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コラム   >   不妊治療の広場   >   その他   >   小さな筋腫でも胚移植前に 切除するべきでしょうか?

小さな筋腫でも胚移植前に 切除するべきでしょうか?

小さな筋腫でも胚移植前に切除するべきでしょうか?

山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック)

 

子宮筋腫の治療と不妊治療のいずれを優先するべきか、夫婦で相談しても結論が出せない問題。うめだファティリティークリニックの山下能毅先生に伺いました。

相談者:ますペンさん(40歳)

子宮筋腫1㎝、でも場所が……

不妊治療を始めて1年半。これまでタイミング療法、人工授精3回、体外受精2回挑戦してきましたが、いずれも妊娠に至りませんでした。1回目の体外受精で8週目に流産、現在は良好胚盤胞1個(4AB)ともう1つ(3BC)を凍結しています。現在、来月の胚移植に向けて準備中ですが、2回目の体外受精の前から、クリニックの医師に超音波で「子宮上部に1㎝の筋腫がある。大きくはないが場所が悪い」と言われていました。別の医師からは「小さいけど内膜を圧迫して着床の妨げになるだろう」とも。手術をして切除するか、このまま来月移植するかの選択を迫られました。もし妊娠に問題がないようなら、1㎝の大きさで手術の話なんてするわけないし……とも思います。仕事の関係ですぐに手術・入院というわけにもいきません。もうすぐ40歳になるので、治療がどんどん遅れてしまうのも不安で夫とともに大変悩んでいます。

 

まずは子宮鏡検査やMRIでハッキリとした診断結果を

子宮筋腫が不妊の要因となっているかどうか、実際に見極めるのは大変難しい問題です。結論から言えば、筋腫の核出術で体外受精の成績が上がったという報告や論文がたくさんありますので、ぜひ前向きに手術を検討されてはいかがでしょうか。そのためにも、筋腫が着床不全など不妊の原因となっていないかどうか、きちんとした検査で判断することが重要です。

子宮上部に筋腫があるとのことですが、ご相談ではまだエコー検査しか行っておられないようです。まずは子宮鏡検査やMRI検査でしっかりと診断を受けることが必要かと思います。子宮内膜を変形させる粘膜下筋腫は、体外受精の着床率、妊娠率を明らかに低下させるため、子宮鏡による核出術が推奨されています。一方、子宮内腔の変形を伴わない筋層内筋腫では、体外受精の成績、および妊孕性への影響については議論の余地があり、まだはっきりとした結論が出ていない状態です。

いずれにせよ、きちんと画像による検査を受けて、本当はどういう状態になっているのか確かめたほうがいいでしょう。そして筋腫が子宮の内腔を圧迫し、着床障害の原因と考えられるのであれば、担当のドクターのおっしゃる通り、着床環境を整えるための手術の適応になると思います。

手術をするメリットとデメリットについて知る

直径1㎝の筋腫といえば、エコー検査がまだ普及していなかった頃には、おそらく見つけられなかったようなごく小さな筋腫です。一般女性の約30%は筋腫をもっていますから、過多月経で貧血を起こすような方や、月経痛がひどい場合を除いて、1㎝程度の大きさでは基本的に手術はしないでしょう。

しかし、気になるのは40歳という年齢と、1回目の体外受精で流産されていることです。現在、体外受精によって妊娠を目指していて、子宮内腔に少しでも着床障害が疑われるような要素があれば、それはやはり早期に取り除いていったほうがいいと思います。

手術をするメリットとしては、今の段階なら筋腫が小さいので、子宮鏡か腹腔鏡でお腹を切らずに核出手術ができるということ。手術のリスクも最小限で済み、子宮の内腔がきれいになって着床環境を整えられることです。不妊治療の過程で筋腫はどんどん大きくなっていく可能性もありますので、もし手術するのであれば早めに行ったほうがいいでしょう。

一方のデメリットとしては、術後に子宮が再生するまでの2〜3カ月は避妊が必要なので胚移植ができないこと。そして腹腔鏡による核出術をした場合、分娩時に子宮が破裂するリスクがあるため、帝王切開となることが一般的です。自然分娩は諦めていただかなければなりません。もし子宮鏡による核出術であれば、お腹を切らずに普通に分娩できる可能性もあります。

手術に踏み切るのは不安。どのような手術なのでしょう?

子宮筋腫の治療法には手術と薬の2つがあります。薬を投与して人工的に閉経の状態にする偽閉経療法もありますが、不妊治療をされている40歳の方には卵巣への負担が大きくおすすめできません。治療となればやはり核出術が選択肢となります。

現在、子宮筋腫の手術は子宮鏡を使って行うことが一般的です。開腹手術ではありませんので、入院期間の目安としては日帰りか1泊2日、腹腔鏡でも4泊5日くらいでしょうか。子宮鏡とはいわゆる内視鏡と呼ばれるもので、胃カメラのような細いファイバースコープを子宮口から挿し入れ、子宮内腔を観察しながら行う子宮鏡下手術です。子宮鏡検査の段階で筋腫やポリープなどの異常が見つかれば、そのまま子宮鏡下手術で切除できる場合もあります。

お腹を切らない腹腔鏡下手術の場合、筋腫の大きさが3㎝とか5㎝であれば問題ないのですが、1㎝くらいの小さな筋腫だと、手術中に、部位を特定することが難しい場合があるので、できれば多くの症例を手がける腹腔鏡の専門施設で行うのが望ましいです。

もともと手術をすること自体、女性にとっては大きなストレスで、卵巣機能が落ちることがあります。40歳という年齢ではなおさら、一時的にAMHの値が下がったりすることもあるでしょう。やみくもに手術をおすすめするものではありませんが、担当医やご夫婦でよく話し合ってメリットとデメリットを検討し、術前の検査によって筋腫がある位置をきちんと確かめてから手術に進んでほしいですね。

今後の治療の進め方についてアドバイスをお願いします

もし子宮内腔の変形がないのであれば、子宮鏡の検査だけ受けてどんどん不妊治療を優先されたらいいと思います。今まで一度も体外受精、胚移植をされたことがないのでしたら、手術前の胚移植をおすすめしますが、幸い体外受精に2回挑戦されていて、良好な胚盤胞を2個凍結されているとのこと。

40歳という年齢を考えると、子宮筋腫を切除しても妊娠率が100%になるわけではありませんが、手術前に採卵して凍結胚を保存してから、手術後に移植を再開していく方法もあると思います。年齢的な焦りもあるでしょうが、いろいろな形が考えられるので、ドクターとよく相談されたうえで積極的に治療を進めてください。

 

山下先生より まとめ

まずは詳しい検査が必要。着床に影響が考えられるなら筋腫の切除後に胚移植を。

 

 

 


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お話を伺った先生のご紹介

山下 能毅 先生(うめだファティリティークリニック)

大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニックの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。各患者様の背景に配慮した“オーダーメイド治療”をめざす。日本産科婦人科学会認定医、生殖医療専門医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、臨床遺伝専門医。趣味はゴルフ・映画鑑賞・ピアノ。2017年4月17日、クリニックの名称を「宮崎レディースクリニック」から「うめだファティリティークリニック」へと変更。宮崎和典院長を名誉院長に、これからも宮崎先生と山下先生の二人三脚体制で最新の生殖医療に取り組まれます。

≫ うめだファティリティークリニック

 

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer
≫ 掲載記事一覧はこちら

 

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