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産後6ヵ月半、産後うつが治りません。

コラム 妊娠・出産

産後6ヵ月半、産後うつが治りません。

妊娠・出産 コラム

2017.4.20

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産後6ヵ月半、産後うつが治りません。


2017/4/20 長井 敏弘(ハンス心療内科 理事長)







匿名(会社員 / 32歳)


妊娠中はとてもうれしく、早く子供に会いたいと思っていました。
うつ症状は出産直後からだったと思います。
最初から子供をかわいいと思えず、今でもあまり気持ちが変わりません。わが子を愛せないのがとてもつらいです。精神科に9月中旬から通い始め、抗不安薬を飲み始めました。
なかなか症状がよくならないため、11月から病院を変え、現在は心療内科に通っています。(実家にいるので今は電話での診療です)抗不安薬、抗うつ剤、胃腸薬などを飲んでいます。



 



●相談者の症状は、うつと考えられますか?


産後10日以内に憂鬱な気分になりますが、これはマタニティーブルーと呼ばれ、放っておけば治る一過性の症状です。しかし、産後数週間から数ヶ月以内にうつ症状が発症して、不安やイライラを伴った症状が2週間以上続く場合は「産後うつ」と診断します。


「産後うつ」の主な原因は、妊娠から出産にかけて、体の中で大量にホルモンが出たり無くなったり、大変化を起こすことにあります。特に脳内ホルモンの一つである『セロトニン』の不足は大きな影響を与えます。セロトニンは癒し系ホルモンとか幸せホルモンなどと呼ばれ、例えば、運動して汗をかきその後シャワーを浴びるとスッキリした気持ちになった時に分泌されます。


これが不足するとかなり精神的に不安定になり、ましてや出産から1ヶ月間は3時間おきの授乳のため睡眠がとれず、さらに泣くのが仕事の赤ちゃんにずっと付き合わなくてはならないわけですから、その大変さは想像を絶するものでしょう。


●飲まれている薬はどのようなものですか? 授乳でも問題ないでしょうか?


抗うつ薬の中でもSSRIと呼ばれる薬は、脳内のセロトニンの量を増やす作用がありますが、効いてくるまで時間がかかります。一方、抗不安薬は服用した時から効果は実感できますが、依存性があり服用を長期間続けると、やめる時に不安や焦燥感が出現します。


もし、授乳をしているなら、確実に赤ちゃんも薬の作用にさらされると思ってください。われわれ医師は、人工乳に変えるなどのアドバイスをしますが、どうしても授乳を中止できない場合は、お母さんの「うつ」によるリスクが、赤ちゃんに与えるリスクを上回ると判断した時のみ、軽い薬を処方します。


●先生なら、どのような治療が考えられますか?


産後は心身ともに弱くなっており、なるべく薬は使いたくないのですが、患者さん自身ではどうにもできません。心理カウンセリングも効果はありますが時間がかかります。実は、欧米の先進国ですでに保険適用となり画期的な成果を上げている『TMS磁気刺激治療』という最新のうつ病治療があり、現在、多くの大学病院や医療センターで治療が行われています。当院では、平成26年5月から治験で使用されているのと同じ機器を導入、治療を始めましたが、多くの方が短期間で症状が改善しました。


そもそも、うつ病は「心の病気」ではなく「脳の病気」だと言われており、実際、うつ症状にある患者さんの脳の代謝は低下しています。この治療法は患者さんの脳の一部に磁気刺激を与え、うつや不安の関わっている「扁桃体」という部分を安定化させるもので、副作用はほとんどありません。


現在、日本ではまだ保険適用となっておらず自己負担ですが、「産後うつ」で苦しんでおられる方は是非、この治療を受けてみてはいかがでしょうか。


 


 



お話を伺った先生のご紹介





長井 敏弘 先生(ハンス心療内科 理事長)


専門:心療内科・精神科。広島大学医学部卒業。元岡山大学医学部臨床教授・日本医師会認定産業医・認知症サポート医・広島城北医会会長。TV・ラジオなどのメディアに頻繁に出演。広島テレビ「テレビ派」レギュラー出演。企業や学校関係などで多数講演。月刊紙Wendyにコラム連載中。著書:「医学でうかる勉強法」(すばる舎)など。

ハンス診療内科


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