重度男性不妊の有効な治療法は?
相談者:あさん(42歳)
転院についての相談
1年前のヒューナーテストではエクセレントといわれたのですが、転院したクリニックの検査結果では、精子の液量1.5ml、濃度36.0M/ml、運動率31%、正常精子0.4%で、重度の男性不妊といわれました。これまで2回の採卵で受精卵が16個できているのに、胚盤胞の基準が満たせず1個も凍結できていません。同じクリニックに通院している方は、私より受精卵の数が少なくても凍結できています。イムジーをすすめられていますが、イムジーを行っている病院は少なく、転院もすぐには難しそうな感じです。お聞きしたいのですが、重度の男性不妊でヒューナーテストがエクセレントということはありますか?1年で重度の男性不妊になることはあるのでしょうか。治療法がないといわれ、今、夫は還元型コエンザイムQ10と亜鉛、葉酸のサプリメントを飲んでいます。
◎さんのデータ
【身長/体重】163cm/49kg
【月経について】28日前後 生理痛重い。(腰痛、腹痛、頭痛、吐き気、貧血)少し貧血気味の診断あり
【不妊の原因となる病名】男性不妊
【検査・治療歴】血液検査、卵管造影、顕微授精(採卵、受精のみ2回)
【現在の治療方針】顕微受精
【精子の検査データ】液量1.5ml 濃度36.0M/ml 運動率31% 正常精子0.4% LH5.7 FSH13.4 TES312.9
【AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能)の値】AMH9.63 AMH7.29 AMH8.2
【結婚歴】9年
【治療年数】1年
【漢方薬・サプリメントの使用有無】夫 還元型コエンザイムQ10、亜鉛、葉酸を飲んでいる。
三軒茶屋ウィメンズクリニック 保坂 猛 先生
医学博士。聖マリアンナ医科大学卒業。同大学産婦人科、大田原赤十字病院、聖マリアンナ医科大学産婦人科医長・非常勤講師、ファティリティクリニック東京勤務を経て、2011年2月、三軒茶屋ウィメンズクリニックを開院。おひとり一人に合った最適な治療はもちろん、安心と優しさも提供。女性のライフパートナーとしての産婦人科医院を目指す。
保坂先生:精子の状態というのはその時の体調などによってバラつきがでやすいので、当院でも、ヒューナーテストで問題がないという方でも必ず精液検査をしていただいています。ヒューナーテストでみる精子が動いているかどうかの基準は、1つの視野で5個以上動いていればいいというもの。たくさん動いていなくてもクリアになるんですね。ご主人の精子の状態は急に悪化したのではなく、もともと良くなかったのかもしれません。
イムジーをすすめられたということですが、イムジーは普通の顕微鏡より1000倍くらい拡大して、精子の形態的な異常を観察するものなんですね。より細かく精子の状態を評価できますが、妊娠率は通常の顕微授精と大きく変わらなかったという結果も報告されているようです。もちろんなかには有利に働くケースもあるかもしれませんが、そこに大きな期待をかけるより、精子が悪い分、いかにいい卵子を出していくかということで、排卵誘発法などを工夫していく施設が多いと思います。
あさんはこれまで7~11個程度とご年齢の割に卵子の数が採れていて、受精率もそれほど悪くない。ただ、胚盤胞が基準に満たないということですね。おそらく、凍結胚盤胞でしか移植をしない施設だと思われます。確かに凍結胚盤胞は妊娠率が高いといわれていますが、移植をしない限り結果を出せません。胚盤胞が良くなかったら、3日目の胚で戻すことも視野に入れてみてはどうでしょうか。初期胚移植でも妊娠の可能性はゼロではないので、とにかく移植までは進めるように持っていっていただきたいですね。
コエンザイムQ10や亜鉛のサプリメントは、当院でも男性不妊の患者さんにおすすめしています。すぐに結果を出すことは難しいと思いますが、抗酸化作用や細胞活性にもつながるので、そのまま使用を続けられてもいいかと思います。
【人気コラム】 | 【人気コラム】 |
【役立つ】 | 【おすすめ】 |