うめだファティリティークリニック ジネコ取材済
大阪府大阪市北区豊崎3丁目17番6号
婦人科 / 不妊治療
うめだファティリティークリニック
大阪府大阪市北区豊崎3丁目17番6号
●診療内容 一般不妊治療 配偶者間人工授精(AIH) 男性不妊外来 精巣内精子採取手術(入院不要) 体外受精・胚移植(IVF・ET) 受精卵・精子凍結保存 顕微授精(ICSI) 思春期・更年期外来 精巣上体精子・精巣内精子顕微授精 遠赤外線温熱療法 カウンセリング 漢方治療(保険適応) 子宮ガン検診
土曜も診療女性医師が診察働きながら通いやすいインターネット予約駅近フリーマガジン配布妊婦検診一般婦人科妊娠中絶手術性感染症すべて見る
診療科
婦人科
不妊治療
基本診療時間
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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9:00~12:00 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
13:00~15:30 | ○ | △ | ○ | ● | ○ | ○ | ||
17:30~19:30 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
火曜午後 14:00~ 木曜午後 13:30~
休診日
日曜、祝日、土曜の夜診
住所・連絡先
大阪府大阪市北区豊崎3丁目17番6号
TEL: 06-6371-0363
山下 能毅 院長プロフィール
本年、医療法人聖誕会 宮崎レディースクリニックは、おかげさまで開業25周年を迎える事になりました。
これを機に、平成29年4月17日より、私が院長に就任し、クリニック名をうめだファティリティークリニックと改称いたしました。
ファティリティーとは“芽生える力”という意味があり、患者様が“新しい生命を育む”ための私たちの日々の努力を忘れないために、ファティリティークリニックと命名しました。
25年間の宮崎レディースクリニックの伝統と実績を引き継いで、より一層信頼されるクリニックを目指し、電子カルテの導入による患者様情報のスタッフ間の共有を徹底し、タイムラプスを含めた機材更新による培養室設備の充実を行います。
さらに、無精子症に対して高度先端医療「MD‐TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)」を開始し、今まで他施設で行っていたMD‐TESEが当院で可能となることにより、MD‐TESEと女性の採卵を同時に行うことが可能となりました。
患者様の背景に配慮した“オーダーメード治療”を心がけ、より温かで質の高い生殖医療を提供できるよう、スタッフ一同鋭意努力して参りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。
院長 山下能毅
山下 能毅 院長略歴
大阪医科大学医学部卒業、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科学講師・宮崎レディースクリニック副院長を経て、2017年4月うめだファティリティクリニック院長就任
宮崎和典 名誉院長プロフィール
宮崎和典 名誉院長略歴
不妊治療に長い間、携わっています。当初から多くの先進的な事に取り組んできましたが、その結果が近畿でいち早く体外受精、顕微授精、胚凍結保存の成功につながったものと思っています。この領域は、新しい分野、領域ですので様々な新説が出てきます。その中には、あまり信馮性のない説が流行ったりすることもありましたが、それらは長続きせず、省みられることもなく消えて行く運命にあります。
不妊治療は、日進月歩と言われますが、あまり目先のブームに追われず、何が理論的に正しいかを良く考え、臨床に生かして行きたいと思っています。
最近の患者様は、ネット等を通していろいろな情報を手に入れています。知識を得ることは大変大切なことだと思いますが、必ずしも確実ではない事を一時のブームで盲目的に信じ込むことは逆効果だとは思いませんか?
当院では、確実な事を確実に実行して行くというポリシーに沿って治療に当たっていきたいと思っています。その結果が、患者様の幸せに繋がり福音となることを願っています。
■略歴■
大阪医科大学医学部卒業(医学博士)、同大学産科婦人科講師を経て、当クリニック開業(1992年開業)、日本生殖医学会評議員、日本受精・着床学会評議員、日本産婦人科マイクロサージェリー学会評議員
このクリニックに関連する監修記事、取材内容、ユーザー様からの質問と回答など、ジネコが企画した様々なコンテンツの一覧です。
記事一覧
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【特集】病院選びの目安にも…不妊治療に必要な検査とは?【良い病院の選び方】
前号「不妊治療の実際」~2000人アンケート調査より~ では、不妊治療はクリニック選びが難しい! という実態が浮かび上がりました。いい病院を選ぶためにどんなデータや情報に注目するといいのか? 応援ドクターに取材しました!
2020.3.11
コラム 不妊治療
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受精卵が育たず、移植に進めません。この先も治療を続けられる?【40代の不妊治療】
体外受精に進んでも「卵子が採れない」「受精卵が成長しない」などの悩みを抱えている方は多いようです。その原因は年齢だけでなく、妊娠前の健康管理が大きく影響している可能性も。うめだファティリティークリニックの山下能毅先生にお話を伺いました。
2020.1.21
コラム 不妊治療
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【対談記事】卵巣機能の若返りに期待! 骨盤の血流を上げるリズミックボクシングとは?
妊娠するには妊娠前から健康管理をし「不妊症を予防する」ことが重要です。リズミックボクシングの開発者である株式会社リタムの内野隆司代表と、うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に、妊娠とエクササイズの関係についてお話しいただきました。
2019.9.9
コラム 女性の健康
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採卵しても未成熟卵ばかり。排卵誘発法が合っていない?
皆さんの治療に関する相談を全国のドクターにお聞きして、誌面でアドバイスをお届けする人気企画「ジネコ セカンドオピニオン」。ジネコの応援ドクターが丁寧にお答えいたします
2019.6.24
コラム 不妊治療
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PCOSの疑いがあり排卵誘発剤で卵胞が育ちません
皆さんの治療に関する相談を全国のドクターにお聞きして、誌面でアドバイスをお届けする人気企画「ジネコ セカンドオピニオン」。ジネコの応援ドクターが丁寧にお答えいたします
2019.6.18
コラム 不妊治療
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胚の成長を観察・記録する培養室の最新機器とは?【潜入!培養室レポート】
生殖医療において重要な役割を担っている培養士。普段接する機会が少ない培養士は、培養室でどんな仕事を行っているのでしょうか。また、高度生殖医療における最新機器に関するお話と併せて、うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に伺いました。
2019.3.27
コラム 不妊治療
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卵管の両側閉塞のためFT(卵管鏡下卵管形成術)を検討中。有用性について教えて【40代の不妊治療】
卵管閉塞のためFT(卵管鏡下卵管形成術)を検討する場合、どのような点に気をつけるべきでしょうか。40代の治療の有用性について、うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に教えていただきました。
2018.12.24
コラム 不妊治療
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6回の移植で2度の流産。PCOSによる卵子の質が原因?
6回の移植で2度の流産。PCOSによる卵子の質が原因?
2018.9.1
コラム 不妊治療
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ホルモン補充周期に抵抗が…。自然周期でも移植できる?
ホルモン補充周期に抵抗が…。自然周期でも移植できる?
2018.8.30
コラム 不妊治療
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甲状腺は治ったはずなのに、生理や排卵がないのはなぜ?【特集:排卵障害の不妊治療】
20〜30代の女性に多いといわれる甲状腺機能の異常の原因や症状とは?妊娠・出産とのかかわりは?山下先生に聞きました。
2018.5.20
コラム 不妊治療
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採卵後 薬飲み忘れ
やなこさん(34歳)採卵後当日の夜飲まなければならない薬、抗生物質等飲み忘れてしまいました。 移植は翌週の予定です。 今回15個採卵できたのですが、すこしお腹が張り気味です。 うっかりしてた自分に腹がたちます。 翌日のお昼に気付き飲み始めたのですが、問題ありますでしょうか? 山下 能毅 先生 (うめだファティリティークリニック) 趣味・特技:ゴルフ・映画鑑賞・ピアノ 大阪医科大学医学部卒業、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科学講師・宮崎レディースクリニック副院長を経て、2017年4月うめだファティリティクリニック院長就任 ≫ うめだファティリティークリニック 採卵後の抗生剤は感染を予防するためのもので、当院でも1日3回×3日分を処方しています。飲み忘れたら気づいた時に飲んで構いませんが、2つ注意点があります。ひとつは、前回の服用から4時間以上経過していたらすぐに飲むこと。もうひとつは、次回のお薬を4時間以内に飲む必要がある時は、飲み忘れた分を1回飛ばして次のお薬を飲むことです。 抗生剤は1日3回の服用で血中濃度を維持して作用するようにできていますので、たとえば、お薬の量がこれ以上増えたりすると、抗生物質が効かなくなる耐性菌ができやすくなります。基本的には指示通りに服用するのが望ましいですね。 それよりも心配なのは、今後の移植のタイミングです。やなこさんは卵子が15個も採れて、お腹が少し張り気味とのこと。OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の可能性があり、翌週の移植はリスクが高いと感じます。胚盤胞移植などであれば、いったん移植を見送って卵子を凍結し、お腹の腫れがひいてから行うのがいいでしょう。 OHSSのリスクがある人には、当院では採卵後からカバサール®(自費診療)を処方しています。移植を成功させるためには、どのお薬もきちんと飲み切ることが大切です。飲み忘れを防ぐために、スマートフォンのアラーム機能を活用するといいですよ。
2018.4.6
専門医Q&A 女性の健康
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情熱のカルテ うめだファティリティークリニック 山下 能毅 先生
生命の誕生にかかわり「おめでとう」と言いたい――なぜ生殖医療の道に進まれたのでしょうか? 「煙火店の四男であった私の父が、花火師にならずなぜかしら産婦人科医になり、その影響を受けて私も産婦人科医を目指しました。1992年、大阪医科大学医学部産婦人科に入局した時の講師が生殖医療の第一線で活躍されていた宮崎和典先生(旧宮崎レディースクリニック院長)でした。当時、不妊治療の知識があまりなかった私にとって、最先端の生殖医療チームを率いる宮崎先生がとてもカッコよく見えました。そもそも産婦人科は、ほかの診療科とは異なり、生命の誕生にかかわれることが魅力的でした。大学病院でしたので、婦人科腫瘍、女性医学、周産期医療、内視鏡手術などすべての分野の研鑽を積ませてもらいましたが、生殖医療はまさに「生命を授ける」仕事で、高い倫理観を必要とするダイナミックな医療であると思い、専門領域として選択しました。 入局して1年後、宮崎先生がクリニックを開設するために退職され、その後の大学の生殖医療を先輩の先生方とともに発展させてきました。当時はまだ胚培養士制度がありませんでしたので、採卵、受精、培養、出産まですべて医師が行っていました。自分で初めて凍結融解胚移植を行った方が双子の赤ちゃんを妊娠された時はとても感動したのを覚えています。その達成感が原動力となり、病棟医長、医局長、講師として不妊治療、腹腔鏡手術、学生教育に積極的に取り組んできました」恩師のクリニックを承継。院長として再スタート――2014年に宮崎レディースクリニックの副院長を経て、2017年にはうめだファティリティークリニックと改称して、院長に就任されました。その経緯を教えてください。 「入局当時、宮崎先生は研修医の私にとって雲の上の存在でした。同大学では宮崎先生が独立されるまでの1年間しかご一緒できませんでしたが、その後も生殖医療の勉強会や研究会でお目にかかる機会があり、私がニュージーランドに留学中に、先生がご家族で訪問してくださるなど、とても親切にしていただきました。そんななか、宮崎先生に「いつまで大学にいるの? うちに来て一緒にやらないか?」と声をかけていただきました。クリニック承継を前提にした、ありがたい申し出でしたが、その頃、私は大学の仕事が充実しており、独立する考えは正直言ってあまりありませんでした。同期の寺井義人先生(現大阪医科大学産婦人科准教授)が、婦人科腫瘍の次世代のリーダーとして活躍していたので、その刺激もあり、大学で残る以上は教授を目指すことが最終目標であると考えていました。そこで宮崎先生に「いつかどこかで教授選に立候補して、選挙で負けたら大学を辞め、先生のところに行きます」と、申し上げました。 結果的に2012年に他大学の教授選は残念な結果になりましたが、大道正英主任教授のご配慮もあり、しばらく大学で医局長を続け、正式に宮崎レディースクリニックの副院長に就任したのは、数年後の2014年でした。宮崎レディースクリニックへの移籍を決めた理由は、宮崎先生が大学の恩師であり、魅力的なお人柄であるということでした。治療の方針が同じであることは当然ですが、大阪で歴史ある老舗クリニックを承継するわけですから、そのプレッシャーは計り知れず、経営、財政、診療などあらゆる面で擦り合わせが必要になります。先生はそのようなことも含め、「黙って俺についてこい」ではなく、2017年の私の院長就任までを見据えて、承継までのロードマップをクリアにし、計画的に準備して迎えてくださったことも大きかったと思います」今後の目標はIT化と男性不妊治療の充実――今後どのようなクリニックを目指していますか? 「当面の目標は、宮崎先生の念願でもあったIT化と男性不妊治療の充実です。近年、不妊治療に対する認識が広まり、20代の若い患者様の受診も増えています。このようなデジタル世代の患者様の利便性も考え、IT化を進めています。2017年11月からは、パソコンやスマートフォンでオンライン診療できる遠隔診療をスタートしました。ED治療、不妊治療の結果説明や薬の処方であれば、インターネットを通じて予約から診察、支払いまですべてできますので、わざわざ通院いただく必要がなくなります。 また、卵子の受精や分割などがモニター越しにタイムリーにわかるタイムラプスや、子宮内膜着床能(ERA)検査の導入をはじめ、将来的には着床前遺伝診断(PGS・PGD)ができる体制を整え、治療のクオリティを上げていきたいと考えています。クリニック名の改称後は、結婚前のブライダルチェックなど、男性の患者様の受診も増えていますので、男性不妊治療もさらに充実したいと考えています。 とはいえ、IT化を進めるなかでも、やはり大切なのは人です。今後はスタッフのサービスや安全管理のスキル向上にも力を入れ、「IT×人」の両面のアプローチで、患者様一人ひとりにふさわしい最先端の医療を安心、安全に提供できるクリニックを目指したいと思っています。 当院が患者様をサポートできるのは妊娠までですが、その後「出産しました」という、うれしい報告をたくさんの方からいただきます。新しい命の誕生にかかわり、患者様と喜びを共有できる尊い仕事にたずさわっているという自負は変わりませんが、さらに生まれ変わったクリニックの責任者として、よりよい環境づくりに情熱を注いでいきたいと思っています」 Message 名誉院長 宮崎 和典 先生 私が大阪医科大学医学部で学位を授与した研修生のなかで、山下先生は5人目ですが、彼が後継者として一番理想的だと思っていました。私の独立後も付き合いがあって、気心が知れていたこともありますが、彼は他者への気づかいができて仲間も多い。人間的に信用できると感じていました。そういう性格なので、旧クリニックのやり方を尊重してくれているのはうれしいですが、時代の流れに応じて、変えられるところは、どんどん変えていってくれればいいと思います。時にはお互いの意見がぶつかることもあるかもしれませんが、その時はその時です(笑)。とにかく彼にすべて任せているので安心しています。私の時代にできなかったIT化を進め、新しい時代をつくってほしいですね。 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。今年2月に1階の受付をリニューアル。待ち時間を少しでも快適に過ごせるように、できるだけプライバシーに配慮した空間に変わりました。今後も、IT化とともに患者様にやさしいクリニックを目指していきます。≫ うめだファティリティークリニック出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら
2018.2.21
コラム 不妊治療
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胚盤胞まで育たず、初期胚移植も失敗。卵子の質は上げられる?
胚盤胞まで育たず、初期胚移植も失敗。卵子の質は上げられる? 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 低AMH、高FSHの43歳。完全自然周期から顕微授精まで、いろいろ試しても結果が出ず、今後の治療に悩んでいます。うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に伺いました。 とらたんさん(43歳)からの相談 相談内容 低AMH、高FSHで5年間不妊治療をしています。4回転院して採卵13回、初期胚移植4回。初めての採卵で化学流産をして以来、着床したことがなく、培養しても途中で分割が止まり、胚盤胞まで育ちません。今の病院で男性不妊と言われて顕微授精をしていますが、いつも受精はします。クロミッドⓇ、HMG注射、完全自然周期も試してきました。初期胚でも妊娠せず、胚盤胞まで育たないので凍結胚移植もできず、今後の治療に悩んでいます。卵子の質が良くないので、調整周期など採卵前にサプリや薬で治療するような病院に行ったほうがよいのでしょうか。 これまでの治療データ ●検査・治療歴 タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精、ヒューナーテスト、子宮鏡検査、卵管造影検査、ホルモン検査、精液検査 ●不妊の原因となる病名 男性不妊との診断あり ●不妊の原因となる病名 精液量107ml、濃度2800万/ml、運動率51%、奇形率は直進精子+ ●精子データ 通常の3倍以上(正確な数値不明) ●漢方・サプリメントの使用 ビタミン系サプリ(葉酸を含む)、美容系サプリ、コラーゲン、漢方薬 とらたんさんは今後の治療に悩まれています。先生はどう思われますか。 低AMH、高FSHで年齢が43歳とのことですね。厳しいようですが閉経が近い状態といわざるをえません。高齢であることを前提に「卵子が採れない」「卵子は採れても受精しない」「胚盤胞まで育たない」「初期胚移植しても結果が出ない」という方には、現代の医学では治療に限界があり、たとえ妊娠できたとしても流産のリスクが高くなります。いずれにしても治療は急がなければなりません。この方がおっしゃるように卵子の質を上げる何らかの工夫が必要です。 卵子の質を上げるために、先生が着目していることはありますか? 最近、欧米はじめ日本ではアンチエイジング(抗老化・抗年齢)ではなく、リバースエイジング(若返り)が注目されています。老化のタイプやスピードは人それぞれに異なりますが、30代半ばから40代以降に個人差がはっきり出てくるといわれています。そこで、赤ちゃんを希望される方は、卵子と卵巣のホルモン年齢を実年齢よりも若く保つことが重要になります。いま着目しているのが、卵子と卵巣の老化に影響するといわれる5つの体内物質です。 ●成長ホルモン(IGFー1)…睡眠・運動・食事によって分泌が促され、骨や筋肉に欠かせないホルモン。卵巣機能にも密接に影響しているといわれています。 ●DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)…副腎から分泌されるホルモンの一種で、女性ホルモンや男性ホルモンをつくる働きがあります。DHEAが減少すると冷えやすくなったり、むくみやすくなるといわれています。 ●メラトニン…脳の松果体から分泌され、眠りを誘う睡眠ホルモンの一種。活性酸素を除去し、卵巣や胎児の脳を守る働きもあるといわれています。 ●酸化ストレス…身近なエネルギー活動によって体内のあらゆる細胞を酸化させる有害な化学反応のことをいいます。たとえば、卵子の成長によってエネルギーの代謝が上がると酸化ストレスも高くなります。抗酸化能力が低下していると卵子の発育に影響します。 ●AGE(終末糖化産物)…タンパク質と糖が加熱されてできる物質です。加齢、高血糖、喫煙にともなう酸化ストレスによって体内でつくられるAGEと、食物から体内に入るAGEの大きく2つがあります。どちらも体内に蓄積されると胚の発育を抑制し、胚の分割や胚盤胞の形成に影響するといわれています。 卵子の質を上げる具体的な方法はありますか? 老化によって体内には酸化ストレスやAGEといった不純物がたくさん蓄積されます。特に卵巣は活性酸素に弱い傾向があります。その活性酸素を除去できるのが運動とサプリメントです。つまり卵子の質を上げるために卵巣の環境を変える必要があるということです。 そこでまずは運動習慣を身につけることです。2014年に、週3日1日45分有酸素運動で、動脈硬化が改善し、血管拡張作用のある一酸化炭素(NO)産生が増加すると報告されています。有酸素運動は血管拡張により骨盤血流を改善し、その結果、卵巣血流の増大と卵巣機能の回復が期待されます。また、有酸素運動により、成長ホルモンがリパーゼの産生を促進し、リパーゼが中性脂肪を分解し、遊離脂肪酸を血液中に放出し細胞のエネルギーとして使用します。 一方、サプリメントについては、体内に不足している物質を補うという発想で若返りをめざすものです。とらたんさんもビタミン系、美容系のサプリメントを使用されていますが、当院であれば数あるサプリメントのなかでも、DHEAやメラトニンをはじめ細胞の老化を引き起こす活性酸素を除去するポリフェノールや脂肪酸をミトコンドリアに運搬して、ミトコンドリアの機能を改善し、老化を抑制するLカルニチンをおすすめします。 ただし、サプリメントは3カ月間継続しないと効果を実感できません。先ほどもお話しした通り、治療に残された時間は少ないですから、運動、サプリメント、不妊治療の同時進行がカギになります。この方の場合、初期胚まで育っていますので、さらにタイムラプスで精密な評価を行うと、いい初期胚に出会える可能性はあります。新鮮胚移植にトライしてみるのも一つです。 最後にアドバイスをお願いします。 運動やサプリメントの指導もしてくれるクリニックに行かれるのはいいことだと思います。当院でも、リバースエイジングに向けてオリジナルエクササイズとサプリメントを取り入れたリバースエイジングプログラムを展開していきたいと考えています。 体外受精の成功率は25歳の方でも40%。残りの60%は残念な結果に終わっています。不妊治療を続けるうちに年齢を重ね、疲労だけが残ってしまう方も少なくありません。当院は不妊治療とともに、患者様の若さと健康のサポートをしていきたいと考えています。年齢的なリミットがある方にとってリバースエイジングのメリットは大きいと思います。不妊治療で良い結果が得られなくても、年齢に調和した健康や若さを保つことができれば、夫婦のあり方や人生の向き合い方も変わってくると思います。 Doctor’s Advice ●年齢的なリミットを考えて早めの治療を。 ●運動とサプリによる卵巣の若返りにチャレンジ。 ●タイプラプスでいい初期胚が見つかる可能性も。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。各患者様の背景に配慮した“オーダーメイド治療”をめざす。日本産科婦人科学会認定医、生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、臨床遺伝専門医。趣味はゴルフ・映画鑑賞・ピアノ。リバースエイジング(若返り)に着目している同院では、オリジナルエクササイズとサプリメントによる新たな治療プログラムを考案中とのこと。これからの時代は「健康的、若く、美しく」が不妊治療のキーワードになるのかもしれません。 ≫ うめだファティリティークリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 胚盤胞まで育たず、初期胚移植も失敗。卵子の質は上げられる? 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 低AMH、高FSHの43歳。完全自然周期から顕微授精まで、いろいろ試しても結果が出ず、今後の治療に悩んでいます。うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に伺いました。 とらたんさん(43歳)からの相談 相談内容 低AMH、高FSHで5年間不妊治療をしています。4回転院して採卵13回、初期胚移植4回。初めての採卵で化学流産をして以来、着床したことがなく、培養しても途中で分割が止まり、胚盤胞まで育ちません。今の病院で男性不妊と言われて顕微授精をしていますが、いつも受精はします。クロミッドⓇ、HMG注射、完全自然周期も試してきました。初期胚でも妊娠せず、胚盤胞まで育たないので凍結胚移植もできず、今後の治療に悩んでいます。卵子の質が良くないので、調整周期など採卵前にサプリや薬で治療するような病院に行ったほうがよいのでしょうか。 これまでの治療データ ●検査・治療歴 タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精、ヒューナーテスト、子宮鏡検査、卵管造影検査、ホルモン検査、精液検査 ●不妊の原因となる病名 男性不妊との診断あり ●不妊の原因となる病名 精液量107ml、濃度2800万/ml、運動率51%、奇形率は直進精子+ ●精子データ 通常の3倍以上(正確な数値不明) ●漢方・サプリメントの使用 ビタミン系サプリ(葉酸を含む)、美容系サプリ、コラーゲン、漢方薬 とらたんさんは今後の治療に悩まれています。先生はどう思われますか。 低AMH、高FSHで年齢が43歳とのことですね。厳しいようですが閉経が近い状態といわざるをえません。高齢であることを前提に「卵子が採れない」「卵子は採れても受精しない」「胚盤胞まで育たない」「初期胚移植しても結果が出ない」という方には、現代の医学では治療に限界があり、たとえ妊娠できたとしても流産のリスクが高くなります。いずれにしても治療は急がなければなりません。この方がおっしゃるように卵子の質を上げる何らかの工夫が必要です。 卵子の質を上げるために、先生が着目していることはありますか? 最近、欧米はじめ日本ではアンチエイジング(抗老化・抗年齢)ではなく、リバースエイジング(若返り)が注目されています。老化のタイプやスピードは人それぞれに異なりますが、30代半ばから40代以降に個人差がはっきり出てくるといわれています。そこで、赤ちゃんを希望される方は、卵子と卵巣のホルモン年齢を実年齢よりも若く保つことが重要になります。いま着目しているのが、卵子と卵巣の老化に影響するといわれる5つの体内物質です。 ●成長ホルモン(IGFー1)…睡眠・運動・食事によって分泌が促され、骨や筋肉に欠かせないホルモン。卵巣機能にも密接に影響しているといわれています。 ●DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)…副腎から分泌されるホルモンの一種で、女性ホルモンや男性ホルモンをつくる働きがあります。DHEAが減少すると冷えやすくなったり、むくみやすくなるといわれています。 ●メラトニン…脳の松果体から分泌され、眠りを誘う睡眠ホルモンの一種。活性酸素を除去し、卵巣や胎児の脳を守る働きもあるといわれています。 ●酸化ストレス…身近なエネルギー活動によって体内のあらゆる細胞を酸化させる有害な化学反応のことをいいます。たとえば、卵子の成長によってエネルギーの代謝が上がると酸化ストレスも高くなります。抗酸化能力が低下していると卵子の発育に影響します。 ●AGE(終末糖化産物)…タンパク質と糖が加熱されてできる物質です。加齢、高血糖、喫煙にともなう酸化ストレスによって体内でつくられるAGEと、食物から体内に入るAGEの大きく2つがあります。どちらも体内に蓄積されると胚の発育を抑制し、胚の分割や胚盤胞の形成に影響するといわれています。 卵子の質を上げる具体的な方法はありますか? 老化によって体内には酸化ストレスやAGEといった不純物がたくさん蓄積されます。特に卵巣は活性酸素に弱い傾向があります。その活性酸素を除去できるのが運動とサプリメントです。つまり卵子の質を上げるために卵巣の環境を変える必要があるということです。 そこでまずは運動習慣を身につけることです。2014年に、週3日1日45分有酸素運動で、動脈硬化が改善し、血管拡張作用のある一酸化炭素(NO)産生が増加すると報告されています。有酸素運動は血管拡張により骨盤血流を改善し、その結果、卵巣血流の増大と卵巣機能の回復が期待されます。また、有酸素運動により、成長ホルモンがリパーゼの産生を促進し、リパーゼが中性脂肪を分解し、遊離脂肪酸を血液中に放出し細胞のエネルギーとして使用します。 一方、サプリメントについては、体内に不足している物質を補うという発想で若返りをめざすものです。とらたんさんもビタミン系、美容系のサプリメントを使用されていますが、当院であれば数あるサプリメントのなかでも、DHEAやメラトニンをはじめ細胞の老化を引き起こす活性酸素を除去するポリフェノールや脂肪酸をミトコンドリアに運搬して、ミトコンドリアの機能を改善し、老化を抑制するLカルニチンをおすすめします。 ただし、サプリメントは3カ月間継続しないと効果を実感できません。先ほどもお話しした通り、治療に残された時間は少ないですから、運動、サプリメント、不妊治療の同時進行がカギになります。この方の場合、初期胚まで育っていますので、さらにタイムラプスで精密な評価を行うと、いい初期胚に出会える可能性はあります。新鮮胚移植にトライしてみるのも一つです。 最後にアドバイスをお願いします。 運動やサプリメントの指導もしてくれるクリニックに行かれるのはいいことだと思います。当院でも、リバースエイジングに向けてオリジナルエクササイズとサプリメントを取り入れたリバースエイジングプログラムを展開していきたいと考えています。 体外受精の成功率は25歳の方でも40%。残りの60%は残念な結果に終わっています。不妊治療を続けるうちに年齢を重ね、疲労だけが残ってしまう方も少なくありません。当院は不妊治療とともに、患者様の若さと健康のサポートをしていきたいと考えています。年齢的なリミットがある方にとってリバースエイジングのメリットは大きいと思います。不妊治療で良い結果が得られなくても、年齢に調和した健康や若さを保つことができれば、夫婦のあり方や人生の向き合い方も変わってくると思います。 Doctor’s Advice ●年齢的なリミットを考えて早めの治療を。 ●運動とサプリによる卵巣の若返りにチャレンジ。 ●タイプラプスでいい初期胚が見つかる可能性も。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。各患者様の背景に配慮した“オーダーメイド治療”をめざす。日本産科婦人科学会認定医、生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、臨床遺伝専門医。趣味はゴルフ・映画鑑賞・ピアノ。リバースエイジング(若返り)に着目している同院では、オリジナルエクササイズとサプリメントによる新たな治療プログラムを考案中とのこと。これからの時代は「健康的、若く、美しく」が不妊治療のキーワードになるのかもしれません。 ≫ うめだファティリティークリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.21
コラム 不妊治療
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クリニックの転院について
モモカワさん(39歳)今年の7月で39歳になりました。 35歳の時に、初めての人工受精で第一子を妊娠、出産しました。 40歳を前に諦めきれないと思い、治療を再開しました。 今月初めての体外受精に挑みました。 クロミッド、プレマリンによる低刺激の排卵誘発で、採卵の日には既に排卵済。 何とか1つ採卵しましたが、未成熟卵で受精しませんでした。 こちらのクリニックは、受精しなかった場合は、あと2回無料で採卵して貰えます。 ただ、卵胞が小さく、排卵を推定するのが難しいと言われました。 歳のこともあり、一周期も無駄にしたくありません。 そこで、無料の採卵は放棄して、刺激法を取り入れたクリニックに転院した方が良いか迷っています。どう思われますか? 生理2日目の血液検査は以下の通りです。 E2 53.6 LH 3.05 FSH 5.99 AMHは計測して貰えない為、分かりません。 山下 能毅 先生 (うめだファティリティークリニック) 趣味・特技:ゴルフ・映画鑑賞・ピアノ 大阪医科大学医学部卒業、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科学講師・宮崎レディースクリニック副院長を経て、2017年4月うめだファティリティクリニック院長就任 ≫ うめだファティリティークリニック実際、体外受精は、自費診療であるため、一般不妊治療に比較し高額です。「体外受精で受精しなかった場合は2回無料」とありますが、受精障害が起こりうることを事前に説明した上で治療を行っていると思いますので、次の治療を無料にするのではなく、受精しなかった原因と対策を講じて、次の治療を行うことが重要であると思います。 日本では自然周期による治療が多く行われており、そのため採卵周期数は世界一といわれています。しかし、ヨーロッパ生殖医学会「ESHRE(エシュレ)」などでは、刺激周期による治療を基本とし、自然周期を推奨していません。その理由として、自然周期は1採卵あたりの妊娠率が低いことがあります。さらに、その周期の採卵がキャンセルになることも多く、毎月採卵を繰り返す必要があります。一方で、刺激周期は1回の採卵でたくさんの卵子を採って、受精卵を凍結保存することで、移植を繰り返すことができますので、1採卵周期あたりの妊娠率が高くなります。ただ、医原性疾患である、卵巣過剰刺激症候群を予防するためにも、治療前にAMHを測定し、適切な刺激法を選択する必要があります。 当院では、体外受精治療を希望された場合、まずAMHの値を測定し、その数値に応じた刺激周期を検討します。たとえば、AMHが正常であればロング法、やや低い人にはショート法、卵巣機能が低下して刺激周期で採卵できなかった場合や40代以上の方の場合については、レトロゾールを使用したマイルドな刺激周期を行っています。 モモワカさんはエストロゲンの情報しかないのでわかりにくいのですが、まだ39歳と若いですし、お子さんも1人いらっしゃいます。卵巣機能もそれほど低下していないと思いますので、一度、体に合った調節卵巣刺激を受けられて採卵してはいかがでしょうか。
2017.10.1
専門医Q&A 女性の健康
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卵子があまり育ちません。卵子の質が悪いのでしょうか?
卵子があまり育ちません。卵子の質が悪いのでしょうか? 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 相談者:みゅうさん(27歳) 卵子の質について 夫の乏精子症が発覚し、アンタゴニスト法で顕微授精を行いました。先生に「若いから、2人目もこの採卵でいけるかも」と言われ、私も期待していました。しかし、実際は採卵15個、そのうち成熟卵は7個。顕微授精では6個受精、残りの1個も受精しました。ほかは未成熟な卵子でした。そして、分割が遅く黒くなってしまい、胚盤胞になったのは5日目の4CC1つだけでした。先生にがっかりしたと言われ、私も落ち込んでいます。卵子の質が悪い体質なのでしょうか。先生も次の刺激法のアレンジは多少すると言ってくださっていますが悩んでおられました。卵子の質が悪い人は何度やっても結果同じなのでしょうか。まだ望みはありますか? みゅうさんは卵子の質に問題があるのでしょうか。 採卵した15個のうち成熟卵は7個で、結果的に顕微授精できなかったのだと思います。確率としてはかなり低いですね。たとえば、この方が40歳ぐらいであればアンチエイジングのサプリメントなどを併用して、卵子のクオリティを上げることも検討するかもしれませんが、まだ27歳とお若いです。早発閉経でもないかぎり、卵子の質について語るのは早い気がします。実際のAMHの値がわからないのですが、卵巣刺激法が合っていない可能性も考えられます。まずは方法を変えてみてはいかがでしょうか。 どのような卵巣刺激法がいいのでしょうか。 方法としては3つあります。ひとつがロング法です。月経の約1週間前から点鼻薬+注射剤で自然排卵を抑制しながら卵子をゆっくり成熟させて採卵する方法です。比較的年齢が若い方が対象で、複数個の卵子が均一に育ちやすいというメリットがあります。 もうひとつはアンタゴニスト法のアレンジです。アンタゴニスト法は、月経3日目から注射剤+アンタゴニスト製剤で自然排卵を抑制しながら卵子を育てる方法です。従来よりも1〜2日長く刺激をして採卵を遅らせることで、前回よりも成熟した卵子を採取できる可能性があります。 さらに、レトロゾールやアロマターゼ阻害剤と注射剤を併用しながら、マイルドに刺激して成熟した卵子を確実に採卵する方法もあります。15個といった複数個の卵子を一度に採卵するのではなく、採卵数を減らす代わりに卵子の成熟度を上げることができます。 また、そのほかの方法もあります。アンタゴニストでの刺激周期中に血液検査をすると、まれにLH(黄体形成ホルモン)が基準値よりも極度に低い方がいます。このような方は卵子の成熟度も低い可能性があります。現在はLHを補う薬がないのですが、当院ではLHと同様の成分をもつHCG注射を希釈して投与し、卵子の成熟度を上げる高度な治療も行っています。この方の詳しいデータがわかりませんが、刺激周期中にLH、FSH、エストロゲンの値を調べて補充していくのもひとつの方法かもしれません。 最後にアドバイスをお願いします。 いきなり卵子の質を変えるのはむずかしいので、まずは先ほどお話しした刺激法を試されるといいと思います。この方は月経周期28日型で身長153㎝・体重41㎏でBMIは高くありませんから、卵子の質にも影響を及ぼすPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の可能性は低いでしょう。むしろ痩せすぎが気になりますので、甲状腺ホルモンの検査を受けられてもいいかもしれません。それで問題がなければ、当院ではロング法をおすすめします。 あとはご主人の乏精子症の度合いによりますが、場合によっては体外受精だけでなく、人工授精を受けることができます。毎月の体外受精は大変だと思いますので、体外受精にこだわりすぎず、合間に試してみるものひとつの選択です。 山下先生より まとめ ●刺激法が合っていない可能性もあるので、まずは方法を変えてみては。 ●乏精子症の度合いによっては、合間に人工授精を試されるのもひとつ。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。各患者様の背景に配慮した“オーダーメイド治療”をめざす。日本産科婦人科学会認定医、生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、臨床遺伝専門医。趣味はゴルフ・映画鑑賞・ピアノ。女性、男性ともに利用しやすいクリニックをめざし、「うめだファティリティークリニック」としてスタートして、はや5カ月。毎週木曜と毎月第1土曜に男性不妊外来を開設し、MD-TESEに対応しています。「ご夫婦はもちろん、1人で来院される男性が増えました」と山下先生。 ≫ うめだファティリティークリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn≫ 掲載記事一覧はこちら 卵子があまり育ちません。卵子の質が悪いのでしょうか? 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 相談者:みゅうさん(27歳) 卵子の質について 夫の乏精子症が発覚し、アンタゴニスト法で顕微授精を行いました。先生に「若いから、2人目もこの採卵でいけるかも」と言われ、私も期待していました。しかし、実際は採卵15個、そのうち成熟卵は7個。顕微授精では6個受精、残りの1個も受精しました。ほかは未成熟な卵子でした。そして、分割が遅く黒くなってしまい、胚盤胞になったのは5日目の4CC1つだけでした。先生にがっかりしたと言われ、私も落ち込んでいます。卵子の質が悪い体質なのでしょうか。先生も次の刺激法のアレンジは多少すると言ってくださっていますが悩んでおられました。卵子の質が悪い人は何度やっても結果同じなのでしょうか。まだ望みはありますか? みゅうさんは卵子の質に問題があるのでしょうか。 採卵した15個のうち成熟卵は7個で、結果的に顕微授精できなかったのだと思います。確率としてはかなり低いですね。たとえば、この方が40歳ぐらいであればアンチエイジングのサプリメントなどを併用して、卵子のクオリティを上げることも検討するかもしれませんが、まだ27歳とお若いです。早発閉経でもないかぎり、卵子の質について語るのは早い気がします。実際のAMHの値がわからないのですが、卵巣刺激法が合っていない可能性も考えられます。まずは方法を変えてみてはいかがでしょうか。 どのような卵巣刺激法がいいのでしょうか。 方法としては3つあります。ひとつがロング法です。月経の約1週間前から点鼻薬+注射剤で自然排卵を抑制しながら卵子をゆっくり成熟させて採卵する方法です。比較的年齢が若い方が対象で、複数個の卵子が均一に育ちやすいというメリットがあります。 もうひとつはアンタゴニスト法のアレンジです。アンタゴニスト法は、月経3日目から注射剤+アンタゴニスト製剤で自然排卵を抑制しながら卵子を育てる方法です。従来よりも1〜2日長く刺激をして採卵を遅らせることで、前回よりも成熟した卵子を採取できる可能性があります。 さらに、レトロゾールやアロマターゼ阻害剤と注射剤を併用しながら、マイルドに刺激して成熟した卵子を確実に採卵する方法もあります。15個といった複数個の卵子を一度に採卵するのではなく、採卵数を減らす代わりに卵子の成熟度を上げることができます。 また、そのほかの方法もあります。アンタゴニストでの刺激周期中に血液検査をすると、まれにLH(黄体形成ホルモン)が基準値よりも極度に低い方がいます。このような方は卵子の成熟度も低い可能性があります。現在はLHを補う薬がないのですが、当院ではLHと同様の成分をもつHCG注射を希釈して投与し、卵子の成熟度を上げる高度な治療も行っています。この方の詳しいデータがわかりませんが、刺激周期中にLH、FSH、エストロゲンの値を調べて補充していくのもひとつの方法かもしれません。 最後にアドバイスをお願いします。 いきなり卵子の質を変えるのはむずかしいので、まずは先ほどお話しした刺激法を試されるといいと思います。この方は月経周期28日型で身長153㎝・体重41㎏でBMIは高くありませんから、卵子の質にも影響を及ぼすPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の可能性は低いでしょう。むしろ痩せすぎが気になりますので、甲状腺ホルモンの検査を受けられてもいいかもしれません。それで問題がなければ、当院ではロング法をおすすめします。 あとはご主人の乏精子症の度合いによりますが、場合によっては体外受精だけでなく、人工授精を受けることができます。毎月の体外受精は大変だと思いますので、体外受精にこだわりすぎず、合間に試してみるものひとつの選択です。 山下先生より まとめ ●刺激法が合っていない可能性もあるので、まずは方法を変えてみては。 ●乏精子症の度合いによっては、合間に人工授精を試されるのもひとつ。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。各患者様の背景に配慮した“オーダーメイド治療”をめざす。日本産科婦人科学会認定医、生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、臨床遺伝専門医。趣味はゴルフ・映画鑑賞・ピアノ。女性、男性ともに利用しやすいクリニックをめざし、「うめだファティリティークリニック」としてスタートして、はや5カ月。毎週木曜と毎月第1土曜に男性不妊外来を開設し、MD-TESEに対応しています。「ご夫婦はもちろん、1人で来院される男性が増えました」と山下先生。 ≫ うめだファティリティークリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.8.18
コラム 不妊治療
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小さな筋腫でも胚移植前に 切除するべきでしょうか?
小さな筋腫でも胚移植前に切除するべきでしょうか? 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 子宮筋腫の治療と不妊治療のいずれを優先するべきか、夫婦で相談しても結論が出せない問題。うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に伺いました。 相談者:ますペンさん(40歳) 子宮筋腫1㎝、でも場所が…… 不妊治療を始めて1年半。これまでタイミング療法、人工授精3回、体外受精2回挑戦してきましたが、いずれも妊娠に至りませんでした。1回目の体外受精で8週目に流産、現在は良好胚盤胞1個(4AB)ともう1つ(3BC)を凍結しています。現在、来月の胚移植に向けて準備中ですが、2回目の体外受精の前から、クリニックの医師に超音波で「子宮上部に1㎝の筋腫がある。大きくはないが場所が悪い」と言われていました。別の医師からは「小さいけど内膜を圧迫して着床の妨げになるだろう」とも。手術をして切除するか、このまま来月移植するかの選択を迫られました。もし妊娠に問題がないようなら、1㎝の大きさで手術の話なんてするわけないし……とも思います。仕事の関係ですぐに手術・入院というわけにもいきません。もうすぐ40歳になるので、治療がどんどん遅れてしまうのも不安で夫とともに大変悩んでいます。 まずは子宮鏡検査やMRIでハッキリとした診断結果を 子宮筋腫が不妊の要因となっているかどうか、実際に見極めるのは大変難しい問題です。結論から言えば、筋腫の核出術で体外受精の成績が上がったという報告や論文がたくさんありますので、ぜひ前向きに手術を検討されてはいかがでしょうか。そのためにも、筋腫が着床不全など不妊の原因となっていないかどうか、きちんとした検査で判断することが重要です。 子宮上部に筋腫があるとのことですが、ご相談ではまだエコー検査しか行っておられないようです。まずは子宮鏡検査やMRI検査でしっかりと診断を受けることが必要かと思います。子宮内膜を変形させる粘膜下筋腫は、体外受精の着床率、妊娠率を明らかに低下させるため、子宮鏡による核出術が推奨されています。一方、子宮内腔の変形を伴わない筋層内筋腫では、体外受精の成績、および妊孕性への影響については議論の余地があり、まだはっきりとした結論が出ていない状態です。 いずれにせよ、きちんと画像による検査を受けて、本当はどういう状態になっているのか確かめたほうがいいでしょう。そして筋腫が子宮の内腔を圧迫し、着床障害の原因と考えられるのであれば、担当のドクターのおっしゃる通り、着床環境を整えるための手術の適応になると思います。 手術をするメリットとデメリットについて知る 直径1㎝の筋腫といえば、エコー検査がまだ普及していなかった頃には、おそらく見つけられなかったようなごく小さな筋腫です。一般女性の約30%は筋腫をもっていますから、過多月経で貧血を起こすような方や、月経痛がひどい場合を除いて、1㎝程度の大きさでは基本的に手術はしないでしょう。 しかし、気になるのは40歳という年齢と、1回目の体外受精で流産されていることです。現在、体外受精によって妊娠を目指していて、子宮内腔に少しでも着床障害が疑われるような要素があれば、それはやはり早期に取り除いていったほうがいいと思います。 手術をするメリットとしては、今の段階なら筋腫が小さいので、子宮鏡か腹腔鏡でお腹を切らずに核出手術ができるということ。手術のリスクも最小限で済み、子宮の内腔がきれいになって着床環境を整えられることです。不妊治療の過程で筋腫はどんどん大きくなっていく可能性もありますので、もし手術するのであれば早めに行ったほうがいいでしょう。 一方のデメリットとしては、術後に子宮が再生するまでの2〜3カ月は避妊が必要なので胚移植ができないこと。そして腹腔鏡による核出術をした場合、分娩時に子宮が破裂するリスクがあるため、帝王切開となることが一般的です。自然分娩は諦めていただかなければなりません。もし子宮鏡による核出術であれば、お腹を切らずに普通に分娩できる可能性もあります。 手術に踏み切るのは不安。どのような手術なのでしょう? 子宮筋腫の治療法には手術と薬の2つがあります。薬を投与して人工的に閉経の状態にする偽閉経療法もありますが、不妊治療をされている40歳の方には卵巣への負担が大きくおすすめできません。治療となればやはり核出術が選択肢となります。 現在、子宮筋腫の手術は子宮鏡を使って行うことが一般的です。開腹手術ではありませんので、入院期間の目安としては日帰りか1泊2日、腹腔鏡でも4泊5日くらいでしょうか。子宮鏡とはいわゆる内視鏡と呼ばれるもので、胃カメラのような細いファイバースコープを子宮口から挿し入れ、子宮内腔を観察しながら行う子宮鏡下手術です。子宮鏡検査の段階で筋腫やポリープなどの異常が見つかれば、そのまま子宮鏡下手術で切除できる場合もあります。 お腹を切らない腹腔鏡下手術の場合、筋腫の大きさが3㎝とか5㎝であれば問題ないのですが、1㎝くらいの小さな筋腫だと、手術中に、部位を特定することが難しい場合があるので、できれば多くの症例を手がける腹腔鏡の専門施設で行うのが望ましいです。 もともと手術をすること自体、女性にとっては大きなストレスで、卵巣機能が落ちることがあります。40歳という年齢ではなおさら、一時的にAMHの値が下がったりすることもあるでしょう。やみくもに手術をおすすめするものではありませんが、担当医やご夫婦でよく話し合ってメリットとデメリットを検討し、術前の検査によって筋腫がある位置をきちんと確かめてから手術に進んでほしいですね。 今後の治療の進め方についてアドバイスをお願いします もし子宮内腔の変形がないのであれば、子宮鏡の検査だけ受けてどんどん不妊治療を優先されたらいいと思います。今まで一度も体外受精、胚移植をされたことがないのでしたら、手術前の胚移植をおすすめしますが、幸い体外受精に2回挑戦されていて、良好な胚盤胞を2個凍結されているとのこと。 40歳という年齢を考えると、子宮筋腫を切除しても妊娠率が100%になるわけではありませんが、手術前に採卵して凍結胚を保存してから、手術後に移植を再開していく方法もあると思います。年齢的な焦りもあるでしょうが、いろいろな形が考えられるので、ドクターとよく相談されたうえで積極的に治療を進めてください。 山下先生より まとめ まずは詳しい検査が必要。着床に影響が考えられるなら筋腫の切除後に胚移植を。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。各患者様の背景に配慮した“オーダーメイド治療”をめざす。日本産科婦人科学会認定医、生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、臨床遺伝専門医。趣味はゴルフ・映画鑑賞・ピアノ。2017年4月17日、クリニックの名称を「宮崎レディースクリニック」から「うめだファティリティークリニック」へと変更。宮崎和典院長を名誉院長に、これからも宮崎先生と山下先生の二人三脚体制で最新の生殖医療に取り組まれます。 ≫ うめだファティリティークリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer≫ 掲載記事一覧はこちら 小さな筋腫でも胚移植前に切除するべきでしょうか? 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 子宮筋腫の治療と不妊治療のいずれを優先するべきか、夫婦で相談しても結論が出せない問題。うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に伺いました。 相談者:ますペンさん(40歳) 子宮筋腫1㎝、でも場所が…… 不妊治療を始めて1年半。これまでタイミング療法、人工授精3回、体外受精2回挑戦してきましたが、いずれも妊娠に至りませんでした。1回目の体外受精で8週目に流産、現在は良好胚盤胞1個(4AB)ともう1つ(3BC)を凍結しています。現在、来月の胚移植に向けて準備中ですが、2回目の体外受精の前から、クリニックの医師に超音波で「子宮上部に1㎝の筋腫がある。大きくはないが場所が悪い」と言われていました。別の医師からは「小さいけど内膜を圧迫して着床の妨げになるだろう」とも。手術をして切除するか、このまま来月移植するかの選択を迫られました。もし妊娠に問題がないようなら、1㎝の大きさで手術の話なんてするわけないし……とも思います。仕事の関係ですぐに手術・入院というわけにもいきません。もうすぐ40歳になるので、治療がどんどん遅れてしまうのも不安で夫とともに大変悩んでいます。 まずは子宮鏡検査やMRIでハッキリとした診断結果を 子宮筋腫が不妊の要因となっているかどうか、実際に見極めるのは大変難しい問題です。結論から言えば、筋腫の核出術で体外受精の成績が上がったという報告や論文がたくさんありますので、ぜひ前向きに手術を検討されてはいかがでしょうか。そのためにも、筋腫が着床不全など不妊の原因となっていないかどうか、きちんとした検査で判断することが重要です。 子宮上部に筋腫があるとのことですが、ご相談ではまだエコー検査しか行っておられないようです。まずは子宮鏡検査やMRI検査でしっかりと診断を受けることが必要かと思います。子宮内膜を変形させる粘膜下筋腫は、体外受精の着床率、妊娠率を明らかに低下させるため、子宮鏡による核出術が推奨されています。一方、子宮内腔の変形を伴わない筋層内筋腫では、体外受精の成績、および妊孕性への影響については議論の余地があり、まだはっきりとした結論が出ていない状態です。 いずれにせよ、きちんと画像による検査を受けて、本当はどういう状態になっているのか確かめたほうがいいでしょう。そして筋腫が子宮の内腔を圧迫し、着床障害の原因と考えられるのであれば、担当のドクターのおっしゃる通り、着床環境を整えるための手術の適応になると思います。 手術をするメリットとデメリットについて知る 直径1㎝の筋腫といえば、エコー検査がまだ普及していなかった頃には、おそらく見つけられなかったようなごく小さな筋腫です。一般女性の約30%は筋腫をもっていますから、過多月経で貧血を起こすような方や、月経痛がひどい場合を除いて、1㎝程度の大きさでは基本的に手術はしないでしょう。 しかし、気になるのは40歳という年齢と、1回目の体外受精で流産されていることです。現在、体外受精によって妊娠を目指していて、子宮内腔に少しでも着床障害が疑われるような要素があれば、それはやはり早期に取り除いていったほうがいいと思います。 手術をするメリットとしては、今の段階なら筋腫が小さいので、子宮鏡か腹腔鏡でお腹を切らずに核出手術ができるということ。手術のリスクも最小限で済み、子宮の内腔がきれいになって着床環境を整えられることです。不妊治療の過程で筋腫はどんどん大きくなっていく可能性もありますので、もし手術するのであれば早めに行ったほうがいいでしょう。 一方のデメリットとしては、術後に子宮が再生するまでの2〜3カ月は避妊が必要なので胚移植ができないこと。そして腹腔鏡による核出術をした場合、分娩時に子宮が破裂するリスクがあるため、帝王切開となることが一般的です。自然分娩は諦めていただかなければなりません。もし子宮鏡による核出術であれば、お腹を切らずに普通に分娩できる可能性もあります。 手術に踏み切るのは不安。どのような手術なのでしょう? 子宮筋腫の治療法には手術と薬の2つがあります。薬を投与して人工的に閉経の状態にする偽閉経療法もありますが、不妊治療をされている40歳の方には卵巣への負担が大きくおすすめできません。治療となればやはり核出術が選択肢となります。 現在、子宮筋腫の手術は子宮鏡を使って行うことが一般的です。開腹手術ではありませんので、入院期間の目安としては日帰りか1泊2日、腹腔鏡でも4泊5日くらいでしょうか。子宮鏡とはいわゆる内視鏡と呼ばれるもので、胃カメラのような細いファイバースコープを子宮口から挿し入れ、子宮内腔を観察しながら行う子宮鏡下手術です。子宮鏡検査の段階で筋腫やポリープなどの異常が見つかれば、そのまま子宮鏡下手術で切除できる場合もあります。 お腹を切らない腹腔鏡下手術の場合、筋腫の大きさが3㎝とか5㎝であれば問題ないのですが、1㎝くらいの小さな筋腫だと、手術中に、部位を特定することが難しい場合があるので、できれば多くの症例を手がける腹腔鏡の専門施設で行うのが望ましいです。 もともと手術をすること自体、女性にとっては大きなストレスで、卵巣機能が落ちることがあります。40歳という年齢ではなおさら、一時的にAMHの値が下がったりすることもあるでしょう。やみくもに手術をおすすめするものではありませんが、担当医やご夫婦でよく話し合ってメリットとデメリットを検討し、術前の検査によって筋腫がある位置をきちんと確かめてから手術に進んでほしいですね。 今後の治療の進め方についてアドバイスをお願いします もし子宮内腔の変形がないのであれば、子宮鏡の検査だけ受けてどんどん不妊治療を優先されたらいいと思います。今まで一度も体外受精、胚移植をされたことがないのでしたら、手術前の胚移植をおすすめしますが、幸い体外受精に2回挑戦されていて、良好な胚盤胞を2個凍結されているとのこと。 40歳という年齢を考えると、子宮筋腫を切除しても妊娠率が100%になるわけではありませんが、手術前に採卵して凍結胚を保存してから、手術後に移植を再開していく方法もあると思います。年齢的な焦りもあるでしょうが、いろいろな形が考えられるので、ドクターとよく相談されたうえで積極的に治療を進めてください。 山下先生より まとめ まずは詳しい検査が必要。着床に影響が考えられるなら筋腫の切除後に胚移植を。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。各患者様の背景に配慮した“オーダーメイド治療”をめざす。日本産科婦人科学会認定医、生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、臨床遺伝専門医。趣味はゴルフ・映画鑑賞・ピアノ。2017年4月17日、クリニックの名称を「宮崎レディースクリニック」から「うめだファティリティークリニック」へと変更。宮崎和典院長を名誉院長に、これからも宮崎先生と山下先生の二人三脚体制で最新の生殖医療に取り組まれます。 ≫ うめだファティリティークリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.5.24
コラム 不妊治療
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7回の顕微授精に失敗原因は卵子? それとも精子?
7回の顕微授精に失敗原因は卵子? それとも精子? 山下 能毅 先生(宮崎レディースクリニック) 相談者:衣千夏さん(32歳) 顕微授精、過去7度の失敗の原因について 主人の無精子症で、過去7回顕微授精を行いましたが、すべて陰性。なぜ失敗したのか悩んでいます。やはり私の卵子が悪かったのでしょうか? 不育検査、子宮鏡検査などできる対策はすべてしました。シート法、2段階胚移植、ハッチング、エンブリオグルーでの培養、ヘパリン注射もダメでした。2回採卵を行い、1回目は45個(ほぼG2)、2回目は34個(G1が7個、G2が22個ほか)でした。先日、ほかの不妊治療病院で卵子が採れすぎると質が下がってよくないと指摘されましたが本当でしょうか? 検査結果で私には何も原因がなかったので、卵子も問題ないと勝手に思っていましたが、目の前が真っ暗です。今後も顕微授精をするために何ができますか? 顕微授精を7回されていますが結果が出ないそうです。 精子と卵子について、それぞれお話しします。おもな原因としてご主人の無精子症があります。原因は不明ですが、この場合はMDーTESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)で採取した精子で顕微授精する方法しか選択肢はありません。すでに2回行って精子を凍結保存されていらっしゃると思いますので、現状ではこれ以上の対応策はないと思います。 次に卵子についてです。衣千夏さんは2回の採卵で、1回目45個、2回目34個とありますが、毎回の採卵数が多いのが気になります。さらに、採卵数と卵子のグレードについては書かれていますが、実際に胚盤胞になった卵子がいくつあったのかなど、その後の経過が不明です。おそらく卵巣刺激が強すぎて、卵胞に未成熟の卵子がたくさんできてしまうPCOS(多嚢胞性卵胞症候群)の可能性が高いと思われます。PCOSは卵胞の発育障害だけでなく、卵子の質の低下や流産率を高める可能性が指摘されています。まずは卵巣刺激が少ないマイルド法で、卵巣をゆるやかに刺激して確実に成熟した卵子を採卵するといいと思います。 ほかに考えられることはありますか? もし受精卵自体を疑うのであれば、タイムラプスで受精卵の発育スピード、分裂パターンを観察し、良好な胚盤胞を選別する方法があります。 着床の問題については、すでに卵管造影検査などさまざまな検査をされているようですが、着床率を高める方法として、GーCSF子宮内注入法があります。GーCSFは好中球の機能を高める作用があり、胚移植前の子宮内に注入することで子宮内膜を厚くし、その後の妊娠成績が改善したという報告があります。ちなみに、当院でもなかなか結果が出ない方に行っていますが成功率は20〜30%です。 さらに、凍結融解胚盤胞を移植する場合、着床に適したタイミングを調べるERA(子宮内膜着床能)検査もあります。一般的には、胚盤胞は5日目、初期胚は3日目で移植しますが、ERA検査では遺伝子レベルでそれぞれの人に合った移植日を調べることができます。ただし、検査機関がスペインにしかないため、時間と費用がかかるといったデメリットもあります。 今後、この方が妊娠できる可能性についてはいかがでしょうか? まだ32歳とお若いですし、これだけ卵子が採れているのであれば、今後の可能性はあります。ご質問にも書かれているように、卵子が採れすぎると未成熟卵が増え、卵子の質が下がる傾向はあります。当院では、「採卵2〜3回を目安に子どもが1人授かれるつもりで頑張りましょう」とお伝えしています。この方もマイルド法で確実に成熟した卵子を採卵し、もう1回チャンレンジされてみてはいかがでしょう。 山下先生より まとめ ●採卵数が多いのはPCOSの可能性も。マイルド法で確実に成熟した卵子の採卵を ●胚や着床の問題ならタイムラプスによる移植胚の選別やG-CSF治療も有効です [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。各患者様の背景に配慮した“オーダーメイド治療”をめざす。日本産科婦人科学会認定医、生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、臨床遺伝専門医。趣味はゴルフ・映画鑑賞・ピアノ。同院では開業25年の節目を迎え、宮崎院長から山下院長にバトンタッチ。2017年4月15日、「うめだファティリティークリニック」としてリニューアルします。「『ネクスト25』をスローガンに、これまでの歴史を継承しつつ、新しくより良い25年をめざします」 ≫ うめだファティリティークリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら 7回の顕微授精に失敗原因は卵子? それとも精子? 山下 能毅 先生(宮崎レディースクリニック) 相談者:衣千夏さん(32歳) 顕微授精、過去7度の失敗の原因について 主人の無精子症で、過去7回顕微授精を行いましたが、すべて陰性。なぜ失敗したのか悩んでいます。やはり私の卵子が悪かったのでしょうか? 不育検査、子宮鏡検査などできる対策はすべてしました。シート法、2段階胚移植、ハッチング、エンブリオグルーでの培養、ヘパリン注射もダメでした。2回採卵を行い、1回目は45個(ほぼG2)、2回目は34個(G1が7個、G2が22個ほか)でした。先日、ほかの不妊治療病院で卵子が採れすぎると質が下がってよくないと指摘されましたが本当でしょうか? 検査結果で私には何も原因がなかったので、卵子も問題ないと勝手に思っていましたが、目の前が真っ暗です。今後も顕微授精をするために何ができますか? 顕微授精を7回されていますが結果が出ないそうです。 精子と卵子について、それぞれお話しします。おもな原因としてご主人の無精子症があります。原因は不明ですが、この場合はMDーTESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)で採取した精子で顕微授精する方法しか選択肢はありません。すでに2回行って精子を凍結保存されていらっしゃると思いますので、現状ではこれ以上の対応策はないと思います。 次に卵子についてです。衣千夏さんは2回の採卵で、1回目45個、2回目34個とありますが、毎回の採卵数が多いのが気になります。さらに、採卵数と卵子のグレードについては書かれていますが、実際に胚盤胞になった卵子がいくつあったのかなど、その後の経過が不明です。おそらく卵巣刺激が強すぎて、卵胞に未成熟の卵子がたくさんできてしまうPCOS(多嚢胞性卵胞症候群)の可能性が高いと思われます。PCOSは卵胞の発育障害だけでなく、卵子の質の低下や流産率を高める可能性が指摘されています。まずは卵巣刺激が少ないマイルド法で、卵巣をゆるやかに刺激して確実に成熟した卵子を採卵するといいと思います。 ほかに考えられることはありますか? もし受精卵自体を疑うのであれば、タイムラプスで受精卵の発育スピード、分裂パターンを観察し、良好な胚盤胞を選別する方法があります。 着床の問題については、すでに卵管造影検査などさまざまな検査をされているようですが、着床率を高める方法として、GーCSF子宮内注入法があります。GーCSFは好中球の機能を高める作用があり、胚移植前の子宮内に注入することで子宮内膜を厚くし、その後の妊娠成績が改善したという報告があります。ちなみに、当院でもなかなか結果が出ない方に行っていますが成功率は20〜30%です。 さらに、凍結融解胚盤胞を移植する場合、着床に適したタイミングを調べるERA(子宮内膜着床能)検査もあります。一般的には、胚盤胞は5日目、初期胚は3日目で移植しますが、ERA検査では遺伝子レベルでそれぞれの人に合った移植日を調べることができます。ただし、検査機関がスペインにしかないため、時間と費用がかかるといったデメリットもあります。 今後、この方が妊娠できる可能性についてはいかがでしょうか? まだ32歳とお若いですし、これだけ卵子が採れているのであれば、今後の可能性はあります。ご質問にも書かれているように、卵子が採れすぎると未成熟卵が増え、卵子の質が下がる傾向はあります。当院では、「採卵2〜3回を目安に子どもが1人授かれるつもりで頑張りましょう」とお伝えしています。この方もマイルド法で確実に成熟した卵子を採卵し、もう1回チャンレンジされてみてはいかがでしょう。 山下先生より まとめ ●採卵数が多いのはPCOSの可能性も。マイルド法で確実に成熟した卵子の採卵を ●胚や着床の問題ならタイムラプスによる移植胚の選別やG-CSF治療も有効です [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック) 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。各患者様の背景に配慮した“オーダーメイド治療”をめざす。日本産科婦人科学会認定医、生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、臨床遺伝専門医。趣味はゴルフ・映画鑑賞・ピアノ。同院では開業25年の節目を迎え、宮崎院長から山下院長にバトンタッチ。2017年4月15日、「うめだファティリティークリニック」としてリニューアルします。「『ネクスト25』をスローガンに、これまでの歴史を継承しつつ、新しくより良い25年をめざします」 ≫ うめだファティリティークリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.4.21
コラム 不妊治療
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今後の治療方針
ゆっぴちさん(37歳)現在37歳です。35歳から不妊治療のクリニックにかかっております。下記の通り、器質的な原因は指摘されておりませんが、PCOS気味なのがbackgroundにあること、卵が育つ割には、採卵率が悪い、未熟卵が多い、のが苦戦している理由かと思っております。 また、胚盤胞にまで育つのですが、三回の移植が、一度も着床しないため着床障害を指摘されております。(通っておりますクリニックは、グレードは厳しめに評価され、Aはほどんどつけないそうです) 低〜中刺激での採卵が向いているのかと思いますが、治療方針に関しまして、主治医の先生以外のご意見を伺いたく、質問させていただきます。 また、一般的に新鮮胚移植は凍結胚移植より妊娠率が落ちますが、これは内膜の薄さの問題だけではないのでしょうか? 今後、低〜中刺激での採卵を続けると、胚盤胞まで1~2個育つと予想されますが、凍結した方が良いのでしょうか。 宮崎和典 先生 (うめだファティリティークリニック) 不妊でお悩みの方のお役に立ちたい… 不妊治療に長い間、携わっています。当初から多くの先進的な事に取り組んできましたが、その結果が近畿でいち早く体外受精、顕微授精、胚凍結保存の成功につながったものと思っています。この領域は、新しい分野、領域ですので様々な新説が出てきます。その中には、あまり信馮性のない説が流行ったりすることもありましたが、それらは長続きせず、省みられることもなく消えて行く運命にあります。 不妊治療は、日進月歩と言われますが、あまり目先のブームに追われず、何が理論的に正しいかを良く考え、臨床に生かして行きたいと思っています。 最近の患者様は、ネット等を通していろいろな情報を手に入れています。知識を得ることは大変大切なことだと思いますが、必ずしも確実ではない事を一時のブームで盲目的に信じ込むことは逆効果だとは思いませんか? 当院では、確実な事を確実に実行して行くというポリシーに沿って治療に当たっていきたいと思っています。その結果が、患者様の幸せに繋がり福音となることを願っています。 ■略歴■ 大阪医科大学医学部卒業(医学博士)、同大学産科婦人科講師を経て、当クリニック開業(1992年開業)、日本生殖医学会評議員、日本受精・着床学会評議員、日本産婦人科マイクロサージェリー学会評議員 ≫ うめだファティリティークリニック 37歳でAMHの値が4.3というのは、実年齢で33歳くらい人の数値です。卵巣の状態は若く、かなりいい数値です。これに対して、1回目の採卵ではショート法をおこない、HMGを300単位で7日間投与しています。このような治療で卵巣が腫れるのは当然です。さらに、E2の値も12650と異常な高さです。当院でもこのような値が必ずしもないとは限りませんが、E2の値が1万を越えたら投与を中止するという説もあります。これは、あきらかに過剰投与によるOHSS(卵巣過剰刺激症候群)です。なんのためにAMHを測っているのか疑問です。 さらに2回目の採卵ではクロミッドによる低刺激を行い、2日間のみHMG300を投与しています。今度は低刺激すぎます。中刺激で行えばよいと思うのですが、なぜ高刺激と低刺激をするのかよくわかりません。通常、AMHが4.3もあれば、ロング法か、HMGアンタゴニスト法で行い、1〜2日目でHMG300投与しても、その後は150程度、投与しています。 1回目の採卵では、17個のうち8個が未熟卵と、卵巣が腫れてきたので採卵も早めに行ったようです。17個採卵できても、いい卵がほとんどありません。(そのわりには胚盤胞にまで育ったのは良かったですが。)着床障害との診断ですが、本当に着床障害なのでしょうか。 凍結胚移植、または新鮮胚移植を検討する場合、一般的に内膜の薄さは関係ありません。クロミッドを投与すれば、内膜は当然薄くなります。内膜が薄くなれば、通常は移植せずに凍結します。この方は内膜の薄さよりも、刺激方法が着床を妨げているのではと考えます。とくに年齢が高くなると、インプランテーションウインドウ(着床の窓)が開く時間が短くなると考えられます。凍結胚移植でホルモン補充周期を行っていくのがよいと思います。ただし、40代以降の高齢になると、低刺激での採卵にくわえ、卵ができにくくなり質も低下します。このような老化した卵を凍結すると、卵にストレスがかかる可能性があり、新鮮胚移植のほうがいい場合もあります。
2015.8.8
専門医Q&A 女性の健康
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生理がこないかもといわれました(涙)高FSH 低AMH
うさぎさん(42歳)2014年 9月(D2)FSH 14.6 LH 3.7 E2 39.6 9月(D12) LH 4 E2 72.2 P4 6.1 10月(D4) FSH11.4 LH 3.6 E2 61.9 10月(D11) LH 12.8 P4 0.56 E2 158.1 2015年 1月(D3)FSH 36.2 LH 7.2 E2 20以下 1月(D12)FSH 78.8 LH24.5 E2 20以下 2015年1月の治療は、生理5日目からフェマーラ1日1錠を5日間服用 しました。D8で病院にいって、内診で内膜3.3mm 卵胞は見えない。といわれました。D12で血液検査をしたところ FSH78.8という値がでました。今まで、卵胞が見えないといわれたことはなく、ショックでした。 11月から漢方を服用しています。合ってないのでしょうか? 先生からは、生理が来ないかもといわれました。心配で心配でぐっすり眠れません。このまま閉経してしまうんでしょうか。まだ治療は可能でしょうか。どんな治療をすればよいでしょうか。 途方にくれています。どうかアドバイス頂けますでしょうか。宜しくお願いいたします。 宮崎和典 先生 (うめだファティリティークリニック) 不妊でお悩みの方のお役に立ちたい… 不妊治療に長い間、携わっています。当初から多くの先進的な事に取り組んできましたが、その結果が近畿でいち早く体外受精、顕微授精、胚凍結保存の成功につながったものと思っています。この領域は、新しい分野、領域ですので様々な新説が出てきます。その中には、あまり信馮性のない説が流行ったりすることもありましたが、それらは長続きせず、省みられることもなく消えて行く運命にあります。 不妊治療は、日進月歩と言われますが、あまり目先のブームに追われず、何が理論的に正しいかを良く考え、臨床に生かして行きたいと思っています。 最近の患者様は、ネット等を通していろいろな情報を手に入れています。知識を得ることは大変大切なことだと思いますが、必ずしも確実ではない事を一時のブームで盲目的に信じ込むことは逆効果だとは思いませんか? 当院では、確実な事を確実に実行して行くというポリシーに沿って治療に当たっていきたいと思っています。その結果が、患者様の幸せに繋がり福音となることを願っています。 ■略歴■ 大阪医科大学医学部卒業(医学博士)、同大学産科婦人科講師を経て、当クリニック開業(1992年開業)、日本生殖医学会評議員、日本受精・着床学会評議員、日本産婦人科マイクロサージェリー学会評議員 ≫ うめだファティリティークリニック一般的には、FSHの値が15以上で閉経が近い状態とされています。 うさぎさんのFSHの値は78.8とかなり高いですね。 これは脳下垂体が低下した卵巣機能を働かせようと、 必死にFSH(卵巣刺激ホルモン)を出し続けているサインです。 残念ながら、閉経に近い状態といわざるをえません。 20〜40歳前後に何らかの理由で自然閉経することを早発閉経といいます。 早発閉経はおもに体質によるものとされています。 閉経は突然くる人と、半年かけて時々出血を繰り返して閉経する人にわかれます。 SFHの値には波があるので正常値に戻ることもあるかもしれませんが、 当院ではSFH78.8という値で卵ができた経験はありません。 可能性として、まれにエストロゲン療法を行って卵が採れることがあります。 また、閉経後の卵巣にも原始卵胞が残っている可能性があることがわかってきました。 近年、このような卵巣を摘出して原始卵胞を培養し、発育させて妊娠につなげるIVAの研究が進んでいます。国内にIVAの成功例もあります。
2015.1.28
専門医Q&A 女性の健康
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40歳で3人目
はちさん(40歳)一人目から体外で、かなり治療して二人目を授かりました。順序通りステップアップしていき、採卵もトータルで7回はしています。 凍結卵の保存の延長の時期なのですが、必死で得た凍結卵、どうしても破棄を選ぶことができません。だから移植にトライしようかと思うのですが、それは40歳という年齢上、肉体的に止めた方がよいのでしょうか。ならば、二人の子どものためと思い、破棄を選択しようかと思えるかなと。 アドバイス頂けないでしょうか。 宮崎和典 先生 (うめだファティリティークリニック) 不妊でお悩みの方のお役に立ちたい… 不妊治療に長い間、携わっています。当初から多くの先進的な事に取り組んできましたが、その結果が近畿でいち早く体外受精、顕微授精、胚凍結保存の成功につながったものと思っています。この領域は、新しい分野、領域ですので様々な新説が出てきます。その中には、あまり信馮性のない説が流行ったりすることもありましたが、それらは長続きせず、省みられることもなく消えて行く運命にあります。 不妊治療は、日進月歩と言われますが、あまり目先のブームに追われず、何が理論的に正しいかを良く考え、臨床に生かして行きたいと思っています。 最近の患者様は、ネット等を通していろいろな情報を手に入れています。知識を得ることは大変大切なことだと思いますが、必ずしも確実ではない事を一時のブームで盲目的に信じ込むことは逆効果だとは思いませんか? 当院では、確実な事を確実に実行して行くというポリシーに沿って治療に当たっていきたいと思っています。その結果が、患者様の幸せに繋がり福音となることを願っています。 ■略歴■ 大阪医科大学医学部卒業(医学博士)、同大学産科婦人科講師を経て、当クリニック開業(1992年開業)、日本生殖医学会評議員、日本受精・着床学会評議員、日本産婦人科マイクロサージェリー学会評議員 ≫ うめだファティリティークリニック 「体力的に止めたほうがいい」そんなことはないと思いますよ。今は40歳を越えてから初めて不妊治療をされる方も多いので、そのことを考えると決して遅すぎる年齢というわけでもありません。もし少しでも3人目がほしいという気持ちがおありなら、前向きに考えてみられてはいかがでしょう? 凍結した時期によって受精卵の妊娠率は当然異なります。おそらく2人目が生まれた数年前の30代後半での凍結卵ですから、当時と妊娠のための条件はそれほど変わるとは思いません。それに海外がほとんどですが、卵子提供による60代女性の出産例もあるほどです。高齢になるほどやはり出産時のリスクが伴いますし、40代では染色体異常の胎児が生まれる可能性も、若い頃に比べて10倍ほど高くなるというデータは確かにあります。でも、そんなマイナスの可能性ばかり気にしていたら治療なんてできないし、子どもなんて産めませんよね。 出産後の子育てについても、大変といえば大変だけど、2人が3人になっても何とかなるものです。それに何も心配事がないより、苦労が多いほど人生も豊かになると思いませんか? 胚移植の年齢は妊娠率=受精卵の若さだから、条件は2人目のときと同じ。3人目が産まれるかどうかはやってみなければわかりませんが、チャレンジするのは決して悪いことではないと思います
2014.2.22
専門医Q&A 女性の健康