鉄分、たんぱく質を効果的に摂ろう!「牛赤身肉」で 妊娠しやすい体質に
コラム 不妊治療
ベビ待ちの皆さん、毎日の食生活、きちんとできていますか?
妊娠しやすい体をつくるには、妊娠に欠かせない栄養素をきちんと意識することが大切。今の自分に足りない栄養素、摂り入れるべき食材を学んで妊娠しやすい体づくりを目指しましょう!
鉄分、たんぱく質を効果的に摂ろう!「牛赤身肉」で 妊娠しやすい体質に
カロリーが高くて太りそう…あえて「牛肉」を避けている人も多いのでは?
実は「牛赤身肉」が妊活に効果的なのだそう。その理由をじっくり伺いました。
不妊症患者さんに多い低体温と鉄欠乏
不妊症で来院する方にはまず血液検査を行いますが、2人に1人が「鉄欠乏」という結果が出ます。鉄が不足すると、体内に酵素を運ぶヘモグロビンが少なくなるために、必要な酵素を体のすみずみまで運ぶことができず、いわゆる「冷え性」を引き起こしてしまいます。
冷え性に関わる鉄は、体内で組織鉄、血清鉄、赤血球、そしてフェリチン(貯蔵鉄)に配分され、さらには尿、汗、便とともに排出されて、女性の場合、月経でも失われてしまいます。鉄が不足すると鉄を貯蔵しているフェリチンから借りるのですが、冷え性の女性はこのフェリチンが不足している「低フェリチン」に陥っているのです。
では、鉄を効果的に摂るにはどうしたらよいのでしょうか。鉄分は小松菜、プルーンなど植物性の食品に多い非ヘム鉄と、牛赤身肉、レバーなど動物性の食品に多いヘム鉄に分けられます。植物性の鉄の体内での吸収率が2~3%に対して、動物性の鉄は10~30%。ヘム鉄のほうが吸収率が高いことがわかります。この吸収された鉄が体内に配分されたり排出されたりするわけですから、吸収率がよいものを食べたほうが効果的というわけです。
また、普段からお茶をたくさん飲んでいる方も多いのではないでしょうか。実はこのお茶の飲みすぎも鉄欠乏の要因のひとつ。お茶に含まれるタンニンが非ヘム鉄の吸収を阻害するので、飲みすぎには注意してくださいね。
妊娠しやすい体質づくりにたんぱく質も不可欠
低フェリチンとともに、不妊症の方に多いのが「低たんぱく」。鉄とたんぱく質は、冷え性を治す血流改善に不可欠な栄養素です。それと同時に健康な子宮を維持するための材料でもあるのです。最近はダイエット意識の高まりで「肉・魚を食べない」「野菜ばかり食べている」という人も多いのですが、栄養療法の立場からいえば、ぜひ改善してほしいですね。
また脂っぽいから、とコレステロールを気にして食事をコントロールしている人もいますがこれも間違い。コレステロールは女性ホルモンの材料になるので、敬遠せずに摂り入れてほしいものです。
こうした理由から私がおすすめしたいのが「牛赤身肉」。赤身の部分には鉄分が豊富に含まれ、動物性のヘム鉄なので鉄の吸収率が高く、毎日食べれば体内のフェリチン「貯蔵鉄」もアップします。
たんぱく質は20種類のアミノ酸からできています。食材の中にどれほどバランスよくアミノ酸が含まれているのかを示す指標をプロテインスコアといいますが、牛肉はそのプロテインスコアが高いのも特徴です。体重50kgの女性の場合、1日に必要なたんぱく質は50~75g。牛肉100gを調理すると約8gのたんぱく質を摂取できます。
数字で見るとこんなに肉を食べていいの?と思うかもしれません。実際に私は1日で最低でも肉を200g、卵も1~2個は食べていますよ。
早い人では、1~2カ月で冷え性や不妊が改善する例も
実際にクリニックで受診される患者さんには、すぐに栄養療法を実践してもらっているのですが、1~2カ月で手足の冷えが改善されたり、なかにはあっという間にご懐妊に至ったという人もいます。
実は、私も間違ったダイエットをして不妊症を経験した一人です。20代のころ単純に食べないダイエットをして、生理不順になり、排卵もなく不妊に悩んでいました。同時にニキビがひどく皮膚科の先生から紹介していただいたのが今の栄養療法の師匠。当時は鉄、亜鉛、ミネラル、ビタミン…と足りないものだらけ。それが、栄養療法を始めて1カ月くらいで朝きちんと起きられるようになり、体調が整ってくるのを感じました。そして数年後、念願のベビーを授かることができました。
毎日の食事に牛赤身肉を取り入れて
牛肉はたんぱく質も鉄分も豊富なので、1回の食事につき100gほど取り入れてもよいくらいなのですが、調理方法はシンプルにしましょう。油をたくさん使うと、高カロリーになってしまいます。ゴマだれや焼き肉のたれなどは極力使わず、少ない油で、塩、こしょう、しょうが、レモンなどでさっぱりさせてカロリーを控えめに。私は大根おろしを添えてさっぱりいただくのが大好きです。
また、熱によるたんぱく質の損失を最小限に抑えるために、ミディアム・レア程度で食べるのがおすすめ。ミディアム・レアにしてたんぱく質をより効果的に摂取できるのも、豚や鶏でもない牛赤身肉のよいところです。
実際、我が家は運動をしている息子がいるので、家族あわせて1日分1kgほどを買うこともしょっちゅうです。赤身肉は霜降
り肉に比べてお値段がリーズナブルなところも助かっています。
冷え性かな?と思う人はまず鉄分、たんぱく質不足を疑ってみてください。牛赤身肉は何よりもシンプルな調理法で栄養素が摂れるのが魅力です。意識的に毎日の食事に取り入れれば、少しずつ冷え性が改善されるのを感じる方も多いことでしょう。そして次のステップの妊娠しやすい体づくりをぜひ目指してください。
牛赤身肉の優秀ポイント
1.冷え改善に不可欠な「鉄分」がたっぷり!
2.動物性の「ヘム鉄」は体内での吸収率が高い
3.牛肉に含まれる「たんぱく質」は血流改善効果あり!
4.子宮粘膜の材料になる「亜鉛も豊富」
牛赤身肉のおいしい食べ方
ミディアム・レアって?
牛肉の表面はしっかりと焼かれていて、中は生に近い状態のこと。
牛赤身肉 調理のポイント
1.調理する30分前に冷蔵庫から出す
→冷たいと肉が均一に回りにくい
2.表面をしっかり焼く
→壁を作って肉汁の旨みを逃さない
3.味付けは、塩・こしょう・レモンなどでシンプルに
→ソースなどを使うとカロリーがあがってしまう
新宿溝口クリニック チーフ栄養カウンセラー 定 真理子先生
栄養療法により不妊症を克服し、2児の母に。現在は不妊対策、妊婦、美容、アンチエイジングなど女性ならではの悩み改善の栄養指導を行う。著書に「美肌になる栄養セラピー」「妊婦体質に変わる食べ方があった」など。
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出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.30 2016 Summer
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