子宮頸管粘液の分泌不全を改善する方法はありますか?
美馬 博史(美馬レディースクリニック)
相談者:ねばねばさん(主婦/35歳)
子宮頸管粘液分泌不全の改善について
結婚2年目。今月から不妊専門のクリニックに通い始め、現在検査はヒューナーテストのみ行っています。その結果は「子宮頸管粘液分泌不全(粘液が固い)」「精子の運動率が悪い(子宮頸管内20%、腟内0%)」で、普通と不良の間くらいとのことでした。粘液が固いのでムコソルバン®(本来、絡んだ痰の切れを良くする薬)を処方され、夜にもう一度夫婦生活をもつように先生にいわれました。聞き慣れないことばかりで先生にもあまり質問できなかったので、子宮頸管粘液の分泌不全をネットで調べたところ、だいたいの方が人工授精をしていることを知りました。できれば自然妊娠の形をとりたいのですが、粘液の分泌不全を改善する方法はありますか?
子宮頸管粘液の分泌不全とはどのようなことなのでしょうか
通常は排卵が近くなると、精子を通りやすくするために頸管粘液はかなり増えてきます。頸管粘液はほとんどの場合、無色透明で、10㎝程度伸びるほど粘稠性があるんですね。分泌が増え、酸性からだんだんアルカリ性に傾くことで、精子の受け入れ態勢が整います。
ヒューナーテストはこの受け入れ準備がきちんとされているかどうか調べるもので、自然妊娠を希望されているご夫婦には欠かせない検査です。結果が良好であれば、タイミング法でも妊娠する可能性は高いと思います。
ねばねばさんは「粘液が固い」と診断されたとのこと。固いというのは量が少ないということだと思われます。少ないのは、卵巣の働きが悪いからではないでしょうか。
正常な場合だと、排卵すればエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンがしっかり分泌されます。成熟卵子1個あたりで250~300 pg/ml程度の量の女性ホルモンが分泌されていれば頸管粘液が増えて、子宮内膜が厚くなってきます。ねばねばさんの場合はそのシステムがうまくいってないことが考えられます。ヒューナーテストの結果は担当の先生が診断されているように不良で、このままの状態ではタイミング法で妊娠するのは厳しいのではないでしょうか。
頸管粘液を改善する方法はありますか?
先生からはムコソルバン®という薬を処方されたようですが。
ムコソルバン®というのは普通は風邪の時に出す内科の薬で、頸管粘液を改善するために処方するというのは聞いたことがありません。これを飲むことで粘液の量が増えるとはちょっと考えにくいですね。
当院だったらまず、エコーで排卵する卵子がちゃんとあるのかどうか調べてみます。成熟の度合いをみて、進みが悪いようなら女性ホルモンを補充します。これは飲み薬、貼り薬、どちらでも構わないでしょう。
もしクロミッド®という排卵誘発剤を使いながらタイミング法をしているのなら、使用を中止します。この薬を服用すると頸管粘液が減ったり、子宮内膜が薄くなる副作用が出ることも。使用を中止できない場合はできるだけ量を減らし、並行して女性ホルモンを加えるようにします。
また、精子をうまく受け入れられないという場合、ほかにクラミジアによる子宮頸管炎や、まれですが、抗精子抗体をもっているケースも考えられます。
このようにあらゆる可能性を調べて、一つずつつぶしていく。そして、問題がないようなら女性ホルモンを補充して、再度ヒューナーテストを受けていただきます。そこでまた結果が不良だったら、ご本人も納得して次のステップである人工授精に進むことができるのではないでしょうか。
美馬先生より まとめ
●精子を受け入れにくい原因がないか、ほかにできる検査を
●女性ホルモンを補充して、再度ヒューナーテストの実施を。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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