体外受精で通院中。採卵がうまくいきません。良い卵子を育てるには?
コラム 不妊治療
体外受精で通院中。採卵がうまくいきません。良い卵子を育てるには?
「2月の採卵時は大丈夫でした。サプリメントはDHEA、ARTサポート、メラトニンなどを飲んでいます。」
体外受精で通院中。採卵がうまくいきません。良い卵子を育てるには?
相談者:マキアートさん(45歳)
採卵がうまくいかない、どうしたらいい?
不妊治療を始めて半年、体外受精のために通院中です。1回目は2月に採卵し、受精卵が2つできました。その後、受精卵を凍結、胚移植を行いましたが、着床にはいたらず。2回目以降、採卵を試みています。ただ、エストロゲン値が低く、2ヵ月連続で採卵が見送りに。先月(6月)と今月は排卵誘発剤のフェマーラⓇを5日間服用。フェマーラⓇは服用するとエストロゲン値が低くなると聞きましたが、薬のせいではないですよね?今月は卵胞が大きく育ちすぎ、病院も夏休みにかかるため採卵ができませんでした。年齢も気になり、今後どうすればいいのでしょう?現在、運動はしていませんが、体重調整や食事などに気をつければ、良い卵子が育つのでしょうか?アドバイスをお願いします。AMHは3ng/mlくらい、精子の運動率は最初の検査で悪かったのですが、2月の採卵時は大丈夫でした。サプリメントはDHEA、ARTサポート、メラトニンなどを飲んでいます。
マキアートさんは採卵がうまくいかず、排卵誘発剤との関連性を気にされています。
波多野先生:不妊治療で処方されるフェマーラⓇについて先に詳しく説明しましょう。フェマーラⓇはアロマターゼ阻害薬として、閉経後の女性の乳がん治療に使用されています。乳がんは女性ホルモンの一つエストロゲンの影響を受けて増殖します。そのため、薬剤でエストロゲンの分泌を抑えて増殖を抑制するというものです。
ただし、エストロゲンは閉経前は卵巣から分泌されますが、閉経後は副腎皮質から分泌される男性ホルモンを原料に、アロマターゼという酵素によって合成されます。アロマターゼが阻害されると、閉経後の女性ではエストロゲンの生成が抑えられます。
ではなぜ、排卵誘発剤として働くのか。エストロゲンが多い状態では、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)の分泌が抑制されています。ところがエストロゲンが少ない状態では、これらの分泌が促進されて卵子が成熟し、排卵が誘発されます。閉経前の女性が不妊治療でフェマーラⓇを服用すると、エストロゲンの合成が阻害されエストロゲン低値となるため、排卵が誘発されるのです。
マキアートさんは、エストロゲンの値が低く採卵ができなかったとのことですが…。
波多野先生:このような事例は、たまに見られます。卵子の発育にともなってエストロゲンは増えてきます。フェマーラⓇは5日間だけの服用なので、影響はありません。採卵とは関係はないと思っています。
むしろ、マキアートさんの年齢でAMHの値が3ng/mlで、また採卵時には受精卵が2つもでき、そして胚移植もされていますよね。これらの結果をみると、同年代の女性に比べ、本当に卵子が優秀といえます。
というのも、当院では40代以上の患者さんは4割を超えます。45歳で採卵をチャレンジしている方もいらっしゃいますが、採卵できずに治療が終了することも時々あります。マキアートさんの卵胞が反応するあいだは、希望をもって頑張ってみてください。
良い卵子が育つ条件とは?
波多野先生:良い卵子の育て方と聞かれると、その答えは一番難しいですね。特にこれが良い、と断定できるものはありませんが、一ついえるのは、卵子に少しでもダメージを与えないこと。具体的には、十分な睡眠と適度な運動が大切だと考えています。そして、精神的にも動揺しない、ゆったりとした気持ちをもつように心がけます。これをしなきゃいけない、などと自分でルールを作って追い込まないようにしましょう。楽しみながら毎日を過ごしてほしいですね。
年齢的には厳しくなってきますが、チャンスを逃さないように。
ノア・ウィメンズクリニック 波多野 久昭 先生
日本医科大学卒業。ハンブルク大学産婦人科学教室留学後、日本医科大学付属病院産婦人科学教室講師、飯田市立病院産科科長を経て、2005年ノア・ウィメンズクリニックを開院。開院して10年目、2015年10月からは電子カルテを導入。「初心を忘れないように」と意気込んでおられました。5年ほど前から年末年始は、スペインやイタリア、ウィーンなどを訪問、歴史ある建物を見て楽しまれているそう。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.27 2015 Winter
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