浅田レディース名古屋駅前クリニック ジネコ取材済
浅田レディース名古屋駅前クリニック
愛知県名古屋市中村区名駅4-6-17 名古屋ビルディング3F
体外受精・顕微授精などの高度生殖医療を中心とした不妊治療専門のクリニックです。「人」に心地よく「卵」に優しい環境にとことんこだわった空間であることはもちろん、さらに世界最先端の高度生殖医療、特に体外受精・顕微授精の機会をご提供するべく、設備を充実させました。
10時前可土曜も診療日曜祝日も診療女性医師が診察ジネコ推奨サプリ取り扱い働きながら通いやすいインターネット予約完全予約制駅近フリーマガジン配布すべて見る
診療科
不妊治療
基本診療時間
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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9:00~11:00 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ||
15:00~18:00 | ○ | ○ | ○ | ○ |
△:土曜日は指定外来となっております。
休診日
日曜・祝日
※土曜もしくは月曜が祝日の場合は営業
住所・連絡先
愛知県名古屋市中村区名駅4-6-17 名古屋ビルディング3F
TEL: 052-551-2203
診察内容
●女性不妊症
●人工授精
●受精卵凍結・融解胚移植
●精子凍結
●男性不妊症
●体外受精・顕微授精(ICSI・IMSI)
●孵化補助(Assisted Hatching)
●精巣精子採取(TESE)
●胚盤胞培養
●精巣上体精子採取(MESA)
浅田義正 院長プロフィール
浅田義正 院長略歴
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医
1982年 名古屋大学医学部卒業
1988年 名古屋大学医学部附属病院産婦人科医員として「不妊外来」および、「健康外来(更年期障害・ホルモン補充医療法)」の専門外来を担当
1992年 医学博士
1993年~1994年 米国最初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精(卵細胞質内精子注入法:ICSI)の基礎的研究に従事
The Jones Institute For Reproductive Medicine, Eastern Virginia Medical School, Norfolk, Vairginia
1995年 名古屋大学医学部附属病院分院にてICSIによる治療開始。以後、辞職まで名古屋大学の顕微授精症例の全症例を自ら担当同年5月、精巣精子を用いたICSIによる妊娠例の日本初の報告
1998年 ナカジマクリニック不妊センター開設
2004年 浅田レディースクリニック(現浅田レディース勝川クリニック)開院
2010年 浅田レディース名古屋駅前クリニック開院
2018年 浅田レディース品川クリニック開院
【著作本】
「浅田レディースクリニック パーフェクトガイドブック」
初めての不妊治療クリニック選びに迷っている方や
当院の治療方針に興味をお持ちの方にお読み頂きたい本です。
浅田式不妊治療の実践
豊富な症例データと科学的根拠に基づく的確な判断により、それぞれの患者さまにとって最適な治療を選択します。
患者さま個々の年齢、卵巣予備能に適した治療法を選択し提供します。
患者さま自身にも正しい知識を持っていただいた上で、合意を得て治療を進めます。
「経過」ではなく「結果」を重視した治療を行います。
「結果」を重視した治療
当クリニックでは、妊娠という「結果」を重視した治療を行っています。何も治療しないで自然に妊娠するという「過程」は誰もが望むところです。しかし、現在、主な不妊原因は晩婚化、晩産化から生じる「卵子の加齢」です。「本気で子供が欲しい」と願う方のために、高度生殖医療をご提供することで、できるだけ早く「結果」を出し、限られた人生の多くの時間を子育てとご自身の人生のために使っていただきたいと願っています。
初診受診前説明会の実施
当クリニックでは、「初診受診前説明会」を行い、事前にクリニックの特徴や治療の方針をご説明しています。不妊治療は病院や医師によりさまざまな方針や姿勢があります。当クリニックの方針と、患者さまのご要望とのミスマッチが起こり、患者さまの負担が増えないよう、受診される前に必ずご出席いただいておりますので、病院・治療の選択のお役に立ていただきたいと思います。
このクリニックに関連する監修記事、取材内容、ユーザー様からの質問と回答など、ジネコが企画した様々なコンテンツの一覧です。
記事一覧
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【40代の不妊治療】卵子の大きさにばらつきがあると言われました。改善方法はある?
ちょうど40歳を迎え、初めての体外受精に挑むネモフィラさん。卵子の大きさにばらつきがあること、今後の治療方法について疑問を抱いているそうです。別のアプローチ法などについて浅田レディースクリニックの浅田義正先生に伺います。
2019.9.30
コラム 不妊治療
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浅田レディースクリニック ってどんなクリニック?
ジネコQ&Aサービスに協力してくださっているドクターの強みや治療の特徴、実際の回答やインタビューコラムをご紹介します!
2019.9.7
まとめ ジネコセレクト
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【特集】なぜ不妊治療費は高いの?
不妊治療=高額。どうして高額なの? なぜ保険適用されないの? 少しでも治療費を下げる方法は? 少しでも経済的に負担のかからない方法があるのならぜひ知っておきたいものです。浅田レディースクリニック・浅田義正先生にお話を聞いてみましょう。
2019.6.11
コラム 妊活
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【クリニックの取り組み】働く女性が不妊治療を受けやすい環境へ
女性が不妊治療を受けやすい環境へするためにクリニックが行っている取り組についてご紹介します。
2019.2.27
コラム 不妊治療
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AMHの検査
保険適用外でありながらも、不妊治療の際には欠かせないといわれるAMHの検査。 いったい、どんな重要性があるのでしょうか? 国内でのAMH検査の先駆者である浅田レディースクリニックの浅田義正先生にお話を伺いました。そもそもAMHとは何? 何を調べる検査なのですか?AMHとはアンチミューラリアンホルモンの略。日本語では抗ミュラー管ホルモンともいわれ、もともとは生殖器にかかわるホルモンの一種です。なぜ、抗(アンチ)と呼ばれるかというと、ミュラー管というものが胎生期の女性生殖器の原型であり、AMHは、そのミュラー管の発達を抑制するホルモンとして、検出されるものだからです。 女性の場合、重要になるのは主に思春期以降です。卵巣の中にあった原始卵胞が少しずつ成熟するにつれ、卵子の周りの顆粒膜細胞からAMHを分泌し始めます。それが血液中に漏れて出てくるため、血中AMH値は発育段階の卵胞の数と比例すると考えられています。 つまり、AMHは血液検査で測れるものであり、その値は、卵巣内にどれぐらいの数の卵子が残っているか、卵巣の予備能がどれほどかを予測する目安となります。AMHの値には正常値や平均値はありますか?AMHの値には平均値はありますが、正常値というものはありません。さらに同じ年齢でもAMH値が高い人もいれば低い人もいます(※図参照)。 また、なかには、20代後半や30代前半でも早発閉経、早発卵巣不全で、不妊治療をしたくてもできない人もいます。そういった人は、AMHの検査が出てくるまでは、本当に閉経になるまで気づくことができませんでした。閉経前にはFSHが上がって、卵胞ホルモンのエストラジオールが低くなるのですが、それでようやく卵巣予備能がないことに気づき、卵胞が少しずつ減っているというのは、メカニズム的にまったくわかりませんでした。そういった意味で、AMHの果たす役割は大きいのです。 斜線はおおよその平均値を表しますが、同じ年齢でもAMH値にはかなりのバラつきがあるのがわかります。 ※出典:浅田レディースクリニック(2015年1月~2016年4月)AMHと卵子の質に相関関係はありますか?まったくないと考えたほうがいいです。卵子の質はあくまでも年齢が一番大きな要因です。 患者さん自体で見ると、AMHが高いほうが閉経も遅いし、注射を打ってたくさん採卵できれば不妊治療の効果も出やすいので、その分、有利とはいえます。ただ、受精卵1個1個が良いか悪いかということには関与していません。 極端に言えば、非常に卵巣予備能が悪い20歳の人で受精卵が1個できた人と、40歳で卵巣予備能が良くて1回で受精卵が20個できた人では、どちらが妊娠に近いかといったら、20歳で1個の人のほうがずっと妊娠に近いのです。 同年齢内でのバラつきがあるという点でいえば、同じ40歳で20個採れた人と1個採れた人では、20個採れた人のほうがいい卵子に巡り会える確率が高い分、有利。でも20歳の人ほどではありません。AMHが低い場合の治療方法は?改善することはありますか?AMH値は、治療して良くなるものではありません。また、低くなってしまった卵巣予備能が改善することもできません。 ただ、最近は、AMHの検査方法が進化して精度も良くなりました。 それによって、実は、同じ人を同じように測定しても、AMHはかなり変動するものだということがわかってきました。当院のスタッフでも調べた結果、その変動には、妊娠、出産後、授乳中、長期的にピルを飲んでいるなど、その時のホルモンの状態が影響するのではないかと考えられます。 ですから、AMHを1回測っただけで完全に良いとか悪いとかは判断しないほうがいいと思います。その値も多少減ったり増えたりはしますから、そこで一喜一憂する必要もありません。もちろん、AMH値が低いから体外受精をやらなければいけないというわけでもありません。低くても自然排卵して自然妊娠している人はいくらでもいます。 ただ、年齢が高くなって、AMH値も低くなってきたらタイムリミットが近づいているということは確かです。どのような治療というよりも、いつまでにどういう結果を出したいかという目的をはっきりさせ、判断を迫られるところはあるでしょう。AMHの検査を受けていない人や検査結果が良くない人へひと言AMHは妊娠の予想に使えないから、AMHを測ることは無駄に女性を不安にさせるだけだという意見もあります。 確かに30歳くらいまでに赤ちゃんを産むのがあたりまえだった時代には、それまでの年齢で早発閉経になる人も稀ですから、その意見もうなずけます。しかし、今は35歳、40歳過ぎでも赤ちゃんを欲しいと思う人が多い時代です。 それであれば、妊娠の限界が年齢だけではなく、卵巣予備能との二次元で考えるべきだということを知ってほしいと思います。 また、AMHが医学的に重要なのは、体外受精で注射をした時に採れる卵子の数と、AMH値は非常によく相関することです。ヒトの場合、自然でいけば卵子は一定の割合で育っていって、最終的にはほかの卵子を捨てて1個だけが排卵します。ところが、卵巣刺激で注射を打つと捨てられるはずの良い卵子も一緒に育ち、もともとの卵子の数と比例して採卵ができます。不妊治療の現場においては、ステップアップの早さ、体外受精の時に期待できる受精卵の数など、治療計画の指針として大きな意味合いがあります。 AMHの値が良いとか悪いというのは、妊娠できるできないということではありません。不妊治療がいつまでできるかという目安の材料として使ってください。妊娠率とAMHを直接結び付けると理解が歪んでしまいます。 AMH値が示すのはあくまでも卵子の在庫の目安 卵子の質や卵子が順調に育つかは年齢に一番よく相関します。同じAMH値でも、年齢が高くなればなるほど反応は悪くなります。AMH値は、今後の治療方針や家族計画に生かすのが本来の意義。妊娠率を判断するものではありません。 先生から 発育過程の卵胞から分必されるAMHを測ることで その人の卵巣予備能を予測します 浅田 義正 先生 (浅田レディースクリニック) 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004 年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。「アメリカ・サンアントニオのASRM2017(米国生殖医学会議)にて、ビデオセッションのFirst Prizeを受賞しました。内容は、ライブセルイメージングによるヒト受精卵の染色体異常発生のメカニズム。大変光栄です」と先生。≫ 浅田レディースクリニック出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら
2018.2.20
コラム 不妊治療
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hcg注射は毎回同じ日数で影響なくなりますか?
はるはるさん(36歳)はじめまして。不妊治療初めて一年と少し経ちます。タイミングで今はトライ中です。今月hcg注射5000を排卵させるためと1週間後に2度打ち最後の注射からまだ6日目なのですが注射の影響は分かっていましたがドゥーテストでフライングしました。薄めですが太いラインが出ました。前回注射をしてから7日目で真っ白で今回は6日目ですぐわかるようなラインが出ました。 前回の注射後6日目のフライングはもっと薄いラインでした。 まだ早過ぎるのは分かっているんですが今回の太いラインは注射の影響なんでしょうか?いつも同じぐらいに注射はぬけるものですか?よろしくお願いします。 浅田義正 先生 (浅田レディース名古屋駅前クリニック) 医学博士 日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医 日本生殖医学会認定生殖医療専門医 1982年 名古屋大学医学部卒業 1988年 名古屋大学医学部附属病院産婦人科医員として「不妊外来」および、「健康外来(更年期障害・ホルモン補充医療法)」の専門外来を担当 1992年 医学博士 1993年~1994年 米国最初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精(卵細胞質内精子注入法:ICSI)の基礎的研究に従事 The Jones Institute For Reproductive Medicine, Eastern Virginia Medical School, Norfolk, Vairginia 1995年 名古屋大学医学部附属病院分院にてICSIによる治療開始。以後、辞職まで名古屋大学の顕微授精症例の全症例を自ら担当同年5月、精巣精子を用いたICSIによる妊娠例の日本初の報告 1998年 ナカジマクリニック不妊センター開設 2004年 浅田レディースクリニック(現浅田レディース勝川クリニック)開院 2010年 浅田レディース名古屋駅前クリニック開院 2018年 浅田レディース品川クリニック開院 【著作本】 「浅田レディースクリニック パーフェクトガイドブック」 初めての不妊治療クリニック選びに迷っている方や 当院の治療方針に興味をお持ちの方にお読み頂きたい本です。 ≫ 浅田レディース名古屋駅前クリニック妊娠すると女性の体内では、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモンが分泌され、急激に増え始めます。 ドゥーテストなどの妊娠検査薬は、尿のなかに含まれるこのhCGホルモンに反応し、ある程度以上の濃度になると陽性反応が現れるという仕組みです。 HCG注射とは、妊娠中に出るhCGホルモンを製剤にしたものです。 本来、排卵のトリガーとなるのは、脳下垂体から大量に放出されるLH(黄体形成ホルモン)ですが、HCG注射はこのLHと構造が似ているため、投与することでLHサージを起こさせ、排卵を誘発することができます。 HCGを投与すると、体内にはしばらくの間HCGが残ります。 LHの血中半減期が約2時間なのに比べ、HCG注射の血中濃度は6時間後に最高となり、その後30~32時間の半減期で血中より消失するとされています。その減り方は、2日で半分、4日目でそのまた半分・・・という具合です。 治療によっては、HCG注射を何度も打ったとしたら、一概にいつから妊娠検査薬に反応しなくなるとは言い切れませんが、最後の注射から1週間ぐらいではギリギリ、プラスの反応が出てもおかしくありません。 さらに、血液中であれば、大体同じ速度で分解されていきますが、特に尿検査では、水を多く飲むと尿は薄くなり濃度も変わるため、より当てにならないといえます。 また、妊娠というのは着床すればOKというわけではありません。胚盤胞にまでなれば着床するのはごく当たり前で、胚盤胞の次の日に着床しています。そこから受精卵がどこまで生きていくかが問題です。 要するに、受精卵は着床後もいろいろな段階でダメになります。遅い段階でダメになっていれば、hCG検査をフライングしたら当然陽性にでます。 焦る気持ちはわかります。しかし、HCG注射を打っていれば尚更、フライング検査で偽陽性が出る可能性は高くなります。 不確かな結果で一喜一憂するよりは、自分が思うよりもさらに3、4日後に検査することで明らかな結果を得ることをおすすめします。臨床的な妊娠は、エコーで胎嚢を見てはじめて診断がつきます。それまでのhCGプラスは臨床的妊娠ではありませんし、よくあることだと思って下さい。
2017.12.7
専門医Q&A 女性の健康
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治療歴10年になります。どうしたら卵胞が増えるのでしょうか?
治療歴10年になります。どうしたら卵胞が増えるのでしょうか? 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 高齢になって卵胞がなかなか育たず、凍結卵も減る一方。持病が再発したら子宮全摘の可能性も。この先どうすれば・・・? 浅田レディースクリニックの浅田義正先生に伺いました。 ミミコさん(41歳)からの相談 相談内容 高齢ということもあり、担当医から最初にできるだけ採卵して凍結してから移植した方がいいと言われていますが、なかなか卵胞が増えません。どうしたら2個以上、卵胞が増えるか教えてください。毎日自己注射を打ち、腰を回して運動したら血流がアップして卵胞が育つかなと、腰にウールストールを巻いて汗だくなりながら頑張っていますが、それでも増えず、最近は人工授精ばかりで自信をなくしています。複雑型子宮内膜異型増殖症もあり、次に再発したら子宮全摘とも宣告されています。私はどうしたらいいのでしょうか? 凍結卵も減り、もう生きる気力さえなくなってきました。 これまでの治療データ ●検査・治療歴 不妊治療歴10年。子宮内膜剥離、掻爬術、ポリープ除去、ホルモン剤服用など。AMH低い(正確な数値は不明)。過去に漢方薬を服用したが効果なし。 ●不妊の原因となる病名 複雑型子宮内膜異型増殖症 ●現在の治療方針 特に決まっていない。 ●精子データ 通常の3倍以上(正確な数値不明) ミミコさんの所見について、先生のご意見をお聞かせください。 まず第一印象として、治療年数10年は長すぎますし、かわいそうですよね。不妊治療はどんな治療をしていくかによって人生が変わると、つくづく思います。 ミミコさんはAMHが低いとのことですが、昔から低かったのか年齢相応に低くなったのかが気になります。複雑型子宮内膜異型増殖症は進行して子宮体ガンになれば、確かに子宮を摘出する必要があり、妊娠も不可能になってしまうので、その治療があって10年経過したのかもしれませんが、病気がわかった時点でのAMHはどうだったのでしょうか。もし、その頃にはまだ卵巣予備能がいい時期だったなら、きちんと刺激してたくさん卵子を残しておくことができたかもしれません。本当はもっと短期勝負で治療を進めるべきだったのではないかと思うのです。 精子は通常の3倍以上ということですが。 精子というのは基準値はあるのですが、正常値というのはないのです。6000万個で妊娠率70%とか4000万個で60%とかいわれていますが、WHOでは1年以内で妊娠している人の統計的下限は1900万個と、基準にもバラつきがあります。精子は個人差が大きく、それ以上に個人の中の毎日の変動が大きいものです。 実際に顕微授精などで精子を見ていても、数や奇形率の捉え方は一般的にいわれていることと違うと感じることがあります。精子というのはDNAの運搬装置でしかないわけですから、中身がきちんとしていれば奇形精子でも問題ありません。WHOでは正常形態40%以上といわれていますが、実際の現場では、頭や尻尾が変なふうに曲がっていても問題なく受精して出産することがあります。間違った認識というのはいくらでもあるのです。 ですから、ミミコさんのケースのような漠然とした精子の所見で良いと言われると、女性側は全部私が悪いんだと受け止めてしまい、余計に患者さんを苦しめる原因にもなりかねません。我々、医療者側も大いに気をつけたいことです。 卵胞は今後、増えるのでしょうか? 卵子というのは排卵をする半年以上前から発育を始めています。それは卵巣予備能に見合った、残っている卵子の一定の割合が常に発育しているもので、たくさん予備能がある人であれば毎回たくさん育つし、少なくなってきたら毎回少しずつ育ちます。たとえば100個あって10%なら毎回10個育つし、10個なら1個しか育ちません。そのように卵巣予備能に比例して育つものなので、卵子を途中から増やすということはできません。 つまり、卵胞の数の上限は決まっているのです。ですから、注射を一生懸命打っても上限以上に数は増えませんし、予備能の低い人にはむしろ注射が無駄になってしまいます。そういう人にこそ簡易の体外受精で、一般的には対処するべきでしょう。 また、ホルモンは血液の循環で運ばれていくので、血液の循環は悪いよりは良いほうがいいに決まっていますが、血液の循環を良くして一生懸命ホルモンを与えても、育つ卵子が十分になければ結果が変わるわけではありません。腰を回して・・・ということも、治療を上回る効果があるとはいえず、残念ながら一般的な健康法でしかありません。 ただ、卵胞が育たないから人工授精を、というのがちょっとわからない点。卵胞が育たなければ人工授精自体も無駄ですし、逆に人工授精ができるのであれば、排卵前に採卵すればいいのではないでしょうか。 この先、どのような治療ができますか? 当院では41歳でAMHの低い人でも妊娠している人は大勢います。ただ、20代と40代では卵子の保存期間が違いますから、同じように卵胞が何ミリになったから採るということではあまりうまくいきません。40歳を過ぎると見た目は成熟でも、ほとんどが未熟卵ということがありますから、若い人と比べたら採卵のタイミングをずらす必要があります。そして長いこと眠りについていた卵子の遺伝子を再稼動させ、精子がきた時にちゃんと受精して発育していく、きちんとした成熟卵を採ることにこだわります。 ただ、それにこだわると、大抵、黄体ホルモンが少し上がりぎみになりますから、そのまま新鮮胚移植をすると移植の条件が悪くなります。高齢になればなるほど、採卵と胚移植は別周期で考えて、両方良い条件で整えたほうが成績がいいといえます。 所見からはうかがい知れませんが、ミミコさんは今まで何回かは胚移植できたのでしょうか。平均的に38歳以下であれば10個くらい、全年齢合わせても体外受精でだいたい25個の卵子で妊娠するというデータがあるので、20個、30個戻しても赤ちゃんまでいく受精卵がなかったということであれば、究極的には遺伝子の組み合わせの相性が悪かったのかもしれません。まったくの他人で知り合っても、いとこ同士とか兄弟のように似た遺伝子を互いに持っていて、その組み合わせのバランスが悪くてうまくいかないカップルも稀にあるかもしれないと思います。 ただ、同じカップルの受精卵でも兄弟の違いがあるように、1個ずつの受精卵の遺伝子の組み合わせはすべて違います。ですから、ミミコさんの場合もずっとダメが続くとは思えません。受精卵の遺伝子が組み変わっているうちに、赤ちゃんまでたどり着く1個に出会える可能性はあると思いますよ。 Doctor’s Advice ●血流を良くしても卵胞の数は増やせない ●AMHが低ければ簡易体外受精の選択肢も ●年齢に合った採卵時期を見極めるのが大切 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004 年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。「4月に東京の愛育クリニック内に開設予定だった浅田生殖医療ユニットは、諸事情により計画は凍結しました。その分、品川の新クリニックをできるだけ早く開院できるよう計画変更し、現在はそちらに集中しています」と先生。 ≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 治療歴10年になります。どうしたら卵胞が増えるのでしょうか? 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 高齢になって卵胞がなかなか育たず、凍結卵も減る一方。持病が再発したら子宮全摘の可能性も。この先どうすれば・・・? 浅田レディースクリニックの浅田義正先生に伺いました。 ミミコさん(41歳)からの相談 相談内容 高齢ということもあり、担当医から最初にできるだけ採卵して凍結してから移植した方がいいと言われていますが、なかなか卵胞が増えません。どうしたら2個以上、卵胞が増えるか教えてください。毎日自己注射を打ち、腰を回して運動したら血流がアップして卵胞が育つかなと、腰にウールストールを巻いて汗だくなりながら頑張っていますが、それでも増えず、最近は人工授精ばかりで自信をなくしています。複雑型子宮内膜異型増殖症もあり、次に再発したら子宮全摘とも宣告されています。私はどうしたらいいのでしょうか? 凍結卵も減り、もう生きる気力さえなくなってきました。 これまでの治療データ ●検査・治療歴 不妊治療歴10年。子宮内膜剥離、掻爬術、ポリープ除去、ホルモン剤服用など。AMH低い(正確な数値は不明)。過去に漢方薬を服用したが効果なし。 ●不妊の原因となる病名 複雑型子宮内膜異型増殖症 ●現在の治療方針 特に決まっていない。 ●精子データ 通常の3倍以上(正確な数値不明) ミミコさんの所見について、先生のご意見をお聞かせください。 まず第一印象として、治療年数10年は長すぎますし、かわいそうですよね。不妊治療はどんな治療をしていくかによって人生が変わると、つくづく思います。 ミミコさんはAMHが低いとのことですが、昔から低かったのか年齢相応に低くなったのかが気になります。複雑型子宮内膜異型増殖症は進行して子宮体ガンになれば、確かに子宮を摘出する必要があり、妊娠も不可能になってしまうので、その治療があって10年経過したのかもしれませんが、病気がわかった時点でのAMHはどうだったのでしょうか。もし、その頃にはまだ卵巣予備能がいい時期だったなら、きちんと刺激してたくさん卵子を残しておくことができたかもしれません。本当はもっと短期勝負で治療を進めるべきだったのではないかと思うのです。 精子は通常の3倍以上ということですが。 精子というのは基準値はあるのですが、正常値というのはないのです。6000万個で妊娠率70%とか4000万個で60%とかいわれていますが、WHOでは1年以内で妊娠している人の統計的下限は1900万個と、基準にもバラつきがあります。精子は個人差が大きく、それ以上に個人の中の毎日の変動が大きいものです。 実際に顕微授精などで精子を見ていても、数や奇形率の捉え方は一般的にいわれていることと違うと感じることがあります。精子というのはDNAの運搬装置でしかないわけですから、中身がきちんとしていれば奇形精子でも問題ありません。WHOでは正常形態40%以上といわれていますが、実際の現場では、頭や尻尾が変なふうに曲がっていても問題なく受精して出産することがあります。間違った認識というのはいくらでもあるのです。 ですから、ミミコさんのケースのような漠然とした精子の所見で良いと言われると、女性側は全部私が悪いんだと受け止めてしまい、余計に患者さんを苦しめる原因にもなりかねません。我々、医療者側も大いに気をつけたいことです。 卵胞は今後、増えるのでしょうか? 卵子というのは排卵をする半年以上前から発育を始めています。それは卵巣予備能に見合った、残っている卵子の一定の割合が常に発育しているもので、たくさん予備能がある人であれば毎回たくさん育つし、少なくなってきたら毎回少しずつ育ちます。たとえば100個あって10%なら毎回10個育つし、10個なら1個しか育ちません。そのように卵巣予備能に比例して育つものなので、卵子を途中から増やすということはできません。 つまり、卵胞の数の上限は決まっているのです。ですから、注射を一生懸命打っても上限以上に数は増えませんし、予備能の低い人にはむしろ注射が無駄になってしまいます。そういう人にこそ簡易の体外受精で、一般的には対処するべきでしょう。 また、ホルモンは血液の循環で運ばれていくので、血液の循環は悪いよりは良いほうがいいに決まっていますが、血液の循環を良くして一生懸命ホルモンを与えても、育つ卵子が十分になければ結果が変わるわけではありません。腰を回して・・・ということも、治療を上回る効果があるとはいえず、残念ながら一般的な健康法でしかありません。 ただ、卵胞が育たないから人工授精を、というのがちょっとわからない点。卵胞が育たなければ人工授精自体も無駄ですし、逆に人工授精ができるのであれば、排卵前に採卵すればいいのではないでしょうか。 この先、どのような治療ができますか? 当院では41歳でAMHの低い人でも妊娠している人は大勢います。ただ、20代と40代では卵子の保存期間が違いますから、同じように卵胞が何ミリになったから採るということではあまりうまくいきません。40歳を過ぎると見た目は成熟でも、ほとんどが未熟卵ということがありますから、若い人と比べたら採卵のタイミングをずらす必要があります。そして長いこと眠りについていた卵子の遺伝子を再稼動させ、精子がきた時にちゃんと受精して発育していく、きちんとした成熟卵を採ることにこだわります。 ただ、それにこだわると、大抵、黄体ホルモンが少し上がりぎみになりますから、そのまま新鮮胚移植をすると移植の条件が悪くなります。高齢になればなるほど、採卵と胚移植は別周期で考えて、両方良い条件で整えたほうが成績がいいといえます。 所見からはうかがい知れませんが、ミミコさんは今まで何回かは胚移植できたのでしょうか。平均的に38歳以下であれば10個くらい、全年齢合わせても体外受精でだいたい25個の卵子で妊娠するというデータがあるので、20個、30個戻しても赤ちゃんまでいく受精卵がなかったということであれば、究極的には遺伝子の組み合わせの相性が悪かったのかもしれません。まったくの他人で知り合っても、いとこ同士とか兄弟のように似た遺伝子を互いに持っていて、その組み合わせのバランスが悪くてうまくいかないカップルも稀にあるかもしれないと思います。 ただ、同じカップルの受精卵でも兄弟の違いがあるように、1個ずつの受精卵の遺伝子の組み合わせはすべて違います。ですから、ミミコさんの場合もずっとダメが続くとは思えません。受精卵の遺伝子が組み変わっているうちに、赤ちゃんまでたどり着く1個に出会える可能性はあると思いますよ。 Doctor’s Advice ●血流を良くしても卵胞の数は増やせない ●AMHが低ければ簡易体外受精の選択肢も ●年齢に合った採卵時期を見極めるのが大切 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004 年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。「4月に東京の愛育クリニック内に開設予定だった浅田生殖医療ユニットは、諸事情により計画は凍結しました。その分、品川の新クリニックをできるだけ早く開院できるよう計画変更し、現在はそちらに集中しています」と先生。 ≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.22
コラム 不妊治療
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胚の成長を観察したり、記録したりできるって本当? タイムラプスのこと、教えて!
体外受精したあと受精卵はどうなっている? 採取された卵子は培養液に移され、精子と合わせられて受精します。受精した卵子は受精卵、または胚と呼ばれています。胚を培養する時にも培養液を使います。培養液に浸された受精卵は、お母さんのお腹の中の環境をできるだけ再現したインキュベーターという機器に入れられます。インキュベーターの中は温度や湿度、二酸化炭素、酸素の濃度が一定の状態にコントロールされています。この中で受精卵は細胞分裂を繰り返しながら成長していきます。 正常な胚は2細胞、4細胞、8細胞…と分割していきますが、なかには異常な分割をする胚があります。たとえば1つの細胞から3つに分割したり、一度分割した胚が再び融合したりすることがあります。良好胚は見た目で判断しますが、同じように見える胚でもこのような過程で成長したものを移植すると、妊娠率が下がるといわれています。 動画のように胚の成長を記録できるタイムラプス タイムラプスは5分ごとや10分ごとなどの一定間隔で写真を撮影して、その写真を連続で映すことにより動画のように見る技術です。この技術は植物の成長や天体観測など、撮影に長時間かかるものを短時間で見るために使われていました。 最近、このタイムラプスの技術が不妊治療の世界で活用され、注目を集めています。観察するためにインキュベーターから出された胚は、温度も空気もまったく違う環境で、生命活動の危機にさらされます。宇宙空間に出された人間と同じ状況です。タイムラプスインキュベーターの中で胚を撮影することで、外に取り出すことなく観察することができます。胚にストレスがかからず、扉の開閉によるインキュベーター内の環境の変化も起こりません。また、今まで見ることができなかった胚の成長の動きをすべて確認できるようになり、不妊治療における培養技術の向上に大きな効果が期待されています。 タイムラプスのメリット ①胚にやさしい 胚が順調に成長しているかを顕微鏡で確認するために扉を開けて取り出すと、インキュベーター内の温度や酸素濃度などが変化してしまいます。タイムラプスを使えばインキュベーターから出さずに胚を観察できるので、培養環境を向上させることができます。 ②妊娠に至るまでの時間を短縮 胚の成長をタイムラプスで調べると、正常に発育する胚とそうでない胚との違いがわかります。より多くの観察情報をもとに、従来の観察方法ではわからない異常な分割や成長速度の胚を見つけることができます。正常に発育する胚を優先して移植することや、常に監視されている胚に何か問題があった場合の早期の発見と対応は、安心な管理の実現と妊娠に至るまでの時間を短縮することができると言われています。 ③タブレットで胚の成長を確認できる タイムラプス技術により、移植する胚の説明を受ける時にPCやタブレットで動画を見ることができます。凍結保存した胚を融解して移植する時も過去の動画にアクセスして見ることができ、胚の選択に利用することができます。 ドクターに聞きました! 「タイムラプスの魅力とは」 胚の培養には低酸素環境を維持することが大切です。当院では、そのために早くから培養環境の改善に取り組んできました。 2006年の段階で通常の加湿型インキュベーターでは多人数の胚を入れて、頻回に扉の開閉を行うため、庫内の低酸素環境を維持することに限界を感じていました。個別スペースで培養できるインキュベーターを探し2008年から新型の個別スペースの無加湿型インキュベーターの導入を始め、2010年にはすべて入れ替えて、当院の全受精卵に低酸素環境を維持した培養を実施できました。 しかし、それでも培養途中の培養液交換や胚観察のため、低酸素環境を完全には維持できていませんでした。そこで、2012年にいち早く初期型のタイムラプスを導入しました。タイムラプスのメリットは連続撮影機能により通常培養士が行っていた顕微鏡での直接観察が不要になったことです。さらに正確な受精判定にタイムラプスを利用し、絶大な効果を発揮しました。 2016年に新型タイムラプスが日本に導入され、当院も利用を開始しました。新型ではこれまで6症例だった培養症例数が15症例まで増加しています。今後は受精確認から胚の発生、そして移植まで、全症例がタイムラプス化することが必須です。体内環境を再現するうえで、必要な機器となることは間違いありません。 タイムラプス利用者の声 Aさん 不妊治療を始めたばかりで不安でいっぱいでしたが、先生から胚の動きを見ながらわかりやすく説明していただいて、今後の治療を続けるうえでとても勉強になりました。また、妊娠前に出会えた我が子に感動しました! 赤ちゃんに会えるのが楽しみです。 Bさん 頑張る妻の糧になってほしいと思い、タイムラプスシステムを使用しましたが、映像に食いつく妻の姿を見て、使用して良かったと思っています。不妊治療の進捗がとてもよくわかるので、素晴らしい技術だと思いました。 確実な観察で妊娠をサポート 浅田レディースクリニック 培養室長 福永憲隆氏 タイムラプスによる連続撮影は受精卵を空気にさらす顕微鏡観察を省けるので、胚の質を落とさずに胚移植まで培養することを可能にしてくれます。また、一番効果を発揮する利用法は、タイムラプス撮影することにより受精のタイミングの見逃しを避け、確実な受精判定をすることです。タイムラプス観察はこれまで見ることのできなかった胚の成長を逃すことなくとらえ、患者さんの妊娠により近づける画期的なシステムです。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。。 ≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn≫ 掲載記事一覧はこちら 体外受精したあと受精卵はどうなっている? 採取された卵子は培養液に移され、精子と合わせられて受精します。受精した卵子は受精卵、または胚と呼ばれています。胚を培養する時にも培養液を使います。培養液に浸された受精卵は、お母さんのお腹の中の環境をできるだけ再現したインキュベーターという機器に入れられます。インキュベーターの中は温度や湿度、二酸化炭素、酸素の濃度が一定の状態にコントロールされています。この中で受精卵は細胞分裂を繰り返しながら成長していきます。 正常な胚は2細胞、4細胞、8細胞…と分割していきますが、なかには異常な分割をする胚があります。たとえば1つの細胞から3つに分割したり、一度分割した胚が再び融合したりすることがあります。良好胚は見た目で判断しますが、同じように見える胚でもこのような過程で成長したものを移植すると、妊娠率が下がるといわれています。 動画のように胚の成長を記録できるタイムラプス タイムラプスは5分ごとや10分ごとなどの一定間隔で写真を撮影して、その写真を連続で映すことにより動画のように見る技術です。この技術は植物の成長や天体観測など、撮影に長時間かかるものを短時間で見るために使われていました。 最近、このタイムラプスの技術が不妊治療の世界で活用され、注目を集めています。観察するためにインキュベーターから出された胚は、温度も空気もまったく違う環境で、生命活動の危機にさらされます。宇宙空間に出された人間と同じ状況です。タイムラプスインキュベーターの中で胚を撮影することで、外に取り出すことなく観察することができます。胚にストレスがかからず、扉の開閉によるインキュベーター内の環境の変化も起こりません。また、今まで見ることができなかった胚の成長の動きをすべて確認できるようになり、不妊治療における培養技術の向上に大きな効果が期待されています。 タイムラプスのメリット ①胚にやさしい 胚が順調に成長しているかを顕微鏡で確認するために扉を開けて取り出すと、インキュベーター内の温度や酸素濃度などが変化してしまいます。タイムラプスを使えばインキュベーターから出さずに胚を観察できるので、培養環境を向上させることができます。 ②妊娠に至るまでの時間を短縮 胚の成長をタイムラプスで調べると、正常に発育する胚とそうでない胚との違いがわかります。より多くの観察情報をもとに、従来の観察方法ではわからない異常な分割や成長速度の胚を見つけることができます。正常に発育する胚を優先して移植することや、常に監視されている胚に何か問題があった場合の早期の発見と対応は、安心な管理の実現と妊娠に至るまでの時間を短縮することができると言われています。 ③タブレットで胚の成長を確認できる タイムラプス技術により、移植する胚の説明を受ける時にPCやタブレットで動画を見ることができます。凍結保存した胚を融解して移植する時も過去の動画にアクセスして見ることができ、胚の選択に利用することができます。 ドクターに聞きました! 「タイムラプスの魅力とは」 胚の培養には低酸素環境を維持することが大切です。当院では、そのために早くから培養環境の改善に取り組んできました。 2006年の段階で通常の加湿型インキュベーターでは多人数の胚を入れて、頻回に扉の開閉を行うため、庫内の低酸素環境を維持することに限界を感じていました。個別スペースで培養できるインキュベーターを探し2008年から新型の個別スペースの無加湿型インキュベーターの導入を始め、2010年にはすべて入れ替えて、当院の全受精卵に低酸素環境を維持した培養を実施できました。 しかし、それでも培養途中の培養液交換や胚観察のため、低酸素環境を完全には維持できていませんでした。そこで、2012年にいち早く初期型のタイムラプスを導入しました。タイムラプスのメリットは連続撮影機能により通常培養士が行っていた顕微鏡での直接観察が不要になったことです。さらに正確な受精判定にタイムラプスを利用し、絶大な効果を発揮しました。 2016年に新型タイムラプスが日本に導入され、当院も利用を開始しました。新型ではこれまで6症例だった培養症例数が15症例まで増加しています。今後は受精確認から胚の発生、そして移植まで、全症例がタイムラプス化することが必須です。体内環境を再現するうえで、必要な機器となることは間違いありません。 タイムラプス利用者の声 Aさん 不妊治療を始めたばかりで不安でいっぱいでしたが、先生から胚の動きを見ながらわかりやすく説明していただいて、今後の治療を続けるうえでとても勉強になりました。また、妊娠前に出会えた我が子に感動しました! 赤ちゃんに会えるのが楽しみです。 Bさん 頑張る妻の糧になってほしいと思い、タイムラプスシステムを使用しましたが、映像に食いつく妻の姿を見て、使用して良かったと思っています。不妊治療の進捗がとてもよくわかるので、素晴らしい技術だと思いました。 確実な観察で妊娠をサポート 浅田レディースクリニック 培養室長 福永憲隆氏 タイムラプスによる連続撮影は受精卵を空気にさらす顕微鏡観察を省けるので、胚の質を落とさずに胚移植まで培養することを可能にしてくれます。また、一番効果を発揮する利用法は、タイムラプス撮影することにより受精のタイミングの見逃しを避け、確実な受精判定をすることです。タイムラプス観察はこれまで見ることのできなかった胚の成長を逃すことなくとらえ、患者さんの妊娠により近づける画期的なシステムです。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。。 ≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.8.21
コラム 不妊治療
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閉塞性の無精子症。顕微でも受精しません
閉塞性の無精子症。顕微でも受精しません 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) Mikaさん(会社員/33歳)からの相談 ●男性不妊、顕微でも受精しません 夫は閉塞性の無精子症で、TESEで精巣精子を採り5本凍結しました。術後、医師には精巣精子にしては良好で妊娠できる可能性は高いと言われましたが、受精がうまくいきません。私はAMH値が異常に高く、刺激をすると卵胞が育ちすぎる以外は特に不妊原因を指摘されていません。1回目は低刺激にて9個採卵のうち成熟卵子6個。顕微授精で受精卵は7分割グレード3が1個しかできなかったため、新鮮胚を移植するも陰性。2回目はアンタゴ(中刺激)にて25個採卵。カルシウムイオノフォアで活性化。成熟卵子12個で6個受精。卵巣が腫れたため、胚盤胞まで培養し、結果グレードBCの胚盤胞が1つでき、翌月アシストハッチングした5BCの胚盤胞を移植するも陰性。3回目はHMG+アンタゴ(中刺激)にて28個採卵。カルシウムイオノフォアで活性化。成熟卵子13個で4個受精。培養5日目に胚盤胞に到達しそうな胚はないとのことで移植はキャンセルに。また、これまでにも卵胞が育ちすぎて急にLHサージとなり、採卵キャンセルになったことがありました。凍結した精子は残り2本。これがダメだった場合は、また精巣を切る手術をしないといけません。重度の男性不妊の場合、こちらのクリニックでは限界があるのかなとも思い、培養技術に力を入れているクリニックに転院するべきか迷っています。 精巣上体精子を回収するMESAのほうが負担が少ない 閉塞性無精子症というのは、精巣内で精子はつくられているけれども精管が閉塞しているために精液中に精子が出てこない状態。この場合、手術によって精子を回収するのですが、ご主人がTESEを行ったというのがまず気になります。 閉塞性無精子症の場合、当院ではMESAという精巣上体から精子を回収する方法を採用しています。TESEのように睾丸を切る必要がないため手術による負担が少なく、精子の数や質も高いといわれています。ただ、技術的にはTESEのほうが簡単なため、MESAを行う医師自体が少ないのは事実です。また、精巣精子でも精巣上体精子でも運動精子でさえあれば、数の多少にかかわらず、顕微授精での受精率に変わりはありません。 良い成熟卵子があってこそ受精率も妊娠率も上がる Mikaさん自身においては、AMHが高く多嚢胞性卵巣症候群だと思われますが、大切なのは、きちんとした成熟卵子を採ることです。 成熟卵子は極体の放出という見た目で定義されていますが、同じ赤いリンゴでも甘いものや酸っぱいものがあるように、同じ見た目の成熟卵子にも中身の遺伝子の発現には差があります。 きちんとした成熟卵子というのは、遺伝子の発現が良い卵子であり、そういった成熟卵子に精子を入れて初めて受精率も妊娠率も上がります。つまり、まずは良い材料としての成熟卵子が必要なのです。 AMHが高い人ほど最後の成熟段階の刺激に工夫を 人の卵子は本来、半年くらいかかって育ち、最終的に大きい卵胞が残って、ほかはしぼんでいって単一排卵になるという仕組みです。ところが、多嚢胞性卵巣症候群は、その最後の成熟段階がうまくいかず、全部の卵胞の成長が途中で止まってしまいます。そして、そこに刺激を加えるとすべての卵胞が一斉に育ってきてしまうため、多くの医師は、卵巣過剰刺激症候群などの副作用を懸念して早めに採卵しがちに。それが失敗の原因ともなります。 また、AMHは卵子の成熟の最終段階のホルモンにも関与しているといわれ、AMHが高い人は卵胞が成熟しにくいとも考えられます。ですから、特にAMH値が10 ng/ml以上あるような場合は、熟すのを少し待つような、最後の仕上げ的な刺激を工夫するのが秘訣です。 さらに、LHサージを抑えるためのアンタゴニスト法でもあるわけですから、それで採卵キャンセルというのも残念な話ですね。たとえば、アンタゴニスト法で最後にHCGを使わず、GnRHアゴニストをトリガーにすれば、まず副作用なしで数多くの成熟卵子が採れると思います。 受精卵ができれば女性の年齢相応の妊娠率が出る ほかにも受精障害にはカルシウムイオノフォアよりもエレクトロポレーションという電気刺激のほうがいいなど、Mikaさんのケースにはいろいろな要素が満載ですが、勘違いしてほしくないのはMikaさんの卵子が悪いわけではないということです。 良い成熟卵子を採るためには、卵胞が何㎜になったからHCGをというような単純なことではなく、AMH値と年齢も加味した刺激やタイミングを測ることが大切ですし、良い成熟卵子が採れて運動精子があれば、その後の受精率は顕微授精の技術の差で決まります。むしろ卵子の数が採れる分、1回目の妊娠はもちろん、2人目、3人目のための受精卵をつくって凍結しておくことだって可能です。 男性不妊の場合、男性側に精子が少ないから自然妊娠できないだけであって、受精卵ができれば女性側の年齢に相応の妊娠率はきちんと出るのです。 あと2本の凍結精子があるということですが、少なくとも技術に心配があるならば転院してはいかがでしょうか。その際にはやはり、体外受精や顕微授精の経験が豊富な専門クリニックを選ぶことが大切だと思います。 TOPIC 顕微授精の時、精子はどうやって選ぶの?基本的には運動精子であることが一番大事。精子の頭形やフラグメンテーション、奇形などで判断する説もありますが、それらは精子内のDNAには無関係です。なぜかといえば、DNAというのは通常、傷ついても常に修復されて正常を保つのですが、精子内のDNAはコンパクトにまとまる分、壊れても修復する余地がなく、DNAが壊れている=精子は動かないという判断ができるから。実際に見た目の悪い精子でも顕微授精で妊娠します。つまり精子は生きて、動いていれば、現在の高度生殖医療において受精卵ができるのは当たり前なのです。 浅田先生より まとめ 運動精子と良い成熟卵子があれば受精するか否かは技術の問題です [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。2017年6月には『よくわかるAMHハンドブック ~女性を診るすべての医師へ~』(協和企画・税別1000円)を上梓した先生。今回のような男性不妊のケースにも役立つ医療者向けの内容です。 ≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn≫ 掲載記事一覧はこちら 閉塞性の無精子症。顕微でも受精しません 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) Mikaさん(会社員/33歳)からの相談 ●男性不妊、顕微でも受精しません 夫は閉塞性の無精子症で、TESEで精巣精子を採り5本凍結しました。術後、医師には精巣精子にしては良好で妊娠できる可能性は高いと言われましたが、受精がうまくいきません。私はAMH値が異常に高く、刺激をすると卵胞が育ちすぎる以外は特に不妊原因を指摘されていません。1回目は低刺激にて9個採卵のうち成熟卵子6個。顕微授精で受精卵は7分割グレード3が1個しかできなかったため、新鮮胚を移植するも陰性。2回目はアンタゴ(中刺激)にて25個採卵。カルシウムイオノフォアで活性化。成熟卵子12個で6個受精。卵巣が腫れたため、胚盤胞まで培養し、結果グレードBCの胚盤胞が1つでき、翌月アシストハッチングした5BCの胚盤胞を移植するも陰性。3回目はHMG+アンタゴ(中刺激)にて28個採卵。カルシウムイオノフォアで活性化。成熟卵子13個で4個受精。培養5日目に胚盤胞に到達しそうな胚はないとのことで移植はキャンセルに。また、これまでにも卵胞が育ちすぎて急にLHサージとなり、採卵キャンセルになったことがありました。凍結した精子は残り2本。これがダメだった場合は、また精巣を切る手術をしないといけません。重度の男性不妊の場合、こちらのクリニックでは限界があるのかなとも思い、培養技術に力を入れているクリニックに転院するべきか迷っています。 精巣上体精子を回収するMESAのほうが負担が少ない 閉塞性無精子症というのは、精巣内で精子はつくられているけれども精管が閉塞しているために精液中に精子が出てこない状態。この場合、手術によって精子を回収するのですが、ご主人がTESEを行ったというのがまず気になります。 閉塞性無精子症の場合、当院ではMESAという精巣上体から精子を回収する方法を採用しています。TESEのように睾丸を切る必要がないため手術による負担が少なく、精子の数や質も高いといわれています。ただ、技術的にはTESEのほうが簡単なため、MESAを行う医師自体が少ないのは事実です。また、精巣精子でも精巣上体精子でも運動精子でさえあれば、数の多少にかかわらず、顕微授精での受精率に変わりはありません。 良い成熟卵子があってこそ受精率も妊娠率も上がる Mikaさん自身においては、AMHが高く多嚢胞性卵巣症候群だと思われますが、大切なのは、きちんとした成熟卵子を採ることです。 成熟卵子は極体の放出という見た目で定義されていますが、同じ赤いリンゴでも甘いものや酸っぱいものがあるように、同じ見た目の成熟卵子にも中身の遺伝子の発現には差があります。 きちんとした成熟卵子というのは、遺伝子の発現が良い卵子であり、そういった成熟卵子に精子を入れて初めて受精率も妊娠率も上がります。つまり、まずは良い材料としての成熟卵子が必要なのです。 AMHが高い人ほど最後の成熟段階の刺激に工夫を 人の卵子は本来、半年くらいかかって育ち、最終的に大きい卵胞が残って、ほかはしぼんでいって単一排卵になるという仕組みです。ところが、多嚢胞性卵巣症候群は、その最後の成熟段階がうまくいかず、全部の卵胞の成長が途中で止まってしまいます。そして、そこに刺激を加えるとすべての卵胞が一斉に育ってきてしまうため、多くの医師は、卵巣過剰刺激症候群などの副作用を懸念して早めに採卵しがちに。それが失敗の原因ともなります。 また、AMHは卵子の成熟の最終段階のホルモンにも関与しているといわれ、AMHが高い人は卵胞が成熟しにくいとも考えられます。ですから、特にAMH値が10 ng/ml以上あるような場合は、熟すのを少し待つような、最後の仕上げ的な刺激を工夫するのが秘訣です。 さらに、LHサージを抑えるためのアンタゴニスト法でもあるわけですから、それで採卵キャンセルというのも残念な話ですね。たとえば、アンタゴニスト法で最後にHCGを使わず、GnRHアゴニストをトリガーにすれば、まず副作用なしで数多くの成熟卵子が採れると思います。 受精卵ができれば女性の年齢相応の妊娠率が出る ほかにも受精障害にはカルシウムイオノフォアよりもエレクトロポレーションという電気刺激のほうがいいなど、Mikaさんのケースにはいろいろな要素が満載ですが、勘違いしてほしくないのはMikaさんの卵子が悪いわけではないということです。 良い成熟卵子を採るためには、卵胞が何㎜になったからHCGをというような単純なことではなく、AMH値と年齢も加味した刺激やタイミングを測ることが大切ですし、良い成熟卵子が採れて運動精子があれば、その後の受精率は顕微授精の技術の差で決まります。むしろ卵子の数が採れる分、1回目の妊娠はもちろん、2人目、3人目のための受精卵をつくって凍結しておくことだって可能です。 男性不妊の場合、男性側に精子が少ないから自然妊娠できないだけであって、受精卵ができれば女性側の年齢に相応の妊娠率はきちんと出るのです。 あと2本の凍結精子があるということですが、少なくとも技術に心配があるならば転院してはいかがでしょうか。その際にはやはり、体外受精や顕微授精の経験が豊富な専門クリニックを選ぶことが大切だと思います。 TOPIC 顕微授精の時、精子はどうやって選ぶの?基本的には運動精子であることが一番大事。精子の頭形やフラグメンテーション、奇形などで判断する説もありますが、それらは精子内のDNAには無関係です。なぜかといえば、DNAというのは通常、傷ついても常に修復されて正常を保つのですが、精子内のDNAはコンパクトにまとまる分、壊れても修復する余地がなく、DNAが壊れている=精子は動かないという判断ができるから。実際に見た目の悪い精子でも顕微授精で妊娠します。つまり精子は生きて、動いていれば、現在の高度生殖医療において受精卵ができるのは当たり前なのです。 浅田先生より まとめ 運動精子と良い成熟卵子があれば受精するか否かは技術の問題です [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。2017年6月には『よくわかるAMHハンドブック ~女性を診るすべての医師へ~』(協和企画・税別1000円)を上梓した先生。今回のような男性不妊のケースにも役立つ医療者向けの内容です。 ≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.8.16
コラム 不妊治療
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右乳房から乳汁が出る
マキさん(41歳)私は、結婚をしたばかりで、41歳ですが、望みがあるのなら、子供が授かればと思っています。しかし、右乳房から母乳のような少量の乳汁が出ます。もちろん妊娠もしていません。この状態では、妊娠は難しいのでしょうか? よろしくお願いいたします。 浅田義正 先生 (浅田レディース名古屋駅前クリニック) 医学博士 日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医 日本生殖医学会認定生殖医療専門医 1982年 名古屋大学医学部卒業 1988年 名古屋大学医学部附属病院産婦人科医員として「不妊外来」および、「健康外来(更年期障害・ホルモン補充医療法)」の専門外来を担当 1992年 医学博士 1993年~1994年 米国最初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精(卵細胞質内精子注入法:ICSI)の基礎的研究に従事 The Jones Institute For Reproductive Medicine, Eastern Virginia Medical School, Norfolk, Vairginia 1995年 名古屋大学医学部附属病院分院にてICSIによる治療開始。以後、辞職まで名古屋大学の顕微授精症例の全症例を自ら担当同年5月、精巣精子を用いたICSIによる妊娠例の日本初の報告 1998年 ナカジマクリニック不妊センター開設 2004年 浅田レディースクリニック(現浅田レディース勝川クリニック)開院 2010年 浅田レディース名古屋駅前クリニック開院 2018年 浅田レディース品川クリニック開院 【著作本】 「浅田レディースクリニック パーフェクトガイドブック」 初めての不妊治療クリニック選びに迷っている方や 当院の治療方針に興味をお持ちの方にお読み頂きたい本です。 ≫ 浅田レディース名古屋駅前クリニック乳汁というのはお産の後に出てくるものですが、妊娠中期で流産した後でも出ることでもあります。要は、ある程度女性ホルモンが高くなってそれが急になくなった反動で分泌するメカニズムになっています。 また、妊娠中、授乳中というのは乳汁漏出ホルモンであるプロラクチンが高く、母乳の分泌に一番関係するホルモンですが、それだけで乳汁分泌のすべてが説明できるかというとそうでもありません。プロラクチンを測ると低いのだけど少し出るという人もなかにはいて、プロラクチンだけでは説明できない乳汁分泌はあります。 不妊治療の場合は、プロラクチンが非常に高ければ、妊娠中や授乳中と同じ状態で排卵しにくかったり流産の原因になることもあるため、高プロラクチン血症の治療も必要になります。ただし、プロラクチンが少々高くても、月経周期がきちんとある人であれば、プロラクチンを下げることによって妊娠率を高める効果はないといわれています。つまり、生理不順でなければ少々の高プロラクチン血症は放っておいても大丈夫。ですから、マキさんの場合の乳汁分泌はそんなに気にしなくてもいいのではないかと思います。 ただ、気になるのは月経周期と生理が4日ほどで終わるということです。一般的な若い人の月経周期は28~32日くらいですが、25とか26日という短い周期は、卵巣予備能が少し低くなり、女性ホルモンの基本的なレベルも低くなって、その反動で下垂体ホルモンが増えて卵が育つ期間が短くなっていることが考えられます。 というのも、卵は大体半年くらいかけて育ってくるものですが、その後半期の3ヶ月くらいはホルモン依存で育ちます。その際に下垂体ホルモンのLHやFSHが常に高い状態ですと、卵が少し早めに育ってしまうのです。 つまり、きちんと排卵しなくても、卵が育って黄体化を起こしてホルモンが作られれば生理は来てしまいます。40代になってそういう傾向が強くなっているのかもしれません。これは卵がなくなる前の黄信号です。高齢になると月経周期は一旦、短くなり、それからまた長くなって閉経に向かうものなのです。 以上のことを考えても、さっそく不妊治療を始めてほしいと思います。同じ41歳でも、長い期間治療してきた人よりも、過去に治療歴のない人の方がいい結果は出やすいと実感しています。きちんと受精卵を作れば、年齢相応の妊娠率が望めると思いますよ。
2017.6.26
専門医Q&A 女性の健康
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体外受精しか可能性はない?
体外受精しか可能性はない? 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 一般的に不妊治療は、タイミング療法、人工授精、体外受精・・・とステップアップして進めていくものですが、時には、早い段階から体外受精や顕微授精でなければ難しいケースもあります。どんな場合にそうなるのか、また体外受精とはいったい、どんな治療なのか。体外受精の根本的な考え方も含め、浅田レディースクリニックの浅田義正先生にお聞きしました。 初めての治療から体外受精をすすめる場合、どのようなケースがありますか? これは一番大まかな判定ではありますが、精子の所見でいうと、運動精子の濃度が1mlあたり1千万以下であったら体外受精スタート、100万以下であれば顕微授精スタートになります。 女性側の所見でいえば、当院ではX線ではなく超音波を使っていますが、卵管造影検査で、両側卵管が詰まっていれば体外受精の適応です。 また、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の数値も重要な判断材料になります。AMHは卵巣予備能、つまり卵巣にどれくらい卵子が残っているかを予測する検査ですが、AMHは個人差が非常に大きく、特に40歳以降であればAMHがほとんど0で卵の数が十分にないため、治療を急がなくてはいけないケースは意外と多いもの。その場合も早めの体外受精をおすすめします。 体外受精をすると妊娠率は格段に上がるのでしょうか? 基本的にはそうです。通常1周期1個の成熟卵しか発育しませんが、体外受精ではもっと多くの成熟卵が1周期で得られ、その分何倍もの妊娠率になります。ただ、体外受精をやれば全員が即、妊娠できるかといえばそうではありません。体外受精とは、一般不妊治療で障害となる部分をすべてバイパスする治療法ですから、受精卵ができるのは当たり前。体外受精の妊娠率とは、その受精卵を子宮に戻して順調に育つかどうかの確率です。そこには、卵子本来の性質や、カップルごとの違いなど複雑な要素があるのです。 それはどんなことでしょうか? ひとつはAMHが示す卵子の減少。もうひとつは、卵子の老化です。精子は常に新しくつくられますが、卵子はその人が生まれる前につくられたものがずっと卵巣の中に保存されていて、新しくつくられることはありません。要するに、年齢と共に卵子も老化していくわけで、その老化によって染色体異常や染色体分離異常などメカニカル的な細胞分裂がうまくいかず、妊娠率や出生率が下がっていきます。 さらに、お二人の遺伝子のバランスという要素もあります。たとえば、当院では、35歳未満では1回採卵して2回の移植で50%は妊娠できますが、なかには20代後半や30代前半でも、10回目くらいの移植でやっと妊娠できる人もいます。受精卵はカップルお二人の遺伝子のバランスによって確率の高い場合と低い場合があるように感じています。しかし、同じカップルでも受精卵1個ずつには兄弟の差があります。遺伝子の偶然の組み換えによって、受精卵一つひとつ個性があります。したがって、1個目で妊娠できる人もいれば、5個目、10個目と時間のかかる人もいます。 ただ、受精卵がきちんとできていて、それを1個ずつ戻していけば、何個か先には赤ちゃんになれる受精卵とめぐり合えるだろうというのが、体外受精の現場で我々が日々実感していること。 なかなか妊娠できないと、自分にどんな原因があるのだろうと思うかもしれませんが、体外受精にいたっても究極の原因は受精卵であって、受精卵の品質はすべて同じではないというのが最終的な条件になるわけです。 体外受精=試験管ベビーと呼ばれたことがあるように、体外受精にはまだまだ心理的な抵抗を感じる方も多いかと思います。そんな方へのメッセージをお願いします。 1978年、英国のロバート・エドワーズ博士らによる世界初の体外受精成功によってルイーズ・ブラウンさんが生まれました。当時は、今のようにディッシュがなく、受精卵を試験管に入れて培養したため「試験管ベビー」といわれました。現在、体外受精によって国内で累計約20万人が誕生し、世界では600万人の体外受精のベビーがいるといわれます。 そのルイーズさんは2006年に自然妊娠で男児を産み、2010年にはエドワーズ博士がノーベル医学生理学賞に輝きました。そして、ルイーズさんは今、こんな言葉を残しています。 「IVF(体外受精)で生まれてきた人たちは、当たり前ですがほかの皆と同じです。イイ子もいれば悪い子も、賢い子もいればそうじゃない子もいます。生まれてすぐに私を調べた最初の医師が発した言葉は“普通の赤ん坊”だったそうです。そして大人になり、私は普通の女性になりました。私たちは普通の人間です。ただ生まれてくるのに、科学の力を少し必要としただけなんです」 当事者からのこれ以上のメッセージはないのではないでしょうか。 浅田レディースクリニックでは初診前の受精説明会や、AMH・不妊症セミナーを定期的に開催。「卵子の仕組みなど不妊治療の基礎となる知識を身につけて、正しい治療を選択することが早い結果へと繋がります」と浅田先生。 体外受精適応のケース AMHが低いAMHが低ければ、残っている卵子の数自体が少なく、治療できる時間も限られてきますから、早めのステップアップで体外受精へと進めます。ただ、年齢が若ければ、数が少なくても卵子の老化による妊娠率の低下が少なく、受精卵ができればその年齢の妊娠率が期待できます。2人目、3人目を望むのであれば、卵を余分に採っておいてから治療するという作戦も立てられます。早発閉経で卵子が少ない人と、高齢でAMHが低い人では、受精卵ができても結果的にだいぶ違います。 運動精子の濃度が低い 精子の所見については、何もしていなくてもその所見は大きく変動します。大まかな目安として運動精子の濃度が1mlあたり1000万以下であったら体外受精、100万以下であれば顕微授精が適応すると考えています。逆に3000万以下であれば人工授精から、それ以上であればタイミングなどからも始められると思います。当院で体外受精を行う場合には、受精障害などがあるケースに備えて、採卵した半分の卵子には顕微授精を行うスプリットという方法を採用しています。 両卵管が詰まっている 最初から体外受精を選択せざるを得ないのは、両卵管ともが完全に詰まってしまっているケース。よくレントゲンでの卵管造影検査で卵管が太いとか細いとかいいますが、ほとんど意味がありません。卵管は通っていれば問題がないと思っています。むしろ、痛みの強いレントゲン検査をして無事通っていることがとわかっても、妊娠しなければステップアップしなければいけないのは同じこと。当院では、痛みの少ない経腟超音波下での卵管造影検査を行って判断しています。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。2018年4月には、東京の愛育クリニック(旧:愛育病院)内に、浅田レディースクリニックの生殖医療ユニット(仮)が開設予定。勝川、名古屋に次いで、関東エリアでも浅田先生の不妊治療が受けられるようになります! ≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer≫ 掲載記事一覧はこちら 体外受精しか可能性はない? 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 一般的に不妊治療は、タイミング療法、人工授精、体外受精・・・とステップアップして進めていくものですが、時には、早い段階から体外受精や顕微授精でなければ難しいケースもあります。どんな場合にそうなるのか、また体外受精とはいったい、どんな治療なのか。体外受精の根本的な考え方も含め、浅田レディースクリニックの浅田義正先生にお聞きしました。 初めての治療から体外受精をすすめる場合、どのようなケースがありますか? これは一番大まかな判定ではありますが、精子の所見でいうと、運動精子の濃度が1mlあたり1千万以下であったら体外受精スタート、100万以下であれば顕微授精スタートになります。 女性側の所見でいえば、当院ではX線ではなく超音波を使っていますが、卵管造影検査で、両側卵管が詰まっていれば体外受精の適応です。 また、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の数値も重要な判断材料になります。AMHは卵巣予備能、つまり卵巣にどれくらい卵子が残っているかを予測する検査ですが、AMHは個人差が非常に大きく、特に40歳以降であればAMHがほとんど0で卵の数が十分にないため、治療を急がなくてはいけないケースは意外と多いもの。その場合も早めの体外受精をおすすめします。 体外受精をすると妊娠率は格段に上がるのでしょうか? 基本的にはそうです。通常1周期1個の成熟卵しか発育しませんが、体外受精ではもっと多くの成熟卵が1周期で得られ、その分何倍もの妊娠率になります。ただ、体外受精をやれば全員が即、妊娠できるかといえばそうではありません。体外受精とは、一般不妊治療で障害となる部分をすべてバイパスする治療法ですから、受精卵ができるのは当たり前。体外受精の妊娠率とは、その受精卵を子宮に戻して順調に育つかどうかの確率です。そこには、卵子本来の性質や、カップルごとの違いなど複雑な要素があるのです。 それはどんなことでしょうか? ひとつはAMHが示す卵子の減少。もうひとつは、卵子の老化です。精子は常に新しくつくられますが、卵子はその人が生まれる前につくられたものがずっと卵巣の中に保存されていて、新しくつくられることはありません。要するに、年齢と共に卵子も老化していくわけで、その老化によって染色体異常や染色体分離異常などメカニカル的な細胞分裂がうまくいかず、妊娠率や出生率が下がっていきます。 さらに、お二人の遺伝子のバランスという要素もあります。たとえば、当院では、35歳未満では1回採卵して2回の移植で50%は妊娠できますが、なかには20代後半や30代前半でも、10回目くらいの移植でやっと妊娠できる人もいます。受精卵はカップルお二人の遺伝子のバランスによって確率の高い場合と低い場合があるように感じています。しかし、同じカップルでも受精卵1個ずつには兄弟の差があります。遺伝子の偶然の組み換えによって、受精卵一つひとつ個性があります。したがって、1個目で妊娠できる人もいれば、5個目、10個目と時間のかかる人もいます。 ただ、受精卵がきちんとできていて、それを1個ずつ戻していけば、何個か先には赤ちゃんになれる受精卵とめぐり合えるだろうというのが、体外受精の現場で我々が日々実感していること。 なかなか妊娠できないと、自分にどんな原因があるのだろうと思うかもしれませんが、体外受精にいたっても究極の原因は受精卵であって、受精卵の品質はすべて同じではないというのが最終的な条件になるわけです。 体外受精=試験管ベビーと呼ばれたことがあるように、体外受精にはまだまだ心理的な抵抗を感じる方も多いかと思います。そんな方へのメッセージをお願いします。 1978年、英国のロバート・エドワーズ博士らによる世界初の体外受精成功によってルイーズ・ブラウンさんが生まれました。当時は、今のようにディッシュがなく、受精卵を試験管に入れて培養したため「試験管ベビー」といわれました。現在、体外受精によって国内で累計約20万人が誕生し、世界では600万人の体外受精のベビーがいるといわれます。 そのルイーズさんは2006年に自然妊娠で男児を産み、2010年にはエドワーズ博士がノーベル医学生理学賞に輝きました。そして、ルイーズさんは今、こんな言葉を残しています。 「IVF(体外受精)で生まれてきた人たちは、当たり前ですがほかの皆と同じです。イイ子もいれば悪い子も、賢い子もいればそうじゃない子もいます。生まれてすぐに私を調べた最初の医師が発した言葉は“普通の赤ん坊”だったそうです。そして大人になり、私は普通の女性になりました。私たちは普通の人間です。ただ生まれてくるのに、科学の力を少し必要としただけなんです」 当事者からのこれ以上のメッセージはないのではないでしょうか。 浅田レディースクリニックでは初診前の受精説明会や、AMH・不妊症セミナーを定期的に開催。「卵子の仕組みなど不妊治療の基礎となる知識を身につけて、正しい治療を選択することが早い結果へと繋がります」と浅田先生。 体外受精適応のケース AMHが低いAMHが低ければ、残っている卵子の数自体が少なく、治療できる時間も限られてきますから、早めのステップアップで体外受精へと進めます。ただ、年齢が若ければ、数が少なくても卵子の老化による妊娠率の低下が少なく、受精卵ができればその年齢の妊娠率が期待できます。2人目、3人目を望むのであれば、卵を余分に採っておいてから治療するという作戦も立てられます。早発閉経で卵子が少ない人と、高齢でAMHが低い人では、受精卵ができても結果的にだいぶ違います。 運動精子の濃度が低い 精子の所見については、何もしていなくてもその所見は大きく変動します。大まかな目安として運動精子の濃度が1mlあたり1000万以下であったら体外受精、100万以下であれば顕微授精が適応すると考えています。逆に3000万以下であれば人工授精から、それ以上であればタイミングなどからも始められると思います。当院で体外受精を行う場合には、受精障害などがあるケースに備えて、採卵した半分の卵子には顕微授精を行うスプリットという方法を採用しています。 両卵管が詰まっている 最初から体外受精を選択せざるを得ないのは、両卵管ともが完全に詰まってしまっているケース。よくレントゲンでの卵管造影検査で卵管が太いとか細いとかいいますが、ほとんど意味がありません。卵管は通っていれば問題がないと思っています。むしろ、痛みの強いレントゲン検査をして無事通っていることがとわかっても、妊娠しなければステップアップしなければいけないのは同じこと。当院では、痛みの少ない経腟超音波下での卵管造影検査を行って判断しています。 [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 浅田 義正 先生(浅田レディースクリニック) 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。2018年4月には、東京の愛育クリニック(旧:愛育病院)内に、浅田レディースクリニックの生殖医療ユニット(仮)が開設予定。勝川、名古屋に次いで、関東エリアでも浅田先生の不妊治療が受けられるようになります! ≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.5.24
コラム 不妊治療
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移植のやり方について。
さとちん。さん(34歳)初の凍結胚盤胞移植が陰性に終わりました。 病院によって治療法や方針が違うのは分かってはいましたが。 2点ほど疑問に感じたことがあったので、宜しくお願い致します。 まずは移植前にホルモン値など一切、検査はありませんでした。ちなみに人工周期での移植でしたが、内膜が厚くさえなっていれば問題ないとの事で、移植してもらいました。 内膜が厚くなることも大事だとは分かっていますが、移植に適するホルモンの数値は関係無いんでしょうか?ホルモン値が悪ければ、内膜が厚くてもあまり意味が無くなってしまわないでしょうか?内膜の厚さよりもホルモン値の方が重要では無いんでしょうか? それと、アシストハッチングをお願いして移植しました。私のお世話になっている病院では受精卵の写真や、移植前のアシストハッチングした卵の写真も一切見せてはくれません。 判定日の日に、アシストハッチングが上手くいってなかったみたいだ。と言われました。 その時はショックで詳しく聞けませんでしたが、後から自分で調べて見たら、普通はアシストハッチングがちゃんと出来てるか確認してから移植するはず!と。 全て終わってから、上手くいってなかったなんて、あり得るんでしょうか? まだ移植する卵は5〜6個あり、次もお願いするつもりではいますが、、何だか他の方のお話を聞いているとあまり良い方法で治療がされていないんでは、、と不安になってしまいます。病院を信じたいですが、お金もかかるし不安です。 ちなみに大学病院に通っています。 お忙しいところ申し訳ございませんが宜しくお願い致します。 浅田義正 先生 (浅田レディース名古屋駅前クリニック) 医学博士 日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医 日本生殖医学会認定生殖医療専門医 1982年 名古屋大学医学部卒業 1988年 名古屋大学医学部附属病院産婦人科医員として「不妊外来」および、「健康外来(更年期障害・ホルモン補充医療法)」の専門外来を担当 1992年 医学博士 1993年~1994年 米国最初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精(卵細胞質内精子注入法:ICSI)の基礎的研究に従事 The Jones Institute For Reproductive Medicine, Eastern Virginia Medical School, Norfolk, Vairginia 1995年 名古屋大学医学部附属病院分院にてICSIによる治療開始。以後、辞職まで名古屋大学の顕微授精症例の全症例を自ら担当同年5月、精巣精子を用いたICSIによる妊娠例の日本初の報告 1998年 ナカジマクリニック不妊センター開設 2004年 浅田レディースクリニック(現浅田レディース勝川クリニック)開院 2010年 浅田レディース名古屋駅前クリニック開院 2018年 浅田レディース品川クリニック開院 【著作本】 「浅田レディースクリニック パーフェクトガイドブック」 初めての不妊治療クリニック選びに迷っている方や 当院の治療方針に興味をお持ちの方にお読み頂きたい本です。 ≫ 浅田レディース名古屋駅前クリニックまず、人工周期での移植で内膜が厚くさえなっていれば問題ないというのは、その通りで間違ってはいません。要するに、内膜が厚いことが子宮内の低酸素環境を担保するものであって、その時にホルモン値が高い、低いは関係ありません。 ただ、黄体ホルモン値と胚の発育が同調していなければ問題ですが、それは自然周期で移植する際の方が起きやすいこと。人工周期の場合は、黄体ホルモンを使い始めた日にちで移植日を合わせればまず問題ありません。 ホルモン値が重要になるのはむしろ採卵の時です。この時にホルモン値を重要視して成熟卵をきちんと採り、受精卵を作っていれば、その後の融解胚移植の際には、ホルモン値はまったく重要ではありません。なぜかといえば内膜が主役で卵を育てるわけではなく、内膜はいわば植木鉢、畑みたいなもので、ある程度の厚みがあればあとはその受精卵次第で決まるからです。もっと極端なことを言えば、低酸素環境であれば、内膜がない卵管内でも卵は順調に育ちます。 疑問なのは、アシストテッドハッティングがうまくいっていないという発言です。 現在のアシステッドハッチングというのは、昔のように卵の殻の透明体を酸で溶かすのではなく、ボタンひとつでレーザーで簡単にできること。そこに成功も失敗もないと思います。 しかも、胚盤胞であれば次の日には着床していますから、この場合の妊娠判定マイナスというのは、着床後何日目でダメになったのかということで、その判定の時点でハッチングがうまくいかなかったという説明は私には理解できません。 また、アシステッドハッチングがきちんとできているかを患者さんに確認してもらってから移植する、ということは通常ではあり得ません。なぜなら、アシステッドハッチングをした時点で、その状態はすでに医師の目ではっきりと確認できているはずですから。 ただ、例えば当院では、移植する日の朝に撮った卵の動画をCDでお渡しすることはしています。また、移植時にはモニターで移植直前の卵を見せることはあります。その場合に、ハッチングしていたら、状態を確認することはできますが、それがすべてのクリニックでの当然のやり方かといえば、そうではありません。 今回のケースは特に医師側の説明不足という点が否めませんが、当院でも説明会で常に強調しているのは、患者さんと医師がそれぞれにできることとできないことを認識する重要性です。それを分けて考えないと、むしろ患者さんとってはストレスになります。 例えば、何個目の卵であなたは妊娠できるよと言ってあげられればいいですが、実際のところそれは医師にもわかりません。 また、どんな不妊治療の選択をするかで、その人の人生設計が変わってしまうことだってあります。 それだけに、我々医療者側は特に責任の重さを感じて、安易な治療はできませんし、いい加減な説明をしてはいけないと思います。
2017.4.29
専門医Q&A 女性の健康
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体外受精の着床率を上げるためにできることって何?
【医師取材】体外受精で良好胚を移植しても妊娠しない、子宮・卵管因子などの原因も見当たらないのに着床しない。そんな時はどうすればいいの?浅田レディースクリニックの浅田義正先生にお聞きしました。
2017.4.11
コラム 不妊治療
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Dr.浅田の不妊治療ガイド <後編>
不妊治療の基本はステップアップ。そのスピードや期間を調整する指針が「年齢、AMH、人生設計の3 要素」と、前編でお話された浅田レディースクリニックの浅田先生。後編ではさらに具体的な治療ガイドをご紹介します。 AMH値が低い場合妊娠率に一番差が出るのは実は30代半ば 代前半まででAMHが通常値であれば、普通にステップアップすればいいと思います。特に、20代から30代前半までならAMH値が少々低くても、患者さんがステップアップをゆっくり進めたいと言えば、それでも構わないと思います。ある程度の卵子があるうちは自然排卵しますし、若い人の場合、結果的に妊娠できないということはあまり想定していません。 しかし、30代半ばから後半でAMH値が低い場合、やはり早めのステップアップを考えるべきですし、最終的には体外受精に進むケースも増えます。 日本産科婦人科学会からもデータが出ていますが、20代と40代は、調節卵巣刺激でも低刺激でも妊娠率の成績は実はあまり変わりません。20代は少ししか卵子が採れなくても確率がいいから差が少なく、40代になるとどちらにしろ低いという意味で差は少なくなります。ところが30代、特に30代半ばくらいは一番大きな差があり、それぞれに合った治療法をきちんと選択していく必要があります。 当院の人工授精の目安は35歳まででだいたい5回まで、38歳で3回、40歳以上になると1~2回。これは、年齢が高くなるに従い、体内で受精卵ができる確率が低くなるゆえのマキシマムな期間ですが、条件が悪ければもっと早く進めることも考えます。 40代になったら、そこの確率の低さは体外受精でカバーして、受精卵をとにかくつくり、その受精卵が育つ確率だけにするべきだとも思います。それでも、染色体異常ほか細胞分裂がうまくいかなくなるなど、卵子の老化による要素もじわじわと増えてきて、受精卵の育つ確率は低くなり、結果的に若い人に比べると妊娠率が下がって流産率が上昇します。 さらに、40代の卵子は体外培養のストレスにより弱いので、余計なダメージを与えることを避けるため、胚盤胞培養にもこだわらないというのも当院の方針です。 前編でも述べましたが、当院では受精卵はすべて凍結します。これは高齢になるほど成熟卵と内膜の時期のずれが大きくなり、それも妊娠率を下げる要因となるためです。特にクロミフェンを使うと子宮内膜が薄くなるなど着床条件も悪くなることが多く、凍結融解胚移植で内膜調整したほうが常に妊娠率は高いです。2人目、3人目を考えているのでしたらなおさら、少しでも若い時の卵子を残しておくことをおすすめします。 多嚢胞性卵巣症候群はちょうどいい時期にしっかり採卵することが大事 AMH値が高いと多嚢胞性卵巣症候群が疑われますが、これは一概に悪いことではありません。 AMHすなわちアンチミュラーリアンホルモンには、原始卵胞から育つ卵子の成長を抑制する作用があるため、卵子が少しずつ育ってくるせいなのか、AMH値が高い場合、高齢でも卵子が多く残っている人が多くいます。その分、普通に体外受精ができますし、卵子が多い方は妊娠には有利になります。 また、AMHは卵子が育ってくる最後の成熟の過程も抑制するため、多嚢胞性卵巣症候群の人には中途半端に育った卵子が卵巣内にたくさんあります。そういった卵子は長い間、体内にとどまっていたせいか質が悪いなどと今まで言われていました。 実際、新鮮胚移植の時には、ある程度の数を採卵した時点で妊娠率が反転します。これは何が原因かというと、1個ずつの卵子が黄体ホルモンを少しずつ出すため、たくさん卵子があるとその総和として、子宮内膜が黄体ホルモンに多くさらされて、子宮内膜のほうが時間的に早く進んだ形になり、受精卵が遅れて、結果、着床率が落ちるということが真実だとわかってきました。 今は、卵子の数が多ければ凍結するクリニックが多いですが、卵巣過剰刺激症候群を危惧して早め早めに採卵しがちです。そうすると未成熟卵の割合が増えますし、少しでいいからと中途半端な数を採るとその分、妊娠率が落ちます。 しかし、ちょうどいい時期にきちんと採卵し、凍結融解胚移植を行えば、その数に見合っただけの妊娠率は出ますし、アンタゴニスト法で、最後にHCGではなくてアゴニスト製剤で排卵させれば、ほとんど卵巣過剰刺激症候群の心配もありません。むしろ一生に一回の採卵で十分、兄弟分以上の卵子が採れます。 多嚢胞性卵巣症候群は、卵子の成長率が悪いとか、胚盤胞到達率も落ちるとか散々悪く言われていましたが、今やそんな話は大嘘です。多嚢胞性卵巣症候群の人こそ、クリニックの実力が問われるケースとも言えますね。 Doctor's Advice! ● 30代半ば以降でAMH 値が低ければ 早めのステップアップを ● 多嚢胞性卵巣症候群は治療次第で むしろ高い妊娠率が望める 浅田レディースクリニック 浅田 義正先生名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 不妊治療の基本はステップアップ。そのスピードや期間を調整する指針が「年齢、AMH、人生設計の3 要素」と、前編でお話された浅田レディースクリニックの浅田先生。後編ではさらに具体的な治療ガイドをご紹介します。 AMH値が低い場合妊娠率に一番差が出るのは実は30代半ば 代前半まででAMHが通常値であれば、普通にステップアップすればいいと思います。特に、20代から30代前半までならAMH値が少々低くても、患者さんがステップアップをゆっくり進めたいと言えば、それでも構わないと思います。ある程度の卵子があるうちは自然排卵しますし、若い人の場合、結果的に妊娠できないということはあまり想定していません。 しかし、30代半ばから後半でAMH値が低い場合、やはり早めのステップアップを考えるべきですし、最終的には体外受精に進むケースも増えます。 日本産科婦人科学会からもデータが出ていますが、20代と40代は、調節卵巣刺激でも低刺激でも妊娠率の成績は実はあまり変わりません。20代は少ししか卵子が採れなくても確率がいいから差が少なく、40代になるとどちらにしろ低いという意味で差は少なくなります。ところが30代、特に30代半ばくらいは一番大きな差があり、それぞれに合った治療法をきちんと選択していく必要があります。 当院の人工授精の目安は35歳まででだいたい5回まで、38歳で3回、40歳以上になると1~2回。これは、年齢が高くなるに従い、体内で受精卵ができる確率が低くなるゆえのマキシマムな期間ですが、条件が悪ければもっと早く進めることも考えます。 40代になったら、そこの確率の低さは体外受精でカバーして、受精卵をとにかくつくり、その受精卵が育つ確率だけにするべきだとも思います。それでも、染色体異常ほか細胞分裂がうまくいかなくなるなど、卵子の老化による要素もじわじわと増えてきて、受精卵の育つ確率は低くなり、結果的に若い人に比べると妊娠率が下がって流産率が上昇します。 さらに、40代の卵子は体外培養のストレスにより弱いので、余計なダメージを与えることを避けるため、胚盤胞培養にもこだわらないというのも当院の方針です。 前編でも述べましたが、当院では受精卵はすべて凍結します。これは高齢になるほど成熟卵と内膜の時期のずれが大きくなり、それも妊娠率を下げる要因となるためです。特にクロミフェンを使うと子宮内膜が薄くなるなど着床条件も悪くなることが多く、凍結融解胚移植で内膜調整したほうが常に妊娠率は高いです。2人目、3人目を考えているのでしたらなおさら、少しでも若い時の卵子を残しておくことをおすすめします。 多嚢胞性卵巣症候群はちょうどいい時期にしっかり採卵することが大事 AMH値が高いと多嚢胞性卵巣症候群が疑われますが、これは一概に悪いことではありません。 AMHすなわちアンチミュラーリアンホルモンには、原始卵胞から育つ卵子の成長を抑制する作用があるため、卵子が少しずつ育ってくるせいなのか、AMH値が高い場合、高齢でも卵子が多く残っている人が多くいます。その分、普通に体外受精ができますし、卵子が多い方は妊娠には有利になります。 また、AMHは卵子が育ってくる最後の成熟の過程も抑制するため、多嚢胞性卵巣症候群の人には中途半端に育った卵子が卵巣内にたくさんあります。そういった卵子は長い間、体内にとどまっていたせいか質が悪いなどと今まで言われていました。 実際、新鮮胚移植の時には、ある程度の数を採卵した時点で妊娠率が反転します。これは何が原因かというと、1個ずつの卵子が黄体ホルモンを少しずつ出すため、たくさん卵子があるとその総和として、子宮内膜が黄体ホルモンに多くさらされて、子宮内膜のほうが時間的に早く進んだ形になり、受精卵が遅れて、結果、着床率が落ちるということが真実だとわかってきました。 今は、卵子の数が多ければ凍結するクリニックが多いですが、卵巣過剰刺激症候群を危惧して早め早めに採卵しがちです。そうすると未成熟卵の割合が増えますし、少しでいいからと中途半端な数を採るとその分、妊娠率が落ちます。 しかし、ちょうどいい時期にきちんと採卵し、凍結融解胚移植を行えば、その数に見合っただけの妊娠率は出ますし、アンタゴニスト法で、最後にHCGではなくてアゴニスト製剤で排卵させれば、ほとんど卵巣過剰刺激症候群の心配もありません。むしろ一生に一回の採卵で十分、兄弟分以上の卵子が採れます。 多嚢胞性卵巣症候群は、卵子の成長率が悪いとか、胚盤胞到達率も落ちるとか散々悪く言われていましたが、今やそんな話は大嘘です。多嚢胞性卵巣症候群の人こそ、クリニックの実力が問われるケースとも言えますね。 Doctor's Advice! ● 30代半ば以降でAMH 値が低ければ 早めのステップアップを ● 多嚢胞性卵巣症候群は治療次第で むしろ高い妊娠率が望める 浅田レディースクリニック 浅田 義正先生名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2016.12.31
コラム 不妊治療
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Dr.浅田の不妊治療ガイド <後編>
不妊治療の基本はステップアップ。そのスピードや期間を調整する指針が「年齢、AMH、人生設計の3 要素」と、前編でお話された浅田レディースクリニックの浅田先生。後編ではさらに具体的な治療ガイドをご紹介します。 AMH値が低い場合妊娠率に一番差が出るのは実は30代半ば 代前半まででAMHが通常値であれば、普通にステップアップすればいいと思います。特に、20代から30代前半までならAMH値が少々低くても、患者さんがステップアップをゆっくり進めたいと言えば、それでも構わないと思います。ある程度の卵子があるうちは自然排卵しますし、若い人の場合、結果的に妊娠できないということはあまり想定していません。 しかし、30代半ばから後半でAMH値が低い場合、やはり早めのステップアップを考えるべきですし、最終的には体外受精に進むケースも増えます。 日本産科婦人科学会からもデータが出ていますが、20代と40代は、調節卵巣刺激でも低刺激でも妊娠率の成績は実はあまり変わりません。20代は少ししか卵子が採れなくても確率がいいから差が少なく、40代になるとどちらにしろ低いという意味で差は少なくなります。ところが30代、特に30代半ばくらいは一番大きな差があり、それぞれに合った治療法をきちんと選択していく必要があります。 当院の人工授精の目安は35歳まででだいたい5回まで、38歳で3回、40歳以上になると1~2回。これは、年齢が高くなるに従い、体内で受精卵ができる確率が低くなるゆえのマキシマムな期間ですが、条件が悪ければもっと早く進めることも考えます。 40代になったら、そこの確率の低さは体外受精でカバーして、受精卵をとにかくつくり、その受精卵が育つ確率だけにするべきだとも思います。それでも、染色体異常ほか細胞分裂がうまくいかなくなるなど、卵子の老化による要素もじわじわと増えてきて、受精卵の育つ確率は低くなり、結果的に若い人に比べると妊娠率が下がって流産率が上昇します。 さらに、40代の卵子は体外培養のストレスにより弱いので、余計なダメージを与えることを避けるため、胚盤胞培養にもこだわらないというのも当院の方針です。 前編でも述べましたが、当院では受精卵はすべて凍結します。これは高齢になるほど成熟卵と内膜の時期のずれが大きくなり、それも妊娠率を下げる要因となるためです。特にクロミフェンを使うと子宮内膜が薄くなるなど着床条件も悪くなることが多く、凍結融解胚移植で内膜調整したほうが常に妊娠率は高いです。2人目、3人目を考えているのでしたらなおさら、少しでも若い時の卵子を残しておくことをおすすめします。 多嚢胞性卵巣症候群はちょうどいい時期にしっかり採卵することが大事 AMH値が高いと多嚢胞性卵巣症候群が疑われますが、これは一概に悪いことではありません。 AMHすなわちアンチミュラーリアンホルモンには、原始卵胞から育つ卵子の成長を抑制する作用があるため、卵子が少しずつ育ってくるせいなのか、AMH値が高い場合、高齢でも卵子が多く残っている人が多くいます。その分、普通に体外受精ができますし、卵子が多い方は妊娠には有利になります。 また、AMHは卵子が育ってくる最後の成熟の過程も抑制するため、多嚢胞性卵巣症候群の人には中途半端に育った卵子が卵巣内にたくさんあります。そういった卵子は長い間、体内にとどまっていたせいか質が悪いなどと今まで言われていました。 実際、新鮮胚移植の時には、ある程度の数を採卵した時点で妊娠率が反転します。これは何が原因かというと、1個ずつの卵子が黄体ホルモンを少しずつ出すため、たくさん卵子があるとその総和として、子宮内膜が黄体ホルモンに多くさらされて、子宮内膜のほうが時間的に早く進んだ形になり、受精卵が遅れて、結果、着床率が落ちるということが真実だとわかってきました。 今は、卵子の数が多ければ凍結するクリニックが多いですが、卵巣過剰刺激症候群を危惧して早め早めに採卵しがちです。そうすると未成熟卵の割合が増えますし、少しでいいからと中途半端な数を採るとその分、妊娠率が落ちます。 しかし、ちょうどいい時期にきちんと採卵し、凍結融解胚移植を行えば、その数に見合っただけの妊娠率は出ますし、アンタゴニスト法で、最後にHCGではなくてアゴニスト製剤で排卵させれば、ほとんど卵巣過剰刺激症候群の心配もありません。むしろ一生に一回の採卵で十分、兄弟分以上の卵子が採れます。 多嚢胞性卵巣症候群は、卵子の成長率が悪いとか、胚盤胞到達率も落ちるとか散々悪く言われていましたが、今やそんな話は大嘘です。多嚢胞性卵巣症候群の人こそ、クリニックの実力が問われるケースとも言えますね。 Doctor's Advice! ● 30代半ば以降でAMH 値が低ければ 早めのステップアップを ● 多嚢胞性卵巣症候群は治療次第で むしろ高い妊娠率が望める 浅田レディースクリニック 浅田 義正先生名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら 不妊治療の基本はステップアップ。そのスピードや期間を調整する指針が「年齢、AMH、人生設計の3 要素」と、前編でお話された浅田レディースクリニックの浅田先生。後編ではさらに具体的な治療ガイドをご紹介します。 AMH値が低い場合妊娠率に一番差が出るのは実は30代半ば 代前半まででAMHが通常値であれば、普通にステップアップすればいいと思います。特に、20代から30代前半までならAMH値が少々低くても、患者さんがステップアップをゆっくり進めたいと言えば、それでも構わないと思います。ある程度の卵子があるうちは自然排卵しますし、若い人の場合、結果的に妊娠できないということはあまり想定していません。 しかし、30代半ばから後半でAMH値が低い場合、やはり早めのステップアップを考えるべきですし、最終的には体外受精に進むケースも増えます。 日本産科婦人科学会からもデータが出ていますが、20代と40代は、調節卵巣刺激でも低刺激でも妊娠率の成績は実はあまり変わりません。20代は少ししか卵子が採れなくても確率がいいから差が少なく、40代になるとどちらにしろ低いという意味で差は少なくなります。ところが30代、特に30代半ばくらいは一番大きな差があり、それぞれに合った治療法をきちんと選択していく必要があります。 当院の人工授精の目安は35歳まででだいたい5回まで、38歳で3回、40歳以上になると1~2回。これは、年齢が高くなるに従い、体内で受精卵ができる確率が低くなるゆえのマキシマムな期間ですが、条件が悪ければもっと早く進めることも考えます。 40代になったら、そこの確率の低さは体外受精でカバーして、受精卵をとにかくつくり、その受精卵が育つ確率だけにするべきだとも思います。それでも、染色体異常ほか細胞分裂がうまくいかなくなるなど、卵子の老化による要素もじわじわと増えてきて、受精卵の育つ確率は低くなり、結果的に若い人に比べると妊娠率が下がって流産率が上昇します。 さらに、40代の卵子は体外培養のストレスにより弱いので、余計なダメージを与えることを避けるため、胚盤胞培養にもこだわらないというのも当院の方針です。 前編でも述べましたが、当院では受精卵はすべて凍結します。これは高齢になるほど成熟卵と内膜の時期のずれが大きくなり、それも妊娠率を下げる要因となるためです。特にクロミフェンを使うと子宮内膜が薄くなるなど着床条件も悪くなることが多く、凍結融解胚移植で内膜調整したほうが常に妊娠率は高いです。2人目、3人目を考えているのでしたらなおさら、少しでも若い時の卵子を残しておくことをおすすめします。 多嚢胞性卵巣症候群はちょうどいい時期にしっかり採卵することが大事 AMH値が高いと多嚢胞性卵巣症候群が疑われますが、これは一概に悪いことではありません。 AMHすなわちアンチミュラーリアンホルモンには、原始卵胞から育つ卵子の成長を抑制する作用があるため、卵子が少しずつ育ってくるせいなのか、AMH値が高い場合、高齢でも卵子が多く残っている人が多くいます。その分、普通に体外受精ができますし、卵子が多い方は妊娠には有利になります。 また、AMHは卵子が育ってくる最後の成熟の過程も抑制するため、多嚢胞性卵巣症候群の人には中途半端に育った卵子が卵巣内にたくさんあります。そういった卵子は長い間、体内にとどまっていたせいか質が悪いなどと今まで言われていました。 実際、新鮮胚移植の時には、ある程度の数を採卵した時点で妊娠率が反転します。これは何が原因かというと、1個ずつの卵子が黄体ホルモンを少しずつ出すため、たくさん卵子があるとその総和として、子宮内膜が黄体ホルモンに多くさらされて、子宮内膜のほうが時間的に早く進んだ形になり、受精卵が遅れて、結果、着床率が落ちるということが真実だとわかってきました。 今は、卵子の数が多ければ凍結するクリニックが多いですが、卵巣過剰刺激症候群を危惧して早め早めに採卵しがちです。そうすると未成熟卵の割合が増えますし、少しでいいからと中途半端な数を採るとその分、妊娠率が落ちます。 しかし、ちょうどいい時期にきちんと採卵し、凍結融解胚移植を行えば、その数に見合っただけの妊娠率は出ますし、アンタゴニスト法で、最後にHCGではなくてアゴニスト製剤で排卵させれば、ほとんど卵巣過剰刺激症候群の心配もありません。むしろ一生に一回の採卵で十分、兄弟分以上の卵子が採れます。 多嚢胞性卵巣症候群は、卵子の成長率が悪いとか、胚盤胞到達率も落ちるとか散々悪く言われていましたが、今やそんな話は大嘘です。多嚢胞性卵巣症候群の人こそ、クリニックの実力が問われるケースとも言えますね。 Doctor's Advice! ● 30代半ば以降でAMH 値が低ければ 早めのステップアップを ● 多嚢胞性卵巣症候群は治療次第で むしろ高い妊娠率が望める 浅田レディースクリニック 浅田 義正先生名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。≫ 浅田レディースクリニック 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2016.12.19
コラム 不妊治療
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卵子の真実
2016年9月16日に行われたジネコ 妊活セミナーより 「卵の真実」 30歳の人は卵子も30年老化している 今は男女平等の時代ですが、赤ちゃんをつくるということに関しては、男女は平等ではありません。それぞれ役割分担が異なり、お互いの役割を尊重した上で同権でありたいという風に考えます。では、男と女はどこが違うか。一番大きな違いは卵巣と精巣という生殖器の働きや特徴だといえます。これをしっかり理解することで、様々なことがその本質からきちんと見えてくるでしょう。 精巣は精子をつくるところ。では、卵巣はどうでしょうか。卵巣は卵子をつくるところ? それは違います。卵巣では卵子をつくっていません。卵巣は卵子を保存しているだけの場所なんですね。 男性は80歳でも90歳でもずっと精子をつくり続け、射精されている精子、動いている精子はつねにつくり立てということになります。そのような意味で、精子は年をとりません。 しかし、卵子は年をとります。たとえば30歳の人が排卵したとします。その時排卵された卵子は、30年時間が経過した細胞ということに。30年経ってやっと出番が回ってきた細胞なんですね。このように卵子はそのまま古くなるという特徴があります。 精子には人の設計図である染色体の半分を卵子に持ち込み、卵子のスイッチをオンにするという役割があり、これだけしか仕事をしません。あとは全部卵子がやります。卵子、精子になる時に2本あった染色体は1本になりますが、その時、勝手に組み替えを起こしてから1本になります。組み替えが起きた精子の染色体、組み替えの起きた卵子の染色体が受精卵の中で組み合わさって、人の設計図になるんですね。 染色体をもとに受精卵の中ではどんどん人の部品がつくられていきます。受精卵というのは工場の役割があって、最初のうちはよそから材料が来ません。卵の中だけで仕事をしている。ですから、倉庫の役割もあるといえるでしょう。 高齢になると妊娠率が下がり、流産率は上昇 女性が年をとると、工場、そして倉庫でもある卵子が古くなります。そうすると、工場の不良品が増える。学問的にいえば、染色体分離や遺伝子の発現等がうまくいかなくなってくるんですね。その結果、異常な細胞がどんどん増えていって、人の体の構成がうまくいかなくなります。途中でダメになるケースが増えてくる。つまり高齢になると、妊娠率がどんどん低くなり、流産率が跳ね上がってくるという現象が起きてきます。 妊娠率が下がることと流産率が上がるのは同じ現象です。妊娠反応より先にダメになったか、後にダメになったかだけのこと。実はこれはひどい話ではなく、お母さんの体を守る大事なしくみ。だんだん年をとってきて、妊娠・出産・子育てが体の負担になる頃には自然に妊娠しなくてもいいように、体を守っている大事なシステムなんです。 20代が高くて、30代からだんだん低くなり、38歳から43、44歳頃になるともうゼロになる、というのが妊娠率の一般的なパターンになります。逆に、流産率は年齢とともに上がっていきます。40歳を過ぎて妊娠すると半数は流産してしまうんですね。30歳くらいまでに赤ちゃんを産み終えていたら、流産率は20%以下。35歳で赤ちゃんが欲しくて妊娠したら、3回に1回は流産します。40歳だったら2回に1回、43、44歳だったら90%以上流産してしまうことに。体に良くないことをしたからというわけではなく、卵の本質からこのようなことが起きます。何かをすれば防げるというわけではありません。 卵は1日30 ~40個減っていく 卵子は砂時計だとイメージしてください。砂時計の砂が落ちていくように時間が経つごとに、卵子の数はどんどん少なくなっていきます。生まれる前、お母さんのお腹の中にいる時に、1回だけ卵子のもとになる細胞が増えます。その数は500万~700万個。生まれた時にはすでに200万個に減っています。初潮が来た時には30万個程度に減少。生まれた時の200万個を基準に考えるのなら、35歳を迎えた頃には1~2%、2~3万個の卵子しか残っていません。これが卵子減少のしかたです。 卵子は細胞分裂をして増えることができません。原始卵胞は生まれる前が一番多いんですね。男性は1日に1000万個とか1億個とか、精子を毎日つくり続けています。女性は、赤ちゃんをつくることができるチャンスが最初は200万個あったのに、そこから増えず、逆に生殖年齢の頃には10分の1くらいになってしまいます。 卵子は毎月1個ずつなくなっていくのではなく、おおざっぱに計算すると毎月約1000個、1日に30~40個ずつ必ずなくなっていくんですね。生理や排卵の有無に関わらず、減少していきます。 砂時計の上部にある砂、つまり卵巣の中に残っている卵子の目安を卵巣予備能という風に呼んでいます。卵子のスタートは生まれる前。自分の年齢+αの古い細胞で勝負しています。原始卵胞という形で卵巣の中に保存されて、それがちゃんと排卵するまで成熟するのに約半年、あるいはそれ以上かかるといわれています。卵子は生理が始まってから育ってくるのではありません。半年前から育ってきた卵子の最後の1ヵ月の仕上げをしているのが、月経周期ということになります。 卵は原始卵胞からつねに一定の割合で成熟。ですから、ある時を除くと、卵巣の中にはいろいろな成熟段階の卵胞が見えます。 体外受精で卵巣を刺激すると何個か卵子が採れますが、採れた数に比例して妊娠率も高くなります。しかし、卵巣予備能の低い人に同じように注射を打って刺激をしても、採れる卵子の数は少ない。途中で増えるわけではなく、マキシマムの数はもう半年前に決まっているということなんですね。 若い人はたくさん卵があって、そのうち使えるものもたくさんあります。年齢が高くなってくると、卵の数も少ないし、使える卵も少ない。20代だったら体外受精でたくさん卵が採れて、しかもいい卵に出会える確率が高いのですが、30代、40代だとぐっと低くなってきます。女性が一番妊娠しやすいのは22歳くらいといわれています。卵子が老化し、どんどん数が減ってくると、妊よう性(妊娠できる可能性)はみなさんが思っている以上に急激に低くなっていく。どんなに健康に過ごしても、22、23歳を1とするなら、35歳を迎えた頃には半分になっていると考えていただいていいでしょう。 生理があっても、いつの間にか妊娠力ゼロに 生理があるうちは妊娠できると思っている人も多いようですが、閉経する10年前からほとんど妊娠できない状態になります。毎月生理が来ていても知らないうちに妊娠する力はなくなっていきます。卵巣の中に残っている卵子が少なくなっても日常生活で気づくことはできません。なくなる直前でも自分ではわからないんですね。 前述したように、卵子は原始卵胞から成熟卵胞まで半年くらいかかって育っていきます。多くの卵胞が育っていくなか、人間の場合は最終的に1個の成熟卵胞が排卵するようになります。途中で捨てていくのは悪い卵というわけではありません。数を1個にするためだけで、良し悪しに関わらず、残りの卵を捨てていきます。この成熟卵胞が卵胞ホルモン、黄体ホルモン、女性ホルモンをつくり、月経周期をつくりますから、月経は正常に起こってきます。卵巣予備能が悪くなって原始卵胞が極端に少なくなったとしても、半年かかって成熟卵胞へ育つ卵胞があるうちは月経は正常。ですから、生理がおかしくなるなどの症状が出た時には、すでにほとんど妊娠できるような卵がない状態だということです。 赤ちゃんを希望されている方は、このような卵子老化や卵子減少の正しい知識や現実を知って、少しでも妊娠できる可能性が高いうちに妊活や不妊治療を始めていただきたいと思います。 浅田レディースクリニック 浅田 義正先生名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。≫ 浅田レディースクリニック ジネコ妊活セミナー 2016年9月16日に行われたジネコ 妊活セミナーより 「卵の真実」 30歳の人は卵子も30年老化している 今は男女平等の時代ですが、赤ちゃんをつくるということに関しては、男女は平等ではありません。それぞれ役割分担が異なり、お互いの役割を尊重した上で同権でありたいという風に考えます。では、男と女はどこが違うか。一番大きな違いは卵巣と精巣という生殖器の働きや特徴だといえます。これをしっかり理解することで、様々なことがその本質からきちんと見えてくるでしょう。 精巣は精子をつくるところ。では、卵巣はどうでしょうか。卵巣は卵子をつくるところ? それは違います。卵巣では卵子をつくっていません。卵巣は卵子を保存しているだけの場所なんですね。 男性は80歳でも90歳でもずっと精子をつくり続け、射精されている精子、動いている精子はつねにつくり立てということになります。そのような意味で、精子は年をとりません。 しかし、卵子は年をとります。たとえば30歳の人が排卵したとします。その時排卵された卵子は、30年時間が経過した細胞ということに。30年経ってやっと出番が回ってきた細胞なんですね。このように卵子はそのまま古くなるという特徴があります。 精子には人の設計図である染色体の半分を卵子に持ち込み、卵子のスイッチをオンにするという役割があり、これだけしか仕事をしません。あとは全部卵子がやります。卵子、精子になる時に2本あった染色体は1本になりますが、その時、勝手に組み替えを起こしてから1本になります。組み替えが起きた精子の染色体、組み替えの起きた卵子の染色体が受精卵の中で組み合わさって、人の設計図になるんですね。 染色体をもとに受精卵の中ではどんどん人の部品がつくられていきます。受精卵というのは工場の役割があって、最初のうちはよそから材料が来ません。卵の中だけで仕事をしている。ですから、倉庫の役割もあるといえるでしょう。 高齢になると妊娠率が下がり、流産率は上昇 女性が年をとると、工場、そして倉庫でもある卵子が古くなります。そうすると、工場の不良品が増える。学問的にいえば、染色体分離や遺伝子の発現等がうまくいかなくなってくるんですね。その結果、異常な細胞がどんどん増えていって、人の体の構成がうまくいかなくなります。途中でダメになるケースが増えてくる。つまり高齢になると、妊娠率がどんどん低くなり、流産率が跳ね上がってくるという現象が起きてきます。 妊娠率が下がることと流産率が上がるのは同じ現象です。妊娠反応より先にダメになったか、後にダメになったかだけのこと。実はこれはひどい話ではなく、お母さんの体を守る大事なしくみ。だんだん年をとってきて、妊娠・出産・子育てが体の負担になる頃には自然に妊娠しなくてもいいように、体を守っている大事なシステムなんです。 20代が高くて、30代からだんだん低くなり、38歳から43、44歳頃になるともうゼロになる、というのが妊娠率の一般的なパターンになります。逆に、流産率は年齢とともに上がっていきます。40歳を過ぎて妊娠すると半数は流産してしまうんですね。30歳くらいまでに赤ちゃんを産み終えていたら、流産率は20%以下。35歳で赤ちゃんが欲しくて妊娠したら、3回に1回は流産します。40歳だったら2回に1回、43、44歳だったら90%以上流産してしまうことに。体に良くないことをしたからというわけではなく、卵の本質からこのようなことが起きます。何かをすれば防げるというわけではありません。 卵は1日30 ~40個減っていく 卵子は砂時計だとイメージしてください。砂時計の砂が落ちていくように時間が経つごとに、卵子の数はどんどん少なくなっていきます。生まれる前、お母さんのお腹の中にいる時に、1回だけ卵子のもとになる細胞が増えます。その数は500万~700万個。生まれた時にはすでに200万個に減っています。初潮が来た時には30万個程度に減少。生まれた時の200万個を基準に考えるのなら、35歳を迎えた頃には1~2%、2~3万個の卵子しか残っていません。これが卵子減少のしかたです。 卵子は細胞分裂をして増えることができません。原始卵胞は生まれる前が一番多いんですね。男性は1日に1000万個とか1億個とか、精子を毎日つくり続けています。女性は、赤ちゃんをつくることができるチャンスが最初は200万個あったのに、そこから増えず、逆に生殖年齢の頃には10分の1くらいになってしまいます。 卵子は毎月1個ずつなくなっていくのではなく、おおざっぱに計算すると毎月約1000個、1日に30~40個ずつ必ずなくなっていくんですね。生理や排卵の有無に関わらず、減少していきます。 砂時計の上部にある砂、つまり卵巣の中に残っている卵子の目安を卵巣予備能という風に呼んでいます。卵子のスタートは生まれる前。自分の年齢+αの古い細胞で勝負しています。原始卵胞という形で卵巣の中に保存されて、それがちゃんと排卵するまで成熟するのに約半年、あるいはそれ以上かかるといわれています。卵子は生理が始まってから育ってくるのではありません。半年前から育ってきた卵子の最後の1ヵ月の仕上げをしているのが、月経周期ということになります。 卵は原始卵胞からつねに一定の割合で成熟。ですから、ある時を除くと、卵巣の中にはいろいろな成熟段階の卵胞が見えます。 体外受精で卵巣を刺激すると何個か卵子が採れますが、採れた数に比例して妊娠率も高くなります。しかし、卵巣予備能の低い人に同じように注射を打って刺激をしても、採れる卵子の数は少ない。途中で増えるわけではなく、マキシマムの数はもう半年前に決まっているということなんですね。 若い人はたくさん卵があって、そのうち使えるものもたくさんあります。年齢が高くなってくると、卵の数も少ないし、使える卵も少ない。20代だったら体外受精でたくさん卵が採れて、しかもいい卵に出会える確率が高いのですが、30代、40代だとぐっと低くなってきます。女性が一番妊娠しやすいのは22歳くらいといわれています。卵子が老化し、どんどん数が減ってくると、妊よう性(妊娠できる可能性)はみなさんが思っている以上に急激に低くなっていく。どんなに健康に過ごしても、22、23歳を1とするなら、35歳を迎えた頃には半分になっていると考えていただいていいでしょう。 生理があっても、いつの間にか妊娠力ゼロに 生理があるうちは妊娠できると思っている人も多いようですが、閉経する10年前からほとんど妊娠できない状態になります。毎月生理が来ていても知らないうちに妊娠する力はなくなっていきます。卵巣の中に残っている卵子が少なくなっても日常生活で気づくことはできません。なくなる直前でも自分ではわからないんですね。 前述したように、卵子は原始卵胞から成熟卵胞まで半年くらいかかって育っていきます。多くの卵胞が育っていくなか、人間の場合は最終的に1個の成熟卵胞が排卵するようになります。途中で捨てていくのは悪い卵というわけではありません。数を1個にするためだけで、良し悪しに関わらず、残りの卵を捨てていきます。この成熟卵胞が卵胞ホルモン、黄体ホルモン、女性ホルモンをつくり、月経周期をつくりますから、月経は正常に起こってきます。卵巣予備能が悪くなって原始卵胞が極端に少なくなったとしても、半年かかって成熟卵胞へ育つ卵胞があるうちは月経は正常。ですから、生理がおかしくなるなどの症状が出た時には、すでにほとんど妊娠できるような卵がない状態だということです。 赤ちゃんを希望されている方は、このような卵子老化や卵子減少の正しい知識や現実を知って、少しでも妊娠できる可能性が高いうちに妊活や不妊治療を始めていただきたいと思います。 浅田レディースクリニック 浅田 義正先生名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。≫ 浅田レディースクリニック ジネコ妊活セミナー 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧
2016.12.12
コラム 不妊治療
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卵子の真実 妊活セミナーレポート③
2015年8月29日に行われたジネコ 妊活セミナーより 卵子は進化をたどる 人類もいろんな動物も、受精卵が分割し、胎児となっていく初期は同じような姿をしています。私たち一人ひとりの発生は、35億年前から始まった生物の進化の過程をたどって産まれてきています。我々はお母さんのお腹の中では水の中で生きています。卵子は進化をたどっているのです。それは、1866年にエルンスト・ヘッケルが提唱した反復説の「個体発生は系統発生を繰り返す(ある動物の発生の過程は、その動物の進化の過程を繰り返す形で行われる)」ということに他なりません。国立遺伝学研究所の所長さんは、見学する子供たちに必ず言う言葉があるそうです。それは、「自殺してはいけません。その瞬間に35億年間に渡って連綿と受け継がれてきた遺伝子が絶たれてしまいます。あなたが今ここに生きていることは本当に奇跡なのだから、命を大切にしましょう」-。私たちは35億年前から始まったバトンリレーを誰もがしています。バトンリレーだけを目的に生きているわけではありませんが、命のバトンリレーは私たちの大切な役目です。バトンリレーには、テイクオーバーゾーンというバトンを手渡せる範囲があります。またその区間には限りがあります。命の引継ぎには大きな制限があります。テイクオーバーゾーンは個人差があります。それが生殖年齢です。私たちは壮大な宇宙に生まれた奇跡の存在です。不妊治療を通して、貴重な命を大切にし、次世代のためにDNAのバトンを渡していきましょう。 セミナー参加者から寄せられたQ&A Q.40歳以上の受精卵が胚盤胞まで育つ確率は?また胚盤胞移植で成功するにはどんなグレードがあったらよいですか?A.まず、胚盤胞にすると妊娠率が上がると誤解している人が多くいますが、実はそうではありません。胚盤胞まで育てるというのは元気な卵を選ぶということに意義があるのです。つまり、卵がたくさんある中でいい卵をさらに選出するために胚盤胞まで育て、その時点で育たない卵はカットしているわけですから、採卵から考えると胚盤胞移植での妊娠率はむしろ下がっています。とはいえ、20代であれば、10個くらい受精卵があれば6割くらいは胚盤胞まで到達します。凍結できるある程度いいグレードの胚盤胞は4~5割といったところです。これは年齢によってどんどん低くなります。40歳以上になれば胚盤胞になる率は2~3割です。凍結できるグレードとなれば1割くらいです。高齢になってくると、体外培養に対する卵のストレスが強くなって胚盤胞になる率が低くなるのです。しかし、ほとんど胚盤胞にならなかった人の卵を3日目の分割期で移植すればきちんと妊娠率は出ます。ですから、高齢になればなるほど胚盤胞移植にこだわってはいけないと思います。長い間、培養すればするほど卵に負担がかかります。ましては培養の技術が悪ければ、余計卵を悪くしてダメにしてしまいます。また、胚盤胞は膨らんだり縮んだりしているので、グレード判定はあまり重要ではありません。当院では全例凍結融解胚移植になっていますので、6日目にできたものでも7日目にできた胚盤胞でも、凍結しておいて5日目の内膜に移植すればちゃんと妊娠率が出ます。新鮮胚移植で、6、7日目の胚盤胞を6,7日目の内膜に戻しても、妊娠しません。そのところはいろんな技術でカバーできるようになっています。 Q.現在40歳。男性不妊があり、顕微授精に進んでいます。よい受精卵を作るために卵子の質を上げるために今からできることを教えてください。A.40歳とか年齢に関わらず、飛び抜けて効果が上がるとは言えませんが、唯一ご自分でできることは血液の循環を良くすることくらいです。女性が排卵するときには視床下部というところから出たホルモンが脳下垂体に行き、脳下垂体からのホルモンが卵巣に行き、卵子を育てます。そしてその間を繋いでいるのが血液の循環です。排卵誘発剤も血液の中で分解される間にどれだけ卵巣を通ったかでその効き目が違います。下肢の静脈は体にかえってくる時には卵巣のすぐ横を通っているので、足の冷たい人は常に卵巣を冷やしていることにもなります。同じ注射を打っても、冷え性を治す、血流を良くすることで少しは効果が上がる可能性はありますが、その効果は極めて限定的です。やはり一番大事なことは、その人の予備能に見合った受精卵をたくさん作ることです。きちんと刺激をして、成熟した卵の数を採ることが妊娠率の向上に繋がります。例えば卵が10個採れて、2個成熟卵だったとしたら、それは成熟率が悪いということになり、妊娠率も悪くなります。10個取れたら8個くらいは成熟卵が採れるくらいの成熟率にこだわることが大切です。卵胞の大きさだけではなくて、なかのホルモン構成などもきちんと見て、一番いい時期に採卵して成熟率のいい卵を採ることが妊娠率の向上に繋がると思います。 Q.卵管が両方詰まっていると言われました。卵管造影検査や通水でもやはり通りが悪いようです。妊娠は難しいのでしょうか。治す方法はありますか?A.卵管というのは精子が通っていって、卵子と出会う場所です。精子が通るには、5ミクロンあれば大丈夫。つまりかなり細くても問題ありません。しかし、受精卵になった後、その受精卵が戻ってくる際には、120ミクロン(0.1mm)くらいなければ詰まってしまい、そこで止まってしまえば子宮外妊娠という可能性もあります。また、卵管では、精子は自分で通っていきますが、受精卵は卵管上皮の細かい毛のようなものの運動で運ばれていきます。ですから、卵管が詰まる、なにか炎症があるというのは、細くなっているとかそういうことだけではなくて卵管上皮の繊毛運動が障害されているという可能性も考えられます。つまり卵管は通ればいいというわけではありません。通すだけの治療法はありますが、それで妊娠率が上がるというわけではありません。体外受精ができる今となっては、その治療もそれほど有効ではないと思われます。 ≫ 卵子の真実 その1 ≫ 卵子の真実 その2 ■ 妊活セミナーレポート ■ 男性の立場から伝える妊活で幸せ夫婦になる方法 後悔しない不妊治療 病態によっては「手術」も妊娠率を上げる重要な選択肢に 卵子の質に影響する要素と改善法 浅田レディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO ジネコ妊活セミナー 2015年8月29日に行われたジネコ 妊活セミナーより 卵子は進化をたどる 人類もいろんな動物も、受精卵が分割し、胎児となっていく初期は同じような姿をしています。私たち一人ひとりの発生は、35億年前から始まった生物の進化の過程をたどって産まれてきています。我々はお母さんのお腹の中では水の中で生きています。卵子は進化をたどっているのです。それは、1866年にエルンスト・ヘッケルが提唱した反復説の「個体発生は系統発生を繰り返す(ある動物の発生の過程は、その動物の進化の過程を繰り返す形で行われる)」ということに他なりません。国立遺伝学研究所の所長さんは、見学する子供たちに必ず言う言葉があるそうです。それは、「自殺してはいけません。その瞬間に35億年間に渡って連綿と受け継がれてきた遺伝子が絶たれてしまいます。あなたが今ここに生きていることは本当に奇跡なのだから、命を大切にしましょう」-。私たちは35億年前から始まったバトンリレーを誰もがしています。バトンリレーだけを目的に生きているわけではありませんが、命のバトンリレーは私たちの大切な役目です。バトンリレーには、テイクオーバーゾーンというバトンを手渡せる範囲があります。またその区間には限りがあります。命の引継ぎには大きな制限があります。テイクオーバーゾーンは個人差があります。それが生殖年齢です。私たちは壮大な宇宙に生まれた奇跡の存在です。不妊治療を通して、貴重な命を大切にし、次世代のためにDNAのバトンを渡していきましょう。 セミナー参加者から寄せられたQ&A Q.40歳以上の受精卵が胚盤胞まで育つ確率は?また胚盤胞移植で成功するにはどんなグレードがあったらよいですか?A.まず、胚盤胞にすると妊娠率が上がると誤解している人が多くいますが、実はそうではありません。胚盤胞まで育てるというのは元気な卵を選ぶということに意義があるのです。つまり、卵がたくさんある中でいい卵をさらに選出するために胚盤胞まで育て、その時点で育たない卵はカットしているわけですから、採卵から考えると胚盤胞移植での妊娠率はむしろ下がっています。とはいえ、20代であれば、10個くらい受精卵があれば6割くらいは胚盤胞まで到達します。凍結できるある程度いいグレードの胚盤胞は4~5割といったところです。これは年齢によってどんどん低くなります。40歳以上になれば胚盤胞になる率は2~3割です。凍結できるグレードとなれば1割くらいです。高齢になってくると、体外培養に対する卵のストレスが強くなって胚盤胞になる率が低くなるのです。しかし、ほとんど胚盤胞にならなかった人の卵を3日目の分割期で移植すればきちんと妊娠率は出ます。ですから、高齢になればなるほど胚盤胞移植にこだわってはいけないと思います。長い間、培養すればするほど卵に負担がかかります。ましては培養の技術が悪ければ、余計卵を悪くしてダメにしてしまいます。また、胚盤胞は膨らんだり縮んだりしているので、グレード判定はあまり重要ではありません。当院では全例凍結融解胚移植になっていますので、6日目にできたものでも7日目にできた胚盤胞でも、凍結しておいて5日目の内膜に移植すればちゃんと妊娠率が出ます。新鮮胚移植で、6、7日目の胚盤胞を6,7日目の内膜に戻しても、妊娠しません。そのところはいろんな技術でカバーできるようになっています。 Q.現在40歳。男性不妊があり、顕微授精に進んでいます。よい受精卵を作るために卵子の質を上げるために今からできることを教えてください。A.40歳とか年齢に関わらず、飛び抜けて効果が上がるとは言えませんが、唯一ご自分でできることは血液の循環を良くすることくらいです。女性が排卵するときには視床下部というところから出たホルモンが脳下垂体に行き、脳下垂体からのホルモンが卵巣に行き、卵子を育てます。そしてその間を繋いでいるのが血液の循環です。排卵誘発剤も血液の中で分解される間にどれだけ卵巣を通ったかでその効き目が違います。下肢の静脈は体にかえってくる時には卵巣のすぐ横を通っているので、足の冷たい人は常に卵巣を冷やしていることにもなります。同じ注射を打っても、冷え性を治す、血流を良くすることで少しは効果が上がる可能性はありますが、その効果は極めて限定的です。やはり一番大事なことは、その人の予備能に見合った受精卵をたくさん作ることです。きちんと刺激をして、成熟した卵の数を採ることが妊娠率の向上に繋がります。例えば卵が10個採れて、2個成熟卵だったとしたら、それは成熟率が悪いということになり、妊娠率も悪くなります。10個取れたら8個くらいは成熟卵が採れるくらいの成熟率にこだわることが大切です。卵胞の大きさだけではなくて、なかのホルモン構成などもきちんと見て、一番いい時期に採卵して成熟率のいい卵を採ることが妊娠率の向上に繋がると思います。 Q.卵管が両方詰まっていると言われました。卵管造影検査や通水でもやはり通りが悪いようです。妊娠は難しいのでしょうか。治す方法はありますか?A.卵管というのは精子が通っていって、卵子と出会う場所です。精子が通るには、5ミクロンあれば大丈夫。つまりかなり細くても問題ありません。しかし、受精卵になった後、その受精卵が戻ってくる際には、120ミクロン(0.1mm)くらいなければ詰まってしまい、そこで止まってしまえば子宮外妊娠という可能性もあります。また、卵管では、精子は自分で通っていきますが、受精卵は卵管上皮の細かい毛のようなものの運動で運ばれていきます。ですから、卵管が詰まる、なにか炎症があるというのは、細くなっているとかそういうことだけではなくて卵管上皮の繊毛運動が障害されているという可能性も考えられます。つまり卵管は通ればいいというわけではありません。通すだけの治療法はありますが、それで妊娠率が上がるというわけではありません。体外受精ができる今となっては、その治療もそれほど有効ではないと思われます。 ≫ 卵子の真実 その1 ≫ 卵子の真実 その2 ■ 妊活セミナーレポート ■ 男性の立場から伝える妊活で幸せ夫婦になる方法 後悔しない不妊治療 病態によっては「手術」も妊娠率を上げる重要な選択肢に 卵子の質に影響する要素と改善法 浅田レディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO ジネコ妊活セミナー
2015.12.15
コラム 不妊治療
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卵子の真実 妊活セミナーレポート②
2015年8月29日に行われたジネコ 妊活セミナーより 不妊症や不妊治療における、いくつかの勘違い 体外受精や顕微授精は変な子が産まれる確率が高い? いいえ。現在、体外受精で産まれた子供は世界中で5~600万人いると言われていますが、特有な障害があるという統計はありません。不妊治療で遺伝子操作は一切行われません。体外受精や自然妊娠に関わらず、遺伝子は勝手に組みかえられ、その中で染色体異常が起きたり、障害を持った子供が産まれたりするのです。 生活習慣は不妊に影響する? いいえ。逆に、妊娠に悪いと言われることを行うことで避妊できますか? ストレスは不妊を招く? 自律神経の中枢と排卵の一番上位の視床下部の中枢というのは非常に近いところにあるため、自然排卵には影響します。しかし、不妊治療においては、視床下部ではなく下垂体以下のホルモンをコントロールするため、ストレスは成績に影響しません。 不妊原因の半分は男性因子? いいえ、それはすでに古い考えです。もともと不妊治療とは多くは男性不妊を治療をしているものです。顕微授精も本来は男性不妊の治療法です。女性に対する負担が大きいということや男女平等という観点から、男性不妊という言葉が盛んに言われるようになっていますが、精子の数や運動率を改善するエビデンスのある治療法は、今のところ全くありません。現在の高度生殖医療では受精卵を作るところまでは可能です。しかし、受精卵が育つかどうかは、カップルの遺伝子の組み合わせ、遺伝子の偶然の組み換え、遺伝子発現などの問題になります。従って、男性不妊、女性不妊と分けて説明すること自体が、極めて不自然です。これまで私が妊娠率、出生率に関わる因子を調べてきた上でも、男性の年齢、精子の濃度、運動率、射出精子か精巣精子かなど極めて関与が薄く、ほとんど影響がないといえます。 不妊症と不育症は違う? 卵の大きな異常があれば妊娠反応が出る前にダメになります。その異常が少なければ、妊娠反応が出た後にダメになります。もっと異常が少なければ死産になったり障害を持って産まれてくることがあります。そういう意味で、不妊症と不育症はダメになる時期が違うだけで同じことだといえます。不育症だけに有効な検査や治療はほとんどありません。つまり、重要なのは卵が育つかどうかであって、不育症に対するエビデンスのある治療法はありません。主役はあくまでも卵なのです。 いい卵を移植したのに妊娠できないの着床障害? そうではありません。多くの受精卵は、胚盤胞まで育った次の日くらいにはすでに着床しているものです。着床してから育つかどうかが重要です。そして受精卵それ自体の見た目からは無事に育つかどうかが分からないから移植するのです。見た目が悪い卵というのは、染色体異常の率も高いですから、いい卵を戻すのは当然です。 子宮環境は内膜を厚くすることが一番重要? 受精卵には、子宮内膜の厚みではなく、子宮内の低酸素環境が一番重要です。当院の培養器では1人の受精卵ごとに完全個別培養を行っています。その培養器の中は酸素5%、CO2 6%、窒素89%で保たれています。また、子宮内膜が厚くならない人には、抗酸化剤を投与して移植することもあります。 ≫ 卵子の真実 その1 ≫ 卵子の真実 その3 ■ 妊活セミナーレポート ■ 男性の立場から伝える妊活で幸せ夫婦になる方法 後悔しない不妊治療 病態によっては「手術」も妊娠率を上げる重要な選択肢に 卵子の質に影響する要素と改善法 浅田レディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO ジネコ妊活セミナー 2015年8月29日に行われたジネコ 妊活セミナーより 不妊症や不妊治療における、いくつかの勘違い 体外受精や顕微授精は変な子が産まれる確率が高い? いいえ。現在、体外受精で産まれた子供は世界中で5~600万人いると言われていますが、特有な障害があるという統計はありません。不妊治療で遺伝子操作は一切行われません。体外受精や自然妊娠に関わらず、遺伝子は勝手に組みかえられ、その中で染色体異常が起きたり、障害を持った子供が産まれたりするのです。 生活習慣は不妊に影響する? いいえ。逆に、妊娠に悪いと言われることを行うことで避妊できますか? ストレスは不妊を招く? 自律神経の中枢と排卵の一番上位の視床下部の中枢というのは非常に近いところにあるため、自然排卵には影響します。しかし、不妊治療においては、視床下部ではなく下垂体以下のホルモンをコントロールするため、ストレスは成績に影響しません。 不妊原因の半分は男性因子? いいえ、それはすでに古い考えです。もともと不妊治療とは多くは男性不妊を治療をしているものです。顕微授精も本来は男性不妊の治療法です。女性に対する負担が大きいということや男女平等という観点から、男性不妊という言葉が盛んに言われるようになっていますが、精子の数や運動率を改善するエビデンスのある治療法は、今のところ全くありません。現在の高度生殖医療では受精卵を作るところまでは可能です。しかし、受精卵が育つかどうかは、カップルの遺伝子の組み合わせ、遺伝子の偶然の組み換え、遺伝子発現などの問題になります。従って、男性不妊、女性不妊と分けて説明すること自体が、極めて不自然です。これまで私が妊娠率、出生率に関わる因子を調べてきた上でも、男性の年齢、精子の濃度、運動率、射出精子か精巣精子かなど極めて関与が薄く、ほとんど影響がないといえます。 不妊症と不育症は違う? 卵の大きな異常があれば妊娠反応が出る前にダメになります。その異常が少なければ、妊娠反応が出た後にダメになります。もっと異常が少なければ死産になったり障害を持って産まれてくることがあります。そういう意味で、不妊症と不育症はダメになる時期が違うだけで同じことだといえます。不育症だけに有効な検査や治療はほとんどありません。つまり、重要なのは卵が育つかどうかであって、不育症に対するエビデンスのある治療法はありません。主役はあくまでも卵なのです。 いい卵を移植したのに妊娠できないの着床障害? そうではありません。多くの受精卵は、胚盤胞まで育った次の日くらいにはすでに着床しているものです。着床してから育つかどうかが重要です。そして受精卵それ自体の見た目からは無事に育つかどうかが分からないから移植するのです。見た目が悪い卵というのは、染色体異常の率も高いですから、いい卵を戻すのは当然です。 子宮環境は内膜を厚くすることが一番重要? 受精卵には、子宮内膜の厚みではなく、子宮内の低酸素環境が一番重要です。当院の培養器では1人の受精卵ごとに完全個別培養を行っています。その培養器の中は酸素5%、CO2 6%、窒素89%で保たれています。また、子宮内膜が厚くならない人には、抗酸化剤を投与して移植することもあります。 ≫ 卵子の真実 その1 ≫ 卵子の真実 その3 ■ 妊活セミナーレポート ■ 男性の立場から伝える妊活で幸せ夫婦になる方法 後悔しない不妊治療 病態によっては「手術」も妊娠率を上げる重要な選択肢に 卵子の質に影響する要素と改善法 浅田レディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO ジネコ妊活セミナー
2015.12.12
コラム 不妊治療
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高齢不妊|不妊の原因
女性には「妊娠適齢期」があるって知っていましたか?結婚から妊娠・出産の時期、子供は何人欲しいかなど人によっても年齢によっても、皆さま一人ひとりが違う人生の計画。誰もがあたりまえに描く夢を叶えるために、まずは自分の体の本質を知りましょう。 浅田レディースクリニック 浅田 義正先生名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。浅田先生は国内でAMHをもとに治療方針を決めた先駆者。≫ 浅田レディースクリニック 高齢不妊 ~人には「妊娠適齢期」がある~ 〝生理があるから妊娠できる〟は勘違い 現在、「結婚適齢期」や「高年初産」という言葉は死語になっていますが、実は妊娠には「妊娠適齢期」があります。女性のライフスタイルや人生設計が変わり、結婚適齢期がなくなっても、「妊娠適齢期」や「分娩適齢期」には、まったく変化がありません。平均寿命に関係なく、女性の生殖年齢は大昔からまったく変わっていないのです。たとえば、生理があるうちは妊娠できると思っている人がとても多いのですが、とんでもない勘違いです。だいたい閉経の10年前から妊娠できなくなります。排卵がなくなった後も、卵の周囲の細胞が10年ほどホルモンをつくり続けるので、それで生理があるだけです。肝心の健全な卵はなくなっているので、妊娠には至りません。だいたい51~52歳で閉経しますから、41~42歳が妊娠の限界です。もちろん、閉経も人によって10年ほどの幅があるので、妊娠可能の上限にも幅があります。それでも、35~45歳くらいの間に、健全な卵としての消費期限というか、限界が訪れます。女性の平均寿命が86歳になろうが、40歳の人が30歳の若さに見えようが、閉経の年齢は延びていきません。卵巣の寿命も大昔から変わっていません。江戸時代なら、女性は閉経するあたりで死んでいました。20年前なら35歳以上でお産する人は高齢出産ということで心配し、それなりの姿勢で対処したのが、今は35歳でも心配せず、40代でも普通に妊娠・出産できるという錯覚をしています。40代で赤ちゃんができたという有名人の例も珍しくありませんが、たいていはそれなりの努力や治療をしているはずです。医学はとても進歩して、体外受精や顕微授精という高度生殖医療技術も進み、出産までのプロセスでの危険を防ぐ医療も進化しています。その一方で、勘違いと錯覚のために、みすみす赤ちゃんを持つチャンスを逃している人が増えています。妊娠できた人でも、もうちょっと早く来院してくれていたらもっと楽に妊娠できたのに、という人も非常に多いのです。とてももったいないことです。生殖年齢=妊娠適齢期を延ばすことは、ドクターにも現代の医学にも超えられない壁です。その厳しいともいえる事実を知ることから、すべては始まるのです。 本質を知って早く目的地へ 不妊症の人は7~10人に1人といわれています。本人の問題、家族の関係、社会的な要因などいろんなことで不妊症は成り立っているのですが、一番大きな原因として晩婚化、晩産化があります。1985年では7割近くが20代で出産をしていました。今では、20代が3割から4割ぐらいになり、30代、40代での出産が増加しています。どなたもそうなのですが、好き好んで晩婚化、晩産化してきたわけではないはずです。早く結婚した方がいいかなと思いつつ、遅れてきてしまった、周りをみてもまだ結婚していないのでまだ大丈夫と思ってきてしまった人が多いのです。10年前だったら簡単に妊娠できた人が、今非常に苦労して妊娠しています。長い不妊治療で経済的に疲労したり、いろいろストレスを感じたり、体力的にも出産・子育ての限界を感じる前の、妊娠しやすい時に妊娠して欲しいと思います。どんなに医学が進み、生殖医療が進んでも、医学でできること、できないことがあります。今の医学ではどうにもできない事が、妊娠の本質なのです。そのかわり、そこさえ何とかなれば、つまり皆様のお腹の中に、まだ卵子が残ってさえいれば、あとは医学の力で何とかできます。精子がどうであれ、子宮や卵管に問題があれ、ほとんどのことがクリアできます。妊娠の本質をきちんと理解すれば、より早く目的地に着くための手段を迷わずに選ぶ事ができるのです。 女性の平均寿命と閉経年齢の変化 平均寿命(余命)の延長 出典:Asada with Jineko.net 【PR】不妊でお悩みなら。田村秀子産婦人科医院 ■ あわせて読みたい ■ 高齢でも胚盤胞まで育つでしょうか? 良好胚でも成功しないのは高齢で「着床の窓」がずれているから? 不妊治療歴10年。最後に治療をするならどんな方法がありますか? 40代の不妊治療~知っておきたい!40代の不妊治療の心得は?~ 浅田レディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO 女性には「妊娠適齢期」があるって知っていましたか?結婚から妊娠・出産の時期、子供は何人欲しいかなど人によっても年齢によっても、皆さま一人ひとりが違う人生の計画。誰もがあたりまえに描く夢を叶えるために、まずは自分の体の本質を知りましょう。 浅田レディースクリニック 浅田 義正先生名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。浅田先生は国内でAMHをもとに治療方針を決めた先駆者。≫ 浅田レディースクリニック 高齢不妊 ~人には「妊娠適齢期」がある~ 〝生理があるから妊娠できる〟は勘違い 現在、「結婚適齢期」や「高年初産」という言葉は死語になっていますが、実は妊娠には「妊娠適齢期」があります。女性のライフスタイルや人生設計が変わり、結婚適齢期がなくなっても、「妊娠適齢期」や「分娩適齢期」には、まったく変化がありません。平均寿命に関係なく、女性の生殖年齢は大昔からまったく変わっていないのです。たとえば、生理があるうちは妊娠できると思っている人がとても多いのですが、とんでもない勘違いです。だいたい閉経の10年前から妊娠できなくなります。排卵がなくなった後も、卵の周囲の細胞が10年ほどホルモンをつくり続けるので、それで生理があるだけです。肝心の健全な卵はなくなっているので、妊娠には至りません。だいたい51~52歳で閉経しますから、41~42歳が妊娠の限界です。もちろん、閉経も人によって10年ほどの幅があるので、妊娠可能の上限にも幅があります。それでも、35~45歳くらいの間に、健全な卵としての消費期限というか、限界が訪れます。女性の平均寿命が86歳になろうが、40歳の人が30歳の若さに見えようが、閉経の年齢は延びていきません。卵巣の寿命も大昔から変わっていません。江戸時代なら、女性は閉経するあたりで死んでいました。20年前なら35歳以上でお産する人は高齢出産ということで心配し、それなりの姿勢で対処したのが、今は35歳でも心配せず、40代でも普通に妊娠・出産できるという錯覚をしています。40代で赤ちゃんができたという有名人の例も珍しくありませんが、たいていはそれなりの努力や治療をしているはずです。医学はとても進歩して、体外受精や顕微授精という高度生殖医療技術も進み、出産までのプロセスでの危険を防ぐ医療も進化しています。その一方で、勘違いと錯覚のために、みすみす赤ちゃんを持つチャンスを逃している人が増えています。妊娠できた人でも、もうちょっと早く来院してくれていたらもっと楽に妊娠できたのに、という人も非常に多いのです。とてももったいないことです。生殖年齢=妊娠適齢期を延ばすことは、ドクターにも現代の医学にも超えられない壁です。その厳しいともいえる事実を知ることから、すべては始まるのです。 本質を知って早く目的地へ 不妊症の人は7~10人に1人といわれています。本人の問題、家族の関係、社会的な要因などいろんなことで不妊症は成り立っているのですが、一番大きな原因として晩婚化、晩産化があります。1985年では7割近くが20代で出産をしていました。今では、20代が3割から4割ぐらいになり、30代、40代での出産が増加しています。どなたもそうなのですが、好き好んで晩婚化、晩産化してきたわけではないはずです。早く結婚した方がいいかなと思いつつ、遅れてきてしまった、周りをみてもまだ結婚していないのでまだ大丈夫と思ってきてしまった人が多いのです。10年前だったら簡単に妊娠できた人が、今非常に苦労して妊娠しています。長い不妊治療で経済的に疲労したり、いろいろストレスを感じたり、体力的にも出産・子育ての限界を感じる前の、妊娠しやすい時に妊娠して欲しいと思います。どんなに医学が進み、生殖医療が進んでも、医学でできること、できないことがあります。今の医学ではどうにもできない事が、妊娠の本質なのです。そのかわり、そこさえ何とかなれば、つまり皆様のお腹の中に、まだ卵子が残ってさえいれば、あとは医学の力で何とかできます。精子がどうであれ、子宮や卵管に問題があれ、ほとんどのことがクリアできます。妊娠の本質をきちんと理解すれば、より早く目的地に着くための手段を迷わずに選ぶ事ができるのです。 女性の平均寿命と閉経年齢の変化 平均寿命(余命)の延長 出典:Asada with Jineko.net 【PR】不妊でお悩みなら。田村秀子産婦人科医院 ■ あわせて読みたい ■ 高齢でも胚盤胞まで育つでしょうか? 良好胚でも成功しないのは高齢で「着床の窓」がずれているから? 不妊治療歴10年。最後に治療をするならどんな方法がありますか? 40代の不妊治療~知っておきたい!40代の不妊治療の心得は?~ 浅田レディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.10.28
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AMH|不妊検査
不妊症の原因を見つけ、治療につなげるには、まず体の状態を把握することが不可欠です。そのために、初診から約1カ月をかけて、一般的な検査をします。同じ血液検査でも目的が異なる場合もありますから、何のための検査なのかを理解しておくと、治療への理解も深まるでしょう。また、一般的な検査の後、必要があれば精密検査をする場合もあります。 浅田レディースクリニック 浅田 義正先生名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。浅田先生は国内でAMHをもとに治療方針を決めた先駆者。「2008 年にAMH 測定を始め、いろいろ測定法も変わってきましたが、メーカーもようやくAMHの普及に力を入れてきています。やっとここまで来たかと感無量です」。≫ 浅田レディースクリニック AMH(アンチミューラリアンホルモン) 卵巣の予備能を知り治療の可能性を探る検査 いくつかのホルモン検査の中でも近年注目されているのが、アンチミューラリアンホルモン(AMH)を測る検査です。AMHは抗ミュラー管ホルモンともいい、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンです。AMH値は、卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているかを反映すると考えられています。男性の場合、精子は睾丸でつくられていますので、いつも精子は新しく、いくつになっても精子はつくられ、年齢の影響をほとんど受けません。一方、卵巣では卵子はつくられず、生まれる前につくられた卵子が保存されているだけです。したがって生きた卵子はどんどん消滅して数が減少し、年齢とともに卵子自体も年をとり古くなります。卵子の質は、その古さ、年齢の影響を直接受け、卵子の数も年齢とともにどんどん減っていきます。その数は年齢以上に個人差が大きく、いざ子供が欲しいと思った時に卵子がないということも起こり得ます。卵巣の予備能(卵巣内に残っている卵の在庫の目安)は今までのホルモン検査ではよくわかりませんでした。AMHはその最も良い指標であり、また他のホルモンと違い、生理周期に関係なくいつ測ってもよい血液検査です。 「私はいくつだから大丈夫」ではなく、「私のAMHはいくつあるから大丈夫」というように、正しい自分のAMH、卵巣予備能を知ってほしいと思います。みかけは若くても、卵巣の卵子が非常に早く減ってしまい、20代、30代で閉経する女性は多く見られます。また、何度も言うように寿命がどんどん長くなっても、女性の生殖年齢は昔と変わりません。卵巣予備能を知ることは、不妊治療がいつまでできるかの目安ともなります。AMHによって出る結果は、妊娠できるかどうかではなく、どんな治療をすれば、残っている卵を有効に活用できるのかの判断に役立ちます。まずはAMHをチェックしてから、ご自分の人生設計を立てることをお勧めします。 年齢と卵巣予備能は必ずしも比例しない AMH(アンチミューラリアンホルモン)とは、卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているか(卵巣予備能)を反映する数値です。いくら年齢が若くても、AMH値が低いケースは意外にあります。それだけに、不妊治療を始める際にはまずAMHを測ることが大切です。図は、年齢とAMH値の相互関係の表ですが、その相関の範囲によって選択する基本的な排卵誘発の方法(調節卵巣刺激法=体外受精において卵胞の発育を見ながら排卵誘発剤を計画的に使用する方法)と、治療の目安を示しています。基本的には、年齢が高くAMH値が低ければ、治療自体ができる時間は少なく、注射を打っても十分効かないため、排卵の誘発も簡易刺激法という薬を服用しての穏やかな方法しかできなくなります。一方で、年齢が20代でもAMH値が1ng/ml以下の方も同様です。この場合は早発閉経といって、年齢が若いにもかかわらず、卵巣機能は実年齢以上に衰えていて、最悪の場合は20代でも30代でも閉経が起こってしまうことがあるというケースです。では、年齢が若くAMH値が高ければ高いほど良いかというとそうともいえません。図が示すようにその相関を示す範囲では、排卵が阻害されて卵巣内に多数の卵胞がたまり、月経異常や不妊原因となる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が疑われます。この場合は、卵巣を過剰に刺激しないように刺激法を工夫し、採れた卵は一旦凍結して保存し、卵巣の状態を整えてからしか受精卵を戻すことができなくなります。このように年齢とAMH値の相関によって、不妊治療の方法も治療に費やせる時間も大きく変わります。そのことを正しく理解した上で、実際の患者さまのケースをご参照いただければと思います。 年齢とAMH値で見る治療の目安 出典:Asada with Jineko.net ■ あわせて読みたい ■ AMH値が低いため卵巣刺激の薬の種類や量が不安です。刺激しすぎのレベルとは? 自力では生理が来ません。FSHが高値でAMHが0。妊娠するための治療法は? AMH値が低い場合、排卵誘発はどのような方法がいいのですか? 浅田レディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO 不妊症の原因を見つけ、治療につなげるには、まず体の状態を把握することが不可欠です。そのために、初診から約1カ月をかけて、一般的な検査をします。同じ血液検査でも目的が異なる場合もありますから、何のための検査なのかを理解しておくと、治療への理解も深まるでしょう。また、一般的な検査の後、必要があれば精密検査をする場合もあります。 浅田レディースクリニック 浅田 義正先生名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。2004年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。浅田先生は国内でAMHをもとに治療方針を決めた先駆者。「2008 年にAMH 測定を始め、いろいろ測定法も変わってきましたが、メーカーもようやくAMHの普及に力を入れてきています。やっとここまで来たかと感無量です」。≫ 浅田レディースクリニック AMH(アンチミューラリアンホルモン) 卵巣の予備能を知り治療の可能性を探る検査 いくつかのホルモン検査の中でも近年注目されているのが、アンチミューラリアンホルモン(AMH)を測る検査です。AMHは抗ミュラー管ホルモンともいい、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンです。AMH値は、卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているかを反映すると考えられています。男性の場合、精子は睾丸でつくられていますので、いつも精子は新しく、いくつになっても精子はつくられ、年齢の影響をほとんど受けません。一方、卵巣では卵子はつくられず、生まれる前につくられた卵子が保存されているだけです。したがって生きた卵子はどんどん消滅して数が減少し、年齢とともに卵子自体も年をとり古くなります。卵子の質は、その古さ、年齢の影響を直接受け、卵子の数も年齢とともにどんどん減っていきます。その数は年齢以上に個人差が大きく、いざ子供が欲しいと思った時に卵子がないということも起こり得ます。卵巣の予備能(卵巣内に残っている卵の在庫の目安)は今までのホルモン検査ではよくわかりませんでした。AMHはその最も良い指標であり、また他のホルモンと違い、生理周期に関係なくいつ測ってもよい血液検査です。 「私はいくつだから大丈夫」ではなく、「私のAMHはいくつあるから大丈夫」というように、正しい自分のAMH、卵巣予備能を知ってほしいと思います。みかけは若くても、卵巣の卵子が非常に早く減ってしまい、20代、30代で閉経する女性は多く見られます。また、何度も言うように寿命がどんどん長くなっても、女性の生殖年齢は昔と変わりません。卵巣予備能を知ることは、不妊治療がいつまでできるかの目安ともなります。AMHによって出る結果は、妊娠できるかどうかではなく、どんな治療をすれば、残っている卵を有効に活用できるのかの判断に役立ちます。まずはAMHをチェックしてから、ご自分の人生設計を立てることをお勧めします。 年齢と卵巣予備能は必ずしも比例しない AMH(アンチミューラリアンホルモン)とは、卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているか(卵巣予備能)を反映する数値です。いくら年齢が若くても、AMH値が低いケースは意外にあります。それだけに、不妊治療を始める際にはまずAMHを測ることが大切です。図は、年齢とAMH値の相互関係の表ですが、その相関の範囲によって選択する基本的な排卵誘発の方法(調節卵巣刺激法=体外受精において卵胞の発育を見ながら排卵誘発剤を計画的に使用する方法)と、治療の目安を示しています。基本的には、年齢が高くAMH値が低ければ、治療自体ができる時間は少なく、注射を打っても十分効かないため、排卵の誘発も簡易刺激法という薬を服用しての穏やかな方法しかできなくなります。一方で、年齢が20代でもAMH値が1ng/ml以下の方も同様です。この場合は早発閉経といって、年齢が若いにもかかわらず、卵巣機能は実年齢以上に衰えていて、最悪の場合は20代でも30代でも閉経が起こってしまうことがあるというケースです。では、年齢が若くAMH値が高ければ高いほど良いかというとそうともいえません。図が示すようにその相関を示す範囲では、排卵が阻害されて卵巣内に多数の卵胞がたまり、月経異常や不妊原因となる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が疑われます。この場合は、卵巣を過剰に刺激しないように刺激法を工夫し、採れた卵は一旦凍結して保存し、卵巣の状態を整えてからしか受精卵を戻すことができなくなります。このように年齢とAMH値の相関によって、不妊治療の方法も治療に費やせる時間も大きく変わります。そのことを正しく理解した上で、実際の患者さまのケースをご参照いただければと思います。 年齢とAMH値で見る治療の目安 出典:Asada with Jineko.net ■ あわせて読みたい ■ AMH値が低いため卵巣刺激の薬の種類や量が不安です。刺激しすぎのレベルとは? 自力では生理が来ません。FSHが高値でAMHが0。妊娠するための治療法は? AMH値が低い場合、排卵誘発はどのような方法がいいのですか? 浅田レディースクリニック 女性のための健康生活マガジン JINEKO
2015.10.23
コラム 不妊治療