排卵のしくみと、排卵しない理由がわかりません
2017/8/25 清水 真弓 先生(はるねクリニック銀座)
相談者:ゆきさん(34歳)
二人目不妊のためタイミング治療中です。HMG注射を使い、21㎝に育った卵胞があります。医師から卵巣の腫れを心配して、自然排卵で様子を見ましょうと言われていて、排卵を待っているところです。しかし排卵検査薬は陰性のままで5日経ちました。もともとLHが低いため、一人目の妊娠の時はHCG注射を使いました。そこで質問です。排卵検査薬が陰性のままだと、排卵しないで卵胞はしぼみますか? 後日病院を受診しますが、治療のためにも、知っておくべき最低限の知識とアドバイスをいただけますか。よろしくお願いします。
自力で排卵できないハイポ・ハイポのケース
質問の内容から、2つの治療ケースが考えられます。
1つめは、HCG注射を使わないために排卵しなかったケース。2つめは、HMGの副作用を回避するために積極的な排卵惹起(トリガー)を取り止めたケースです。
ケース別に治療の概要とアドバイスについてご説明します。
まず1つめのケースですが、「一人目の妊娠時はLHが低くHCG注射を使った」という事実が正しければ、ゆきさんは低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の可能性があります。何らかの理由で脳から卵巣に働きかけるホルモンと、卵巣のホルモンの両方が少ない状態のことを言い、私たちはハイポ・ハイポと呼んでいます。LHも0~1と低く、排卵にはHCG注射などで外からLH作用を補うことが絶対に必要です。点鼻薬による排卵惹起は作用が違うため、この体質には効果がありません。
このケースにゆきさんが当てはまるなら、HCG注射を使っていないため排卵検査薬が陰性のままというのは当然で、卵胞はしぼむ運命です。でもHCG注射を使えば、陽性になって通常は排卵しますので安心ください。
清水先生より アドバイス
ご自身がハイポ・ハイポ体質だということを認識しておきましょう。HCG注射を打つと排卵検査薬は陽性になり、通常排卵がおきます。
またごくまれですが、患者さんの体質を見逃して、卵胞が育っても医師がHCG注射を忘れてしまうことがあります。マンツーマン(主治医制)のクリニックではまずありませんが、毎回医師がかわるクリニックでは可能性がゼロではありません。それを防ぐためにも、治療時には毎回医師に伝えるとよいですね。
HMGの副作用を回避するためキャンセル周期とする、もしくは排卵検査薬の反応が出終わっているケース
2つめは、点鼻薬や注射を含めて自力で排卵できるものの、あえて積極的な排卵惹起を取り止めるケースです。HMGは卵を育てるのが目的ですが、卵が複数育った場合、そのまま排卵させると双子や三つ子などのハイリスク妊娠となる可能性があります。
一般に、16mmの卵胞が4つ以上育った場合は、その周期は治療をキャンセルするのが一般的です。質問文に書いてある「自然排卵で様子を見ましょう」というのは、「キャンセル周期としましょう」とも読み取れます。
このケースにゆきさんが当てはまるなら、排卵検査薬を使っていたようなので、医師との間に誤解があったのかもしれません。
また、卵胞が21mmということは、排卵検査薬での反応がもう出終わっていた可能性も考えられます。その場合は、通常排卵していきますので、後日エコーで排卵確認を行うのが一般的です。
清水先生より アドバイス
患者さんの卵胞をほどよく育てるための薬剤の選択・調整は、ベテラン医師でも難しいのです。同じ患者さんでも周期ごとにコンディションが変わることがありますし、医師の腕が問われます。実績ある不妊の専門施設を訪れるのも一つの方法でしょう。
二人目不妊の治療はどうする?
二人目不妊の治療は、成功例を踏襲するのが原則です。一人目の時にHCG注射を使って妊娠したのでしたら、私もそこから治療を始めます。
私自身、たくさんの患者さんと接してきた経験から言えることなのですが、ハイポ・ハイポ体質の方は、自力で排卵できるケースに比べて、排卵さえすれば妊娠しやすい印象があります。ゆきさんは30代前半とお若いので、妊娠の可能性は十分にあります。頑張って治療を続けてください。