赤ちゃんエッセイ:母親って強いんだ!
はじめての妊娠、そして出産。楽しみでもあり、不安も少し…。そんな初心者ママを応援したいとスキナベーブでは毎年、赤ちゃんエッセイコンテストを開催しています。エッセイには、先輩ママや専門家の方の体験談がいっぱい。元気になれるエッセイが、きっと見つかります。ジネコでは、これまでの受賞作品の中から素敵なエッセイをピックアップしてご紹介してまいります。
6月18日、私は帝王切開で初めての子『理花』を産んだ。手術後は約2日間寝たきり、やっとベッドから開放されてもお腹の傷が痛み、立ち上がるのも、歩く事さえもやっとだった。思うように体が動かないため、普通分娩のママ達に比べて色んな事が出来ず、『私だって…私だって…』と気持ちばかりが焦る。『こんな風で本当に私はママになれるんだろうか…』初めての沐浴はそんなマタニティブルーになりかけていた時の事だった。
前日に沐浴指導を受け、いよいよ本番。助産師さんが見守る中、初めて一人で沐浴させる…はずだったのだが、突然のお産が重なり、ナースステーションはバタバタ。私を見ていてくれるはずの助産師さんも「昨日教えたし、もう一人で出来るよね?大丈夫大丈夫!」と言い残し、問答無用で分娩室へと行ってしまった。『大丈夫…って、何が大丈夫なんだか…』あっという間に一人取り残され、呆然とする私。理花は『今から何をするの?』と言う顔つきで、少し眠たそうにこちらを見つめている。そんな理花を見つめ返しながら、暫くの間ただ突っ立っていたけれど、それじゃあ何も始まらない。『ええい!やるしかないでしょ…』私は腕まくりをして、昨日の沐浴指導を思い出しながら理花を裸にした。異常はないか、あちこちチェックした後、お湯の中にそ~っと入れる。エアコンが効いた部屋のはずなのに、いつの間にか私は汗びっしょり。ただ体を洗えば良いだけなのだけれど、それが案外うまくいかない。耳に水が入らないように、首は痛くないかな、顔に水がかからないように、頼むから暴れないでよ…気になる事が多すぎて全身に力が入るため、理花を支える腕は痛いし何をどうして良いのやら、頭の中は大パニック。理花はそんな私の気持ちを察してくれたのか、沐浴の間中気持ちよさそうな顔をして、おとなしくしていてくれた。何とか全身を洗い終え『さぁ、あがるか…』と言う時になって、助産師さんがやっと戻ってきた。「どう?出来た?」と笑顔で尋ねる助産師さん。『出来た?じゃないよ、他人事だと思って!帰ってくるのが遅いんだよぉ!』と心の中で文句を言いながらも「はい、なんとか(^^)」と笑顔で返す。理花をお湯から上げようとする私に「ちょっと待って」と言い、助産師さんは写真を1枚撮ってくれた。理花の体を拭き、オムツをあて、肌着を着せて…髪をとき、麺棒で鼻と耳のお掃除…。「はい、おしまい!」自分と理花に向かって言った途端、お腹の傷がズキズキとすごい勢いで痛んでいる事に気付く。傷に手を当て、痛みに耐える。『そう言えば私、歩く事もままならなかったんだっけ…』不思議と理花を抱いている時、一生懸命沐浴させている時は何の痛みも感じなかった。すごい!すごい!母親って強い!!親になるってすごい事なんだなぁ…としみじみ実感し、理花を見つめる。理花は満足げな顔をして、クゥクゥと寝息をたてていた。そんな理花を見て、私も自然と笑顔になる。いつの間にか痛みなんてどこかに吹っ飛んでしまっていた…マタニティブルーと一緒に。
あれから2ヶ月。今では一人での沐浴もお手の物。「理花ちゃぁ~ん、チャプチャプきもちいねぇ」なんて声をかけながら手際良くお風呂に入れている。理花もどんどん大きく成長して、ベビーバスが窮屈になってきた。毎日沐浴する度に、理花も私もちゃんと成長してるんだなぁ…って嬉しくなる。
助産師さんが撮ってくれた【初めての沐浴】の写真。気持ち良さそうな理花の顔と、いっぱいいっぱいの私の顔。その写真を見るとあの日の事を思い出し、頑張ろう…って思える。母親は強いんだ、負けてなんかいられないんだ…。私も母親として、理花と一緒に成長していく!これからも宜しくね、理花ちゃん!