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コラム   >   不妊治療の広場   >   その他   >   ロング法とアンタゴニスト法、初めての体外受精で選ぶ誘発法は?

ロング法とアンタゴニスト法、初めての体外受精で選ぶ誘発法は?

ロング法とアンタゴニスト法、初めての体外受精で選ぶ誘発法は?

小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京)

相談者:にゃんこさんさん(35歳)からの投稿

「体外受精の方法」
私は子宮内膜症と子宮筋腫もちです。卵管癒着もあります。今度、初めて体外受精をすることにしました。どの体外受精準備方法がいいのかわからなくて困っています。最初、先生にアンタゴニスト法といわれていたのですが、それは「8月に体外受精!」と私がいったから「準備がいらない」との理由みたいで。「9月でいいならロング法でもいい」と先生にいわれました。ロング法のほうができる卵子も多いと聞きました。また、ロング法だと腫れる可能性もあることも聞きました。どちらの方法でもいいといわれましたが、余計わからなくて。どの方法がいいのか教えてください。

 

ロング法は注射の量が増えて過剰刺激になるリスクが

排卵誘発法について、ロング法とアンタゴニスト法、どちらがいいのか悩まれているようですが、まず、それぞれの特徴についてご説明していきましょう。

ロング法はGnRHアゴニストというお薬を使う方法です。日本では点鼻薬を使いますが、それにより体の内因性のLHサージが抑えられるので、卵子が発育するまで排卵することなくうまくコントロールすることができるんですね。ただし、点鼻薬で排卵を抑えると完全に自然の排卵をしない状態になってしまいます。人為的に下垂体機能不全のような状況を作ることになり、そのうえでFSHやHMGを使っていくということで、総体的に注射の量が増える傾向にあります。

また、この方法の場合、HCGを必ず打たないと成熟卵を得ることができません。HCGはそれなりにいいお薬なのですが、使うことによって卵巣が腫れてしまうOHSS(卵巣過剰刺激症候群)を起こすリスクがあり、この方法が使われ始めた1990年初頭くらいに大きな問題になりました。

ですので、ロング法は簡便でオートマチックではありますが、潜在的に過剰刺激のリスクがあるので、特に若い方、卵巣の予備能がいい方、あるいは多嚢胞性卵巣の方といった場合には注意して使う必要があります。

オーダーメイド的な治療ができるアンタゴニスト法

一方、アンタゴニスト法では排卵を抑える作用のあるお薬としてGnRHアンタゴニストを用います。これは月経周期の8日目やそれ以降、卵胞が14㎜を超えたところから使っていくもの。後半に3、4回使うような形になるので、前半のお薬は毎日使う必要はなく、反応のいい方であれば2日に1回と減らしたり、クロミフェンやレトロゾールを併用するなど、その方に合ったオーダーメイド的な形をとることができます。

ですから、ある程度卵子が採れる可能性がある方、卵巣の予備能が良くて胞状卵胞も多い方であれば、OHSSなどのリスク回避ということを考えるとアンタゴニスト法のほうがいいのではないかと思います。

誘発法を決める際、主治医の先生から「アンタゴニスト法なら準備がいらない」といわれたようですね。ロング法の場合、生理が来る1週間くらい前から点鼻薬を使いますが、そのスタート時点で残留卵胞があったり、卵巣の腫れがあるとそれが点鼻薬の刺激で大きくなってしまうので、スタートラインで状態が落ち着いている必要があります。

そのため、先生によっては前の周期にピルやホルモン補充で排卵を一度抑えて、そのうえでロング法を始めるというケースがあるので、準備というのはそういう意味でおっしゃったのではないでしょうか。

ロング法のほうが強く刺激をするので、その分採れる卵子の数も多くなりますが、だからといって必ずいい卵子ができるということではないので、リスクを考えればまずはアンタゴニスト法でスタートするという形をとってもいいのではないかと思いますね。当院でも、年齢が35歳の方なら第一選択としてアンタゴニスト法をご提案しています。

さらに、アンタゴニスト法はリスク回避のほか、次の周期にスムーズに治療に取りかかれるというメリットもあります。

全胚凍結の治療で考えた場合、ロング法やショート法だと反応が強いので、遺残卵胞を起こす可能性があり、次の周期に卵巣が腫れていることが多いんですね。また、ずっと排卵を抑えているので、次の周期に生理不順というか、スタートしてもなかなかうまく排卵しないということが起こる可能性があります。

それに比べるとアンタゴニストは血中に留まる時間が短く、比較的早く体から抜けるので、次の周期に月経周期が不順にならないことが多く、レトロゾールやフェマーラ®を使った場合はさらに周期の回復が速やかになるというふうにいわれています。

コツを要する誘発法なので経験豊富な医師のもとで

では、アンタゴニスト法にデメリットはないのかということですが、アンタゴニスト法は後半に排卵を強く抑えてしまうことで、黄体機能が落ちることがあります。特に点鼻薬でLHサージを起こした場合、その後に着床を支える黄体ホルモンの分泌が低下することがあるんですね。ですから、十分に黄体補充をしなければいけないケースも出てきます。ただ最近は、採卵後に胚を移植せずに凍結するという考え方が多くなっているので、その範囲ではアンタゴニストを使うことにまったく問題はないと思います。

もう一つ、オートマチックでどんな先生でも均一的な治療ができるロング法やショート法と異なり、アンタゴニスト法はアンタゴニストを使うタイミングやホルモンの補充、薬の加減などに若干のコツを要します。

ただそれも症例を多く扱い、経験が豊富な施設や先生なら問題なく、その方の状態に合わせてうまく用いれば、結果を十分期待できる方法だと思います。

排卵誘発方法のファーストチョイスは?

バランスをとりながら進めるアンタゴニスト法を
車でいえばロング法やショート法は大排気量のオートマチックでガンガン行くアメ車、アンタゴニスト法はギアチェンジしながらバランスをとって進んで行く日本車というイメージ。卵巣の予備能が良くて胞状卵胞も多い人で初めての排卵誘発ということであれば、OHSSなどのリスクを回避し、薬のさじ加減もできるアンタゴニスト法のほうがいいのではないかと思います。

 

GnRHアンタゴニスト製剤とは?

よく使われている製品例:ガニレスト®、セトロタイド®など
●どの誘発法で使用するの?
GnRHアゴニストと同じく排卵を抑える注射薬で、アンタゴニスト法で使われます。

●副作用はあるの?
まれにかゆみや湿疹が出る場合があり、どうしても体質に合わない場合は、ロング法やショート法に変えることもあります。

 

 

小田原先生より まとめ

アンタゴニスト法ならリスクを回避でき、次の周期もスムーズに治療できる

 


[無料]気軽にご相談ください

 

お話を伺った先生のご紹介

小田原 靖 先生(ファティリティクリニック東京)

東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987 年、オーストラリア・ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。東京慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を経て、1996 年恵比寿に開院。治療以外でも患者さんのフォロー体制が整っている同クリニック。毎月開催されるセミナーのほか、疑問が残る場合は、専門のカウンセラーによる治療や遺伝、心の悩みの相談も随時受け付けています。サーフィンが趣味の小田原先生。今年は波が少なく、海に行くサイクルと波のサイクルがなかなか合わないとか。その分、ジムでトレーニングに集中。下半身をもっと鍛えて、かっこいいボトムターンができるようになりたいそうです。

ファティリティクリニック東京

 

 

出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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