が自力でハッチングできず、着床できないことがあります。それを防ぐため移植前に透明帯に人口的に穴を開け、孵化(ハッチング)しやすくする技術です。レーザー法が主流です。 天野奈美子さん (医療法人オーク会 胚培養士)胚培養士歴14年。培養室業務や患者様への説明をはじめ、培養士の育成、セミナー講師なども務めます。欧州生殖医学会やアメリカ生殖医学会などの海外の学会に参加して最新技術を取り入れ、自らも研究発表を積極的に行なっています。 ジネコ妊活セミナー
2017.9.11
レポート 不妊治療