超音波で診断されたのに排卵自体がないってあり得る?
コラム 不妊治療
超音波で診断されたのに排卵自体がないってあり得る?
「超音波で排卵しそうだと診断されたにもかかわらず、タイミングが合う以前に排卵自体がないということはあり得るのでしょうか?」
超音波で診断されたのに排卵自体がないってあり得る?
生田 克夫 先生(いくたウィメンズクリニック)
相談者:ホーリーさん(34歳)
排卵の超音波診断について
もともと無排卵で、排卵誘発剤での第1子妊娠後、プラノバール®使用で、約45日ベースで3回くらい自発的な生理がきました。現在2人目妊娠を望み、タイミング療法を行っていますが、クロミッド®服用後の超音波診断で2~3日後に排卵の可能性が高いといわれたものの1週間たっても排卵せず、再度受診すると排卵するまで育つ卵子がないため、3カ月ほど排卵しないかもといわれました。その後、生理5日目から再びクロミッド®を飲み終わった後の超音波検査では、排卵直後、またはあと2~3日で排卵するかもといわれましたが、4日目の今も高温期に移行しません。超音波で排卵しそうだと診断されたにもかかわらず、タイミングが合う以前に排卵自体がないということはあり得るのでしょうか?
まずは超音波診断について教えてください。
超音波での排卵予測というのは、卵胞の大きさを見て、黄体化ホルモン(排卵を促すホルモン)がいつ頃出そうかを予測するものです。自然周期であれば、卵胞が20㎜近辺で排卵の刺激が出ますし、クロミッド®を服用していれば24~25㎜くらいまで出ないだろうと考えられます。卵胞というのは、順調にいけば1日1.5㎜くらいずつ大きくなっていきますから、自然周期の15㎜であれば、あと3~4日で性腺刺激ホルモンが出るかなと予想できるわけです。
クロミッド®の場合は、そこの誤差が大きいのですが、平均的に、飲み始めてから8日目から14~15日くらいまでで排卵する確率が非常に高いので、そのあたりを目安にしてみていきます。ちょうどいい時に排卵しなければ、注射で排卵を起こすのが一般的です。
ただ、数日後に排卵の可能性が高いといわれたとしても、ご自分の脳から性腺刺激ホルモンが出なければ、排卵しないまま卵胞がどんどん大きくなってしまうこともあり得ます。卵胞は卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンの2つによって、成長し、排卵するわけですが、卵胞が大きくなっても実際に排卵するかどうかは、排卵を指示する黄体化ホルモンにかかっているので、それを分泌させる中枢が思うように働かなければ、いつまでたっても排卵せずに卵胞が30㎜を超してしまうということも起き得ます。そうなりそうな場合は、注射で排卵を起こすことになります。
排卵するまで育つ卵子がなくて、3カ月ほど排卵はないということはあり得ますか?
そんなことはあり得ないと思います。確かに、ひとつの卵胞が成長して排卵に至るまでには120~150日かかるといわれていますが、発育しつつある卵胞は超音波でみてわかるはずです。その時たまたま卵胞がほとんど見えないとしても、3カ月排卵がないということはなく、いつ卵胞発育が始まるかわからないだけです。
性交障害には、どのような治療がありますか?
ご主人には泌尿器科で性交障害に関する相談をされるようおすすめします。アイダさんは、慣れるしかないのかもしれません。診察でも、超音波検査の器具が入ったりすることで、だんだんと腟の入り口の痛みが軽減して麻酔薬も要らなくなることが多いですから。また、ご夫婦でそういう話ができるようになると、セックスをする状況が今までと変わるかもしれません。自分たちで取り組む延長線上で、自然とセックスができるようになっていけばいいなと僕は思いますね。
ホーリーさんのような場合、クロミッド®以外にどんな排卵誘発法がありますか?
もう少し軽めのセキソビット®という薬もあります。この薬には、クロミッド®にあるような頸管粘液が減ってしまうとか子宮内膜が薄くなるという副作用がありません。だたし、排卵を起こす力が弱いので、無排卵周期のように生理はあるけれど排卵はないというくらいの人に適応です。
なかにはどう転んでも排卵しない場合もありますが、その時はHMGの注射やゴナールエフ®の自己注射を使います。これで卵胞が大きくならないということは卵巣に卵子がある程度存在すればめったにありません。要は、今までクロミッド®しか使っていないのならまだ方法はあるということです。
また、もともと生理を司る中枢というのは、精神的・身体的なストレスでもうまく働かなくなってしまうものです。今までの通院でストレスが溜まり、余計に排卵がうまく起こらなくなってしまっているなら、気分を変える意味でセカンドオピニオンを行うのもおすすめです。
生田先生より まとめ
●排卵予測がずれることはあるが、3カ月排卵しないはあり得ない
●クロミッド®以外にも排卵誘発の方法はある。ストレス緩和も大切
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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