卵巣腫瘍でも、妊娠できますか?
2017/6/20 中村 嘉宏(なかむらレディースクリニック 院長)
相談者:ベルさん(主婦/秘密)
そろそろ生理です。排卵頃にHしました。
最近、下腹部がチクチクし、「妊娠の兆候?」なんて思っていたら体温が下がり…。病院に行くと「卵巣嚢腫」の診断が。普通はアーモンドくらいの大きさの卵巣が、左の卵巣だけ5㎝大になっているとのことでした。
来週のMRI検査と採血で良性か悪性かわかります。ちょっとの相談がまさかの結果。発見できたのは不幸中の幸いですが、手術の話も出ていて頭が真っ白です。
同じ病気で妊娠された方はいらっしゃいますか?
卵巣嚢腫について教えてください。
卵巣嚢腫の原因は基本的に不明ですが、それほど珍しいものではありません。卵巣嚢腫には「チョコレート嚢腫(子宮内膜症性卵巣嚢腫)」、脂肪、毛髪、歯などが含まれる「皮様嚢腫」などがあります。良性のものがほとんどですが、なかには悪性のものも含まれます。良性と悪性の区別は造影MRIと腫瘍マーカーである程度わかります。
治療法について教えてください。
良性の場合は基本的に腹腔鏡手術での治療になります。小指から親指の幅ぐらいの傷が4カ所ぐらいなので、傷が小さくて済みます。妊娠を希望される方であれば、悪性が疑われない限り、正常部分を残して嚢腫の部分だけを取る手術をおこないます。
手術と妊娠どちらを優先するのがよいでしょうか?
卵巣嚢腫の種類と年齢によって判断は異なります。一般的な皮様嚢腫で5センチぐらいの場合は、摘出手術をしてから妊娠を図られるのもいいでしょう。避妊期間は手術後1ヶ月あれば十分です。一方、チョコレート嚢腫の場合は、手術することで卵巣機能がかなり低下します。そのため、まずは採卵して受精卵を保存してから手術することも必要です。特に年齢が35歳以上であれば、緊急性がなければ基本的に経過観察して体外受精を優先します。チョコレート嚢腫があれば、卵管が癒着している可能性があるので、体外受精が適しています。チョコレート嚢腫が進行すると卵巣機能にも影響しますので、早めに体外受精を検討されるのがいいと思います。
中村先生より まとめ
治療方針は卵巣嚢腫の種類によって異なります。チョコレート嚢腫の場合は手術により卵巣機能がかなり低下します。経過観察して妊娠を優先させる場合でも、卵管癒着の可能性を考慮して早めに体外受精の検討をおすすめします。