難しい用語がいろいろと出てくる不妊治療の現場。治療でよく聞く用語だけど、あまり正確に知らないものも多いのでは?勘違いや思い込みを防ぐためにもしっかり確認しておきましょう。クリニックの先生に用語の解説をしていただきました。
不育症
妊娠をするものの流産、死産を繰り返す場合、または生後1週間以内に死亡する早期新生児死亡によって児を得られない状態をいいます。
不育症のリスク因子となるものに、抗リン脂質抗体症候群、双角子宮、中隔子宮などの子宮の形態異常、夫婦の染色体異常(均衡型相互転座、ロバートソン転座など)、プロテインS 欠乏症、プロテインC 欠乏症、第Ⅻ因子欠乏症などの血液凝固異常、甲状腺機能異常や糖尿病などがあります。
また、母体となる女性の高年齢も流産のリスクを高めています。これは卵巣内の卵子が胎児期に減数分裂の第1 段階を終えたところで分裂が止まっているため、加齢に伴い卵子は染色体異常を起こしやすくなるのです。
このような原因で考えられる病気やリスク因子があっても必ずしも不育症になるわけではありません。いくつもの因子が関係する場合もあり、特別な治療をしなくても次回妊娠・出産を経て赤ちゃんを得られることもあります。
しかし、2 回以上の流産、死産、早期新生児死亡を繰り返した場合には、不育症のリスク因子の検査が勧められます。
検査によって抗リン脂質抗体症候群や血液凝固異常、甲状腺機能異常,糖尿病などが判明した場合には、それぞれに対する治療をします。染色体異常が判明した場合、流産を回避する目的で着床前診断を行う選択肢もありますが、赤ちゃんを得られる可能性は何もしない場合と差がないようです。不育症はまだ原因不明が半数を占めており、標準的な治療法がないのが現状です。
みのうらレディースクリニック 箕浦 博之 先生
三重大学医学部卒業、三重大学医学部産婦人科入局。2002 年より鈴鹿回生病院の高度生殖医療センターで不妊症・不育症の診療に従事し、その間1500 例を超える患者さんが継続妊娠に至る。2005 年、不妊症・不育症診療の専門みのうらレディースクリニックを開設。
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出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.32 2016 Winter
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