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胚盤胞まで育たず、初期胚移植も失敗。卵子の質は上げられる?

コラム 不妊治療

胚盤胞まで育たず、初期胚移植も失敗。卵子の質は上げられる?

2017冬号

2017.11.21

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胚盤胞まで育たず、初期胚移植も失敗。卵子の質は上げられる?


山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック)




 


低AMH、高FSHの43歳。完全自然周期から顕微授精まで、いろいろ試しても結果が出ず、今後の治療に悩んでいます。うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に伺いました。




とらたんさん(43歳)からの相談


相談内容


低AMH、高FSHで5年間不妊治療をしています。4回転院して採卵13回、初期胚移植4回。初めての採卵で化学流産をして以来、着床したことがなく、培養しても途中で分割が止まり、胚盤胞まで育ちません。今の病院で男性不妊と言われて顕微授精をしていますが、いつも受精はします。クロミッドⓇ、HMG注射、完全自然周期も試してきました。初期胚でも妊娠せず、胚盤胞まで育たないので凍結胚移植もできず、今後の治療に悩んでいます。卵子の質が良くないので、調整周期など採卵前にサプリや薬で治療するような病院に行ったほうがよいのでしょうか。

 


これまでの治療データ


●検査・治療歴
タイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精、ヒューナーテスト、子宮鏡検査、卵管造影検査、ホルモン検査、精液検査

●不妊の原因となる病名
男性不妊との診断あり

●不妊の原因となる病名
精液量107ml、濃度2800万/ml、運動率51%、奇形率は直進精子+

●精子データ
通常の3倍以上(正確な数値不明)

●漢方・サプリメントの使用
ビタミン系サプリ(葉酸を含む)、美容系サプリ、コラーゲン、漢方薬



 



とらたんさんは今後の治療に悩まれています。先生はどう思われますか。


低AMH、高FSHで年齢が43歳とのことですね。厳しいようですが閉経が近い状態といわざるをえません。高齢であることを前提に「卵子が採れない」「卵子は採れても受精しない」「胚盤胞まで育たない」「初期胚移植しても結果が出ない」という方には、現代の医学では治療に限界があり、たとえ妊娠できたとしても流産のリスクが高くなります。いずれにしても治療は急がなければなりません。この方がおっしゃるように卵子の質を上げる何らかの工夫が必要です。


卵子の質を上げるために、先生が着目していることはありますか?


最近、欧米はじめ日本ではアンチエイジング(抗老化・抗年齢)ではなく、リバースエイジング(若返り)が注目されています。老化のタイプやスピードは人それぞれに異なりますが、30代半ばから40代以降に個人差がはっきり出てくるといわれています。そこで、赤ちゃんを希望される方は、卵子と卵巣のホルモン年齢を実年齢よりも若く保つことが重要になります。いま着目しているのが、卵子と卵巣の老化に影響するといわれる5つの体内物質です。

●成長ホルモン(IGFー1)…睡眠・運動・食事によって分泌が促され、骨や筋肉に欠かせないホルモン。卵巣機能にも密接に影響しているといわれています。
●DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)…副腎から分泌されるホルモンの一種で、女性ホルモンや男性ホルモンをつくる働きがあります。DHEAが減少すると冷えやすくなったり、むくみやすくなるといわれています。
●メラトニン…脳の松果体から分泌され、眠りを誘う睡眠ホルモンの一種。活性酸素を除去し、卵巣や胎児の脳を守る働きもあるといわれています。
●酸化ストレス…身近なエネルギー活動によって体内のあらゆる細胞を酸化させる有害な化学反応のことをいいます。たとえば、卵子の成長によってエネルギーの代謝が上がると酸化ストレスも高くなります。抗酸化能力が低下していると卵子の発育に影響します。
●AGE(終末糖化産物)…タンパク質と糖が加熱されてできる物質です。加齢、高血糖、喫煙にともなう酸化ストレスによって体内でつくられるAGEと、食物から体内に入るAGEの大きく2つがあります。どちらも体内に蓄積されると胚の発育を抑制し、胚の分割や胚盤胞の形成に影響するといわれています。


卵子の質を上げる具体的な方法はありますか?


老化によって体内には酸化ストレスやAGEといった不純物がたくさん蓄積されます。特に卵巣は活性酸素に弱い傾向があります。その活性酸素を除去できるのが運動とサプリメントです。つまり卵子の質を上げるために卵巣の環境を変える必要があるということです。

そこでまずは運動習慣を身につけることです。2014年に、週3日1日45分有酸素運動で、動脈硬化が改善し、血管拡張作用のある一酸化炭素(NO)産生が増加すると報告されています。有酸素運動は血管拡張により骨盤血流を改善し、その結果、卵巣血流の増大と卵巣機能の回復が期待されます。また、有酸素運動により、成長ホルモンがリパーゼの産生を促進し、リパーゼが中性脂肪を分解し、遊離脂肪酸を血液中に放出し細胞のエネルギーとして使用します。

一方、サプリメントについては、体内に不足している物質を補うという発想で若返りをめざすものです。とらたんさんもビタミン系、美容系のサプリメントを使用されていますが、当院であれば数あるサプリメントのなかでも、DHEAやメラトニンをはじめ細胞の老化を引き起こす活性酸素を除去するポリフェノールや脂肪酸をミトコンドリアに運搬して、ミトコンドリアの機能を改善し、老化を抑制するLカルニチンをおすすめします。

ただし、サプリメントは3カ月間継続しないと効果を実感できません。先ほどもお話しした通り、治療に残された時間は少ないですから、運動、サプリメント、不妊治療の同時進行がカギになります。この方の場合、初期胚まで育っていますので、さらにタイムラプスで精密な評価を行うと、いい初期胚に出会える可能性はあります。新鮮胚移植にトライしてみるのも一つです。


最後にアドバイスをお願いします。


運動やサプリメントの指導もしてくれるクリニックに行かれるのはいいことだと思います。当院でも、リバースエイジングに向けてオリジナルエクササイズとサプリメントを取り入れたリバースエイジングプログラムを展開していきたいと考えています。

体外受精の成功率は25歳の方でも40%。残りの60%は残念な結果に終わっています。不妊治療を続けるうちに年齢を重ね、疲労だけが残ってしまう方も少なくありません。当院は不妊治療とともに、患者様の若さと健康のサポートをしていきたいと考えています。年齢的なリミットがある方にとってリバースエイジングのメリットは大きいと思います。不妊治療で良い結果が得られなくても、年齢に調和した健康や若さを保つことができれば、夫婦のあり方や人生の向き合い方も変わってくると思います。




Doctor’s Advice


●年齢的なリミットを考えて早めの治療を。
●運動とサプリによる卵巣の若返りにチャレンジ。
●タイプラプスでいい初期胚が見つかる可能性も。



 



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お話を伺った先生のご紹介





山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック)


大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。各患者様の背景に配慮した“オーダーメイド治療”をめざす。日本産科婦人科学会認定医、生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、臨床遺伝専門医。趣味はゴルフ・映画鑑賞・ピアノ。リバースエイジング(若返り)に着目している同院では、オリジナルエクササイズとサプリメントによる新たな治療プログラムを考案中とのこと。これからの時代は「健康的、若く、美しく」が不妊治療のキーワードになるのかもしれません。


≫ うめだファティリティークリニック


 


出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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