子宮内膜症を手術で治療、 それでも妊娠しません。 今後はどうすべき?
コラム 不妊治療
子宮内膜症を手術で治療、 それでも妊娠しません。 今後はどうすべき?
「クロミッドⓇなどを使用すると複数排卵し、内膜が薄くなる傾向にあるようです。不妊の原因と思われる子宮内膜症の治療をしたのに、妊娠しないのはなぜ?」
子宮内膜症を手術で治療、 それでも妊娠しません。 今後はどうすべき?
相談者:はるさん(33歳)
子宮内膜症の手術をしたのに
昨秋に子宮内膜症を腹腔鏡手術しました。担当医からは、「末期だったので腸周辺の癒着がひどくて取りきれなかったが、子宮の周りはきれいに剥がして元の位置に戻した。左の卵管は切除せざるを得ない状態だったが、右は無事で通過性も保てたので、普通に妊娠できる状態」と説明を受けました。しかし、術後すぐに人工授精をし、もうすぐ手術から1 年が経ちますが妊娠に至りません。担当医は「あと半年頑張って、それで妊娠しないようなら体外受精にステップアップを」と言われています。生理は28 日周期で、誘発剤を使用しなくても排卵があります。クロミッドⓇなどを使用すると複数排卵し、内膜が薄くなる傾向にあるようです。不妊の原因と思われる子宮内膜症の治療をしたのに、妊娠しないのはなぜ?
子宮内膜症で、左卵巣チョコレート嚢胞、左卵管閉塞、両側卵管周囲癒着などがありましたが、腹腔鏡手術で治療されました。その後はHMGを投与しての人工授精、スケジュール的に難しい時にはタイミング指導を受けているとのことですが、術後1年経っても良い結果に結びつきません。
堀川先生:やはり、「子宮内膜症の末期だった」とあるのが気になります。左の卵管は閉塞していたので切除、子宮への癒着もあったようですから、右の卵管だけ何の影響も受けずに正常であった、とは考えがたいですね。通過性は保てたとしても、おそらく右の卵管の機能も正常よりもかなり落ちていると考えるのが一般的かと思います。
ご質問からはわかりかねますが、はるさんは自然妊娠、もしくは自然に近い妊娠にこだわっていらっしゃるのでしょうか。そうであったとしても、術後半年、1年しても成果が得られないのですから、もうそろそろ方針を変えるべきだと思います。術後の担当医の「普通に妊娠できるよ」という言葉も甘い見解に感じます。私でしたら、正反対のことを言うでしょう。「自然に近い妊娠は難しいと思われるので、時間を無駄にしないようステップアップを考えては」と。
子宮内膜症の治療と不妊治療は、どのように並行すべきですか。
堀川先生:子宮内膜症の根治は難しく、ホルモン治療などが一般的で、それでも一時的な回復しか望めません。しかも、ホルモン治療を施している間は排卵しないので、不妊治療と両立するには無理が生じてしまいます。はるさんは、そのために腹腔鏡手術をしたのであり、悪い部分をできるだけ切除した術後がベストな状態だったはず。しかし、ベストな状態に整えてからも、その後1年間妊娠されなかったのですから、子宮内膜症以外にも不妊の原因があると考えられます。まだ33歳ですし、「手術までして子宮内膜症の治療もしたのになぜ?」と思われるお気持ちもお察ししますが、ここは気持ちを切り替えるべき。担当医は、「あと半年頑張ってから体外受精に進みましょう」とおっしゃっているようですが、のんびりしすぎかもしれません。子宮内膜症の手術も、一度すればもうしなくていいというものではなく、時間の経過とともにいずれまた再発し、手術前の状態に逆戻りする可能性すらあります。そうなる前に、できるだけ早めに、体外受精にチャレンジされることをお勧めします。
子宮内膜症を悪化させないために、自身でできることはありますか。
堀川先生:残念ながらないに等しいと言わざるを得ませんが、あるとしたら唯一の方法は妊娠すること。子宮内膜症は昔から「若くして妊娠し、子を多く産むのが最良の予防法」と言われています。妊娠中は生理がなくなります。生理のない期間が長いほど、子宮内膜は刺激を受けずに休まるのです。体外受精にステップアップすれば必ず良い結果を得られるとは限りませんが、妊娠の確率が高くなることは確かです。子宮内膜症にとっても、早く妊娠されることが良策といえるでしょう。
高崎ARTクリニック 堀川 隆 先生
琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成育医療センター不妊診療科勤務を経て、2009年12月より高崎ARTクリニック院長に就任。国際医療センター勤務時より内視鏡手術・生殖補助医療に従事。成育医療センターでは難治性不妊治療・加齢と不妊についての研究に取り組む。
≫ 高崎ARTクリニック
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter
≫ 掲載記事一覧はこちら
専門家に相談してみる
【人気コラム】 | 【人気コラム】 |
【役立つ】 | 【おすすめ】 |