乳歯の歯並びが気になる…。いつ相談すれば良いですか?
インタビュー 子育て・教育
乳歯の歯並びが気になる…。いつ相談すれば良いですか?
2017/9/21 秦雄 一郎 先生(はた矯正歯科)
乳歯で注意しておきたいこと
乳歯は生後6~7ヶ月ではえ始めます。その後2歳~2歳半くらいで上下合わせて20本生えそろいます。乳歯で注意しないといけないのが「歯の間が詰まっていること」、「受け口」、「歯の数の異常(欠損歯、過剰歯、癒合歯)」などです。
まず「歯の間が詰まっていること」、つまり歯全体がぎちぎちに詰まっていて隙間がない状態は一見問題なさそうに見えます。しかし乳歯の時期は、歯の間に隙間があるすきっ歯の状態が正常です。乳歯の間に隙間がないと乳歯より大きな永久歯のはえる隙間が不足します。結果的にガタガタの歯並びになりやすくなります。
「受け口」は下の歯が上の歯より前で噛んでいる状態で、下あごが前に突き出ることで噛み合わせの問題だけではなく、顔つきにも影響してきます。また「さしすせそ」などの発音がしにくく、語学の発育にも影響があります。受け口は遺伝も関係しますが、歯の生え方やおしゃぶりの癖など環境にも影響されます。
「欠損歯」は歯の本数が足りないこと、「過剰歯」は逆に多いことをいいます。原因はわかっていませんが、乳歯が欠損している子どもは永久歯も足りない場合があります。欠損歯の数はほとんど1~2本ですが、まれに5~6本足りないまま成長してしまうお子さんもおられます。過剰歯は並ぶことができずにガタガタに生えたり、生えることができずに骨の中に埋まったままになったりします。「癒合歯:ゆごうし」は、本来別々の歯がくっついて生えてくることをいいます。
注意しておきたいことを放置するとどうなる?
乳歯時代におおよそ将来の歯並びが見えるのは事実です。
「歯の間が詰まっている」お子さんは永久歯が口の中に収まりきらず、最後に生えかわる事が多い犬歯が前に出っ張り、八重歯になりやすいです。「受け口」は、成長につれて治るお子さんも一部いますが、そのままの方がほとんどです。子供のうちはあごの成長をコントロールする矯正治療が可能ですが、成長が落ち着く思春期以降は困難になるため外科手術を併用した矯正治療が必要になることもあります。「歯の数の異常(欠損歯、過剰歯、癒合歯)」は永久歯への正常な生え変わりが邪魔されるため、すきっ歯や、ガタガタの歯並びの原因になります。
予防はできないの?
歯の生える隙間の問題については、「良く噛む工夫」をすることで予防にもつながります。食事に加工食品が増えた結果「噛まなくなった」ことで歯の生える “あご”はどんどん小さくなっています。硬いものばかり食べるというのは現実的ではありませんので「よく噛む工夫」をしてはいかがでしょう。例えば食材を大きくカットすることで食べごたえも大きく変わりますし、いりこやナッツ、キシリトール入りのガムなどをおやつにするのもいいでしょう。よく噛んで唾液をたっぷり出すことも口腔内を健康に保つひとつの方法です。
専門家に相談するタイミングはいつ?
3歳児までは検診時になにかお子様の歯に問題があれば必ず指摘があると思います。3,4歳児以降なら歯科医院での診察も十分可能ですので、何か気になることがあればその時点でお近くの歯科医や矯正専門医へご相談ください。5~6歳ごろには永久歯が下の前歯から生えてきます。歯並びに大変気を使うアメリカでは、7歳になるとまず1度矯正専門医に診てもらうそうです。そこで問題が見つかれば、治療や矯正をはじめます。歯並びに問題があると虫歯や歯周病などにかかりやすく将来にわたって歯の問題で苦労する可能性が高くなります。理容室で髪を切るように、お子様も気軽に歯科医院に行ってほしいですね。
歯のケアで何か自分でできることはある?
まれに歯肉炎など歯茎に問題があるお子様も。歯ブラシをえんぴつのように持ち、歯茎に圧力をかけず優しく磨きましょう。食事のあと30分たってからフッ素入りの歯磨きを使ってください。乳幼児はガーゼで優しく歯をふくだけで。そんな日常のケアとこまめなクリニック通いを心がけてみてください。