卵管閉塞で自然妊娠を希望。FTは効果がありますか?
北村 誠司 先生(荻窪病院 虹クリニック)
相談者:コリラさん(40歳)
卵管形成術について
2人目を希望し、2カ月前から治療を開始。卵管の両側閉塞で、できれば自然妊娠でという希望があり、卵管形成術を検討しています。いくつかの病院のHPを調べると「ひだの状態を確認でき、自然妊娠が可能な卵管かを判断できる」とあったのですが、主治医によると「解像度が悪すぎて見えない。通過したかどうかしかわからない」とのこと。病院によって使用しているファイバースコープの精度が違うのでしょうか。また、術後、子宮外妊娠は2割くらいと説明されたのですが、他の病院のHPでは2%程度と記載されていました。本当はどうなのでしょうか。FTがかなり効果的といっている病院もあれば、有用性があるとはいえないという記事もあり、情報の違いに悩んでいます。
コリラさんが検討しているFTとはどんな施術なのでしょうか。
FT(卵管鏡下卵管形成術)は、片側、もしくは両側の卵管が閉塞している人に行う治療です。麻酔をした後、内視鏡を内蔵した細いカテーテルを腟から子宮へ挿入して卵管内へ進み、カテーテルのバルーンを膨らませて詰まっている部分を押し広げます。日帰りでできる手術なので体への負担が少なく、保険適用の治療なので、ハードルはそれほど高くないと思います。
卵管に詰まりが認められた場合、当院ではまず子宮鏡下で通水を行って疎通をはかり、それでも通らない場合はFTを実施している本院や大学病院をご紹介しています。
臨床の印象では、FTまで進まなければいけないケースはそれほど多くなく、通水をすれば閉塞はほとんど解消し、7~8割の方は通るようになりますね。
コリラさんの主治医の先生がおっしゃるように、
「解像度が悪くて通過の確認しかできない」ということはあるのですか。
そのようなことはないと思いますね。国内ではほとんど同じメーカーの機器を使っていると思うので、施設によって解像度に大きな差があるというのも考えにくいと思います。
卵管は収縮しますから、検査時のコンディションや病態によっては瞬時に細部を確認できなかったり、検査する医師の技量によって正確な観察や診断ができないこともあるかもしれません。ですが、ほとんどの場合はきれいに見えて、通過性も確かめることができると思います。
FTに関しては先生や施設によっていろいろな考え方があると思います。FTを受けて一度開通しても、また閉塞してしまうこともあるので、その点では「とても有効とは言えない」と考える先生もいるかもしれません。もしかしたら担当の先生もそのように思っているから、否定的な発言になったともとれます。
ただ自然妊娠を望んでいる方にとっては、今まで通っていなかった卵管が通ることで何割か妊娠率の上昇を期待できるので、FTを受けてみる意味はあると思いますね。
子宮外妊娠の確率については?
FTを受けた方の2割が子宮外妊娠するという解釈は正しくないのでは? おそらく100人の方がFTを受けて、そのうち20人の方が妊娠されて、20人の中の2割程度が子宮外妊娠するということではないでしょうか。
それもFTを受けたから子宮外妊娠するのではなく、閉塞を起こす人はもともと子宮外妊娠を起こしやすい卵管なので、通してあげればそのようなリスクもないとはいえないという程度だと思います。これに関しては、あまり神経質に考えなくてもいいのではないでしょうか。
北村先生より まとめ
●施設によって精度が大きく変わることはなく、画像もきれいに見えます。
●FTを受けたことで子宮外妊娠を起こすということはありません。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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