4 日目earlyの胚盤胞を移植しました。グレードは良い? 悪い?
コラム 不妊治療
4 日目earlyの胚盤胞を移植しました。グレードは良い? 悪い?
「時間があまりなく焦りだけが募っています。引っ越すと通院は難しいので、タイムリミットは今年いっぱいです。」
4 日目earlyの胚盤胞を移植しました。グレードは良い? 悪い?
相談者:ゆきさん(37歳)
融解胚盤胞移植について
結婚3年目、治療歴1年です。夫がEDぎみのため、治療開始後すぐに人工授精を3回行いましたが妊娠に至らず、体外受精にステップアップしました。ショート法で12個採卵、8個受精し、5個胚盤胞まで育ち凍結しました。内容は4日目earlyが2個、5日目4AAが1個、3BBが2個です。卵巣が排卵誘発により腫れたため大事をとって3周期休み、3日前自然周期で移植しました。移植後にいろいろ調べると、4日目の胚盤胞はあまり聞かないとか、早すぎてもよくないという情報もあり不安です。earlyとはグレード的に良いことなのでしょうか。earlyを選択された先生の判断は間違いないのでしょうか。また、夫の転勤が先月急に決まり、時間があまりなく焦りだけが募っています。引っ越すと通院は難しいので、タイムリミットは今年いっぱいです。
胚盤胞のearlyというのは、どのような状態のことなのでしょうか。
波多野先生:胚盤胞は成長の段階によってステージ1から6までに分けられます。胚盤胞の中では赤ちゃんになる内部細胞塊と、胎盤になる栄養外胚葉に分離して広がっていくのですが、ステージ1、2はまだ分離していない初期の段階です。3はまだ細胞が広がっておらず、透明帯との間に隙間がある状態、4は細胞が透明帯いっぱいまで育っている状態です。ステージ5は少しハッチングしている状態、6は完全にハッチングしている状態です。凍結する場合は透明帯がある状態のほうが受精卵のダメージが少ないと考えられており、3から5の段階ですることが多いです。
earlyというのは、ステージでいうと1か2の段階なのだと思います。成長のペースが速い胚盤胞の場合、もう1日待つとハッチングしてしまう可能性もありますので、早い段階で凍結したのだと思います。
4日目earlyを選んだことが間違いではないかと気にされています。
波多野先生:分割スピードが速いのは元気な受精卵だという判断をされたのだと思います。先日、日本受精着床学会に参加したのですが、そこでも受精卵の質をどうやって評価するかというセッションがありました。少し前にタイムラプスという胚の分割の様子を動画のように見られる機械ができたのですが、画像を解析してみると、同じ見た目の良い受精卵でも、途中で異常分割したものは着床率が悪いことがわかってきたという報告がありました。異常分割というのは、翌日から8細胞があるなどのケースです。ゆきさんの場合の1日早いearlyの胚盤胞は元気な受精卵ととらえて大丈夫ですよ。
年内に転勤なので時間があまりないそうですが、どのように治療していけばいいでしょうか。
波多野先生:グレードからいくと次は4AAを移植されるのがいいかと思います。また今回は自然周期で戻されたということですが、もし結果が出なかった場合はやり方を変えて、ホルモン補充周期で戻してみてもいいかもしれません。
転勤まで2~3回は移植のチャンスがありますね。凍結胚があと4つあるので2個移植なども考えられますが、焦って移植せずに受精卵を転勤先の病院に移送するという方法も考えられます。ドライシッパーという移送用の小さなトランクに液体窒素と一緒に入れて送るのですが、準備の時間や費用がかかります。当院でも送ったり受け取ったりした経験がありますが、移送中にトラブルが起こるリスクもゼロではありませんので、許可してくれない先生もいます。一度相談されるとよいと思います。
37歳で5つ胚盤胞までいったのは優秀ですし、焦らずに治療に取り組んでいただければ、良い結果につながると思います。
ノア・ウィメンズクリニック 波多野 久昭先生
日本医科大学卒業。ハンブルク大学産婦人科学教室留学後、日本医科大学付属病院産婦人科学教室講師、飯田市立病院産科科長を経て、2005年ノア・ウィメンズクリニックを開院。
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出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter
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