プロゲステロンは排卵を抑制してしまう?
清水 真弓 先生(はるねクリニック銀座)
相談者:春さん(28歳)
プロゲステロンの薬
先月からクロミフェンの服用を始めました。今月は、生理開始2日後からクロミフェンを服用し、更にプロゲステロンの薬を飲むようにとのことで、詳しくは看護婦から薬の使用方法に関して説明がありますと言われました。待合室でお会計を待っている時に看護師が私のところに来て、クロミフェンを飲み終わった次の日からプロゲステロンの薬を1日2回飲むようにと、薬の服用方法を説明してくれ、何も疑わずその通りにしました。ただ、クロミフェンを飲み終えた次の日から2日間プロゲステロンを1日2回1錠ずつ飲んだところで、薬に入っている説明書に排卵後からと書いてあるのを見つけ、インターネットで調べるとプロゲステロンを排卵前に飲むと排卵を抑制してしまうと書いてあり、愕然としました。クロミフェンを飲み終わってから3日目にはプロゲステロンの薬は飲んでいません。2日間のプロゲステロンの薬のせいで、今月はもう排卵しないということでしょうか。
まずクロミフェンとプロゲステロンについて教えてください。
クロミフェンは代表的な排卵誘発剤で、特にPSOSの方にはよく効く薬です。プロゲステロンは黄体ホルモンで、着床しやすくなるように、また黄体機能不全を防ぐために、一般的によく使われている薬です。
飲む時期としては普通、排卵後2~3日目からです。ですので、春さんの場合は飲み始めるのが少し早いですね。おそらく「排卵して高温相に入って2~3日目から10日間くらい飲んでください」という意味だったのだと思います。ドクターから看護師さんへのミスコミュニケーションがあったのかもしれません。
春さんはクロミフェンを飲みえ終えた次の日から2日間プロゲステロン飲んでしまったということですが、妊娠に悪影響はありますか?
クロミフェンは生理開始2日後から飲むので、春さんは3日目からクロミフェンを5日間飲まれていると思います。なので、プロゲステロンをD8から2日間飲んでしまったということだと思います。
プロゲステロンには黄体補充のほかに排卵を抑える効果もあります。アメリカでは採卵の際、排卵抑制でプロゲステロンの内服をするところもあります。普通はアンタゴニストという注射とか鼻のスプレーで排卵を抑制するのですが、プロゲステロンを飲むことでLHサージという排卵を起こす波が抑制できるのです。
しかし、春さんが飲まれたのはまだ卵胞が育っていない時期です。プロゲステロンは排卵を抑える効果はありますが、卵胞発育には影響しないので、問題はないと思います。
春さんに何かアドバイスはありますか?
春さんは身長157㎝、体重45kgとやせていらっしゃいますね。このまま妊娠なさると小さな赤ちゃんが生まれやすくなります。妊娠中の体重増加が7kgを下回ってしまうと低出生体重児として生まれる心配もありますし、かつそういう赤ちゃんは大人になった時に、生活習慣病、糖尿病や動脈硬化などになりやすいといわれています。妊娠なさった時はしっかり10kgくらい体重増加をさせてもらったほうがいいと思います。
清水先生より まとめ
PCOSの方にはクロミフェンが良く効きます。クロミフェンで排卵誘発をして、排卵確認後にプロゲステロンで黄体補充のするのは一般的な治療法です。
今回少し早い時期に2日間プロゲステロンを飲んでしまったということですが、卵胞が育っていない時期なので、妊娠に影響することはありません。
ご心配ならかかりつけの先生や看護師さんによく相談していただいて、信頼関係を築くことが大事です。