人工授精から3日後に子宮外妊娠というのはあり得ますか?
コラム 不妊治療
人工授精から3日後に子宮外妊娠というのはあり得ますか?
「人工授精から3日後に子宮外妊娠というのはあり得ることなのでしょうか。「卵巣から絨毛が見つかった」とも聞かされましたが、それがどういうことなのかはっきりわかりません。」
人工授精から3日後に子宮外妊娠というのはあり得ますか?
相談者:ころネコさん(30歳)
人工授精3日後に子宮外妊娠?
3回目の人工授精の3日後に卵巣出血を起こして手術、入院。退院後、3回目の検診時に医師から診断書を受け取りましたが、その時、「診断書は卵巣出血になっているけれど、本当は子宮外妊娠が正しいんだよね」といわれました。ずっと、ただの卵巣出血だと思っていたのに、3回目の来院で初めて子宮外妊娠だと知った驚きと、子宮外ではあったけれど待ち望んでいた「妊娠」という言葉にショックを受けて、その場では何も聞けずに帰ってしまいました。落ち着いてから考えてみたのですが、人工授精から3日後に子宮外妊娠というのはあり得ることなのでしょうか。「卵巣から絨毛が見つかった」とも聞かされましたが、それがどういうことなのかはっきりわかりません。
まず、卵巣出血についてうかがいますが、これはどうして起こるのでしょうか。珍しいケースではないのですか?
臼井先生:この方は人工授精3日目に出血したということですが、人工授精をしたから起こるという因果関係はありません。卵巣出血は排卵後、黄体から出血してしまうもので、臨床でも時々見られます。
排卵する場所が血管に当たっていると、出血が止まらなくなってしまうんですね。そして、お腹の中に血液がたまると痛みが強くなっていきます。そのまま出血が続くとよくないので、手術などで処置をすることになります。
実は卵巣出血ではなく、子宮外妊娠だったそうですが、症状は似ているのですか。
臼井先生:そうですね。症状だけでは医師でも判断できないことがあり、子宮外妊娠だと思って手術をして、あとから卵巣出血とわかるケースが多いのではないでしょうか。
この方は「絨毛が見つかった」といわれたということですから、おそらく担当医の先生も、病理の結果が出た時点で子宮外妊娠だとわかったのでは。
その前の段階ではわかりにくいのですね。
臼井先生:人工授精のタイミングをみていると特にわかりづらいと思います。ころネコさんが子宮外妊娠をしたのは前の周期だと思いますが、その後、生理と同じような出血があり、卵胞も大きくなっていたのでしょう。
生理の状況がおかしかったり、高温期が続くようなら、卵胞チェックの際、HCGの値を測って、妊娠していないかどうか確認することもあります。妊娠していれば数値が上がりますが、子宮外妊娠の場合、HCGの値があまり上がらないことも多いんですね。
また、人工授精をする前にHCGの注射を打っていると、さらにわかりにくくなってしまいます。たとえばHCGを5000単位打っていたら、5日後でも完全に抜けきらず、採血しても100~200単位は数値に反映されてしまう。このようなことから、子宮外妊娠を正確に判断することは難しいといえるでしょう。
ご本人はショックだったようですが、この子宮外妊娠が今後の妊娠に悪影響を与えることはあるのでしょうか。
臼井先生:子宮外妊娠を起こした場所によると思います。多くの場合、卵管で着床してしまうものが多いのですが、そうなると着床した側の卵管を切除することになったり、機能が落ちて、体外受精での治療を考えなければならないことも。この方は卵巣妊娠で珍しいケースですが、次の妊娠への影響はほとんどないと思います。
年齢がまだ30歳で人工授精3回目ですから、あと2~3回はこのまま同じ治療でトライされてもいいのではないでしょうか。子宮外妊娠といわれて驚かれたと思いますが、繰り返すようなことがない限り、妊娠する力はあると前向きにとらえて、治療を続けていっていただきたいですね。
臼井医院不妊治療センター 臼井 彰 先生
東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外受精グループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995年より現在の東京・亀有にて産婦人科医院を開業。
≫ 臼井医院不妊治療センター
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter
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