受精卵が残り2個に。このまま移植を続けるべき?
コラム 不妊治療
受精卵が残り2個に。このまま移植を続けるべき?
石原 尚徳 先生(久保みずきレディースクリニック)
相談者:Aさん(35歳)
今後の治療法について
昨年、男性不妊がわかり顕微授精に。アンタゴニスト法で10個採卵し、8個が受精。G1の10分割が1つ、胚盤胞を4個凍結しました。1回目は自然周期で排卵が確認できずキャンセル。次はホルモン補充で5ABを移植し、化学流産しました。2回目、3回目は自然周期で5BAと5BBを移植するも着床せず。残りは10分割と5BBの胚盤胞です。グレードが良くても結果が出ないので、残りも染色体異常なのでは? と心配です。自然周期はキャンセルになる可能性があり、ホルモン補充は精神状態や体調が悪くなるため、もうやりたくありません。今ある受精卵を自然周期で戻すのが早いか、年中無休の病院に転院して採卵からしたほうがいいのか。どちらがいいでしょうか?
受精卵のグレードは良いのに、なかなか結果が出ないそうです。
このまま移植を続けるか、それとも転院して採卵からもう一度やり直したほうがいいのでしょうか。
時間、費用、リスクなどトータルに考えれば、転院してもう一度採卵するよりも、いま残っている受精卵を移植するほうが良いと思います。まだ35歳ですし、残りのG1の10分割の受精卵と5BBの胚盤胞も形態的に良いと思いますので、妊娠する可能性は十分にあると思います。
3回移植をしても結果が出ないので、ストレスは大きいと思います。受精卵を凍結する時に「良い受精卵が多いですね」と言われて、早く結果が出ると期待していたかもしれませんね。残りの受精卵を移植しても結果が出ないのではないか? もう一度採卵したほうがいいんじゃないか? 転院したほうがいいんじゃないか? 実際にそう考えてしまうお気持ちはよくわかります。私たちドクターも「こんなに良い受精卵なのに、なんで結果が出ないのだろう?」と正直がっかりすることがありますから。
実をいうと、3回の移植でも結果が出ないことはよくあることで、たくさんの受精卵があってもなかなか妊娠にいたらないというケースは珍しくありません。10〜15回目の移植でようやく妊娠する方もいらっしゃいます。ある程度の根気は必要になりますね。Aさんの場合は気持ちは十分理解できますが、このまま治療を続けてみてはいかがでしょうか。
この方はホルモン補充周期が体に合わず、この先は自然周期を希望されているそうです。
一般的に、自然周期とホルモン補充周期ではどのような違いがあるのでしょうか?
自然周期は、基本的に自然の排卵があることが前提です。また、排卵日を特定する卵胞チェックを数回行いますので、通院スケジュールを立てるのが難しくなります。一方、ホルモン補充周期は、ホルモン補充を開始後、子宮内膜とホルモンの状態によって排卵日を決定することができますので、通院スケジュールを立てやすくなります。遠隔地から通われる方やお仕事が忙しい方は、ホルモン補充周期を選択されることが多いですね。ただ、費用は自然周期よりも高くなります。また、人によっては排卵や内膜を厚くするまでは自然周期で行い、排卵後にホルモンを補う「自然周期+ホルモン補充周期」という中間の方法を用いることもあります。当院の妊娠率はホルモン補充周期がやや高めですが、大きな差はありません。
ホルモン補充周期で心身のバランスを崩して、鬱っぽくなったり、怒りっぽくなったり、体調が悪くなることはまれにあります。排卵があって通院スケジュールが立てやすい方であれば、自然周期、ホルモン補充周期のどちらも選択できますので、あえてホルモン補充周期にこだわらなくてもいいと思います。
石原先生 まとめ
●時間、費用、リスクを考慮すると、移植を続けるのがいいでしょう。
●10〜15回で妊娠するケースも多いので、ある程度の根気は必要です。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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