産道感染症ってどんなこと?
ママのお腹の中の赤ちゃんは、羊水によって様々な雑菌から守られています。産道(さんどう)を通って生まれるときも、殺菌作用のある羊水に守られています。しかし何らかの理由でお産の時間が長くなると、赤ちゃんが産道(腟)から外陰を通り抜ける際に、病原体に感染するリスクが高くなります。
病原体のなかには赤ちゃんの全身に広がり、敗血症を起こして多臓器不全につながるものもあります。死亡率が高かったり後遺症が残ったりする病原体にはどんなものがあるのでしょうか。事前に知っておきましょう。また、不安があるときは前もって主治医に相談しておくといいですね。
B群溶連菌感染症―ごくありふれた膣の中によく見つかる菌
B群溶連菌は膣の常在菌で、妊婦さんの10~20%の人が持っています。この菌を持っている妊婦さんから生まれた赤ちゃんの50%からこの菌が発見されます。菌が発見された赤ちゃんの中で、重症感染症を発症するのは1%です。
発生頻度は全出産の0.1%以下ですが、発症後の死亡率は25~50%と高く、救命された赤ちゃんには、神経系の後遺症が残ります。
発症の初期は、元気がない、ミルクをあまり飲まないなど、はっきりした症状ではないので気付きにくいと言えるでしょう。そして、急激に肺炎・髄膜炎・敗血症と進行します。
出生後7日以内に発症するものを早発型、出生後7日以後に発症するものを遅発型と呼びます。遅発型は早発型ほど死亡率が高くありませんが、この頃はすでに退院しています。ママや家族が気をつけて赤ちゃんの様子を見るようにしましょう。元気がなかったりミルクの飲みが悪かったり、呼吸が安定しないようだったらすぐに小児科を受診しましょう。
妊婦さんが腟の細菌培養検査で陽性だった場合、妊娠中期ならペニシリンの飲み薬を服用します。妊娠後期で陽性であれば、分娩時に抗生物質(ペニシリン)を点滴して感染率を65%以上下げることが可能です。
単純ヘルペスウイルス感染症―ママの性器ヘルペスに要注意
単純ヘルペスウイルスに感染すると、水ぶくれができて痛みます。種類は1型と2型があります。ママの感染が初めての場合は約50%、2度目以降の場合では1~3%の赤ちゃんに産道感染が起こります。これを新生児ヘルペス感染症と言い、「全身型」「中枢神経型」「皮膚型」の3つのタイプに分類されます。生後1週間以内に発症する「全身型」はとくに重篤で、全身に広がって多臓器不全を起こし、死亡率は30%と高くなっています。「中枢神経型」の場合死亡率は低いですが、6割以上に重篤な神経系の後遺症が残ります。
出産時に妊婦さんに性器ヘルペスがある場合は、帝王切開術で赤ちゃんへの感染を防ぐことができます。妊婦さんの性器ヘルペス発症から1か月以上経過しているときや、2度目以降で発症から1週間以上経過しているときは、経膣分娩が選択されます。 しかし出産時に妊婦さんに性器ヘルペスが認められないのに、赤ちゃんが新生児ヘルペス感染症になるケースが70%あり、対策が難しい点があります。いずれにせよ、妊娠中に外陰部に痛みを伴う水ぶくれができたら、すぐ主治医に相談しましょう。
水痘・帯状疱疹ウイルス感染症―ママが水ぼうそうにかかると・・・
出産前後に妊婦さんが水痘・帯状疱疹ウイルス感染症(水ぼうそう)にかかると、赤ちゃんの25~50%が水ぼうそうにかかってしまいます。
・出産の6日以上前に発症した場合:赤ちゃんはママから水ぼうそうの抗体を貰っているので、重症化する心配はありません。
・出産の5日前から産後2日までに発症した場合:肺炎や脳炎などを起こし重症化して、死亡率が30%になります。この場合、薬を使って出産を遅らせ、ママの体内でできた抗体が胎盤を経由して赤ちゃんに行くまでの時間稼ぎをして、重症化しないような対策を取ります。
・産後3日以降に発症した場合:育児中にママから感染する危険性があります。ママの皮疹がカサブタになるまで、赤ちゃんをママから隔離します。
赤ちゃんとママの健康のために、どんな小さなことでも変わったことがあったら、恥ずかしがらずにお医者さんに話しておきましょう。
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