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PCOSの排卵誘発法、どんな方法がいいの?

コラム 不妊治療

PCOSの排卵誘発法、どんな方法がいいの?

2017冬号

2017.11.15

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PCOSの排卵誘発法、どんな方法がいいの?


田中 紀子 先生(田村秀子婦人科医院)







相談者:ことことさん(33歳)からの投稿


「PCOSの排卵誘発法について」
不妊原因はPCOSと両卵管閉塞です。1人目は1回の採卵、移植で授かりました。2人目に挑戦して3年。採卵を8回していますが、良い受精卵がなかなか育たず、移植は3回です。排卵誘発法は薬と注射を組み合わせていろいろ試しました。PCOSということもあり、刺激は慎重に行ってもらっていました。ですが、なかなか結果が出ないので転院する予定です。転院先の有名な不妊専門クリニックで排卵誘発法を聞いてきました。生理2日目で左右各10個以上の卵胞がありましたが、5日目からFSH150単位を5日間、それからはアンタゴニストと必要であればHMGを追加すると言われました。OHSSを経験しているので、注射が強すぎるのでは? と確認しましたが、低刺激だと卵胞が育たないと言われました。どの排卵誘発法がいいかアドバイスをいただけますか?



 



治療歴やPCOSの程度により医師や施設の方針はさまざま


PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは、月経不順の症状、それに超音波検査で小卵胞が10個以上みられ、血液検査では男性ホルモンが高値または月経中のLH高値かつ正常FSH値を満たすことから診断されます。卵胞の発育に時間がかかり、なかなか排卵できないため、不妊治療では内服薬や注射などの排卵誘発剤を使います。個人差はありますが、排卵誘発剤でも卵胞発育が遅い場合もあり、といって注射を使うと多数の卵胞発育が起こりやすく、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)になる可能性が高まります。そのため、排卵誘発剤の種類や量に注意が必要になります。また、体外受精で排卵誘発をしても、卵子そのものはたくさん採取できるけれども、質の良い卵子が育ちにくいこともあります。
 ことことさんは、以前の施設で薬と注射を組み合わせた排卵誘発法を試されたそうですが、きっとOHSSに注意しながら、慎重に排卵誘発剤を使っておられたのだと思うので、もしかしたら低刺激法だったのかもしれませんね。

そこで転院先の先生は、これまでの治療歴をみつつ、低刺激の方法で結果が出ていないことから、今までの方法からやり方を変えてみましょうと提案されたのでは。PCOSの程度にも個人差がありますので一様には言えませんが、アンタゴニスト法で注射の内容や量を微調整し、卵巣に適度な刺激を与えることで、成熟した卵子を複数個まとめて採卵できる可能性があります。ただ刺激を強めるとOHSSのリスクが出てくるので、注意は必要です。


PCOSの人にも使いやすいアンタゴニスト法


当院では、アンタゴニスト法、低刺激法、ロング法など、種々の排卵誘発法を用いていますが、その方の年齢、卵巣の機能(AMHやFSHの基礎値、前胞状卵胞数など)、これまでの治療での卵巣の反応の状態、PCOSの方ではOHSSの既往などから総合的に判断し、その方に合ったオーダーメイドの治療を提案しています。さらに他の施設から転院された方には、これまでの治療の内容、排卵誘発の方法、卵巣の反応状態などもお聞きし、参考にさせていただきます。近年は、卵巣機能が少し低下している30代後半以上の方も多く見受けられます。このような方の卵巣刺激には、当院ではアンタゴニスト法を選択することが多いですね。

アンタゴニスト法とは、採卵周期の3〜10日くらいまでFSH製剤やHMG製剤を使い、排卵を抑えるために途中からアンタゴニスト製剤を投与し、その後卵胞の大きさを見て、HCG製剤で卵子を成熟させて採卵する方法です。もともとご本人がもっている卵巣の力にお薬の力をプラスして、卵胞の発育と排卵をコントロールする方法なので、卵巣機能が少し低下している方にも適した方法です。また排卵誘発剤の注射の種類や量を微調整することにより、PCOSの方でも使うことはできます。PCOSの方は内因性のLHが高めなので、LHを含まないFSH製剤を中心に低用量から始めてもいいかも。


OHSSを回避しながら卵巣を適度に刺激する方法も


ことことさんが一番心配されているのはOHSSのリスクですね。OHSSとは、排卵誘発剤により卵巣が過剰に刺激されて高エストロゲン状態になり、卵巣が腫れる、腹水がたまる、お腹が張るといった症状が起こります。重症化すると血液が濃縮され、血栓症のリスクも高まります。通常はHCG製剤の投与によって出現します。また同一周期に妊娠すると、特に重症化します。

採卵周期の場合、受精卵をすべて凍結し、採卵周期とは異なる別の周期に凍結融解胚移植をすることによって、重症化を回避することができます。また最近では、採卵前のHCGの代わりにGnRHアゴニストの使用や、採卵後に高プロラクチン血症の薬であるカベルゴリンの服用もOHSSのリスクを下げる効果が期待できます。

またアンタゴニスト法以外にも、内服の排卵誘発剤と注射を組み合わせて卵子をしっかり育てて採卵する方法もあります。クロミフェン以外の内服薬には、アロマターゼ阻害剤(レトロゾール)があります。レトロゾールはエストロゲンの過剰な分泌を抑えながら卵巣を刺激するのでOHSSの予防効果を示す報告もありますが、アンタゴニスト法と同様、卵巣の反応をみながら注射を微調整することは必要です。
 あくまでもことことさんご本人の状態によりますが、OHSSのリスクを回避するような方法も取り入れながら、前回より少し強めの刺激法に挑戦されてもいいのかなと思いますね。




アンタゴニスト法を基準に状態に合わせてお薬の量などを微調整


どの排卵誘発法を選択するかは、ご本人の状態はもちろんのこと、治療歴、施設の方針やドクターの考え方によってそれぞれ異なります。卵巣機能が極端に低下している場合は別ですが、個人的にはアンタゴニスト法を基準にし、そのなかでお一人おひとりに合ったお薬の量を微調整しながら慎重に反応を見ていきます。それで結果が出ない場合は、低刺激やごく稀に刺激法(ロング法)に変えることもあります。


 








排卵誘発剤HMG/FSH製剤とは?!


●どんな排卵誘発方法で使用するの?
体外受精で一度に複数の卵子を採卵する時に用いられます。ホルモン(FSHとLH)の含有量に違いがあり、ご本人の状態によって選択されます。

●メリット、デメリットは?
HMG製剤、FSH製剤は人の尿由来のため、精製方法やロットにより成分に少しバラつきがあります。リコンビナント製剤は遺伝子組み換えによって製造されているため、FSHとLHの混在がなく品質は安定していますが、費用は高めです。

●使用されている製品例
FSH製剤(ゴナピュール®、フォリルモンP®など)、HMG製剤(HMGフェリング®、HMGフジ®、HMGテイゾー®など)、リコンビナントFSH製剤(フォリスチム®、ゴナールエフ®)


 





 





田中先生より まとめ


OHSSのリスクを回避しつつ前回より少し強めの刺激法もいいと思います



 



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お話を伺った先生のご紹介





田中 紀子 先生(田村秀子婦人科医院)


京都府立医科大学医学部大学院修了。医学博士。2年間のアメリカ留学、扇町ARTレディースクリニック勤務を経て、2008 年3月より「田村秀子婦人科医院」勤務。生殖医療の現場に長年携わった経験から、近年は女性の心と体の健康をサポートする女性医療への関心が高まり、学会、勉強会などに積極的に参加。「留学中にアメリカで食べたあの味を再現したい!」と突然思い立ち、ベーグル作りにハマっているという先生。持ち前の探究心を発揮し、一人の世界に没頭できる時間は、日々のストレス解消にもなっているそうです。

田村秀子婦人科医院


 


 


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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