上の子のケア、金銭面の両立が難しい「2人目の不妊治療」。託児所付きクリニックに救われました。
自分主導のタイミング療法に限界を感じて…
取材当日、1歳9カ月になる女の子と少し膨らみが目立ち始めたお腹で迎えてくれたMさん。ちょうど妊娠5カ月を経過したところです。
26歳という世間では適齢期と言われる年齢で結婚をしたMさん。お母様がMさんを産んだのが26歳だったので「結婚したらすぐにでも赤ちゃんが欲しい!」そう思ったものの、生理不順だったり、基礎体温がガタガタだったり…。なんとなく自分は妊娠しにくいのかも、そんな予感がしていたと言います。そこで、当時の家から近い不妊治療専門のクリニックを訪ねたところ、まずはタイミング療法をすすめられ始めてみることに。基本的にご主人のNさんは協力的な方だそうですが、「主人を夜中に無理矢理起こして“疲れているから…”と断られることもあり、だんだん喧嘩になることも増えて…。回を重ねるごとに気分的に追い詰められていきました」。タイミング療法を始めて10回。限界を感じたことと、気分転換も兼ね、Mさんはもう少し遠い都心のクリニックへの転院を決めました。
「原因不明の不妊」と診断され一気に顕微授精へ
転院したクリニックで一通りの検査を受けた結果では特定できるような疾患はなく「あえて言うならホルモンバランスが崩れている、排卵が遅い」ということでした。先生からは「あなたのような若い年齢の場合、この結果からはわからない何らかの原因があるはず。体外受精がいいでしょう」とはっきり言われたそうです。
まさか一気に体外受精をすすめられるとは…心の準備がなかったMさん。「え? 私って不妊なの?原因がわからないってどういうこと?」まさかの展開に驚き、その場で泣いてしまったそうです。
しかし、テキパキとしてとても決断力のあるMさん。「とにかく今やれることはやってみよう、タイミングのストレスを重ねるより体外受精に踏み切ったほうがいいのかも」と前向きに捉え、ご主人の合意も得ました。
体外受精にあたり、ご主人も採精の協力をしてくれましたが、病院から「精子の運動率が悪いので“顕微授精”にしましょう」との提案。次々と起こる展開にMさんご夫婦は戸惑いますが、走り出した以上は任せるしかありません。Mさんからは3個の卵子が採取できました。そして胚盤胞まで育った凍結胚を戻したところ、無事に妊娠! 短い期間に一気に物事が展開していったものの、先生を信じ、早い時期に結果が出たことに夫婦で喜び合ったそうです。
その後の妊娠期間はとても順調に進みました。ところが、いざ出産の日。赤ちゃんはなかなか出てこず、吸引、鉗子分娩へ。Mさんが疲れて寝てしまい目が覚めたとき、赤ちゃんは隣にはいませんでした。なんと、仮死状態で生まれた赤ちゃんは緊急で大学病院へ搬送されていたのです。「順調に進んでいた妊娠の最後にこんなことが待っているなんて…ショックでしたが、ここで主人がすごく頑張ってくれました。毎日娘の病院に行って写真を撮って私に見せてくれました。突然の展開で主人も記憶がないくらいだと言っています」。その後赤ちゃんは順調に回復。3週間後ようやく退院し、3人での生活がスタートしました。
2人目の治療は託児所のある「秋山レディースクリニックへ」
母乳育児をしたかったというMさん。1年は子育てに専念すると決めていたそうですが、きょうだいはどうしてもつくってあげたいとの思いがありました。というのも、Mさんは4人きょうだいの一番上のお姉さん。3人の弟がいます。自分が子どものころは喧嘩したり大変だったけれど、大人になった今はきょうだいのありがたさを感じ、そして何より4人を育てたお母さまへの尊敬の気持ちがあるそうです。
のんびりしていたら自分の出産の確率がどんどん落ちてしまうかも、とも考えMさんは次の出産の準備を始めます。ところがここで待っていたのが、通院中、上の子をどこに預けるか…という問題。なぜなら、最初に妊娠できたクリニックは「子連れNG」だったからです。「確かに自分が1人も授かっていなかったら、子連れで治療に来る人にはいい気持ちがしなかったと思います。“1人いるからいいじゃない”って。でも、1人産んで子どもの可愛さがわかったからこそ、なんとしてでももう1人欲しいという想いもあるんですよね…」。
前のクリニックへの未練もありつつ、致し方なくもう一度病院を探し始めたMさんは、インターネットで託児所がある「秋山レディースクリニック」の存在を知ります。「もう、私にはここしかない!! と思いました」。すぐに予約を入れ、カウンセリングへ。今までの経緯と事情、Mさんのすぐに体外受精をしてほしいという申し出を理解してくれたこと、何より広くきれいな託児ルームがあること、Mさんの2人目への想いが叶えられそうな場所が見つかりました。
早速、体外受精がスタート。採卵する前の受診で秋山先生に初対面。「いい意味で程よい距離感をもってくださる先生で安心できました」とMさん。上のお子さんも診療中は喜んでキッズルームで遊んでくれていたそう。そして今回は9個採卵でき、うち5個受精できたそうですが、1回目の移植では残念ながら陰性でした。
次がダメならしばらく見送ろう覚悟を決めた2度目の移植
専業主婦のMさん。この治療にあたっては自分の貯金を崩しながら臨んでいたそうです。「上の子でもお金がかかり、さらに自分の不妊治療。気持ちだけは意気込んでいても、やりくりするのは大変だと痛感し始めました。このまま続けていたら治療貧乏になっちゃうなって…。あくまでも“予定は未定”なんですよね」。そこで、「次の移植で妊娠できなかったらいったん治療はお休みしよう」と見切りをつけることにしたそうです。またお金を貯めたらスタートしよう、そう覚悟を決めて臨んだ2回目の移植。結果は嬉しい嬉しい2度目の妊娠でした。
「次はうまくいかなくても仕方がないと覚悟を決めていましたが、移植の日以外の受診日には子どもを預けて受診できる体制が整っていて、安心して通院できたのが本当に良かったです」とMさん。第2子が生まれる来年を待ちわびている今日この頃です。
「上の子を抱えつつの治療は大変ですが、逆に幼稚園などで時間制限があると余計に難しいはず。さらに不妊の疑いがあるなら1歳でも若いうちに治療を受けたほうがいい。だから万全の体制が作れるクリニックを探して早めに治療を進めて! 2人目にチャレンジする方にはそう伝えたいです」
From Doctor 治療を振り返って
「1人目の人も2人目の人も通える環境を目指しました」
父の代では、ここに小児科と産婦人科を併設していたのですが、私が継いでから不妊治療をされる方も通院されるようになり、小さいお子さんを連れた患者さんと不妊治療の患者さんが待ち合い室でいっしょになることがありました。そこで、不妊症や不育症の診療にも力を入れていくにあたって、1人目のお子さんができない方も、すでにお子さんがいらっしゃる方も気兼ねなく通えるよう、入口から分かれるような設計にしました。常時専任スタッフが2名いるので、お2人目を目指す方も安心して通ってくれています。
Mさんのように若くても原因不明で妊娠できない方は約3割くらいいらっしゃると言われています。2回目はタイミングから、という方もいますがMさんはご主人の合意も得たうえで体外受精をしたいとしっかりリクエストをいただいたので治療はとてもスムーズでした。時々、ご夫婦の意見がまとまらず、奥様のほうが板挟み状態のようになってしまう場合もあるので、ぜひお二人でしっかり話し合ったうえで治療を進めてほしいと思います。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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