どんな時でも「ありがとう」を。暗示に負けない、輝く心をって
コラム くらし
どんな時でも「ありがとう」を。暗示に負けない、輝く心をって
代表取締役 岩本初恵さん(株式会社 愛しとーと)
心を病んで見つけた光人生にマイナスなことなどない
「若い頃からとにかく働いていました。寝る時間がもったいないといいながら朝から晩まで、家族のために。その無理が重なってしまったんですね。今はこんなに健康ですが、その頃は自律神経失調症で薬漬けになってしまって」
今の輝きからは考えられない岩本さんの告白。医者に暗示をかけられ、薬がどんどん増え、ネガティブになりながらも、岩本さんはふと幼少期に聞き続けたお父様の言葉を思い出しました。障がいをもちながら、漁師として家族のために汗を流していた父。
「障がいがあっても関係なか。人生にマイナスなことなんかなかぞ」
その時の岩本さんにとってそれはまるで啓示だったそう。何があろうといつも前向き、自分の力を信じて一生懸命に生きていた父にできたことが、若い自分にできないわけがないと、塞ぎ込みがちだった自分を奮い立たせました。
「自分の周囲や家族にありがとうの気持ちを忘れず、くよくよしそうになったら父の言葉を思い出す。自分を信じていたら徐々に薬が減り、いつの間にか治っていたんです」
この経験から、自分だけでなくもっと多くの人に健康や幸せを届けたい、笑顔にしたいと始めたことが今の会社の設立に繋がりました。「愛しとーと」(北部九州の方言で「愛している」)という個性ある社名も、岩本さんが届けたい「愛と感謝」をそのまま表しています。
肉親も社員も分け隔てなし。みんなの「かあちゃん」
強い信念とカリスマ性をもつ岩本さん。しかし、社員に仕事を「教えた」ことは一度もなく、新入社員の面接すら部下に一任。社員を信じ、任せるところは任せ、現場など自分の目で確かめたいところへは軽々と飛び回る毎日。「社長室にこもって仕事をしたこともないんじゃないかな、現場ばっかり出てますから」と岩本さんは笑います。
「私はみんなのかあちゃん。我が子も社員も関係ないし扱いも同じ。会社を設立した時、社員の子どもも自分の孫と同じように“育てよう”と決めました」
約300人の社員のうち7割が女性、しかも産休取得した女性社員のほぼ100%が会社に復帰。社内には無料のキッズルームが完備されており、無料の社員食堂は岩本社長が考案したヘルシーメニューがずらり。そこには社員がイキイキと働くための「母心」が詰まっています。
「感謝や愛情を注ぐのは血を分けた子や家族だけじゃない。社員はもう私の身内です。私のように考えるのは難しいことではないと思います。心のもちかた次第で私はその社員の親に、家族になれる。なんて素晴らしいことでしょう」
職業柄多くの女性と接し、不妊で悩む女性たちも見てきた岩本さん。
「子どもができないつらさで殻に閉じこもりがちになるのは、私も病気の経験者だからよくわかります。でも、できないできないと暗示をかけているのは、案外自分自身かもしれません」と言います。
「前向きになりたい、でも気持ちがうまく切り替えられないという人は、まず食べるものから変えてほしい。私は食事の基本である“だし”を大切にしています。商品にもレストランにも社員食堂にもそのだしを基本に考えています。こういった製品開発だけでなく、会社を興すヒントはすべて父の言葉にありました。父は『この海には財産が詰まっとるぞ。命は海がつくる』と言い続けていましたから。実際、私の娘婿は食べ物で人生が変わりました」
本社会議室に飾られていた可愛いウェルカムボード。本誌取材チームが訪れた時、手作りの旗などをもった社員の皆さんが、大きな声援と笑顔で迎えてくださいました。
「どう生きるか」を考える。暗示を解き放つのは自分
「この人と一緒になりたい」。そう言って岩本さんの娘さんが連れてきた相手は当時ある大きな病と闘病中で、再発率80%といわれていたそうです。死ぬかもしれない、未来がないかもしれない、もう働けないかもしれない…。そんな相手でも岩本さんは「あなたが選んだ人なら間違いない。結婚しなさい」と即決。家族全員での闘病が始まりました。
まずは「いままで食生活について何も気にしていなかった」という娘婿の食生活を一変させることからスタート。品質の確かな素材や発酵食品、手作りの食事を基本に、医者の暗示にかからないよういつも前向きに「治る」と自分を信じ続けるよう、考え方も変えていくよう家族で働きかけました。
「もう20年になりますが、再発もなく今も元気ですよ。食もそうですが、自身で『自分は病人ではない』と前向きに考え、『どう生きるか』を強く思い、いまある命に『感謝』し続けたことが、彼をより強くしたんじゃないかな。子どももできないといわれていたのに、今では6人の子に恵まれました。」と岩本さん。感謝——。岩本さんのお話の中で何度も出てくる言葉です。
「この世に生を受けた以上、私たちには役割があります。他者を思いやる、他者に貢献する、それが“ありがとう”。だって、自分だけ幸せになっても仕方ないでしょう」。しかしそんな気持ちになれない時、具体的にどうすればいいのかとお聞きすると「簡単です。笑顔を作りましょう」とのこと。
「幸せになりたい、と悩むのはおかしい。自分が生きているだけでも親に周囲に感謝しなければならないのに反対のことをしている。だから笑顔! 他人を羨ましく思っても、心の底でそう思っていなくても『おめでとう』を言いましょう。それが綺麗事であっても、そんなことすらできない心の余裕のない人間に、いったい他に何ができるというんでしょう」
厳しいけれど愛に溢れた言葉。食と笑顔、まず自分ができることからやってほしいという「かあちゃん」からのまっすぐな思いです。
「もし赤ちゃんがいない人生だったとしても、他者を思い、感謝する心をもち続けていれば、血の繋がりに関係なく心も人生も必ず満たされると思います」
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.34 2017 Summer
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