卵子凍結保存という選択がはじまった!【不妊治療最前線】
インタビュー 不妊治療
卵子凍結保存という選択がはじまった!【不妊治療最前線】
日進月歩の医療の現場から、最新の不妊治療を紹介する【不妊治療最前線】。今回は「卵子凍結」について、赤坂レディースクリニックの下川先生にお聞きしました。
卵子凍結保存という選択がはじまった!【不妊治療最前線】
2017/3/15 下川理世(赤坂レディースクリニック)
今回は「卵子凍結」について、赤坂レディースクリニックの下川先生にお聞きしました。
卵子を凍らせて長期保存する「卵子凍結」
正しくは、未受精卵の凍結保存のこと。受精する前の成熟卵を凍結させ、長期間保存しておく方法です。
-196℃という超低温で液体窒素に浸して凍結し、保存するので、何十年もまったく状態を変化させないまま保存できます。
これまで、卵子凍結は、放射線治療や抗がん剤治療を受けるガン患者さんのなかで、治療によって卵巣や卵子に影響が出る可能性があると見なされた場合にのみ認められていました。
それが、2013年11月、一般社団法人日本生殖医学会によるガイドラインで、健康な未婚女性が将来に備えて卵子を凍結保存することが認められ、誰でも卵子凍結ができるようになったのです。
産みたいときに「産める」を選択できる
卵子凍結のメリットは「将来の妊娠への安心感」です。
卵子の老化は、30歳からゆるやかにはじまります。卵子が老化すると流産の確率も高まってしまいます。しかし、若いうちに卵子を凍結保存しておけば、卵子のポテンシャルも高いままなので、30代後半〜40代になっても妊娠できる確率も高まるというわけです。
産める限界は、自分の年齢より卵子の年齢にあると思ってください。生理があるからといっていつまでも妊娠できるわけではありません。
ですから、「今はパートナーがいない」「今は仕事などの理由で出産できない」という人も含めて、「将来、子どもが欲しい」あるいは「子どもが産める選択肢を残しておきたい」という方にはぜひ、卵子凍結という方法があることを知っておいてほしいと思います。
デメリットは高額な費用がかかること
卵子凍結は保険が適用しません。そのため、病院によって異なりますが数十万円の費用がかかります。また、年数を更新する場合、更新料もかかります。そこが一番のデメリットでしょう。
また、卵子採取の際、卵巣刺激ホルモン注射を行いますが、その副作用が起きたり、卵巣から出血する方もまれにいます。
費用対効果を考えると、39歳以下が最適
卵子凍結を実施する時期としては、若ければ若いほど卵子のポテンシャルも高く、取れる個数も多いので良いでしょう。
ある報告では、40歳まで出産を遅らせようと考えている女性において、38歳未満で卵子凍結保存を試みることによって生児出産あたりの費用を減少させることができると言われています。
受精卵の保存期間は通常1年。延長もできますが、先に述べた通り、都度、更新料がかかります。また、20代から30代前半くらいまでであれば、保存しなくても妊娠したい時に授かる可能性もあります。
ちなみに更新料はクリニックによってさまざまですので、いくつか訪ねてみるといいでしょう。
まだ日本での症例は少ないですが、今後、確実に増えてくると思います。卵子凍結保存は、多くの女性に注目してほしい治療法です。
下川先生より まとめ
卵子凍結のメリットは、30代後半〜40代になっても妊娠できる確率が高まることです。ただ、保険適応外で費用が数十万からかかるため、計画的に。