体外受精に3回失敗。 着床障害でも 妊娠できますか?
相談者:りなちぃさん(25歳)
私、妊娠できますか?
不妊治療4年目。卵管閉塞で両卵管を切除し、その後は体外受精で治療を続けています。すべて凍結胚盤胞で移植していますが、1回目は化学流産(hCG7.9mIU/ml)、2回目は陰性という結果に。子宮内膜も胚の状態もいいのに陰性続きなので、3回目の移植前に着床障害の検査をしました。高プロラクチン、甲状腺、抗リン脂質抗体症候群の異常が見つかったので、カバサールⓇ、チラーヂンⓇ、当とうきしゃくやくさん帰芍薬散、アスピリン、ヘパリンを服用して3回目の移植に臨みましたが、今回も化学流産(hCG2.9mIU/ml)でした。このまま同じ方法で移植を繰り返して妊娠する可能性はあるのでしょうか。ほかにしたほうがいいことなどはありますか?
良い条件で体外受精を繰り返してもなかなか妊娠に至りませんが、これは着床障害ということなのでしょうか。
福田先生:3回以上、体外受精による良好な胚を移植したのに妊娠に至らないか、化学流産に終わった状態は反復着床不全と考えられ、着床障害とも考えられます。
その原因は胚の染色体異常か、子宮内環境の異常に分けられます。多くが偶発的な数的異常ですが、反復した着床不全、流産では連続する子宮環境の異常による可能性があります。
子宮内環境の異常にはどのようなものがあるのですか。
福田先生:子宮環境の異常には身体的因子だけでなく、精神的因子も存在します。
身体的因子としては、子宮が原因の場合とホルモンが原因の場合があるんですね。子宮が原因の場合は子宮内膜ポリープや子宮筋腫、子宮奇形のほか、流産手術を繰り返すことで子宮内膜が薄くなり、着床に障害をきたしてしまうことがあります。
次に、ホルモンに原因がある場合ですが、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)は非常に重要な役割をもっています。卵胞ホルモンの作用で増殖し、厚くなった子宮内膜は、黄体ホルモンにより受精卵が着床しやすい状態になるんですね。ホルモンがうまく分泌されずに、この機能が働かないと、子宮内膜は着床に適した状態にならないということです。
りなちぃさんの場合、どのような周期で移植をされたのかわかりませんが、ホルモン補充周期での移植なら体内のホルモンの影響を受けずに、外部からのホルモンで子宮内膜を人工的につくるため、確実性があるといえます。
最後に、精神的な因子についてですが、これは簡単にいえばストレス。妊娠3週2日(胚盤胞移植4日目)には胎盤となる絨毛細胞の組織内に隙間が出現し、子宮内膜のらせん動脈や毛細血管と交流を始めます。らせん動脈は母体の交感神経の影響下にあるので、母体がストレスにより過剰な緊張状態にあると、らせん動脈が収縮して胚に十分な酸素を供給できなくなってしまうんですね。
りなちぃさんは化学流産を2回経験していますが、不育症ではないのでしょうか。
福田先生:胎のうが見えるまで(2回以上)育っているのに流産の場合は不育症です。妊娠反応が出る前の潜在的な化学流産、あるいは胎のうが見える前に流れてしまう化学流産は、ごく初期の不育症とも考えられるでしょう。
このような場合も不育症の検査が必要と考えますが、りなちぃさんは着床障害の検査、いわゆる不育症検査を受けていくつかの異常が見つかり、すでに治療を始められています。適切な治療を受ければ、次回の胚移植で出産に至る方も少なくありません。年齢的にはまだ20代とお若いので、希望をもって不妊治療を進めていただきたいと思います。
福田ウイメンズクリニック 福田 勝先生
順天堂大学医学部・同大学院卒業。米国カリフォルニア大学産婦人科学教室留学後、順天堂大学医学部産婦人科学教室講師を経て、1993年福田ウイメンズクリニック開院。
≫ 福田ウイメンズクリニック
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter
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