顕微授精での良好胚を何度移植しても妊娠継続できません
内田 昭弘 先生(内田クリニック)
相談者:もものみさん(34歳)
良好胚を何度移植しても…
不妊治療を始めて2年。フーナーテストで精子が見えず、3回の人工授精で妊娠に至らず、体外受精専門のクリニックへ転院しました。初回採卵で1つしか卵子が採れず、ふりかけで受精しなかったので、2度目からは顕微授精をしています。7度の移植をしましたが、初めの3回は刺激の少ない方法で採卵。2回目は採卵周期に移植してhCGが0。次は凍結してから次の周期に移植してhCGが0。その後、ショート法で採卵し、5日目胚盤胞AAからBBまで4つ、初期胚グレード1が3つでき、2ステップで3回移植。子宮内膜は11㎜で、2回は着床したもののhCG20以下で化学流産。自然周期での移植はホルモンがうまく上がらず、2回キャンセルしています。うまくいかない原因はなんでしょうか。ほかに方法は考えられないでしょうか。
1回目で受精しなかった原因は?
たまたま、卵子の状態が悪くて受精しなかった可能性もあります。1回目の採卵の際に卵子が1個しか採れなくて受精しなかったから、2回目以降はすべて顕微授精をしているとのことですが、卵子数が増えてきた時に、もう一度、体外受精を試してみたらどうでしょうか。人工授精が3回できているということは、精子に驚くほどの異常はないはず。ただ、精子の数、運動率がわからないので、実際、調整した時の精子の情報が欲しいです。また、採卵時に何個採取でき、顕微授精を何個やって何個受精卵になったのかという情報もあるといいですね。
もものみさんは、良好胚の着床がうまくいかないと感じておられるようです。
「自然周期での移植も試みましたが、ホルモンがうまく上がらず、2回キャンセル」ということなので、それまでホルモン補充周期で融解胚移植をしているだろうと推測すれば、ホルモン周期のほうがいいかもしれません。でも、この先生の自然周期をやってみようという発想は正しくて、ホルモン補充周期では妊娠成立はするけど育っていないから、自然周期の時に排卵誘発剤を使って着床の条件を整えるのもありだと思います。あとは、2ステップで3回移植とありますので、二段階胚移植をしているようですね。当院で融解胚移植周期に積極的に取り入れているシート法はやっていることになるので、アシストハッチング(AHA)という方法を検討してみてもいいのではないでしょうか。
内田クリニックでは、どのような治療を進めていくのでしょうか。
1回目に卵子が1つしかなく、ふりかけ(通常の体外受精)で受精しなかったようですが、2回目は受精卵になる卵子数が増えているので、もう一度体外受精をしてみましょうと伝えます。ショート法で胚盤胞にはなっていても、それが化学流産にしかなっていないので、残るのはロング法とアンタゴニスト法です。卵子の育て方を変えるという発想があってもいいと思います。
先生は、どの段階で顕微授精を提案するのでしょうか?
高度生殖補助医療のいろいろな治療を含めて、昨年は年間約5万1千人が誕生しているなかで、凍結周期で生まれているのが約4万人。顕微授精を行った新鮮胚移植では約4300人です。いくら治療件数があっても、体外受精での治療と比較しても妊娠出産率は低いのが現実です。だから僕は、明らかに精子の数が少ないとか、受精卵にならない(受精障害)という段階で顕微授精をすることにしています。もものみさんも顕微授精で胚盤胞にはなっているけど、化学流産に終わる受精卵にしかなっていない。ですから、受精卵になる経過を変えてみようという発想で、顕微授精をやめるという選択もあるのではないでしょうか。しかし、体外受精をやっても受精卵にならないことを想定して、顕微授精と体外受精を半々で行うことも提案すると思います。排卵誘発法も変えて、卵子が育っていく経過も変えようと。そこをご夫妻が納得してくれるかどうかですね。
内田先生より まとめ
●排卵誘発法、卵子が育っていく経過を変えてみましょう。
●体外受精と顕微授精を半々にしてみるやり方もあります。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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