田村秀子婦人科医院 ジネコ取材済
京都府京都市中京区御池高倉東入ル御所八幡町229
婦人科 / 不妊治療
田村秀子婦人科医院
京都府京都市中京区御池高倉東入ル御所八幡町229
壁紙からカーテン、ソファ、鏡などの調度品まで、バラの花をモチーフにしたアイテムであふれるクリニック。女性らしい気持ちになって女性ホルモンがたくさんでるようにという田村秀子先生の想いがこめられています。
我々の目指す治療コンセプトは「ストレスのない治療」と「その人にとって最小限度の治療で妊娠をして頂く」ということです。
10時前可土曜も診療女性医師が診察漢方・鍼灸働きながら通いやすいインターネット予約完全予約制駅近フリーマガジン配布英語対応すべて見る
診療科
婦人科
不妊治療
基本診療時間
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
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9:30~12:30 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||
13:00~15:00 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |||
17:00~19:00 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
休診日
日曜日・祭日
住所・連絡先
京都府京都市中京区御池高倉東入ル御所八幡町229
TEL: 075-213-0523
不妊外来
仕事、家庭、治療を両立させるべく治療計画を立て、なかんずく精神にも追い詰められたような状態にならないよう治療を進めつつ、必要な方に最高級・最先端の治療を提供します。
一般不妊治療・人工授精・体外受精・顕微授精
胚凍結・不育症に対する免疫治療法・漢方療法
男性不妊治療
専任カウンセラーによる不妊カウンセリング
性交障害カウンセリングなど
一般婦人外来
婦人科全般
避妊指導(低用量ピル、避妊リングなど)
美容皮膚科外来
コンピューターによる肌質解析(京都初)
メディカルエステ
超音波導入
メディカルピーリング
フォトフェイシャル
ダイオードレーザー
中周波治療
ドクターズコスメ
大腸内洗浄
更年期外来
うつ対策・ホルモン補充療法・漢方薬治療
アロマセラピー・サプリメント療法
◆アンチエイジング外来
若返り注射・プラセンタ療法
にんにく注射・成長ホルモン療法
総合ホルモン療法
田村秀子 院長プロフィール
田村秀子 院長略歴
当院では最新の機器と技術をもって高度生殖医療を必要とする方には最高級の治療を行うことに尽力をしている一方、そのような治療が必要でない方には出来るだけストレスがなく、「治療をしている」という意識を持って頂かないような診療を目指しています。
不妊治療というと「つらく耐え難い」というイメージを持たれる方が多いですけれど、その心の持ちようが不妊の原因になることが多いのは意外と知られておりません。まずはその人の心の持ち方や考え方、生活習慣などを聞き、その人だけのオーダーメイドな治療の提案をして参ります。その時にもストレスがかからないような工夫をしております。
当院の待合室に大きなポスターがございます。今までの妊娠した患者さんがどのような治療で妊娠したのかを一目でご理解頂けるものです。「田村秀子に会っただけで妊娠した」という項目があるのですが、他の項目と共にこの項目が増えてくることが私共の誇りです。
最先端の不妊治療についてもお話しましょう。不妊治療はこの10年の間に飛躍的な進歩を遂げました。体外受精や顕微授精などの技術により今までに子供が出来なかった人にも授かるチャンスが出来てきました。しかし技術が先に進歩して心の部分がないがしろにされやすいのも事実です。不妊専門をうたう以上、技術が優れているのは当然です。そんな当たり前のことではなく、いかに心の部分のケアをいかに充実した上で最新の治療を行うのか、この部分に私共は注目しています。技術のバックアップがあるからこそ、またそれに自信があるからこそ、それを最大限にいかすための体と心のバランス作りを大切にしたいと思っております。
昭和58年
京都府立医科大学 卒業
平成元年
京都府立医科大学院 修了
京都第一赤十字病院 勤務
平成3年
自ら治療し、妊娠13週での破水を乗り越えてできた双子の出産を機に義父の経営する田村産婦人科医院に勤務して不妊部門を開設
平成7年
京都分院として田村秀子婦人科医院を開設
平成15年8月
現地に発展移転
現在、自院、田村産婦人科医院、京都第二赤十字病院の3施設で不妊外来を担当 専門は、生殖内分泌学 医学博士
田中 紀子 医師プロフィール
田中 紀子 医師略歴
このクリニックに関連する監修記事、取材内容、ユーザー様からの質問と回答など、ジネコが企画した様々なコンテンツの一覧です。
記事一覧
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田村秀子先生の心の玉手箱
男性不妊で子づくりに消極的なご主人と、お姑さんからの孫の催促で板ばさみの状態に。 お姑さんとうまくつき合っていく方法はある? 田村秀子先生にお話を聞きました。
2020.4.28
コラム 不妊治療
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【特集1】あなたは、いくつ答えられる? 答えと解説[田村秀子婦人科医院 田中 紀子 先生]
妊活の一歩はまず知ることから。妊娠・出産について、あなたはどのくらい知識がありますか? 〇×クイズで、妊娠の知識を高めましょう!
2019.12.6
コラム 妊活
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心の玉手箱 vol.36 「これまで非協力的だったご主人から「子どもをつくりたい」と思いがけない言葉が。」
これまで非協力的だったご主人から「子どもをつくりたい」と思いがけない言葉が。子どもをもたない人生を考えていた矢先で、迷われているそうです。秀子先生にお聞きしました。
2019.10.15
コラム 不妊治療
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【特集】不妊検査はなぜ1カ月以上かかるの?
不妊治療を始めるには女性も男性も、いくつかの検査を行いその原因を探ることが必要になります。不妊検査とはどんな内容で、どれくらいの期間が必要なのか、田村秀子婦人科医院の田中先生にお話を伺いました。
2019.6.10
コラム 妊活
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心の玉手箱 vol.35 「2度目の流産でつらい時期に授かり婚した義理の兄嫁から毎日送られてくる姪っ子の写真に落ち込む...」
2度目の流産でつらい時期に授かり婚した義理の兄嫁から毎日送られてくる姪っ子の写真に落ち込みます。 この気持ちをわかってほしい…。秀子先生にお聞きしました。
2019.4.1
コラム 不妊治療
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シート法と採卵を同周期で行うのは可能でしょうか?
限られた診察時間の中では、慌ただしくて治療についての疑問を解消できず診察を終えてしまうということはありませんか。採卵と移植をいつ行うか、疑問を感じながらも聞きそびれてしまったみーさんの質問を、田村秀子婦人科医院の田中紀子先生に伺いました。
2018.12.19
コラム 不妊治療
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心の玉手箱 Vol.34 「もし妊娠したら…、と思うと旅行や家の購入、昇進もガマン。」
もし妊娠したら…、と思うと旅行や家の購入、昇進もガマン。こんな生活を続けている自分にも嫌気がさすこの頃。これからどうしたらいいの?秀子先生にお聞きしました。
2018.8.28
コラム 不妊治療
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4人目が欲しい45歳。基礎体温が不安定ですが漢方以外にできることは?
これまで自然妊娠で3人を出産。4人目が欲しいけど、無排卵の可能性も。45歳でも妊娠・出産は可能? 田中先生に伺いました。
2018.5.23
コラム 不妊治療
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心の玉手箱 Vol.33 「排卵日には夫婦生活をと思えば思うほど、お互いがプレッシャーに悩み心が離れていきそうで不安…」
排卵日には夫婦生活をと思えば思うほど、お互いがプレッシャーに悩み心が離れていきそうで不安…。どんな気持ちで夫と向き合う? 秀子先生に助言をいただきました。 投稿者:ひっしーさん(パート/アルバイト・34歳) 今週病院でタイミング法の指導を受け、排卵検査薬を初めて使用。陽性が出たので当日タイミングを取ろうと思いきや、主人は急な飲み会で帰宅が遅く、それでも何とかトライしたものの主人の気持ちが上がらず失敗しました。翌日もまた飲み会で帰宅、お風呂でのぼせてトライできず…。どう考えても避けられているみたいで、まだ一周期なのに、今後が思いやられます。排卵に合わせてしなきゃと私が焦ると、それが主人にはプレッシャーになるようで、今後普通に性交できるか不安です。どうしたらうまく関係がもてるのでしょうか。 投稿に寄せられたコメント 投稿者:のりさん(主婦・39歳) このような場合、かなり高い確率で、タイミングによる、夫側の「妻だけED」パターンになります。それを避けるためには、手っ取り早く人工授精(AIH)をおすすめします。レスになると、元に戻るのがとっても難しいです。今なら、妊活と夫婦生活は別にできると思いますよ。双方ストレス溜めてからのステップアップもなんだかんだ大変ですよ。 投稿者:ピッピさん(会社員・35歳) 旦那さんの気持ちになってみる。言葉で言ってみる。今日病院で、この日にしなさいって。種馬みたいでいやだって思う人もいるんだって。やっぱりそういうもの? でもさー女性だって、したい時にしているわけじゃないんだよー。しないと絶対にできないからさ、どうしようね~。私は先回りして、あなたも大変だよね、を伝えるようにしていました。もともとの性格はあると思いますが、文句を言われたことはないですし、よし任せろ! みたいな感じでした。夫婦の数だけ、答えはあると思います。ご参考になれば。 ご主人だって 奥さんの気持ちに 応えようとしています飲んで帰ってきても、ご主人は頑張ってくださっている。いいご主人じゃないですか! 「トライしたけどダメだった」と言わずに彼の優しさをわかってあげてほしいです。疲れているから、と背中を向けて寝てしまうご主人も結構多いんですよ。男性からすれば飲み会を途中で抜けるのも大変です。こんな時はいったん引いて相手の気持ちになることがとても大事だし、そのためには女性にもゆとりがないと難しいです。 「タイミングを取る」という言い方も、「今日ここで」と医師が言うのもよくないですね。「今日」といわれると男性はげんなりしてしまうし、女性の卵管も緊張してしまう。 医師が「この辺が排卵だからね」と言うと、患者さんのほうは、「この日」と断定されないと納得できないようです。でも「当日のここ」というのは、あくまでファジーなもの。タイミングを合わせて妊娠しようというのは、不妊治療でも最初の段階の非常に軽症な方たちです。だからこそ「この日」でなくてもよいはずなんです。何周期か見ていると、おりものが少し増えるとか、卵胞が何㎜ぐらいになったら排卵がいつぐらいにあるとかがわかると思います。自分でその排卵日を、ピンポイントで「ここ」というのではなく、「もうそろそろだな」と2~3日前から感じ取るというのはお互いのために絶対必要なこと。患者さんのなかには、医師に「今度はいつタイミングを取ったらいいですか?」って聞く他力本願な人が結構います。そうではなく、自分の体を観察して排卵の前兆を感じ取れるようになればいいなと思います。夫婦生活をもつには 相手の事情を思いやる 気持ちのゆとりが必要セックスに関して、女性の多くは受け身です。男性が頑張って腟の中に精子を入れるのを女性は待っていればいいけれど、男性はそこまでに気持ちをもっていかなければいけない。女性だって「はい、今から!」と言われてすぐにちゃんと男性を迎え入れるだけの準備ができるわけではありません。男性はもっとそうなのです。それを考えたら、その余裕をご主人にも与えてあげなくちゃね。病院に行っていなくても、「今日」と言われなくても、自分の体の状態を見てそろそろだと思ったら、「ここ2~3日の間に排卵すると思うから、その間に1回か2回頑張ってみない?」と言えば、ご主人のほうも「それなら今日は明日の分まで仕事を頑張って、明日早く帰れるようにするよ」というふうに言えるわけなんです。「排卵日が重たい」と ご主人が思わないよう やさしく誘ってみて「子どもが欲しい」と思った時に女性が陥りやすいのは、セックスを妊娠の手段として捉えすぎてしまうこと。「射精さえしてくれればいい」「ダメなら人工授精もある」と女性が思っても男性は案外ロマンチスト。相手を思う心がないと気持ちはどんどん離れていって、妊活も女性のひとり相撲に終わってしまいます。今の段階では、ご主人にとって人工授精という言葉も重いかも。あなたが重たく思えば思うほど、ご主人にとって排卵日が負担になり逃げたくなってしまうかもしれません。だからご主人を妊活のステージに引っ張り上げたいと思ったら、自分の体のリズムを知り、軽く、やさしく誘ってみることから始めてみませんか。もちろんいざという時のために、ご夫婦で人工授精の勉強もしましょうね。 田村 秀子 先生(田村秀子婦人科医院) 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したことを機に義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊治療部門の現クリニックを開設。双子のお子さんたちが医大を卒業し、京都に帰ってこられるとのことで、ひときわ笑顔の秀子先生。「やっと子どもの授業料から解放されます! でも逆にまた晩ごはん作りが忙しくなりそう(笑)」。≫ 田村秀子婦人科医院出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら
2018.2.26
コラム 不妊治療
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PCOSの排卵誘発法、どんな方法がいいの?
PCOSの排卵誘発法、どんな方法がいいの? 田中 紀子 先生(田村秀子婦人科医院) 相談者:ことことさん(33歳)からの投稿 「PCOSの排卵誘発法について」不妊原因はPCOSと両卵管閉塞です。1人目は1回の採卵、移植で授かりました。2人目に挑戦して3年。採卵を8回していますが、良い受精卵がなかなか育たず、移植は3回です。排卵誘発法は薬と注射を組み合わせていろいろ試しました。PCOSということもあり、刺激は慎重に行ってもらっていました。ですが、なかなか結果が出ないので転院する予定です。転院先の有名な不妊専門クリニックで排卵誘発法を聞いてきました。生理2日目で左右各10個以上の卵胞がありましたが、5日目からFSH150単位を5日間、それからはアンタゴニストと必要であればHMGを追加すると言われました。OHSSを経験しているので、注射が強すぎるのでは? と確認しましたが、低刺激だと卵胞が育たないと言われました。どの排卵誘発法がいいかアドバイスをいただけますか? 治療歴やPCOSの程度により医師や施設の方針はさまざま PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは、月経不順の症状、それに超音波検査で小卵胞が10個以上みられ、血液検査では男性ホルモンが高値または月経中のLH高値かつ正常FSH値を満たすことから診断されます。卵胞の発育に時間がかかり、なかなか排卵できないため、不妊治療では内服薬や注射などの排卵誘発剤を使います。個人差はありますが、排卵誘発剤でも卵胞発育が遅い場合もあり、といって注射を使うと多数の卵胞発育が起こりやすく、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になる可能性が高まります。そのため、排卵誘発剤の種類や量に注意が必要になります。また、体外受精で排卵誘発をしても、卵子そのものはたくさん採取できるけれども、質の良い卵子が育ちにくいこともあります。 ことことさんは、以前の施設で薬と注射を組み合わせた排卵誘発法を試されたそうですが、きっとOHSSに注意しながら、慎重に排卵誘発剤を使っておられたのだと思うので、もしかしたら低刺激法だったのかもしれませんね。 そこで転院先の先生は、これまでの治療歴をみつつ、低刺激の方法で結果が出ていないことから、今までの方法からやり方を変えてみましょうと提案されたのでは。PCOSの程度にも個人差がありますので一様には言えませんが、アンタゴニスト法で注射の内容や量を微調整し、卵巣に適度な刺激を与えることで、成熟した卵子を複数個まとめて採卵できる可能性があります。ただ刺激を強めるとOHSSのリスクが出てくるので、注意は必要です。 PCOSの人にも使いやすいアンタゴニスト法 当院では、アンタゴニスト法、低刺激法、ロング法など、種々の排卵誘発法を用いていますが、その方の年齢、卵巣の機能(AMHやFSHの基礎値、前胞状卵胞数など)、これまでの治療での卵巣の反応の状態、PCOSの方ではOHSSの既往などから総合的に判断し、その方に合ったオーダーメイドの治療を提案しています。さらに他の施設から転院された方には、これまでの治療の内容、排卵誘発の方法、卵巣の反応状態などもお聞きし、参考にさせていただきます。近年は、卵巣機能が少し低下している30代後半以上の方も多く見受けられます。このような方の卵巣刺激には、当院ではアンタゴニスト法を選択することが多いですね。 アンタゴニスト法とは、採卵周期の3〜10日くらいまでFSH製剤やHMG製剤を使い、排卵を抑えるために途中からアンタゴニスト製剤を投与し、その後卵胞の大きさを見て、HCG製剤で卵子を成熟させて採卵する方法です。もともとご本人がもっている卵巣の力にお薬の力をプラスして、卵胞の発育と排卵をコントロールする方法なので、卵巣機能が少し低下している方にも適した方法です。また排卵誘発剤の注射の種類や量を微調整することにより、PCOSの方でも使うことはできます。PCOSの方は内因性のLHが高めなので、LHを含まないFSH製剤を中心に低用量から始めてもいいかも。 OHSSを回避しながら卵巣を適度に刺激する方法も ことことさんが一番心配されているのはOHSSのリスクですね。OHSSとは、排卵誘発剤により卵巣が過剰に刺激されて高エストロゲン状態になり、卵巣が腫れる、腹水がたまる、お腹が張るといった症状が起こります。重症化すると血液が濃縮され、血栓症のリスクも高まります。通常はHCG製剤の投与によって出現します。また同一周期に妊娠すると、特に重症化します。 採卵周期の場合、受精卵をすべて凍結し、採卵周期とは異なる別の周期に凍結融解胚移植をすることによって、重症化を回避することができます。また最近では、採卵前のHCGの代わりにGnRHアゴニストの使用や、採卵後に高プロラクチン血症の薬であるカベルゴリンの服用もOHSSのリスクを下げる効果が期待できます。 またアンタゴニスト法以外にも、内服の排卵誘発剤と注射を組み合わせて卵子をしっかり育てて採卵する方法もあります。クロミフェン以外の内服薬には、アロマターゼ阻害剤(レトロゾール)があります。レトロゾールはエストロゲンの過剰な分泌を抑えながら卵巣を刺激するのでOHSSの予防効果を示す報告もありますが、アンタゴニスト法と同様、卵巣の反応をみながら注射を微調整することは必要です。 あくまでもことことさんご本人の状態によりますが、OHSSのリスクを回避するような方法も取り入れながら、前回より少し強めの刺激法に挑戦されてもいいのかなと思いますね。 アンタゴニスト法を基準に状態に合わせてお薬の量などを微調整 どの排卵誘発法を選択するかは、ご本人の状態はもちろんのこと、治療歴、施設の方針やドクターの考え方によってそれぞれ異なります。卵巣機能が極端に低下している場合は別ですが、個人的にはアンタゴニスト法を基準にし、そのなかでお一人おひとりに合ったお薬の量を微調整しながら慎重に反応を見ていきます。それで結果が出ない場合は、低刺激やごく稀に刺激法(ロング法)に変えることもあります。 排卵誘発剤HMG/FSH製剤とは?! ●どんな排卵誘発方法で使用するの?体外受精で一度に複数の卵子を採卵する時に用いられます。ホルモン(FSHとLH)の含有量に違いがあり、ご本人の状態によって選択されます。 ●メリット、デメリットは?HMG製剤、FSH製剤は人の尿由来のため、精製方法やロットにより成分に少しバラつきがあります。リコンビナント製剤は遺伝子組み換えによって製造されているため、FSHとLHの混在がなく品質は安定していますが、費用は高めです。 ●使用されている製品例FSH製剤(ゴナピュール®、フォリルモンP®など)、HMG製剤(HMGフェリング®、HMGフジ®、HMGテイゾー®など)、リコンビナントFSH製剤(フォリスチム®、ゴナールエフ®) 田中先生より まとめ OHSSのリスクを回避しつつ前回より少し強めの刺激法もいいと思います [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 田中 紀子 先生(田村秀子婦人科医院) 京都府立医科大学医学部大学院修了。医学博士。2年間のアメリカ留学、扇町ARTレディースクリニック勤務を経て、2008 年3月より「田村秀子婦人科医院」勤務。生殖医療の現場に長年携わった経験から、近年は女性の心と体の健康をサポートする女性医療への関心が高まり、学会、勉強会などに積極的に参加。「留学中にアメリカで食べたあの味を再現したい!」と突然思い立ち、ベーグル作りにハマっているという先生。持ち前の探究心を発揮し、一人の世界に没頭できる時間は、日々のストレス解消にもなっているそうです。 ≫ 田村秀子婦人科医院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら PCOSの排卵誘発法、どんな方法がいいの? 田中 紀子 先生(田村秀子婦人科医院) 相談者:ことことさん(33歳)からの投稿 「PCOSの排卵誘発法について」不妊原因はPCOSと両卵管閉塞です。1人目は1回の採卵、移植で授かりました。2人目に挑戦して3年。採卵を8回していますが、良い受精卵がなかなか育たず、移植は3回です。排卵誘発法は薬と注射を組み合わせていろいろ試しました。PCOSということもあり、刺激は慎重に行ってもらっていました。ですが、なかなか結果が出ないので転院する予定です。転院先の有名な不妊専門クリニックで排卵誘発法を聞いてきました。生理2日目で左右各10個以上の卵胞がありましたが、5日目からFSH150単位を5日間、それからはアンタゴニストと必要であればHMGを追加すると言われました。OHSSを経験しているので、注射が強すぎるのでは? と確認しましたが、低刺激だと卵胞が育たないと言われました。どの排卵誘発法がいいかアドバイスをいただけますか? 治療歴やPCOSの程度により医師や施設の方針はさまざま PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは、月経不順の症状、それに超音波検査で小卵胞が10個以上みられ、血液検査では男性ホルモンが高値または月経中のLH高値かつ正常FSH値を満たすことから診断されます。卵胞の発育に時間がかかり、なかなか排卵できないため、不妊治療では内服薬や注射などの排卵誘発剤を使います。個人差はありますが、排卵誘発剤でも卵胞発育が遅い場合もあり、といって注射を使うと多数の卵胞発育が起こりやすく、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になる可能性が高まります。そのため、排卵誘発剤の種類や量に注意が必要になります。また、体外受精で排卵誘発をしても、卵子そのものはたくさん採取できるけれども、質の良い卵子が育ちにくいこともあります。 ことことさんは、以前の施設で薬と注射を組み合わせた排卵誘発法を試されたそうですが、きっとOHSSに注意しながら、慎重に排卵誘発剤を使っておられたのだと思うので、もしかしたら低刺激法だったのかもしれませんね。 そこで転院先の先生は、これまでの治療歴をみつつ、低刺激の方法で結果が出ていないことから、今までの方法からやり方を変えてみましょうと提案されたのでは。PCOSの程度にも個人差がありますので一様には言えませんが、アンタゴニスト法で注射の内容や量を微調整し、卵巣に適度な刺激を与えることで、成熟した卵子を複数個まとめて採卵できる可能性があります。ただ刺激を強めるとOHSSのリスクが出てくるので、注意は必要です。 PCOSの人にも使いやすいアンタゴニスト法 当院では、アンタゴニスト法、低刺激法、ロング法など、種々の排卵誘発法を用いていますが、その方の年齢、卵巣の機能(AMHやFSHの基礎値、前胞状卵胞数など)、これまでの治療での卵巣の反応の状態、PCOSの方ではOHSSの既往などから総合的に判断し、その方に合ったオーダーメイドの治療を提案しています。さらに他の施設から転院された方には、これまでの治療の内容、排卵誘発の方法、卵巣の反応状態などもお聞きし、参考にさせていただきます。近年は、卵巣機能が少し低下している30代後半以上の方も多く見受けられます。このような方の卵巣刺激には、当院ではアンタゴニスト法を選択することが多いですね。 アンタゴニスト法とは、採卵周期の3〜10日くらいまでFSH製剤やHMG製剤を使い、排卵を抑えるために途中からアンタゴニスト製剤を投与し、その後卵胞の大きさを見て、HCG製剤で卵子を成熟させて採卵する方法です。もともとご本人がもっている卵巣の力にお薬の力をプラスして、卵胞の発育と排卵をコントロールする方法なので、卵巣機能が少し低下している方にも適した方法です。また排卵誘発剤の注射の種類や量を微調整することにより、PCOSの方でも使うことはできます。PCOSの方は内因性のLHが高めなので、LHを含まないFSH製剤を中心に低用量から始めてもいいかも。 OHSSを回避しながら卵巣を適度に刺激する方法も ことことさんが一番心配されているのはOHSSのリスクですね。OHSSとは、排卵誘発剤により卵巣が過剰に刺激されて高エストロゲン状態になり、卵巣が腫れる、腹水がたまる、お腹が張るといった症状が起こります。重症化すると血液が濃縮され、血栓症のリスクも高まります。通常はHCG製剤の投与によって出現します。また同一周期に妊娠すると、特に重症化します。 採卵周期の場合、受精卵をすべて凍結し、採卵周期とは異なる別の周期に凍結融解胚移植をすることによって、重症化を回避することができます。また最近では、採卵前のHCGの代わりにGnRHアゴニストの使用や、採卵後に高プロラクチン血症の薬であるカベルゴリンの服用もOHSSのリスクを下げる効果が期待できます。 またアンタゴニスト法以外にも、内服の排卵誘発剤と注射を組み合わせて卵子をしっかり育てて採卵する方法もあります。クロミフェン以外の内服薬には、アロマターゼ阻害剤(レトロゾール)があります。レトロゾールはエストロゲンの過剰な分泌を抑えながら卵巣を刺激するのでOHSSの予防効果を示す報告もありますが、アンタゴニスト法と同様、卵巣の反応をみながら注射を微調整することは必要です。 あくまでもことことさんご本人の状態によりますが、OHSSのリスクを回避するような方法も取り入れながら、前回より少し強めの刺激法に挑戦されてもいいのかなと思いますね。 アンタゴニスト法を基準に状態に合わせてお薬の量などを微調整 どの排卵誘発法を選択するかは、ご本人の状態はもちろんのこと、治療歴、施設の方針やドクターの考え方によってそれぞれ異なります。卵巣機能が極端に低下している場合は別ですが、個人的にはアンタゴニスト法を基準にし、そのなかでお一人おひとりに合ったお薬の量を微調整しながら慎重に反応を見ていきます。それで結果が出ない場合は、低刺激やごく稀に刺激法(ロング法)に変えることもあります。 排卵誘発剤HMG/FSH製剤とは?! ●どんな排卵誘発方法で使用するの?体外受精で一度に複数の卵子を採卵する時に用いられます。ホルモン(FSHとLH)の含有量に違いがあり、ご本人の状態によって選択されます。 ●メリット、デメリットは?HMG製剤、FSH製剤は人の尿由来のため、精製方法やロットにより成分に少しバラつきがあります。リコンビナント製剤は遺伝子組み換えによって製造されているため、FSHとLHの混在がなく品質は安定していますが、費用は高めです。 ●使用されている製品例FSH製剤(ゴナピュール®、フォリルモンP®など)、HMG製剤(HMGフェリング®、HMGフジ®、HMGテイゾー®など)、リコンビナントFSH製剤(フォリスチム®、ゴナールエフ®) 田中先生より まとめ OHSSのリスクを回避しつつ前回より少し強めの刺激法もいいと思います [無料]気軽にご相談ください お話を伺った先生のご紹介 田中 紀子 先生(田村秀子婦人科医院) 京都府立医科大学医学部大学院修了。医学博士。2年間のアメリカ留学、扇町ARTレディースクリニック勤務を経て、2008 年3月より「田村秀子婦人科医院」勤務。生殖医療の現場に長年携わった経験から、近年は女性の心と体の健康をサポートする女性医療への関心が高まり、学会、勉強会などに積極的に参加。「留学中にアメリカで食べたあの味を再現したい!」と突然思い立ち、ベーグル作りにハマっているという先生。持ち前の探究心を発揮し、一人の世界に没頭できる時間は、日々のストレス解消にもなっているそうです。 ≫ 田村秀子婦人科医院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.11.15
コラム 不妊治療
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二度目の流産
なおなおさん(37歳)はじめまして。 質問お願いします。 今年2月に37歳で第2子を妊娠しましたが、心拍確認後9週目で心拍停止し稽留流産となりました。 数日後に掻爬手術を受けました。 それから生理を3回を見送り、幸いにも8月に再度妊娠しました。 しかし8週目でも胎芽も心拍も確認できず、稽留流産となりました。 数日後に掻爬手術の予定です。 医師からは二度連続の流産ということもあり不育症の診断も勧められましたが、第1子(現在4歳)を無事に出産しているので、流産の確率の問題で年齢的なこともありたまたま2回続いてしまったという事かもしれないとも言われました。 第1子の出産時、癒着胎盤で用手剥離の処置を受けましたが全てを取り出せず1ヶ月様子をみました。 2月の掻爬手術の際に麻酔が途中で切れ、暴れたためか子宮内に血の塊が残り様子をみることになりました。 そういう事も流産に影響しているのでしょうか? 今回不育症の検査を受けた方がよいのでしょうか? 今は不安と悲しみでどうして良いか分かりません。 ただ出来ることならもう1人産みたいと思っています。 宜しくお願いします。 田中 紀子 先生 (田村秀子婦人科医院) 京都府立医科大学医学部大学院修了。医学博士、産婦人科認定医。大学院と2年間のアメリカ留学で、子宮内膜症や生殖医療の研究に携わり、扇町ARTレディースクリニック勤務などを経て、2008年3月より「田村秀子婦人科医院」勤務。生殖医療の現場に長年携わった経験から、近年は女性の心と体の健康をサポートする女性医療への関心が高まり、学会、勉強会などに積極的に参加。 ≫ 田村秀子婦人科医院 2度の流産に対する悲しみはもちろんですが、「次も流産したらどうしよう?」「妊娠するのがこわい」といった次の妊娠への不安も大きいでしょうね。まずは、私たち医師や専門のスタッフがゆっくりお話を聞き、必要であれば検査を行い、不安を少しでも取り除いて差し上げることが大切だと思います。妊娠は心理的な要素も大きく、心の状態がホルモンバランスに影響します。不安が解消されると次の妊娠率が改善するという報告もあります。 なおなおさんがご心配されている、1人目の時の癒着胎盤やその後の流産の経過については、今回の流産には特に影響はありません。1人目は問題なく出産された後、このような流産が続く方は残念ながらおられます。一般的には、1人目を妊娠されたときより年齢も進んでいますので、流産のリスクもあがります。担当の先生がおっしゃるように、年齢と確立の問題かもしれません。なおなおさんは1人目を自然に生んでいらっしゃるので、不育症検査が本当に必要なのか困惑されているのでしょう。 ただ、流産が2度続いているので、私も念のために不育症検査を受けてみてもよいのでは、と思います。検査の結果、何も問題がなければよいですし、もし何か原因がみつかれば、それに対してなんらかの対策や治療ができる可能性もあります。結果がわかることで、少し気持ちの整理ができ、次の妊娠に向けて前向きになれるのではないでしょうか。
2017.9.2
専門医Q&A 女性の健康
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心の玉手箱 Vol.32 「毎月頑張っても結果が出ず経済的にも精神的にもつらい。そろそろ子どもがいない生活も視野に入れるべき?」
田村秀子先生の心の玉手箱 Vol.32 田村 秀子 先生(田村秀子婦人科医院) 毎月頑張っても結果が出ず経済的にも精神的にもつらく"やめ時"が頭をよぎる日々。そろそろ子どもがいない生活も視野に入れるべき? 田秀子先生にお話を伺いました。 投稿者:サカノリ0508さん(会社員 / 37歳) 皆さんが前向きに頑張られているなか、ネガティブな話題ですみません。6回目の採卵が終わりましたが、7個採れて受精したのがたった1個でした。これから胚盤胞まで育てます。私はAMHが0.26ng/ml、夫は乏精子症で数は500万/ml程度です。12月からほぼ毎月クロミッドⓇ+HMGで採卵を重ねていますが結果が出ません。金銭的にも精神的にも厳しいです。結果が出ないので、子どものいない生活も視野に入れないといけないと思っていますが、皆さんならどのくらいで諦めようとお考えになりますか? 投稿に寄せられたコメント 投稿者:まるこさん(主婦 / 38歳) 主治医とか第三者が無理と言っても、何かを諦める基準って人それぞれで主さんが本当にもう無理って思わない限り後悔すると思います。これ以上お金を使うなら子供は諦める。これ以上辛い思いするなら子供は諦める。と思った時が終わりだと思います。未だ三十代だし子供のいない生活を視野に入れ夫婦だけの楽しい生活も想像しつつサカノリ0508さん夫婦がもう終わりにしたいと思う日まで頑張った方が良いと思います。 投稿者:すずちゃんさん(看護師 / 41歳 ) 諦めどき…難しいですよね…。金銭的、精神的にも治療年月が経つほど辛くなると思います。私はサカノリ0508さんとは状況は違いますが、43歳の誕生日までと主人と決めました。 治療の繰り返しで張りつめた心と体を休ませてあげましょう 採卵、移植、妊娠判定を繰り返し、2週間後には次の採卵…。あせって治療を続けても、いったんリセットするはずの心と体はすぐにはもどりません。心身ともに張りつめた状態をずっと維持し続けるのは、とても大変なことだと思います。そのうえ結果が出ない状態が毎月続くと、そのたびに“自分の中で消化しきれない何か”を溜め込んでいるようなもの。それが積み重なって、何も受け入れられなくなっているのが、今の状態だと思います。 たとえばサッカー選手やマラソン選手が次の試合に向けて体力や精神力、モチベーションを維持するためにインターバルが必要なように、治療にも時にはインターバルが必要です。この半年間、毎月張りつめた状態でお金も使ってきたのです。3カ月ほどゆっくりして、治療を離れてみてはいかがでしょう。「離れる=諦める」ではありません。卵巣とご自身を少し休ませてあげるのです。 なぜ治療を諦めようとしていらっしゃるのか。それは妊娠もしないし、お金も使い果たしたし、疲れているし、だから…ということでしょう? お金は休んでいる間に貯めることができます。そうすれば「ゆとりが出てきたから、もう1回頑張ろう」となるかもしれません。 一番大切なのは子どもが欲しいというパッションがあるかどうか それよりも大切なのは、子どもが欲しいというパッションをもち続けられるかどうかです。パッションが消えた時、それが治療をやめる時だと思います。パッションが消えるというのは、心の準備ができていないのにいきなりやめるのではなく、「もういいかな」「もう納得できたかな」とフェードアウトしていくような感じです。いずれ閉経した時、「あの時、精神的にも経済的にも大変だったけど頑張ったよね(笑)」と、口には出さなくても夫婦で不妊治療のことを笑って振り返れる。そんなふうになって欲しいと思います。 そのためには、AMHが低いこと、ご主人の精子が少ないことを考えると、科学的な妊娠率が決して高くないという事実を甘受できるよう、心の準備をしておいたほうがいいのかもしれません。そのうえで、それでも先が見えずに「こんな思いはしたくない」「こんな治療はしたくない」という思いがパッションよりも強いのであれば、“やめ時”なのかもしれません。けれども、そこできっぱりやめられずに、しばらくは心が揺れ動くこともあるでしょう。そんな時は体外受精にこだわらず、排卵のタイミングだけ診てもらうなどして治療をつないでいけばいいと思います。そして「よし、頑張ろう!」と思えた時、またチャレンジすればいいのです。 子どもがいない生活を視野に入れることは夫婦として当然です 子どもがいてもいなくても大きな柱は夫婦です。そもそも子どもがいても、いずれは夫婦だけの生活になります。子どもがいない生活を視野に入れるのは当然のことで、子どもをもつ、もたないではなく、夫婦としてのライフスタイルなのです。そこにたまたま子どもが付随するだけのこと。子どもを育てるために結婚したわけでも、夫婦になったわけでもないのです。 ですから、これからも夫婦二人の生活を土台としてしっかり築きあげていきましょうね。土台があれば、子どもがいてもいなくてもその夫婦はずっとうまくいきます。そこに子どもがいるかいないかは、ゆくゆくは老人ホームに入るのか、同居するのか、そこに孫がいるのか、いないかだけの話なのです。 先ほどもお話しした“治療のやめ時”については、“やめ時”を考えるからつらくなるのだと思います。人の気持ちや価値観は日々変化して、いずれは消えていくのです。限りがあるから美しいとはよくいったもので、自然の流れはうまくできていると思います。 [無料]気軽にご相談ください 先生のご紹介 田村 秀子 先生(田村秀子婦人科医院) 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。7月に京都で開催された「性教育指導セミナー全国大会」。京都府産婦人科医会の会長を務める秀子先生も参加し、府民公開講座では「15歳以下の妊娠・出産をゼロにするために」というテーマでロールプレイにセーラー服姿で登場! 妊娠したやんちゃな不登校生役を演じられたそう。 ≫ 田村秀子婦人科医院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn≫ 掲載記事一覧はこちら 田村秀子先生の心の玉手箱 Vol.32 田村 秀子 先生(田村秀子婦人科医院) 毎月頑張っても結果が出ず経済的にも精神的にもつらく"やめ時"が頭をよぎる日々。そろそろ子どもがいない生活も視野に入れるべき? 田秀子先生にお話を伺いました。 投稿者:サカノリ0508さん(会社員 / 37歳) 皆さんが前向きに頑張られているなか、ネガティブな話題ですみません。6回目の採卵が終わりましたが、7個採れて受精したのがたった1個でした。これから胚盤胞まで育てます。私はAMHが0.26ng/ml、夫は乏精子症で数は500万/ml程度です。12月からほぼ毎月クロミッドⓇ+HMGで採卵を重ねていますが結果が出ません。金銭的にも精神的にも厳しいです。結果が出ないので、子どものいない生活も視野に入れないといけないと思っていますが、皆さんならどのくらいで諦めようとお考えになりますか? 投稿に寄せられたコメント 投稿者:まるこさん(主婦 / 38歳) 主治医とか第三者が無理と言っても、何かを諦める基準って人それぞれで主さんが本当にもう無理って思わない限り後悔すると思います。これ以上お金を使うなら子供は諦める。これ以上辛い思いするなら子供は諦める。と思った時が終わりだと思います。未だ三十代だし子供のいない生活を視野に入れ夫婦だけの楽しい生活も想像しつつサカノリ0508さん夫婦がもう終わりにしたいと思う日まで頑張った方が良いと思います。 投稿者:すずちゃんさん(看護師 / 41歳 ) 諦めどき…難しいですよね…。金銭的、精神的にも治療年月が経つほど辛くなると思います。私はサカノリ0508さんとは状況は違いますが、43歳の誕生日までと主人と決めました。 治療の繰り返しで張りつめた心と体を休ませてあげましょう 採卵、移植、妊娠判定を繰り返し、2週間後には次の採卵…。あせって治療を続けても、いったんリセットするはずの心と体はすぐにはもどりません。心身ともに張りつめた状態をずっと維持し続けるのは、とても大変なことだと思います。そのうえ結果が出ない状態が毎月続くと、そのたびに“自分の中で消化しきれない何か”を溜め込んでいるようなもの。それが積み重なって、何も受け入れられなくなっているのが、今の状態だと思います。 たとえばサッカー選手やマラソン選手が次の試合に向けて体力や精神力、モチベーションを維持するためにインターバルが必要なように、治療にも時にはインターバルが必要です。この半年間、毎月張りつめた状態でお金も使ってきたのです。3カ月ほどゆっくりして、治療を離れてみてはいかがでしょう。「離れる=諦める」ではありません。卵巣とご自身を少し休ませてあげるのです。 なぜ治療を諦めようとしていらっしゃるのか。それは妊娠もしないし、お金も使い果たしたし、疲れているし、だから…ということでしょう? お金は休んでいる間に貯めることができます。そうすれば「ゆとりが出てきたから、もう1回頑張ろう」となるかもしれません。 一番大切なのは子どもが欲しいというパッションがあるかどうか それよりも大切なのは、子どもが欲しいというパッションをもち続けられるかどうかです。パッションが消えた時、それが治療をやめる時だと思います。パッションが消えるというのは、心の準備ができていないのにいきなりやめるのではなく、「もういいかな」「もう納得できたかな」とフェードアウトしていくような感じです。いずれ閉経した時、「あの時、精神的にも経済的にも大変だったけど頑張ったよね(笑)」と、口には出さなくても夫婦で不妊治療のことを笑って振り返れる。そんなふうになって欲しいと思います。 そのためには、AMHが低いこと、ご主人の精子が少ないことを考えると、科学的な妊娠率が決して高くないという事実を甘受できるよう、心の準備をしておいたほうがいいのかもしれません。そのうえで、それでも先が見えずに「こんな思いはしたくない」「こんな治療はしたくない」という思いがパッションよりも強いのであれば、“やめ時”なのかもしれません。けれども、そこできっぱりやめられずに、しばらくは心が揺れ動くこともあるでしょう。そんな時は体外受精にこだわらず、排卵のタイミングだけ診てもらうなどして治療をつないでいけばいいと思います。そして「よし、頑張ろう!」と思えた時、またチャレンジすればいいのです。 子どもがいない生活を視野に入れることは夫婦として当然です 子どもがいてもいなくても大きな柱は夫婦です。そもそも子どもがいても、いずれは夫婦だけの生活になります。子どもがいない生活を視野に入れるのは当然のことで、子どもをもつ、もたないではなく、夫婦としてのライフスタイルなのです。そこにたまたま子どもが付随するだけのこと。子どもを育てるために結婚したわけでも、夫婦になったわけでもないのです。 ですから、これからも夫婦二人の生活を土台としてしっかり築きあげていきましょうね。土台があれば、子どもがいてもいなくてもその夫婦はずっとうまくいきます。そこに子どもがいるかいないかは、ゆくゆくは老人ホームに入るのか、同居するのか、そこに孫がいるのか、いないかだけの話なのです。 先ほどもお話しした“治療のやめ時”については、“やめ時”を考えるからつらくなるのだと思います。人の気持ちや価値観は日々変化して、いずれは消えていくのです。限りがあるから美しいとはよくいったもので、自然の流れはうまくできていると思います。 [無料]気軽にご相談ください 先生のご紹介 田村 秀子 先生(田村秀子婦人科医院) 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。7月に京都で開催された「性教育指導セミナー全国大会」。京都府産婦人科医会の会長を務める秀子先生も参加し、府民公開講座では「15歳以下の妊娠・出産をゼロにするために」というテーマでロールプレイにセーラー服姿で登場! 妊娠したやんちゃな不登校生役を演じられたそう。 ≫ 田村秀子婦人科医院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.35 2017 Autumn≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.8.7
コラム 不妊治療
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心の玉手箱 Vol.31 「検査で次々と判明するマイナス要素の結果に、妊活半年で心が折れそう…」
田村秀子先生の心の玉手箱 Vol.31 田村 秀子 先生(田村秀子婦人科医院) 検査で次々と判明するマイナス要素の結果に、妊活半年で心が折れそう……。前向きに治療に向かうにはどうすればよいのでしょう?秀子先生にお話を伺いました。 投稿者:みおこさん(自営業• 34歳)からの投稿 妊活をして半年くらい。治療をされている方々に叱られそうですが、検査で約2カ月経ち、もうすでに心が折れそうです。子宮卵管造影、ホルモン検査、つい1年前に打ったはずの風しん予防接種の抗体が8倍とわかり、また打たないといけないハメに……。多嚢胞性卵巣症候群とも診断され、今はブドウ糖負荷試験の結果待ちです。一番のダメージは精液検査でした。再検査が必要だけど、もう悪い結果を聞いてダメージを受けたくない。年齢もあって早く治療を進めていかねばならないのは重々承知ですが、どうしてもつらいのです。 投稿に寄せられたコメント 投稿者:もう師走さん(主婦・36歳) そんなこと言っても年齢は待ってくれないので、次は年齢による不妊というか、妊娠しづらくなってきますよ。ダメージを受けたくないといっても現実を受け止めて、どんどん検査や治療をしていかないといけないと思います。みおこさん、妊娠出産するには決してお若くないのですから、引きずってばかりだと時間の無駄です。つらいだろうけど同時に検査してできるだけ早く、顕微授精などへ進まれたほうがよいのではないでしょうか。 投稿者:さちこさん(秘密・秘密) みおこさんは高度生殖医療をしてまで子どもが欲しいとは思わないのかなと感じました。違っていたらごめんなさい。もしなるべく自然に過ごしたいなら、医師に相談して軽い誘発でタイミングをとることから治療を始めてもいいのでは? でも私ならそんな時間の無駄になることはしないな。検査結果を聞いてそれでもうつらいなら仕方ないと思います。どのくらい子どもを欲しいと思っているのか、どこまでの治療ならしてもいいと思っているのかなど、夫婦でよく話し合うといいと思いますよ。 治療は始まったばかりもしかするとまだ始まってもいない? もう34歳とおっしゃっているけれど、少なくとも“もう”なんて言わないこと。まだ34歳です! 治療といっても、まだごくごく初期の段階。治療ともいえない検査の時期ですね。ちょっとでも悪いところが見つかったら、それは先に進む“道具”になるわけですから、前向きにとらえていきましょう。 たとえば、ご主人の精液検査の結果が、一番ダメージが大きかったとのこと。1回目はご主人の採取の方法に問題があったかもしれませんし、もう一度調べてみる必要があるでしょう。最初にとんでもなく少なかった人が2回目以降は正常値ということもよくあるケースです。“もう悪い結果を聞いてダメージを受けたくない”なんて、それでは先へ進むことができません。再検査で悪い結果が出たとしても、これを機に人工授精や顕微授精など、男性不妊の勉強をして早めに視野を広げておくことも悪くないと思います。 事実は事実として受け入れながら気持ちをラクに ご主人の精液検査の結果が顕微授精レベル、予防接種を受けたはずの風しん抗体検査の結果が8倍、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断され……、落ち込む気持ちもわかりますが、そこでずーっと立ち止まっていると、結局何も始まりません。 とはいえ妊活半年くらいでつまずいて、悩んでいる方って結構多いんです。そもそも病院に行けばすぐに妊娠できると思うのが大間違い(笑)。病院は、まるで重箱の隅を突くようにいろんな検査をして、悪いところを探すところです。みおこさんも、「一度に悪いところが2つも見つかってラッキー!」くらいに思っておきましょう。 風しんの抗体検査にしても、ワクチンを打ったのになぜ? と思われるかもしれませんが、ワクチンを打った後に抗体の検査をしないところもあります。そうすると予防接種をしたからと安心して感染してしまうことも……。そう思えば、みおこさんはきちんと抗体検査をしてもらってとてもラッキーだったわけです! 事実は事実として受け入れて、そんなふうに考えていけると、少し気持ちがラクになるかもしれませんね。 相談すべきはドクター 治療に積極的な姿勢を見せましょう 風しん抗体検査も、PCOSのブドウ糖負荷試験にしても、とても手厚く診てくださっている病院だと思います。担当医の先生にもっとご相談されてみてはいかがでしょう? もし再検査でご主人の精子が本当に少なかったとしても、前述のようによくお勉強しておくといいですね。そうすることでワンクッション入り、ショックも和らぎます。ただし、信頼できるドクターが書いた記事などで。正確な知識をもったうえで、どういう治療がいいのか選択できるようになっておいてください。 医師は日々、本当にいろんな患者さんと接しているわけです。同じ34歳の方でも、絶対に薬は飲みたくないという人もいれば、最初から体外受精で治療してほしいという方もいらっしゃいます。もし早く次の治療に進みたいと思われるなら、積極的な態度でアピールするべき。そうでないと先生に伝わりません。 あくまでも自分の意志を反映しながら進めるのが不妊治療です。ここまでの治療はできるけど、ここからはできないと、意志をしっかり伝えることが大事。まずは素直に自分の今の気持ちを話してみませんか? [無料]気軽にご相談ください 先生のご紹介 田村 秀子 先生(田村秀子婦人科医院) 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。東京と京都の往復で超多忙を極める秀子先生。最近の楽しみは、スタッフと一緒に作って食べるお昼ご飯だそう。手早く簡単にできる秀子先生のレシピは、スタッフの間でも人気の的! ≫ 田村秀子婦人科医院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら 田村秀子先生の心の玉手箱 Vol.31 田村 秀子 先生(田村秀子婦人科医院) 検査で次々と判明するマイナス要素の結果に、妊活半年で心が折れそう……。前向きに治療に向かうにはどうすればよいのでしょう?秀子先生にお話を伺いました。 投稿者:みおこさん(自営業• 34歳)からの投稿 妊活をして半年くらい。治療をされている方々に叱られそうですが、検査で約2カ月経ち、もうすでに心が折れそうです。子宮卵管造影、ホルモン検査、つい1年前に打ったはずの風しん予防接種の抗体が8倍とわかり、また打たないといけないハメに……。多嚢胞性卵巣症候群とも診断され、今はブドウ糖負荷試験の結果待ちです。一番のダメージは精液検査でした。再検査が必要だけど、もう悪い結果を聞いてダメージを受けたくない。年齢もあって早く治療を進めていかねばならないのは重々承知ですが、どうしてもつらいのです。 投稿に寄せられたコメント 投稿者:もう師走さん(主婦・36歳) そんなこと言っても年齢は待ってくれないので、次は年齢による不妊というか、妊娠しづらくなってきますよ。ダメージを受けたくないといっても現実を受け止めて、どんどん検査や治療をしていかないといけないと思います。みおこさん、妊娠出産するには決してお若くないのですから、引きずってばかりだと時間の無駄です。つらいだろうけど同時に検査してできるだけ早く、顕微授精などへ進まれたほうがよいのではないでしょうか。 投稿者:さちこさん(秘密・秘密) みおこさんは高度生殖医療をしてまで子どもが欲しいとは思わないのかなと感じました。違っていたらごめんなさい。もしなるべく自然に過ごしたいなら、医師に相談して軽い誘発でタイミングをとることから治療を始めてもいいのでは? でも私ならそんな時間の無駄になることはしないな。検査結果を聞いてそれでもうつらいなら仕方ないと思います。どのくらい子どもを欲しいと思っているのか、どこまでの治療ならしてもいいと思っているのかなど、夫婦でよく話し合うといいと思いますよ。 治療は始まったばかりもしかするとまだ始まってもいない? もう34歳とおっしゃっているけれど、少なくとも“もう”なんて言わないこと。まだ34歳です! 治療といっても、まだごくごく初期の段階。治療ともいえない検査の時期ですね。ちょっとでも悪いところが見つかったら、それは先に進む“道具”になるわけですから、前向きにとらえていきましょう。 たとえば、ご主人の精液検査の結果が、一番ダメージが大きかったとのこと。1回目はご主人の採取の方法に問題があったかもしれませんし、もう一度調べてみる必要があるでしょう。最初にとんでもなく少なかった人が2回目以降は正常値ということもよくあるケースです。“もう悪い結果を聞いてダメージを受けたくない”なんて、それでは先へ進むことができません。再検査で悪い結果が出たとしても、これを機に人工授精や顕微授精など、男性不妊の勉強をして早めに視野を広げておくことも悪くないと思います。 事実は事実として受け入れながら気持ちをラクに ご主人の精液検査の結果が顕微授精レベル、予防接種を受けたはずの風しん抗体検査の結果が8倍、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断され……、落ち込む気持ちもわかりますが、そこでずーっと立ち止まっていると、結局何も始まりません。 とはいえ妊活半年くらいでつまずいて、悩んでいる方って結構多いんです。そもそも病院に行けばすぐに妊娠できると思うのが大間違い(笑)。病院は、まるで重箱の隅を突くようにいろんな検査をして、悪いところを探すところです。みおこさんも、「一度に悪いところが2つも見つかってラッキー!」くらいに思っておきましょう。 風しんの抗体検査にしても、ワクチンを打ったのになぜ? と思われるかもしれませんが、ワクチンを打った後に抗体の検査をしないところもあります。そうすると予防接種をしたからと安心して感染してしまうことも……。そう思えば、みおこさんはきちんと抗体検査をしてもらってとてもラッキーだったわけです! 事実は事実として受け入れて、そんなふうに考えていけると、少し気持ちがラクになるかもしれませんね。 相談すべきはドクター 治療に積極的な姿勢を見せましょう 風しん抗体検査も、PCOSのブドウ糖負荷試験にしても、とても手厚く診てくださっている病院だと思います。担当医の先生にもっとご相談されてみてはいかがでしょう? もし再検査でご主人の精子が本当に少なかったとしても、前述のようによくお勉強しておくといいですね。そうすることでワンクッション入り、ショックも和らぎます。ただし、信頼できるドクターが書いた記事などで。正確な知識をもったうえで、どういう治療がいいのか選択できるようになっておいてください。 医師は日々、本当にいろんな患者さんと接しているわけです。同じ34歳の方でも、絶対に薬は飲みたくないという人もいれば、最初から体外受精で治療してほしいという方もいらっしゃいます。もし早く次の治療に進みたいと思われるなら、積極的な態度でアピールするべき。そうでないと先生に伝わりません。 あくまでも自分の意志を反映しながら進めるのが不妊治療です。ここまでの治療はできるけど、ここからはできないと、意志をしっかり伝えることが大事。まずは素直に自分の今の気持ちを話してみませんか? [無料]気軽にご相談ください 先生のご紹介 田村 秀子 先生(田村秀子婦人科医院) 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。東京と京都の往復で超多忙を極める秀子先生。最近の楽しみは、スタッフと一緒に作って食べるお昼ご飯だそう。手早く簡単にできる秀子先生のレシピは、スタッフの間でも人気の的! ≫ 田村秀子婦人科医院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring≫ 掲載記事一覧はこちら
2017.6.2
コラム 不妊治療
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心の玉手箱 Vol.30 「妻の初めての治療を前に自分に何かできることは? 夫に望むことは何??」
妻の初めての治療を前に自分に何かできることは?夫に望むことは何?? 今回は妻の治療に寄り添う男性の立場からの質問に、秀子先生がお答えします。 相談者 こけしの夫さん(運送業•35歳)妻が初めて体外受精を行います。自分は今まで仕事を優先してきたせいでほとんど何も協力できなかったので、恥ずかしながら何をしてあげればいいのか、まだよくわかりません。妻に聞くのが一番なのでしょうが……。妻は毎日5時過ぎに起きてお弁当を作ってくれます。ストレスはよくないと聞いたので中止したほうがよいですか? それと一番やってほしい家事は何ですか? その他、かけてほしい言葉や、逆に言ってほしくないことなど、とにかく何でもよいので、体外受精期間中、妻が夫に望むことを教えてください! してほしいことは人それぞれまず話を聞いてみて ご自分で「妻に聞くのが一番なのでしょうが……」と、おっしゃっていますが、はい、そうです(笑)。 初めての体外受精というのは、ものすごく不安ですから、ご主人も一緒に話を聞きに行ってあげると喜ばれると思います。ただ「別に来なくていい」と言われたら、行かなくてもいいのです。ご主人に一緒にいてほしいという方もいらっしゃれば、隣で話を聞かれるのは嫌という方もいらっしゃいますし、治療が終わったら迎えにだけ来てほしいという方もおられます。体外受精をしなければならない理由も人によってさまざまだから、まず奥様が何を望んでいるのか知ることが大切だと思います。 「主人がわざわざ休みを取って、ついてきてくれたんです」と、嬉しそうに話してくださる方は多いですよ。「ついて行こうか? いつがいい?」と細かく聞いて、したいようにやってあげるということを、態度で示してあげればいいと思います。 アドバイスは無用不安を受け止めてあげましょう ご主人は体外受精に限らず、普段からぜひとも奥様の気分的な“波”のようなものを感じ取ってあげるようにしてください。排卵後のPMS(月経前症候群)の時期は、いわばちょっとした嵐みたいなものですから、些細なことが気に障ったりして特にイライラ、カリカリする時期です。そんな時は刺激せず、優しく話を聞いてあげながら、嵐が過ぎ去るのをひたすら待つこと。決して何か解決策を提示しようとしたり、いいアドバイスをしようなどとは考えてはいけません。何だかよくわからないなぁと思っても、「ふーん、そうなんだ」「へぇ〜、そうかぁ」と聞いてあげましょう。 初めての体外受精の場合、おそらく奥様はイライラするというよりも、最初は大きな不安から緊張されていることが多いと思います。だからいろんな場面で言いたいことや聞きたいことを我慢したりして、それがストレスになり、とんでもないところで爆発することも。そんな時、たとえ「どうしてそんなことで怒っているの?」と思っても、それをグッと飲み込んで、じっくり受け止めてあげてください。 気を使いすぎると今度はかえってプレッシャーになる とはいえ「ずっと寝ていたらいいよ」なんて過保護はかえって逆効果。奥様はそれだけ結果を期待されているんだなと感じてプレッシャーになります。「大事な時やから」は絶対に禁句。それは妊娠してから言う言葉で、特に妊娠の可能性がある時、体外受精の胚移植の後は絶対に言ってはいけません。 夫に手伝ってほしい家事といっても、仕事や生活スタイルによってさまざまだと思います。もし奥様が洗い物を始めたら、「今日は僕がやるよ!」とニッコリ笑顔で。「いつまで続くかわからない」なんて嫌みを言われても気にしない。「今だけかもしれないけど、とりあえず今日はやってあげる」でいいんです。ご飯を作るのが大変そうなら、代わりに作ってあげられなくても、外食や店屋物にしようと提案してあげたりね。 できることってそんなにないかもしれないし、たとえ今だけだって、女性はその気持ちがありがたいわけです。だからご主人は奥様の様子をよく観察して、「今日は大変だったね」と、しんどそうなところは率先してやってあげる。それでいいんじゃないでしょうか? <秀子の格言>「体外受精だから……ではなく、大変だったから優しくしてあげる。そんな気持ちが大切なんです」 田村秀子婦人科医院 田村 秀子先生京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科 医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。≫ 田村秀子婦人科医院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! 田村秀子先生の心の玉手箱 一覧はこちら 妻の初めての治療を前に自分に何かできることは?夫に望むことは何?? 今回は妻の治療に寄り添う男性の立場からの質問に、秀子先生がお答えします。 相談者 こけしの夫さん(運送業•35歳)妻が初めて体外受精を行います。自分は今まで仕事を優先してきたせいでほとんど何も協力できなかったので、恥ずかしながら何をしてあげればいいのか、まだよくわかりません。妻に聞くのが一番なのでしょうが……。妻は毎日5時過ぎに起きてお弁当を作ってくれます。ストレスはよくないと聞いたので中止したほうがよいですか? それと一番やってほしい家事は何ですか? その他、かけてほしい言葉や、逆に言ってほしくないことなど、とにかく何でもよいので、体外受精期間中、妻が夫に望むことを教えてください! してほしいことは人それぞれまず話を聞いてみて ご自分で「妻に聞くのが一番なのでしょうが……」と、おっしゃっていますが、はい、そうです(笑)。 初めての体外受精というのは、ものすごく不安ですから、ご主人も一緒に話を聞きに行ってあげると喜ばれると思います。ただ「別に来なくていい」と言われたら、行かなくてもいいのです。ご主人に一緒にいてほしいという方もいらっしゃれば、隣で話を聞かれるのは嫌という方もいらっしゃいますし、治療が終わったら迎えにだけ来てほしいという方もおられます。体外受精をしなければならない理由も人によってさまざまだから、まず奥様が何を望んでいるのか知ることが大切だと思います。 「主人がわざわざ休みを取って、ついてきてくれたんです」と、嬉しそうに話してくださる方は多いですよ。「ついて行こうか? いつがいい?」と細かく聞いて、したいようにやってあげるということを、態度で示してあげればいいと思います。 アドバイスは無用不安を受け止めてあげましょう ご主人は体外受精に限らず、普段からぜひとも奥様の気分的な“波”のようなものを感じ取ってあげるようにしてください。排卵後のPMS(月経前症候群)の時期は、いわばちょっとした嵐みたいなものですから、些細なことが気に障ったりして特にイライラ、カリカリする時期です。そんな時は刺激せず、優しく話を聞いてあげながら、嵐が過ぎ去るのをひたすら待つこと。決して何か解決策を提示しようとしたり、いいアドバイスをしようなどとは考えてはいけません。何だかよくわからないなぁと思っても、「ふーん、そうなんだ」「へぇ〜、そうかぁ」と聞いてあげましょう。 初めての体外受精の場合、おそらく奥様はイライラするというよりも、最初は大きな不安から緊張されていることが多いと思います。だからいろんな場面で言いたいことや聞きたいことを我慢したりして、それがストレスになり、とんでもないところで爆発することも。そんな時、たとえ「どうしてそんなことで怒っているの?」と思っても、それをグッと飲み込んで、じっくり受け止めてあげてください。 気を使いすぎると今度はかえってプレッシャーになる とはいえ「ずっと寝ていたらいいよ」なんて過保護はかえって逆効果。奥様はそれだけ結果を期待されているんだなと感じてプレッシャーになります。「大事な時やから」は絶対に禁句。それは妊娠してから言う言葉で、特に妊娠の可能性がある時、体外受精の胚移植の後は絶対に言ってはいけません。 夫に手伝ってほしい家事といっても、仕事や生活スタイルによってさまざまだと思います。もし奥様が洗い物を始めたら、「今日は僕がやるよ!」とニッコリ笑顔で。「いつまで続くかわからない」なんて嫌みを言われても気にしない。「今だけかもしれないけど、とりあえず今日はやってあげる」でいいんです。ご飯を作るのが大変そうなら、代わりに作ってあげられなくても、外食や店屋物にしようと提案してあげたりね。 できることってそんなにないかもしれないし、たとえ今だけだって、女性はその気持ちがありがたいわけです。だからご主人は奥様の様子をよく観察して、「今日は大変だったね」と、しんどそうなところは率先してやってあげる。それでいいんじゃないでしょうか? <秀子の格言>「体外受精だから……ではなく、大変だったから優しくしてあげる。そんな気持ちが大切なんです」 田村秀子婦人科医院 田村 秀子先生京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科 医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。≫ 田村秀子婦人科医院 出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter≫ マガジンの記事がすべてご覧いただけます! 田村秀子先生の心の玉手箱 一覧はこちら
2016.12.21
コラム 不妊治療
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ストレスをためずに回避するためのコツとは? ~ジネコ妊活セミナー~
2016年5月29日に行われたジネコ 妊活セミナーより ストレスをためずに回避するためのコツとは? 2016年5月29日(日)、京都市内で「妊活セミナー in 京都」を開催しました。第1部では、ファイナンシャルプランナーの大曽真奈美先生に「妊活中に知っておきたいお金のこと」について、第2部では、田村秀子婦人科医院の田村秀子先生に「ストレスに負けない不妊治療」についてお話いただきました。今回は、第2部の一部をお届けします。 妊娠のメカニズムは神秘に包まれている! (はじめに)まず冒頭で、妊娠のメカニズムをドラマチックに描いた映像を上映された田村先生。たった一つの卵子を目指して数億の精子が旅をする、神秘に満ちた妊娠までの道のりをわかりやすく解説されました。すごいと思いません?みなさん!卵に向かう精子の旅で、卵の中に入っていけるのはたった一つの一番乗りの精子だけ。この映像で妊娠というものがいかにミラクルなことかわかっていただけたのではないでしょうか。不妊治療において、妊娠に対する感情は男性と女性では温度差を感じてしまうことが多いと思います。最初に女性の方に言っておきますけれど、女性は本能で子どもを持とうと思いますが、男性の父性は理性です。ですから、「なぜわかってくれないの?」ではなく、男性は女性の喜怒哀楽に付き合ってくれていると思っておいたほうがいいでしょう。女性の排卵後のイライラにもじっと耐え、そーっと嵐が過ぎ去るのを待ってくれています(笑)。そして、生理が終わったら人が変わったみたいに落ち込んでいるわけ。そういうときは後ろからそっと優しくハグしてあげてみてください。それも男性の大切な仕事だと私は思います。そして女性は自分の体ばかり眺めて毎日過ごさないこと。治療中だからといって、そのことばかりに縛られないことが大切です。毎月、きちんと生理がある人であれば、生理が来るのは当たり前。つまり生理が来ない確率のほうが低いわけです。生理が来る、来ないで一喜一憂すると必ずストレスにつながりますので、そう考えることで、少なからず心を平和に保つことができると思います。 ストレスはなぜ不妊の敵なのか 一般に「ストレスは体によくない」と言われていますけれど、では、どうしてストレスがかかると不妊にも影響が現れるのでしょうか?実はストレスが伝わるメカニズムと排卵が起こるメカニズムは、どのホルモンが分泌されるかという違いだけで、経路はすべて同じです。脳内から。つまり脳に強いストレスがかかって脳内のホルモンの乱れが起これば、同時に卵巣や子宮へのホルモンの乱れも起こっているわけですね。ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、これらはいわゆるストレスを司るキーとなる神経伝達物質ですが、中でも精神を安定させ、幸福感を生み出すセロトニンが不足すると体はバランスを崩し、健康が保てなくなります。よく言うのですが、不妊治療は受験勉強のようにはいきません。勉強は自分で到達度を決めて、それをやったらやっただけ「達成された!」という満足感が得られますが、不妊治療は“自分の努力の外”で結果が現れることがしばしばです。どんなに努力しようとも、妊娠という望んだ結果が得られるか得られないかわからない、そこに大きなストレスが生まれるのです。だからこそ、セロトニンを増やすことによって、自分の心の安定を図ることがとても重要です。 一番大切なのは平常心 では、セロトニンを増やすにはどうすればいいか?これはもうみなさんもよくご存知のことばかりかもしれませんね(笑)。早寝早起きなどの規則正しい生活、ウォーキングなどのリズム運動、太陽光を浴びる、バランスの取れた食事、呼吸を整えるなど……できるとことから少しでも取り入れていただけるといいでしょう。レーザー治療や鍼灸で思うように結果が出ないとき、最近、注目されている抗酸化物質、サプリメントなどを組み合わせることで効果が生まれる場合があります。でも妊活中のみなさんに私が心からお伝えしたいのは、一番大事なのは日々の生活で平常心を保つということ。みなさんは、目の前の「妊娠」に気を取られ、本来の自分の目標であるはずの「楽しい人生を送る」ということを忘れてはいないでしょうか。「子どもがいないと私の人生は完遂できない」そんな風に思っていませんか? 人生を形づくるジグゾーパズルの最後の一コマが妊娠ではないはず。たとえ妊娠できなくてもパズルは完成できるのです。先程お話したように、過剰な期待、過剰な不安はホルモンの乱れに通じ、幸福を感じるセロトニンの分泌を減らし、卵の質に影響を及ぼします。最近、夫婦で会話をしていますか?60歳になったときの夫婦の日常を想像してみたことはありますか?そのときを楽しく想像することができるよう、お互いを理解し合うことも大切です。子どもは巣立っていけば夫婦ふたりの生活なのですから。これは決して子どもを諦めるための考え方ではありません。あくまでもセロトニンを増やし、ストレスを軽減することで、卵の質を少しでもアップするための環境づくりと心得て実践してみてください。 「人間は弱いもの」という田村先生。ストレスをためない、回避するためのコツをすぐに実践できる身近なところから提案していただきました。人生の目標を見失わないためにも、目の前の妊娠だけにとらわれないこと、平常心が大切というお話に多くの参加者が勇気をもらうことができました。 田村秀子婦人科医院 田村秀子先生京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科 医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。高度生殖医療を必要とする方には最高級の治療を行うことに尽力をしている一方、そのような治療が必要でない方には出来るだけストレスがなく、「治療をしている」という意識を持って頂かないような診療を目指しています。≫ 田村秀子婦人科医院 ジネコ妊活セミナー 2016年5月29日に行われたジネコ 妊活セミナーより ストレスをためずに回避するためのコツとは? 2016年5月29日(日)、京都市内で「妊活セミナー in 京都」を開催しました。第1部では、ファイナンシャルプランナーの大曽真奈美先生に「妊活中に知っておきたいお金のこと」について、第2部では、田村秀子婦人科医院の田村秀子先生に「ストレスに負けない不妊治療」についてお話いただきました。今回は、第2部の一部をお届けします。 妊娠のメカニズムは神秘に包まれている! (はじめに)まず冒頭で、妊娠のメカニズムをドラマチックに描いた映像を上映された田村先生。たった一つの卵子を目指して数億の精子が旅をする、神秘に満ちた妊娠までの道のりをわかりやすく解説されました。すごいと思いません?みなさん!卵に向かう精子の旅で、卵の中に入っていけるのはたった一つの一番乗りの精子だけ。この映像で妊娠というものがいかにミラクルなことかわかっていただけたのではないでしょうか。不妊治療において、妊娠に対する感情は男性と女性では温度差を感じてしまうことが多いと思います。最初に女性の方に言っておきますけれど、女性は本能で子どもを持とうと思いますが、男性の父性は理性です。ですから、「なぜわかってくれないの?」ではなく、男性は女性の喜怒哀楽に付き合ってくれていると思っておいたほうがいいでしょう。女性の排卵後のイライラにもじっと耐え、そーっと嵐が過ぎ去るのを待ってくれています(笑)。そして、生理が終わったら人が変わったみたいに落ち込んでいるわけ。そういうときは後ろからそっと優しくハグしてあげてみてください。それも男性の大切な仕事だと私は思います。そして女性は自分の体ばかり眺めて毎日過ごさないこと。治療中だからといって、そのことばかりに縛られないことが大切です。毎月、きちんと生理がある人であれば、生理が来るのは当たり前。つまり生理が来ない確率のほうが低いわけです。生理が来る、来ないで一喜一憂すると必ずストレスにつながりますので、そう考えることで、少なからず心を平和に保つことができると思います。 ストレスはなぜ不妊の敵なのか 一般に「ストレスは体によくない」と言われていますけれど、では、どうしてストレスがかかると不妊にも影響が現れるのでしょうか?実はストレスが伝わるメカニズムと排卵が起こるメカニズムは、どのホルモンが分泌されるかという違いだけで、経路はすべて同じです。脳内から。つまり脳に強いストレスがかかって脳内のホルモンの乱れが起これば、同時に卵巣や子宮へのホルモンの乱れも起こっているわけですね。ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、これらはいわゆるストレスを司るキーとなる神経伝達物質ですが、中でも精神を安定させ、幸福感を生み出すセロトニンが不足すると体はバランスを崩し、健康が保てなくなります。よく言うのですが、不妊治療は受験勉強のようにはいきません。勉強は自分で到達度を決めて、それをやったらやっただけ「達成された!」という満足感が得られますが、不妊治療は“自分の努力の外”で結果が現れることがしばしばです。どんなに努力しようとも、妊娠という望んだ結果が得られるか得られないかわからない、そこに大きなストレスが生まれるのです。だからこそ、セロトニンを増やすことによって、自分の心の安定を図ることがとても重要です。 一番大切なのは平常心 では、セロトニンを増やすにはどうすればいいか?これはもうみなさんもよくご存知のことばかりかもしれませんね(笑)。早寝早起きなどの規則正しい生活、ウォーキングなどのリズム運動、太陽光を浴びる、バランスの取れた食事、呼吸を整えるなど……できるとことから少しでも取り入れていただけるといいでしょう。レーザー治療や鍼灸で思うように結果が出ないとき、最近、注目されている抗酸化物質、サプリメントなどを組み合わせることで効果が生まれる場合があります。でも妊活中のみなさんに私が心からお伝えしたいのは、一番大事なのは日々の生活で平常心を保つということ。みなさんは、目の前の「妊娠」に気を取られ、本来の自分の目標であるはずの「楽しい人生を送る」ということを忘れてはいないでしょうか。「子どもがいないと私の人生は完遂できない」そんな風に思っていませんか? 人生を形づくるジグゾーパズルの最後の一コマが妊娠ではないはず。たとえ妊娠できなくてもパズルは完成できるのです。先程お話したように、過剰な期待、過剰な不安はホルモンの乱れに通じ、幸福を感じるセロトニンの分泌を減らし、卵の質に影響を及ぼします。最近、夫婦で会話をしていますか?60歳になったときの夫婦の日常を想像してみたことはありますか?そのときを楽しく想像することができるよう、お互いを理解し合うことも大切です。子どもは巣立っていけば夫婦ふたりの生活なのですから。これは決して子どもを諦めるための考え方ではありません。あくまでもセロトニンを増やし、ストレスを軽減することで、卵の質を少しでもアップするための環境づくりと心得て実践してみてください。 「人間は弱いもの」という田村先生。ストレスをためない、回避するためのコツをすぐに実践できる身近なところから提案していただきました。人生の目標を見失わないためにも、目の前の妊娠だけにとらわれないこと、平常心が大切というお話に多くの参加者が勇気をもらうことができました。 田村秀子婦人科医院 田村秀子先生京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科 医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。高度生殖医療を必要とする方には最高級の治療を行うことに尽力をしている一方、そのような治療が必要でない方には出来るだけストレスがなく、「治療をしている」という意識を持って頂かないような診療を目指しています。≫ 田村秀子婦人科医院 ジネコ妊活セミナー 【人気コラム】ユーザーストーリー~あなたに伝えたいメッセージ~ 【人気コラム】田村秀子先生の心の玉手箱 【役立つ】不妊についてもっと知ろう!不妊とは? 【おすすめ】フリーマガジン「ジネコ」各号記事一覧
2016.9.12
コラム 不妊治療
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心の玉手箱 Vol.1 「不妊治療、頑張り過ぎでしょうか?」
相談者 コキュ さん(29歳) 今の私の生活は子どもを授かることが中心です。立て続けに人工、顕微、移殖と治療を繰り返しているのに、頑張っても結果が出ないのは、私にも原因があるから?次は次はと自分を奮い立たせてきましたが、最近は気持ちをどこへ持っていっていいのかわかりません。 -- 男性不妊のため、人工授精から不妊治療をスタートしたコキュさん。人工授精連続10回を経て、顕微授精、胚移植と治療を続けながら、「自分は頑張り過ぎでは?」と、悩んでいらっしゃいます。 秀子先生: このケースが頑張り過ぎかと聞かれると、やっている人は結構いると思うんですよ。決してやったほうがいいという意味じゃなく。 ただ、何が頑張り過ぎかっていうと、人工授精したことによって、期待して、落ち込んで、さらにお金もかかって、というアップダウンを繰り返しているから、それに疲れる。つまり、自分が無理をしていると思っているからしんどいんです。 これが、同じように人工、顕微と繰り返していても、自分で納得して行け行けどんどんでやっていれば、こんな投稿内容にはならない。文面からは、こけそうなところを息も絶え絶えに先生についていっている感じね。自分で100%納得してついていっていないから疲れるの。コキュさんはおいくつでしたっけ? -- 29歳ですね。 秀子先生: 29歳かぁ。まだ、若いんだし、私は30過ぎるまで一度休んでもいいと思うんだけどなぁ。でも、この方は30歳までに何とかしたい、なんてきっと思ってるはず(笑)。だから休んでも、宿題残して遊んでる、みたいな感覚になるんです。 疲れたら休んだらいいんです。まったく何もしなかったとしても、不妊治療など何もしないときと、いろいろやって疲れて、これだけやったら疲れるということを経験してからのお休み状態は明らかに違う。それが1ヶ月であろうと、半年であろうと、3年であろうと、コキュさんの場合は長すぎることはない。3年たっても32か33歳でしょ? ゆとりをもう一度自分の中に見い出すためにも、絶対に休むべき。何もせずに充電するための治療というのがあるんです。 -- 先生のお話は医学書に載っていることだけではなく、女性ならではの観点がユニークです。 秀子先生: 多分ね、男性はどうかわかりませんが、女性は感覚で自分の経験の中に何か置き換えないと心底わからない。料理であろうと、恋愛であろうと、自分が何十年だか生きてきた実体験の中で、「あ、なるほど」と思えてはじめて分かってくださることが多いの。「あ、あれと一緒じゃん」て、理解するのね。そのためにも、自分の中で消化吸収していくという作業が絶対必要でしょう。 当院には「禁足令」というのがありまして(笑)。「1ヶ月来たらダメ」とか、「○月まで来たらアカン」とか、私が決めるんです。休むに休めなくなっている人には、休憩できるように心のゆとりが必要だから。その代わり、笑顔で分かりましたと言ってもらえるまでお話しますよ。すると、1ヶ月、2ヶ月後に来られたときに、「ゆっくりできた? よっしゃ、ほな行こか?」と聞くと、「よし、やります!」と、たいてい充電できている。切羽詰まって自分からお休みしちゃう人もいるけれど、私は「とりあえず休む前に言ってね」とお願いしています。治療しながら卵巣を休ませるなど、お休みの仕方にもいろいろあるから。 -- なるほど。休むことでまた頑張れる。頑張り過ぎかどうかは、治療の内容ではないということですね。 秀子先生: そうね。このコキュさんの投稿を読んで、「私なんてもっとやってるわ」「何よこのくらい」なんて思う人もいるかもしれない。でも、その人との違いは、納得して治療を受けているかどうかだから。 私はうまくお休みに持っていってあげるのも、実は医者の役目なんだろうと思っています。治療方針に疑問を感じたら、勇気を出して医師に質問してみてほしい。食い下がるべきだと思う。何も言わないと納得してると思われちゃって、どんどん治療が先に進んでしまうなんてこともあるかもしれないから。自分で心底納得してはじめて、次のステージで頑張ることができるんです。 田村 秀子先生 京都府立医科大学卒業。同大学院終了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。ご主人も産婦人科医で、「自宅でも会話の4割は仕事のこと」とか。繊細な感性を秘めた、大らかな人柄が魅力の先生。みずがめ座のA型。 | 一覧ページ | 次号の記事 ≫ 相談者 コキュ さん(29歳) 今の私の生活は子どもを授かることが中心です。立て続けに人工、顕微、移殖と治療を繰り返しているのに、頑張っても結果が出ないのは、私にも原因があるから?次は次はと自分を奮い立たせてきましたが、最近は気持ちをどこへ持っていっていいのかわかりません。 -- 男性不妊のため、人工授精から不妊治療をスタートしたコキュさん。人工授精連続10回を経て、顕微授精、胚移植と治療を続けながら、「自分は頑張り過ぎでは?」と、悩んでいらっしゃいます。 秀子先生: このケースが頑張り過ぎかと聞かれると、やっている人は結構いると思うんですよ。決してやったほうがいいという意味じゃなく。 ただ、何が頑張り過ぎかっていうと、人工授精したことによって、期待して、落ち込んで、さらにお金もかかって、というアップダウンを繰り返しているから、それに疲れる。つまり、自分が無理をしていると思っているからしんどいんです。 これが、同じように人工、顕微と繰り返していても、自分で納得して行け行けどんどんでやっていれば、こんな投稿内容にはならない。文面からは、こけそうなところを息も絶え絶えに先生についていっている感じね。自分で100%納得してついていっていないから疲れるの。コキュさんはおいくつでしたっけ? -- 29歳ですね。 秀子先生: 29歳かぁ。まだ、若いんだし、私は30過ぎるまで一度休んでもいいと思うんだけどなぁ。でも、この方は30歳までに何とかしたい、なんてきっと思ってるはず(笑)。だから休んでも、宿題残して遊んでる、みたいな感覚になるんです。 疲れたら休んだらいいんです。まったく何もしなかったとしても、不妊治療など何もしないときと、いろいろやって疲れて、これだけやったら疲れるということを経験してからのお休み状態は明らかに違う。それが1ヶ月であろうと、半年であろうと、3年であろうと、コキュさんの場合は長すぎることはない。3年たっても32か33歳でしょ? ゆとりをもう一度自分の中に見い出すためにも、絶対に休むべき。何もせずに充電するための治療というのがあるんです。 -- 先生のお話は医学書に載っていることだけではなく、女性ならではの観点がユニークです。 秀子先生: 多分ね、男性はどうかわかりませんが、女性は感覚で自分の経験の中に何か置き換えないと心底わからない。料理であろうと、恋愛であろうと、自分が何十年だか生きてきた実体験の中で、「あ、なるほど」と思えてはじめて分かってくださることが多いの。「あ、あれと一緒じゃん」て、理解するのね。そのためにも、自分の中で消化吸収していくという作業が絶対必要でしょう。 当院には「禁足令」というのがありまして(笑)。「1ヶ月来たらダメ」とか、「○月まで来たらアカン」とか、私が決めるんです。休むに休めなくなっている人には、休憩できるように心のゆとりが必要だから。その代わり、笑顔で分かりましたと言ってもらえるまでお話しますよ。すると、1ヶ月、2ヶ月後に来られたときに、「ゆっくりできた? よっしゃ、ほな行こか?」と聞くと、「よし、やります!」と、たいてい充電できている。切羽詰まって自分からお休みしちゃう人もいるけれど、私は「とりあえず休む前に言ってね」とお願いしています。治療しながら卵巣を休ませるなど、お休みの仕方にもいろいろあるから。 -- なるほど。休むことでまた頑張れる。頑張り過ぎかどうかは、治療の内容ではないということですね。 秀子先生: そうね。このコキュさんの投稿を読んで、「私なんてもっとやってるわ」「何よこのくらい」なんて思う人もいるかもしれない。でも、その人との違いは、納得して治療を受けているかどうかだから。 私はうまくお休みに持っていってあげるのも、実は医者の役目なんだろうと思っています。治療方針に疑問を感じたら、勇気を出して医師に質問してみてほしい。食い下がるべきだと思う。何も言わないと納得してると思われちゃって、どんどん治療が先に進んでしまうなんてこともあるかもしれないから。自分で心底納得してはじめて、次のステージで頑張ることができるんです。 田村 秀子先生 京都府立医科大学卒業。同大学院終了後、京都第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。ご主人も産婦人科医で、「自宅でも会話の4割は仕事のこと」とか。繊細な感性を秘めた、大らかな人柄が魅力の先生。みずがめ座のA型。 | 一覧ページ | 次号の記事 ≫
2015.1.22
コラム 不妊治療