Amrita Fertility Japan ジネコ取材済
海外スペインGran Via Les Corts Catalanes 418, B. Dcha. 08015 Barcelona. Spain
不妊治療
Amrita Fertility Japan
海外スペインGran Via Les Corts Catalanes 418, B. Dcha. 08015 Barcelona. Spain
「赤ちゃんを迎えることは全女性の権利」をモットーに、患者さまのご希望に合わせたフレキシブルは治療法のご提案、そして、ヨーロッパ実績No.1の治療技術で患者さまをサポートしています。海外での卵子提供治療を安心してスムーズにお進めいただけるよう、日本語であることはもちろん、経験と実績のある医師及びスタッフが揃っています。
10時前可19時以降可土曜も診療日曜祝日も診療働きながら通いやすい完全予約制英語対応英語以外の外国語可一般婦人科子宮頚がん検査、子宮体がん検査すべて見る
診療科
不妊治療
基本診療時間
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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8:00~12:30 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
14:30~18:30 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
治療をされる場所により時差がありますため、スタッフへご確認ください。クリニックは土日祝日に関係なく年中無休で診察しております。
※日本語スタッフがスペイン在住の関係で、日本と8時間(夏は7時間)の時差があります
休診日
年中無休
住所・連絡先
海外スペインGran Via Les Corts Catalanes 418, B. Dcha. 08015 Barcelona. Spain
TEL: +34 623 195 371
お問合せ
Mail:info@japan.amritafertility.com
LINE:@amritajapan
TEL:+81(50)5539 6148
+34 623 195 371
※連絡先電話番号は日本語直通です。
婦人科診療内容
・子宮がん検診
・不妊外来
・避妊相談
・男女産み分け相談
・更年期障害
生殖補助医療
高度生殖補助医療(特に卵子提供を伴う体外受精)
ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke) 院長プロフィール
世界中のクリニックでの経験を経て、現在世界に3拠点のクリニックと提携し、特に卵子提供を伴う体外受精を行なっています。いつでも患者さまの立場になり、親身にお話をじっくり伺い、フレキシブルに治療を進めていきます。
ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke) 院長略歴
高度生殖補助医療
高度生殖補助医療専門のクリニックで、特に卵子提供を伴う体外受精を主にサポートしております。
エージェントではなく、クリニックでありながらもドナーさんのご案内から治療のコーディネートまで、すべて日本語で対応させていただき、患者さまが安心して治療に臨めるよう徹底しております。
日本人の卵子ドナー
海外で治療をする場合に、どのようなドナーさんになるのかは気になるところです。
当院では、日本人のドナーさんをご案内することが可能です。
女性のための不妊治療専門クリニックとして卵子提供はもちろん、シングルの女性や女性同士のカップルの妊娠の願いをサポートしてまいります。
(今後も日本語をお話しになる患者様は卵子提供をメインでサポートさせていただきます。)
心理カウンセリング
治療をコーディネートするスタッフは、不妊治療分野での長い経験があるだけでなく、心理カウンセラーの有資格者です。このため、ストレスを感じてしまったり、不安に思うことがある場合も、随時スタッフにお話いただけます。
多言語対応
医師はもちろん、治療コーディネートスタッフも複数言語で対応が可能です。外国語での対応をご希望の場合には、ご希望の言語をお知らせくださいませ。
現在、英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語での対応が可能です。
フレキシブルな診察時間
日本との時差もありますが、クリニックの診療時間はとてもフレキシブルで土日や祝祭日も診察しております。このため、お仕事がお忙しくなかなかお休みを取るのが難しい場合でも、できるだけお休みの日数を少なく治療のためにご来院いただけるようコーディネート差し上げます。
このクリニックに関連する監修記事、取材内容、ユーザー様からの質問と回答など、ジネコが企画した様々なコンテンツの一覧です。
記事一覧
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スペインでの「卵子提供を伴う体外受精治療」、成功率は?費用は?
海外での卵子提供を伴う不妊治療を検討し始めたけれど、治療費、渡航費などを合わせた費用の総額を知り、改めてハードルの高さを認識したという方も少なくありません。今回は、国際的に活躍する生殖補助専門医ニチケ・マルクス先生に、スペインでの卵子提供を伴う不妊治療にかかる費用や成功率について伺いました。 スペインでの卵子提供を受けての不妊治療、成功率は?一般的に、妊娠の可能性と女性の年齢は直接的に関係しています。とはいえ、これはご自身の卵子での妊娠を希望する方の話。卵子提供を伴う治療を受ける場合、年齢に関係なく、一定の成功率が期待できると言えます。スペインでは、18歳以上、35歳以下の心身ともに健康な女性が卵子提供者になることができます。卵子の提供を希望する女性は、血液検査をはじめ感染症検査、肝機能検査、遺伝子検査、染色体検査、経腟エコーを含む婦人科検診など、法律で定められた一連の検査を受けます。これらの検査結果がすべて正常であることを確認されてはじめて、卵子提供者として、卵子を必要とする女性のサポートが可能になるのです。ドナー候補の女性には、年齢が若いこと、また妊娠が十分に期待できることを検査し確認した上で卵子の提供に進んでもらいますので、治療の成功率は80%前後だと報告されています。ちなみに、ここでいう「成功率」とは、胚移植から2週間後の血液検査で陽性の反応が出るケースのことを指します。 スペインで卵子提供を伴う不妊治療を受ける費用はどのくらいでしょうか?同じスペイン国内であっても、治療費用はクリニックにより異なっています。スペインで卵子提供を伴う不妊治療を受ける際には、お互いの匿名性を守るため、卵子提供者と患者とのマッチングはクリニックが行うことになるのですが、残念ながらヨーロッパではアジア人や黒人のドナーが見つかりにくい傾向にあります。こうした人種の卵子を希望する方への不妊治療を実施できるクリニックは、ほんのわずかです。ちなみに、日本語でサポートできる体制を整え、日本人ドナーを保証して治療を行なってしているヨーロッパの施設は、私の知る限り当院のみです。費用ですが、ヨーロッパ出身のドナーの卵子による治療で6000€から10,000€。アジア人や黒人など、数が限られてくる人種のドナーの卵子による治療の場合には12,000€から17,000€ほどです。クリニックが提示する治療費用には、陽性反応や、卵子や胚の数に対する保証が含まれている場合もあります。また、提示金額に体外受精にかかる費用やドナーの薬代、胚の凍結やその後の保存費などが含まれているかどうかもクリニックにより異なりますので、事前にしっかりと確認をすることをおすすめします。 卵子ドナーへの謝礼金はどのくらい必要なのでしょうか?スペインでは、卵子ドナーへの謝礼金は1000€程度と決められていまして、ほとんどのクリニックがこの決まりを守っています。これは、卵子そのものの対価ではなく、複数回の通院や検査の受診、投薬、採卵などを含めた、時間と労力に対する謝礼です。スペインにおける卵子提供は完全に匿名で、マッチングもクリニックが行い、謝礼金の支給もクリニックが行うため、患者がドナーを選んだり、直接謝礼を渡したりすることはできません。 ニチケ・マルクス先生よりまとめ日本にいると、スペインで受けられる不妊治療についての情報があまり入ってこないので、スペインに渡航すれば卵子提供を伴う不妊治療が受けられるという事実自体、まだまだ広く知られてはいないかもしれません。ですが、世界中のさまざまな国で治療に当たってきた医師である私に言わせると、ヨーロッパ全体で実施されている卵子提供を伴う治療のうち約60%がスペインで行われていますし、スペインには最先端の医療設備と技術があり、経験を積んだ素晴らしい医師がたくさんいます。また、他国に比べて治療もリーズナブルなんですよ。 ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生 生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。≫ Amrita Fertility Japan
2020.10.30
インタビュー 不妊治療
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いつかは子どもに、卵子提供を受けて誕生した事実を話すべき?
卵子提供を受けて生まれてきた子どもに、将来、そのことを話すべきか否か。話すとしたらどのように伝えるべきか。――卵子提供をご検討されている方や実際に治療中の方は、誰しも、少なくとも一度は考えを巡らせる問題ではないでしょうか。今回は、このような心配ごとにどのように向き合うべきかについて、国際的に活躍する生殖補助専門医、ニチケ・マルクス先生に詳しいお話を伺いました。 いずれは、生まれてくる子どもに、卵子提供を受けたことを話した方がいいのでしょうか?答えは「はい」であるとも言えますし「いいえ」とも言えます、なぜなら、いい・悪いと一律に判断できる問題ではないからです。将来子どもに話すかどうかは、カップル、もしくはご本人の自由意志に任されていますが、決断を下すに当たっては、社会的・文化的な環境も考慮にいれる必要があります。話をするかどうかを決めるときに最も大切なことは、「子どもの幸せ」です。卵子提供のおかげで大切な命を授かったことを話すとき、その事実は子どものアイデンティティにポジティブな影響を与えることもあれば、ネガティブな影響を与えることもあります。例えば卵子提供が禁止されていたり、社会的・文化的な受け入れが進んでいない国にお住まいだとしたら、事実を聞かされた子どもはどう感じるでしょう?「事実」を知り受け入れることに、とても苦しい過程を伴う可能性があります。ですが逆に、子どもを授かる選択肢の1つとして卵子提供がごく自然に存在する国にお住まいの場合はどうでしょう?このように、子どもの捉え方は文化的な背景によっても大きく変わってくるものです。 子ども自身へ伝えるかどうか決断する際に、最も優先するべきことは何でしょう?最優先させるべきは、大人側の「都合」ではなく子どもの幸せです。卵子提供を受けたと伝えないままでいることに対し、家族なのに「隠し事」をしていると感じ不誠実なように思えたり、「嘘をついている」ような罪悪感を感じてしまったり。そうした親の気持ちをスッキリさせたいからという理由で話をすることはお勧めしません。前述のとおり、生活環境や文化背景を十分に考慮するだけでなく、子どもの性格や考え方なども含めて検討していくことが大切です。また補足ですが、卵子提供をスペインでお受けになる場合、誕生する子ども自身が将来ドナーについて知りたいと思っても、知ることはできませんので、卵子提供を考えられている方は、このことも考慮に入れてご検討ください。スペインでは配偶子の提供は匿名で行われています。つまり、提供を受ける患者はもちろん、将来生まれてくる子どもも、ドナーの個人情報を閲覧したり調べることは不可能なのです。治療をされる患者にドナーをご紹介する際には、血液型や年齢など基本的な身体的・免疫学的特徴についてお知らせするのですが、これは子どもが将来ドナーを知りたいと思う場合でも同じです。将来的に法律が改定された場合であっても遡って適用されることはありませんので、匿名のままとなります。 子どもに卵子提供のことを伝えると決めた場合、どのような方法で話をするべきでしょうか?また、話をすることを避けるべき年齢はありますか?幼少期の早い段階から自然な方法でスタートしたいという場合には、子どもの成長具合や理解力を考慮して、始めどきを探ってみましょう。私たちのクリニックには、不妊治療について理解を促す子ども向け絵本を数冊用意しており、中には配偶子の提供に関する内容を含むものもあります。幼少期なら、こうした絵本を活用するのも一案です。本を探すのが難しい、日本語の絵本が見つからない!という場合でも大丈夫。家族でオリジナルの本を作って一緒に読みながら、治療や提供が必要だったこと、それをサポートしてくれた心優しい女性がいること、心から望まれて生まれてきた命であること、などを読み聞かせてあげる方法があります。子どもによっては幼少期ではなく「もう少し成長を見守ってから」と考えることもあると思いますが、その場合絶対に避けた方がよいタイミングがあります。それは思春期です。子どもから大人になっていくとても繊細で多感な年頃ですから、卵子提供により誕生したことをネガティブに受け止めてしまったり、アイデンティティクライシスに陥ってしまう可能性があるためです。 ニチケ・マルクス先生よりまとめ以上のように、提供を受けたことを話すか否かという問題については、ご家族ごとに環境や状況を考慮した上で、子どもの幸せを最優先にして答えを出すべきです。とはいえ家族のあり方にも関わる大きな決断ですから、なかなか答えが出せないという時には、不妊治療専門のカウンセラーに相談をしてみるのもいいかもしれません。大切な決断を下すに当たって、胸の内を打ち明けながら専門家の意見を聞くことは、非常に役に立つのではないかと思います。 ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生 生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。≫ Amrita Fertility Japan
2020.8.20
インタビュー 不妊治療
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生殖補助医療の発達が導く、さまざまな「家族」のカタチ
6月はLGBTQプライド月間でした。関連イベントを見かけたという方や、家族のカタチの多様性について考える機会を持たれた方も多いのではないでしょうか。今回は、いろいろな家族のカタチのあり方について、国際的に活躍する生殖補助専門医、ニチケ・マルクス先生に詳しいお話を伺いました。多様化しつつある「家族のカタチ」。具体例を教えていただけますか。性的指向の多様性への理解が高まりつつある中、高度な医療技術を伴う生殖補助医療の発達により、多くの人々が「親になりたい」という願いを叶えています。それに伴って、現在では従来の枠にとらわれないさまざまな家族のカタチも一般的になりつつあります。ざっと挙げると、1.伝統的な家族、2.シングルペアレントファミリー、3.同性カップル、4.遺伝的なつながりを持たない家族 といったカタチが存在します。このうち、1の「伝統的な家族」に該当するのは、男女のカップルのもとに遺伝的なつながりのある子どもがいるというカタチの家族です。世界的に見ると6組に1組のカップルが、赤ちゃんが欲しいと思ったときに、何らかの困難に遭遇するといわれています。このため、伝統的な家族に当てはまる場合であっても、自然妊娠だけではなく不妊治療を経て家族を迎える願いを叶えるカップルは少なくありません。シングルペアレントファミリーというのは、一人の親と子どもから構成される家庭のことですよね。はい、その通り、シングルペアレントファミリーとは、親がシングルマザーもしくはシングルファザーとして家族を築くケースです。事情があってカップルからシングルペアレントになる場合だけでなく、最初からパートナーなしで、1人で親になることを決断する場合も含まれます。女性が「選択的シングルマザー」になりたい場合は、シングルの女性でも生殖補助医療を受けることが許可されている国で、精子提供を受けることができます。一方、男性がシングルファザーになることを希望する場合、代理母出産もしくは養子縁組という方法をとることになります。代理母出産と養子縁組は、ご自身での妊娠出産を望まなかったり、難しかったりする女性にとっても、有効な選択肢です。また、3番目に挙げた「同性カップル」についても補足しておきます。冒頭でもお話しした通り、6月はLGBTQプライド月間でした。今日、性的指向の多様化への認識が高まり、受容が進みつつあることは、誰の目にも明らかです。国によって規制がまちまちなこともあり選べる方法が異なりますし、個人によってもさまざまな考え方があることは大前提ですが、技術的な観点からいうと、いま世の中には「親になる」という願いを叶えるさまざまな方法が存在します。具体的に言いますと、女性同士のカップルであれば、精子提供や相互体外受精という手段がありますし、男性同士のカップルの場合には、代理母出産という選択肢を検討することになるでしょう。「遺伝的なつながりを持たない家族」について、詳しく教えていただけますか。選択した生殖補助医療の方法によって、ご家族の中で遺伝的なつながりができることもあれば、そうでないこともあります。前述のとおり、不妊治療の際にはご本人の精子や卵子を用いるケースと提供者のものを用いるケースがあり、どちらを選ぶかはご本人のコンディションや状況によって変わってきます。人工授精を実施する場合はパートナーの精子で行うケースと、提供精子で行うケースがあります。さらに体外受精になると、精子だけでなく卵子に関しても、ご本人の配偶子を用いるケースと提供のものを用いるケースとがあります。また、不妊治療で結果が出なかった方や不妊治療をしない決断を下した方、女性に子宮がなかったりご自身の子宮での妊娠出産が難しい方、さらに男性同士のカップルの場合には、養子縁組や代理母出産を通して新しい家族を迎えるという方法もあります。ヨーロッパでは、養子縁組という選択をする家族はとても多く見受けられます。例えばスペインの家族はロシアやアジア、アフリカから養子縁組をすることが多く、養子縁組で幸せな家庭を築いているファミリーをごく身近に見かけます。養子縁組をするタイミングはもちろん、その後のサポートに関するカウンセリングなども充実していますし、もともと色々な人種が入り混じる環境もあり受け入れられやすいということもあるのではと思います。ニチケ・マルクス先生よりまとめ子どものいる人生に踏み出すかどうか、その決断は人それぞれ。さらには、どのような方法でその決断を叶えて行くか、それもまた人それぞれです。人の考え方や人生の岐路における選択は、その人を取り巻く文化的な背景や法律、社会の認知・受容の度合いと切り離せません。決断の内容によっては、ことが容易に進まないこともあるでしょう。大切なご決断をされる前に、どのような選択肢があるのかについて情報を収集し、専門家へ相談した上で、ご自身が納得ができるまでじっくり検討されることが重要ではないでしょうか。 ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生 生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。≫ Amrita Fertility Japan
2020.7.15
インタビュー 不妊治療
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遺伝的なつながりのない子どもを愛することはできるのでしょうか?
卵子提供を伴う体外受精を検討している場合、「自分と遺伝的なつながりのない子どもを、愛情を持って育てられるだろうか」という心配を抱くこともあるかと思います。国際的に活躍する生殖補助専門医、ニチケ・マルクス先生に詳しいお話を伺いました。卵子提供という選択肢を提示されて、ショックを受ける方もいらっしゃると思いますが…今日、卵子提供を伴う体外受精は決して珍しいケースではありません。スペインでは国内で実施されている体外受精のうち3分の1が提供卵子によるもので、その結果1年に4万人の赤ちゃんが誕生していると報告されています。ご自身の卵子で妊娠することが厳しい女性にとって、卵子提供を伴う体外受精は、妊娠・出産するための唯一の方法です。しかしながら、「いつか子どもを持ちたい」と漠然と夢をみている時には、まさか自分に卵子提供が必要になるなんて予想だにしないもの。ですから卵子提供が必要だと診断されたときのショックは非常に大きく、「遺伝的なつながりのない子どもを、愛情を持って育てることができるのだろうか」という懸念が湧いてしまうのも、とても自然なことです。「私に似ているのか?」「性格は私たちに似るのか?」「幸せな親子関係を築けるのだろうか?」といった心配が顔を出してしまうのは当然ではないでしょうか。長期に渡る不妊治療を経験して、先のステップまでイメージできているような方を除き、ほとんどの女性は「他人の卵子の提供を受けて妊娠をする」という治療法を受け入れる心の準備ができていません。人それぞれの受け止め方・決断があるなかで、やはりどうしても母親/父親になりたいと願うカップルは、必要なだけの時間をかけてこの治療法を理解し、納得した上で受け入れ、治療に進まれています。母親と遺伝的なつながりがない子どもを持つ選択肢について検討する際には、専門知識を持つカウンセラーなどプロフェッショナルのサポートの元、十分に熟考し、パートナーがいる場合にはパートナーとしっかり話し合うことが非常に大切です。もしも、「卵子提供によって生まれた事実を子どもに話すべき?」「家族には受け入れられるだろうか?」「周囲の人に話すか?」といった、すでにその子どもがこの世に存在しているかのような心配事や疑問などが浮かんできたら、それは患者がこの治療の可能性を「受け入れつつある」サイン。生活環境、文化、本人の考え方などによる違いはあるとはいえ、決断に至るまでのプロセスはカウンセリングの観点からも最も難しいポイントですが、プロのサポートを得られれば、スムーズに進めてゆくことができます。 遺伝的なつながりなしで、愛情に満ちた親子関係が築けるものでしょうか?卵子提供により誕生した子どもは、法的にも出産した女性の子ども(嫡出子)となります。その子は、妊娠したいという患者の願いがあったからこそ、そこに存在しているのです。患者が治療の決断をし、妊娠期間中に大切にお腹の中で育て、出産をしたからこそ存在する命です。血縁関係があるから、親子関係が存在するのではありません。親子で共に時間を過ごし、子育てをしていく過程で絆が深まっていくものです。妊娠期間中、母親である女性と赤ちゃんとの絆が深まっていきます。誕生後、赤ちゃんのそばで愛情を持ってお世話をすることで、赤ちゃんは安全で守られている気持ちを持つことができ、親子の絆や信頼関係が形成されていきます。 妊娠5ヶ月から6ヶ月くらいで、胎児は子宮の外の音や明るさを感じ始め、母親の感情なども察知することができるようになります。さらには聞こえてくる声を通して、周囲にいる人の存在も認識していきます。 また、誕生後数年をかけて、子どもの人格が形成されていきます。その子がもともと持っている気質がベースになりはしますが、誕生後の環境、教育や経験も人格形成に大きく影響します。生後8ヶ月くらいで、「個人」という存在であると認識し始めるころから人格形成がスタートし、色々な経験や発見を通して子どもの人格がより個性的に形作られていくのです。もちろん、卵子提供を受けて遺伝的なつながりのない子どもを妊娠し出産するという選択を受け入れがたく感じる方もいらっしゃるでしょう。ただ、「なぜ遺伝的なつながりが大切だと思っているのか?」という部分を掘り下げて考えてみると、案外「世間ではそう考えられているから」「それが常識だから」といった理由である場合も多いです。人生における大きな選択ですので、よく話し合い、ご自身とパートナーの納得のいく決断をすることが、最も重要なことです。ただ、遺伝的なつながりと、愛情溢れる親子関係との間に関連はなく、子どもの人格形成や性格に影響を与えるのは遺伝子よりも生活をしていく環境にあるということは、お伝えしておきたいと思います。 ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生 生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。≫ Instituto de Reproducción CEFER(Amrita Fertility Japan提携クリニック)
2020.6.13
インタビュー 不妊治療
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提供卵子による妊娠・出産はハイリスクになる?
「卵子提供を伴う体外受精を受ける場合、妊娠・出産のリスクが上がる」といった話がメディアで話題になることがありますが、実際のところ、どうなのでしょうか。国際的に活躍する生殖補助専門医、ニチケ・マルクス先生に詳しいお話を伺いました。 卵子提供を伴う体外受精を受けることによるリスクはあるのでしょうか?提供卵子による体外受精についてはまだよく知られていないため、一部のメディアや専門家は「提供卵子による体外受精の場合、妊娠や出産のリスクが上がる」と説明することもあるようですが、そうした指摘は事実とは異なります。卵子提供を伴う体外受精そのものにリスクはありません。ただし、治療を受ける女性の年齢が上がるにつれて、妊娠糖尿病、子癇前症、タンパク尿、前期破水、早産といったリスクは上昇します。そのため治療前にはしっかりと患者の健康状態と医療履歴を仔細に渡ってチェックし、治療およびそのあとに続く妊娠・出産に差し支えない万全な状態であることを確認します。 別の女性の卵子を使うことで、拒否反応が起きることはないのでしょうか?拒否反応、特に血液型に関する拒否反応については心配される方が大勢いらっしゃいますが、医学的に見ると、患者と提供者の血液型が必ず一致しなければならないということはありません。血液型の異なる患者・提供者間でも治療を進めることは可能です。しかし、スペインにおいては「免疫的・身体的な特徴が限りなく類似している」ことを条件に提供者を探すことが推薦されているため、血液型や身体的特徴が近い女性をドナーとしてお探ししております。 卵子提供を伴う体外受精を行うと、妊娠・出産リスクが上がるのでしょうか?例外はありますが、提供卵子による不妊治療を受ける患者は、多くの場合が高齢です。したがって妊娠高血圧症の可能性がわずかに上昇します。特に、45歳以上ですと妊娠・出産に当たって問題のない健康状態であることを示す主治医の診断書や追加検査が必要になる場合があります。ですので、妊娠・出産に関わるリスクの上昇は、卵子提供を受けるかどうかではなく、妊娠出産をされる女性の年齢に関連しています。 卵子提供を伴う体外受精による妊娠の場合、多胎妊娠や早産が多くなりますか?答えは「いいえ」です。スペインでは、法律により移植できる胚の数は最大3つまでと決められています。その上で、移植をする胚の数は、患者の年齢、健康状態、胚の状態などを慎重に考慮した上で医師が決定します。多胎妊娠は母子へのリスクを上昇させる原因となることから、生殖補助医療の専門家は単胎妊娠を勧めています。卵子提供を伴う体外受精の場合、当院では胚盤胞まで培養を行っていることと、ほとんどのドナーの年齢が30歳以下であることから、単一胚移植を行なっております。 卵子提供を伴う体外受精で、産み分けをすることはできますか?「できる」とも言えますし、「できない」とも言えます。というのも、卵子の提供を受けたからといって、赤ちゃんの性別が分かるわけではないからです。ただし何らかの遺伝性疾患がある場合や、健康に発育する可能性について事前に確認したい場合には特別なスクリーニングや着床前診断を受診するという選択肢もあり、国によっては、これにより事前に性別を知ることが認められている場合もあります。産み分けについても、可能であるかどうかは国によって変わります。スペインでは、遺伝性疾患などの医学的な理由がない限り産み分けをすることは法律で禁止されています。 欧州一の卵子提供実績を誇るスペインの専門家の見解として、以上の通り、卵子提供を受けられた方の妊娠・出産に関するサポートは、自然妊娠の場合と同様で問題ないと考えています。しかし、患者の年齢が上がるにつれて妊娠・出産のリスクが上昇しますので、その点を踏まえた産婦人科選びが大切なポイントになるでしょう。また、胎児のスクリーニングなどを実施する場合、母親となる女性の年齢に基づいて結果が出されるため、卵子提供を受けられた場合、検査の正確性を期して卵子提供者の年齢を伝えることも大事です。 ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生 生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。≫ Instituto de Reproducción CEFER(Amrita Fertility Japan提携クリニック)
2020.5.9
インタビュー 不妊治療
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海外で卵子提供治療を受ける場合の滞在期間は?渡航回数は?
海外での卵子提供治療を検討している場合、実際の治療にどのくらいの準備期間が必要なのか、現地にどの程度滞在する必要があるのかなどを、事前に把握しておきたいものです。国際的に活躍する生殖補助専門医、ニチケ・マルクス先生に詳しいお話を伺いました。 海外での卵子提供治療を希望する場合、何度くらい現地を直接訪れる必要があるのでしょうか?当院で専門的にサポートしている「提供卵子とパートナーの精子を伴う体外受精」を受けられる場合についてご回答しますと、初診時と移植時の2回、バルセロナへお越しいただくことが理想です。以下、治療のプロセスをステップごとにご紹介します。1) 初診・・・現地(最短ご滞在日数2日・オンライン診療も選択可)初診はオンラインで行うこともできますが、理想としては実際にバルセロナのクリニックへお越しいただくことをお勧めします。と言うのも、初診でご来院いただいた際、パートナーの精液サンプルをお預かりできるからです。初診時にお預かりしておくことで、胚移植時に女性の患者様お1人だけでお越しいただくことも可能になります。初診ではまず、医師による基本的な問診を行います。すでに受診済みの検査がある場合には、その検査結果をお持ちください。検査結果や医療履歴を踏まえ、最適な治療法の確認とお薬の処方を致します。お住まいの国での検査が難しい場合、初診時に現地で全ての検査を受けていただくことも可能です。初診のご予約を承る際に、日本人コーディネーターが全てお伺い致しますのでご安心ください。初診のあと、男性パートナーに精液サンプルをご提出いただき、精液検査と凍結保存を行い、体外受精の治療に備えます。2) 卵子提供者をセレクト検査結果が揃うのを待つ間、並行して卵子提供候補者を選びます。患者様の身体的・免疫学的な特徴を考慮し、最適な日本人卵子提供者をご提案します。その際、提供者の個人情報は非公開のまま、基本的な情報のみのご案内となります。3) 患者様と提供者間の調整患者様が移植を希望される時期をお伺いした上で、卵子提供者の卵巣刺激のスケジュールを決定します。生成された胚は移植まで凍結保存しますので、タイミングを合わせて渡航していただく必要はありません。不要なストレスなく準備に臨んでいただけます。4) 凍結胚移植・・・現地(最短ご滞在日数2日)渡航や時間に関するストレスを避けるため、移植の前日にバルセロナへお越しいただくことをおすすめしています。また移植の後は1日バルセロナでお過ごしいただき、ご帰国は翌日以降になさると良いでしょう。移植後すぐに移動すると成功率が下がるという医学的な根拠があるわけではありませんが、ストレスを最小限に抑えるために、ゆとりのあるスケジュールで動くことを推奨しています。5) 妊娠検査移植から14日後に、血液検査による妊娠判定検査を受診していただきます。結果のご報告をいただき次第、今後のお薬のプランのご案内を差し上げます。このように、海外で治療をする、と言うととてもハードルが高いように感じてしまいますが、実際の渡航は多くとも2回のみで治療が完了します。 オンラインでの初診を選択した場合、治療のプロセスが変わってくるのでしょうか?初診をスカイプなどオンラインで受診される場合には、胚移植の少し前のタイミングでお越しいただき、少し長め(一週間前後)滞在していただくことが必要となります。治療は数日の滞在で完了できますが、バルセロナはとても魅力的な街ですし、治療中のストレスやパートナーとの関係においても、いつもと異なる環境でリフレッシュする時間をお過ごしいただくことも大切ですので、可能な場合には余裕のあるスケジュールでのご渡航をおすすめいたします。 ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生 生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。≫ Instituto de Reproducción CEFER(Amrita Fertility Japan提携クリニック)
2020.4.11
インタビュー 不妊治療
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卵子提供ってどうやって行われているの?
不妊治療を行うにあたって、卵子提供を伴う治療を必要とする方は、世界中にたくさんいらっしゃいます。卵巣機能不全、更年期障害、若年性更年期障害、女性側の年齢の問題など、その理由はさまざまです。ご自身の卵子での妊娠は難しいと診断された方であっても、卵子提供を伴う体外受精という方法を取ることによって、ご自身での妊娠・出産が叶います。とはいえ、卵子提供を受ける場合、日本国内では非常に難しいのが現状。実際には海外での治療を検討し、実施に至る日本人カップルが数多くいらっしゃいます。今回は、海外で行われている卵子提供について、国際的に活躍する生殖補助専門医、ニチケ・マルクス先生にお話を伺いました。 1.卵子はどのような形で提供されるのでしょうか?卵子提供の方法には、知り合いが提供者となる「非匿名」、提供者の身元が明かされない「匿名」、提供者のIDのみが開示される「ID公開」という3つのパターンがあり、採用される方法は国によって異なります。以下、詳しく見ていきましょう。(1) 非匿名での提供このケースに該当するのは、姉妹やいとこ・友人知人といった、患者と旧知の間柄にある女性が、卵子の提供者になる場合です。100件の治療のうち2・3件程度しか行われておらず、実際の施術数は少なめです。この場合、患者と提供者が一緒にクリニックへ行き、治療をスタートすることになります。卵子提供に伴う金銭の受け渡しは禁止されており、治療開始前にはカウンセラーとの面接の場で、お互いの関係を証明しなければなりません。この方法は、欧米ではベルギーで行われているほか、アメリカでも許可されています。アメリカの提供プロセスは通常ですととても厳しいのですが、非匿名の提供の場合、比較的すんなりと進行できるケースがほとんどです。(2) 完全に匿名での提供匿名での卵子提供の場合、患者も提供者もお互いに相手のことを知らないまま治療を行うことになり、将来誕生する子も提供者が誰であったのか知ることはできません。といっても患者が提供者の情報に一切アクセスできないわけではなく、本名や住所、パスポート番号といった個人を特定する情報以外の一般的な情報であれば、知ることができます。「匿名での卵子提供」は、さらに下記A・Bの2つのケースに分けられます。A. クリニックが提供者を選ぶケース患者の身体的特徴を尊重しながらクリニックが提供者を選ぶやり方で、スペインやイタリア、ブラジル、フランスなどで行われています。個人情報保護のため、患者は提供者の写真を見ることはできません。謝礼金が少額だったり、全く支払われなかったりするため提供者が少ない傾向にあり、特にもともとが少数派であるアジア系であると、提供者が見つからないこともあります。B. 患者が提供者を選ぶケース同じ匿名での提供でも、ウクライナや南アフリカでは、Aのケースと違って患者自らが提供者を選ぶことができます。提供者を選ぶ際には、個人を特定できる情報以外の一般的な情報に加え、候補者の写真を閲覧することも可能です。同時に、患者は提供者の個人情報を探さないと明記された書面にサインする必要があります。(3) ID公開による提供このケースでは、卵子の提供自体は匿名で行うものの、誕生する子が成人になった時点で、卵子提供者の身元を知る権利が生まれます。ただし、これはあくまでも子ども自身が持つ権利であって、親(患者)の権利ではありません。また、権利を行使することによって提供者の身元が判明しても、お互いへの何らかの請求権などは一切発生せず、親子関係に影響を及ぼすこともないとされます。IDの公開による提供はポルトガルやデンマーク、イギリスなどで行われていて、件数は年々増加しています。 2.卵子提供者へどの程度の謝礼を支払う必要がありますか?卵子提供には通院や検査、服薬、さらに麻酔を伴う採卵などが欠かせないため、提供者には大きな負担がのしかかります。ですから、国によっては提供者に対して謝礼が支払われることもあります。これは決して、卵子を売り買いするためのお金ではありません。提供者の時間や労力に対して支払われるものです。また謝礼金は提供者の外見や学歴、キャリアによって変動するものであってはいけないと定められています。アメリカでは上述の(1)(2)(3)全ての形での卵子提供が認められていますが、提供者とエージェンシー/クリニックは契約書を締結し、その契約に基づいて提供者が「仕事」をするという位置付けが取られています。 3.自分に適した方法を、どうやって選べば良いのでしょう?これまで見てきた通り、卵子提供の方法は国によって違っていたり、同じ「匿名」「謝礼」といった言葉が使われていても、それが意味する内容はまちまちであったりします。患者の考え方も多種多様で、提供者のことは一切知りたくないという方もいれば、性格や趣味まで詳細に把握しておきたいという方もいます。正解は一つではありません。海外で法に基づいた卵子提供を受けようかと検討している方は、ご自身にとって何が大切なのかをよく考え、パートナーがいる場合にはお互いにじっくり話をして、慎重に決断されることをお勧めします。 ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生 生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。≫ Instituto de Reproducción CEFER(Amrita Fertility Japan提携クリニック)
2020.3.18
インタビュー 不妊治療
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不妊治療中の心のケアの大切さについて
不妊治療を始めたことで不安や苛立ちが募り二人の関係がギクシャクしてしまう、さらには周りの人間関係にまで影響が及ぶ、といったことは、決して珍しい話ではありません。妊娠を望んでいるカップルの6組に1組が妊娠の過程でなんらかの困難を感じていると言われる時代。素敵な人と出会い、結婚し、妊娠するという子どもの頃から当然のように思い描いてきた人生のステップがスムーズにいかないことへのフラストレーション、さらには、治療をしたとしても妊娠が100%保証されているわけではないというもどかしさ。そして「周りがみんな」妊娠しているのに「私だけ」妊娠できない、と感じてしまう孤独感。妊娠しにくいという状況を経験して不妊治療に至るまでの心の変化は、まさに感情のジェットコースターです。心と体は繋がっていますから、治療中の心のケアはとても大切。また、治療を卒業されて新しいステージに進まれるにあたっても、心をしなやかで健康な状態に整えておくことは、とても大切です。 今回のコラムでは、不妊治療中の心のケアの大切さについてお話します。 不妊治療を受けるカップルの揺れ動く心“妊娠が難しい”という現実に直面したとき、傷つき辛い気持ちになってしまうのは男性も女性も同じ。ただ、その受け止め方や感じ方には男女で差があり、異性間カップルである場合、どうしても女性の方がより責任を感じ、治療の辛さを1人で背負ってしまいがちです。女性は、妊娠を意識して母性のスイッチが入ると、「妊娠したいのにできない」「していない」という現実に対して責任を感じやすい傾向にあります。また、治療でホルモン剤を使用する場合にはメンタルに影響があり気持ちのアップダウンが大きくなることも。さらに、男性が治療に積極的でなかったり、協力的でない場合にも、女性は孤独を感じ治療のプレッシャーやストレスを1人で抱えてしまうことが多いようです。不妊治療を通してカップルの絆が深まることもあれば、治療のストレスや考え方の違いで2人の心の距離が開き、関係が壊れてしまうこともあるのです。パートナーとの絆を深め、心をひとつにして治療を進めていくためにはやはり「コミュニケーション」が欠かせません。親になるということについて、また、治療はどこまで進めたいのか、子育てはどのようにしていきたいのかなど、新しい人生のステージに向けた話し合いを深めていくことはとても大切です。1人で抱え込まず、お互いに素直な気持ちを伝え合える環境づくりにも取り組みましょう。 不妊治療を受けるという決断「不妊」という診断が下ると、心に深い傷を受けてしまいます。不妊の原因は分からないことも多いのですが、にも関わらず「自分の何がいけなかったのだろう」という原因探しをしてしまったり、妊娠したいけれどなかなかできないということで、自分を責めてしまったり。妊娠している人と比較して、自分には価値がないと卑下してしまうこともあります。そんなとき、ほんの半世紀前までなら不妊治療という選択肢はありませんでしたが、医療が進歩した現在、妊娠の願いを叶えるさまざまな方法があります。不妊の診断を受け、辛い思いをしたけれど「それでもやっぱり妊娠したい」と希望する場合は、クリニック選びが重要です。どのような方法があるのか、メリットとデメリット、成功率や治療費用をしっかりと比較検討し、心から信頼できるクリニックを選ぶことは、そのあとに続く治療のプロセスでの心の負担を軽減してくれます。また時には、不妊治療に対する漠然とした思い込みによってストレスが強まっていることもあります。そのような場合には、クリニックや不妊治療のカウンセリングを行うプロのサポートを受け、ぎゅっと抱えている思い込みを1つずつほぐしてもらうことでストレスが大幅に軽減され、不妊という診断や、不妊治療という選択を前向きに捉えられるようになります。 不妊治療中にカップルが向き合う感情の変化繰り返しになりますが、自らの不妊と向き合ったとき、これまで当然だと思っていたことが自分にはできないという無力感、不安、罪悪感、悔しさ、フラストレーションを抱えてしまうカップルは、少なくありません。このような場合、治療の経験者など信頼して話をできる人が身近なところにいるだけで、居心地の悪い気持ちが和らぎ、感情のコントロールがしやすくなるものです。不妊治療というステップに進むことによって、性生活や交友関係に影響がでることもあります。例えば、妊娠中の友人や子どものいる友人と疎遠になってしまったり、セックスの目的が妊活だけになってしまう、あるいは治療中であることが響いてセックスレスになってしまう、などです。また、妊娠しているかどうかが分かるまでの期間は、期待と不安で胸がいっぱいになります。結果がポジティブなものであれば最高の幸せが得られる一方、残念ながらうまくいかなかった場合には「治療をしても良い結果が出ない…」「妊娠なんてできないんだ…」「妊娠できない私は女性として不十分なんだ…」というような自責の思いや、自ら不安や罪悪感を煽ってしまうような言葉が、心の中に溢れてしまうもの。ですから、妊娠判定でネガティブな結果が出てしまった場合には、とりわけ心のサポートが大切です。パートナーが「また次頑張ればいいよ」と気楽に構えていたり、すでに子どもを持つ友人から「次はきっといい結果が出るよ」と励ましの言葉をかけられたりすると、「誰も私の気持ちを分かってくれない」と悩んでしまうこともあるでしょう。そのようなときに、心のケアのプロフェッショナルであり、パートナーでも友人でもないカウンセラーという第三者の存在は、中立的な立場ながらしっかり寄り添って話を聞いてくれる重要な心の拠りどころとなります。 治療プロセスでのカウンセラーという存在の重要性最新の研究によると、不妊治療によるストレスや苦しみは、がん患者のそれにとても近いということが明らかになっています。不妊治療に対しての世間の理解がまだまだ乏しいため身近な人にも打ち明けられなかったり、仕事がある場合は両立のストレスを感じる場面もあるかと思います。また日本では社会にカウンセリングがまだまだ浸透していないため、せっかくカウンセリングの体制が整っていても、「カウンセリングは心の病をケアするもの」という認識から、活用を尻込みする方も少なくありません。ですがカウンセリングは、あなたが弱いから受けるものでも、あなたに自分で解決する力がないから受けるものでもありません。これまでお話したとおり、治療中は感情のジェットコースターに乗っているような状態なわけですが、カウンセラーというプロが入ることで、誰にも意見されることなく内側に抱えている感情を出したり、必要のない思い込みを手放したり、相談を通じて気持ちを整理していくことができるのです。心のケアを考えることは、きちんとセルフケアができている証でもあります。不妊という現実に向き合い治療を進めていく過程は、それだけでも険しい道のりに感じられるもの。全て1人で抱えようとしなくて良いのです。クリニック選びの際には、カウンセリングのサポートの有無や、必要な場合には紹介してもらうことができるのかといった点も、ぜひリサーチしてみてくださいね。 ニチケ・マルクス(Markus Nitzschke)先生 生殖補助医療専門医・産婦人科医。世界各国のクリニックでの経験を経て、現在は各所のクリニックと提携しながら国際的な活動を展開。特に卵子提供を伴う体外受精を行う。≫ Instituto de Reproducción CEFER(Amrita Fertility Japan提携クリニック)
2020.2.7
インタビュー 不妊治療
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「地中海式食事法」で妊娠の可能性が66%アップ?生殖補助医療専門医ニチケ・マルクス先生に聞く、卵子を若々しく保つ秘訣
健康な女性であっても、年齢を重ねるとともに卵巣や卵子が老化していくのは仕方のないこと。老化をできるだけ緩やかにし、若く健康な状態を長く保つ方法はないものでしょうか。国際的に活躍する生殖補助専門医、ニチケ・マルクス先生にお話を伺いました。
2019.12.25
インタビュー 妊活