多嚢胞性卵巣症候群は薬が効きにくいのでしょうか?
佐藤 雄一 先生(高崎ARTクリニック)
相談者:やんさん(31歳)
クロミッド®が効きません
不妊治療を始めました。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断されました。1周期目はクロミッド®を1日2錠服用。卵胞が4つ育ちましたが、妊娠に至りませんでした。2周期目もクロミッド®を1日2錠服用。前回と同じ時期に受診しましたが卵胞は育っておらず、その日にHMG注射を打ち3日後に受診。しかし卵胞は育っておらず、またHMG注射を打ちました。次は3日後に受診予定です。クロミッド®とHMG注射をしても効かない時は、次の周期で同じことをしても効かないのでしょうか? 次は効くことはありますか? 1周期目は卵胞が育ったのに落ち込んでいます。20歳から生理不順のため10年間ピルを服用。身長158㎝、体重41㎏です。
やんさんはクロミッド®が効きにくい体質なのでしょうか?
周期目はきちんと卵胞が育ったということなので、薬が効きにくい体質ではないと思います。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は卵胞が排卵できる大きさに育たない状態のことで、肥満型の女性に多いのですが、この方のような痩せ型の女性にもみられます。
PCOSの疾患がベースにあって痩せ型で生理不順の体質の場合、薬の効き具合が体調によって大きく左右されることがあります。薬を使っても卵胞が成長しないのは、頭からのホルモン分泌指令がうまくいかないのかもしれません。その周期の体調が影響した可能性が考えられます。
薬の効きについては、心配しなくていいですか。
はい、不安になる必要はないと思います。
医師としては、この方の食事や生活習慣はどうだったのかが気になります。ダイエットや日々の忙しさで栄養が偏ってしまったのか、強いストレスがあって体調を崩していたのか…。そういう時に薬や注射をたくさん使っても、卵巣は反応せず卵胞が成長しないことも多いんです。
ですから、体調を良くすることで、次は同じ薬が効く可能性はあると思います。
今の治療薬をどのくらい続けるといいですか。
一般的には5~6周期と言われていますが、最近は3~4周期行って結果が出なければ、別の治療薬を検討することも多いです。
現在、レトロゾールという新しいタイプの薬がありますので、それを試してみるのもいいでしょう。
その薬の特徴を教えてください。
レトロゾールは多胎妊娠のリスクが低いと言われている薬です。
PCOSは、排卵できない卵胞がいくつも卵巣にたまっている状態です。薬を使うと、いくつもある卵胞が一気に育ち、その分、多胎妊娠のリスクも高まります。レトロゾールはクロミッド®より、少ない数の卵胞を育てるメカニズムをもっています。
ただ、PCOSでも不妊治療の第一選択薬は、保険適用になるクロミッドⓇが主流です。レトロゾールは保険適用外の薬になるため、医師とよく相談してから使用してください。治療費もやや高額になります。
今後のアドバイスをお願いします。
繰り返しになりますが、体調によって薬効が出ない周期もあります。極端なダイエットやストレスは卵巣のはたらきを悪くするので、正しい生活習慣を心がけてください。
そして不妊の治療中は精神的なストレスも強くなりがちです。主治医の先生と信頼関係をつくりながら、リラックスして前向きに治療をしてほしいと思います。
佐藤先生より まとめ
●やんさんの体調によって、薬が効かない周期も。
●1周期目は薬が効いたので、次に効く可能性はあります。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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