人工、顕微授精の結果が出ない。転院または治療を諦めるべき?
蔵本 武志 先生(蔵本ウイメンズクリニック)
相談者:えりさん(39歳)からの相談
着床しません
37歳から不妊治療を開始、人工授精10回以上、顕微授精4回を行いました。現在、AMH0.64ng/mlと徐々に低下しています。あらゆる検査をし、一部卵管狭窄が認められました。主人に少々問題があり、精子濃度が少なく、奇形率が多いため、自然妊娠は厳しいという診断でした。今年1月に一時的に治療をお休みした期間に自然妊娠をしましたが、7週目で流産。現在は顕微授精4回目失敗、胚盤胞移植に向けて待機中です(胚盤胞移植は初めてです。今まで胚盤胞に到達しなかったので新鮮胚移植しか行ったことがありません)。失敗続きで転院も考えていますが、仕事との両立や生活を考えると物理的に厳しく感じます。もしくはこのまま諦めるべきなのか悩んでいます。
胚盤胞移植に向けて待機中、これからの治療に悩んでおられるようです。
情報が少ないのですが、初めての胚盤胞移植のため、おそらく事前に凍結された胚盤胞を融解して移植されるご予定ですね。今までえりさんが取り組まれていた新鮮胚移植は、採卵・体外受精後およそ2~3日目の分割胚移植を行っておられましたが、胚盤胞移植は採卵・体外受精後5~6日まで体外で培養した最終段階の胚で、新鮮胚移植に比べより生命力のある胚を選ぶことができます。着床率もおよそ2倍になると思います。
AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能を示す)の数値を見ると、確かに採卵数は多くないことが予想されますが、数字にガッカリしないでほしいですね。えりさんは数カ月前に自然妊娠を経験したという事実があります。39歳の卵子の4割以上は染色体異常があると言われていますが、だからといって年齢で諦める必要もありません。
不妊治療にあたり、心理的にダメージを受けていらっしゃるように見えます。
仕事については上司の方に不妊治療を行っていることを相談することで比較的通院しやすくなったという方も多く、ひとりで抱え込まないことが大切です。今後、政府も少子化対策として、企業に不妊治療の時間を取れるよう働きかけていくようです。また、メンタルケアのサポート窓口がある病院なら、ぜひ一度相談してみてほしいですね。
ご主人の精子についてですが、実は採取ごとに違うクオリティの精子が採取されることが多々あります。また、良い質の精子は、禁欲期間が2日以内と言われています。不妊治療は妻だけの問題ではなく、夫婦で取り組むものですから、ご主人との話し合いや意思の疎通をしっかりとって、ひとりで抱え込まないことが大切です。
これからどのような治療法を考えればいいでしょう。
新鮮胚移植に比べ、子宮内膜環境を整えた凍結胚の融解胚移植の妊娠率は平均10%以上高くなります。まず、胚移植する前の周期に子宮鏡で中の様子を確認し、内膜ポリープがないか、充血していないかなど着床する子宮内膜環境のチェックを行い、内膜の充血があれば慢性子宮内膜炎の可能性も考えられ、ビブラマイシン®などの抗生剤などをうまく利用して、えりさんの状態にあったケアをして子宮内環境を整えてみてはいかがですか。もちろんそのようなことをすべて行ったうえで、それでも妊娠しない場合は心機一転、転院を考えてみるのも良い選択かもしれません。
失敗を重ねてからの待機中でいろいろ考え込んでしまうことも多いでしょうが、リラックスして次のステップに進んでください。
蔵本先生より まとめ
●凍結した胚盤胞の融解胚移植が最も妊娠率が高い。
●子宮鏡を使い、子宮内膜環境を確認。その状態を見て必要な処置を行ってみては。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.36 2017 Winter
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