胚も子宮内膜の状態もいいのに4回移植しても着床しません
北村 誠司 先生(荻窪病院 虹クリニック)
相談者:マーボナスさん(35歳)
凍結胚盤胞の移植について
3年前から不妊治療をスタート。これまでタイミング法、人工授精6回をした後、体外受精にステップアップしました。クロミッドⓇをベースにした低刺激で採卵4回、胚移植を4回試みましたが、着床していません。先生からは「胚も子宮内膜も良く、なぜ着床しないのかわからない」といわれました。治療の途中に腹腔鏡で卵管采の癒着剥離をして、その1年後に左卵巣に5.5㎝の腫瘤が発見されたのですが、先生は「影響ない」ということでした。では、何が原因なのでしょうか。今後どのようにすれば良いか、アドバイスをお願いします。
良好な胚を戻しても着床しない原因は、どんなことが考えられますか。やはり、卵巣腫瘤なども影響しているのでしょうか。
担当の先生がおっしゃったように、卵巣の腫瘤が原因ということは考えにくいと思います。今すぐ、腫瘤を取ったからといって、妊娠の可能性がすごく上がるということはないのでは。妊娠がしやすいかどうかということに関しては、チョコレート嚢腫ではない限り、特に急いで手を付ける必要はないのかなと思いますね。
通常、良好な胚盤胞を2、3回戻しても着床しない場合、まず免疫の異常が疑われるのではないでしょうか。女性の体は妊娠中はもちろん、着床する前から「受精卵を排除しない」という免疫のブロックがかかっています。それがうまく働かないと着床できないし、妊娠を継続することもできません。
もし、着床を阻害するような免疫異常があった場合、初期胚と胚盤胞を2回に分けて移植する二段階胚移植で妊娠される方もいらっしゃいます。この方法でどなたでも妊娠率が格段にアップするということはいえませんが、まだやっていないようでしたら、試してみる価値は十分あると思います。
また、これまで着床不全や不育症に関わる検査を受けていないようなら、やってみる必要があると思いますね。以前、受けて異常がなかったとしても、1、2年も経つと状況が変わることがあるので、現時点できちんと着床に関わる要素のチェックをしてみる。何か問題があれば、治療で改善できることもあります。
ほかに何かできることはありますか?
この段階でできることは、大きく分けて2つあると思います。1つは前述したように検査などで原因になっているかもしれない要素を消去していくこと。もう1つはこれまでやっていない方法にトライしてみることです。
もし良好な胚盤胞が残っているのなら、戻し方を変えてみてはどうでしょうか。自然周期で戻していたら、今度はホルモン補充周期にして、着床しやすくなるかどうかみてみます。また、二段階移植を試す場合は、新たに卵子をつくることを考えなくてはならないかもしれません。その時にどんな方法をとったらいいのか。
マーボナスさんはこれまでほとんど低刺激で卵子をつくっていたようですね。もしかしたらもう少し刺激が強い方法のほうが合っている場合もあります。AMH(抗ミュラー管ホルモン)の検査をされていないようですが、きちんと数値を確認して、どんな卵巣刺激法がいいのか検討していくことも大切。
卵子が採れていて胚も良好、精子にも異常がないようですから、ご本人が頑張れるなら、対策はまだまだあると思います。希望をもって治療に臨んでいただきたいですね。
北村先生より まとめ
●免疫系の異常も考えられるのでまずは着床に関する検査を
●胚の戻し方や卵巣刺激法など、これまでと違う方法を試してみる
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.33 2017 Spring
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