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採卵しても未成熟なのは 誘発法が合っていないから?

専門医Q&A 不妊治療

採卵しても未成熟なのは 誘発法が合っていないから?

2017Webコラム

2017.11.30

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採卵しても未成熟なのは誘発法が合っていないから?


2017/11/30 山中智哉先生(オリーブレディースクリニック)







相談者:モモカワさん(39歳)


クリニックの転院について

今年の7月に39歳になりました。35歳の時に、初めての人工授精で第一子を妊娠・出産しました。40歳を前に諦めきれないと思い、治療を再開しました。
今年初めての体外受精に挑みました。クロミッド、プレマリンによる低刺激の排卵誘発で、採卵の日にはすでに排卵済み。何とか1つ採卵しましたが、未成熟卵で受精しませんでした。こちらのクリニックでは受精しなかった場合、あと2回無料で採卵してもらえます。ただ、卵胞が小さく、排卵を推定するのが難しいといわれました。年齢のこともあり、1周期も無駄にしたくありません。そこで、無料の採卵は放棄して、刺激法をとり入れたクリニックに転院したほうが良いか迷っています。どう思われますか?
生理2日目の血液検査は以下の通りです。
E2/53.6、LH/3.05、FSH/5.99
(AMHは計測してもらえないため、わかりません)



 



低刺激の排卵誘発法で臨まれていることについてどう思われますか?


AMH(抗ミュラー管ホルモン)を計測していないということですが、この値は排卵誘発の方法を決める時の目安にもなるので、一度測られたほうがいいと思いますね。
AMHは卵巣の中にどれくらいの卵が残っているのかを表すとされています。同時に、月経の各周期の始めに準備される「前胞状卵胞の数」にも関連します。例えば、AMH値が低いということは前胞状卵胞(育つ可能性がある小さな卵胞)も少ないということになるので、どんなに注射を打って刺激をしても採れる卵子の数は2、3個程度かもしれません。
今の低刺激法がいいのか、たくさん注射をしてしっかり卵巣を刺激する方法のほうがこの方にとってメリットがあるのか、AMHの値を知ることである程度わかってくるのではないかと思います。

AMHは卵巣の予備能、いわゆる卵巣年齢を表すもの。妊娠にとって年齢の因子は重要で、確かにAMHの値も加齢とともに下がってくる傾向はあります。
妊娠のしにくさは閉経のだいたい10年くらい前から始まっているといわれているので、45歳で生理が終わりそうな方だったら、35歳くらいから厳しくなる。しかし、閉経の時期は人によって差があるので、50歳を過ぎて生理が終わるような場合は40歳を過ぎても妊娠する余力が残されているかもしれません。

このように卵巣年齢には差があるので、当院では患者さん全員のAMHを計測しています。高齢の方でもAMHの値がある程度保たれていれば、中~高刺激も検討することができます。私は、AMHの値が0.8ng/ml以上かどうかを、ひとつの基準としています。それ以下であったとしても、刺激をするのであれば、少なくとも4個から5個くらい採卵ができるように目指していきます。

自然周期や低刺激の場合、AMHが高い方でも低い方でも、もともと1~3個程度の卵胞形成となります。
よく言えば、卵巣機能に良し悪しに関わらず、誰に対しても行なうことができる方法です。
モモカワさんが通院している施設では、施設の方針としてその方法を採用しているので、AMHの値を知る必要はないとしているのではないでしょうか。


採卵日には排卵済み、採れた卵子は未成熟だったそうですが。


卵胞のチェックはされていると思うのですが、もしかしたら排卵日の推測がずれて、少し遅かったのかもしれません。
E2の値ですが、通常は生理2日目だとまだ20~30pg/mlくらいだと思います。それが53.6pg/mlというのは少し高く、卵胞のほうは生理初日の段階ですでに進み始めていたのでは。2日目で53.6pg/mlになっているということは、3日目か4日目の卵胞を見ているようなイメージで考えていく必要があるでしょう。
普通なら12日目にチェックをするところを、もう少し手前、10日目くらいにチェックするようにしたほうが良かったのかもしれません。特に高齢の方は卵胞が早く進む傾向があるので、そのような視点も必要ですね。

未成熟卵の排卵については、年齢が高くなればなるほど、卵胞が十分育ちきる前にLHサージ(LH(黄体化ホルモン)が大量に分泌され、排卵が促される現象)が早く始まりやすくなるといわれています。排卵誘発は、卵胞を複数個育てること以外に、このLHサージをコントロールして、十分に成熟した卵子を採取することも大切な要素となります。
AMHの未計測や、主席卵胞が排卵済みの状態で、未成熟卵の採卵となったことなど、モモカワさん自身がいくらか治療方針に疑問を感じているように見受けられます。ただ、治療の考え方は施設によって異なりますし、順調に治療が進まない周期も起こり得ることです。まだ採卵1回目ということですので、残りの治療を続けてみてもいいのでは。2回同じようなことが起こるようでしたら、違う方法が適している可能性もありますので、その時は転院を考えられてもいいと思います。




山中先生より まとめ


●卵巣の予備能を表すAMHは、排卵誘発法を決める目安にも。
●年齢が高い人は卵胞やLHサージが早く進む傾向がある。




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山中智哉先生(オリーブレディースクリニック)
山梨医科大学卒業。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。米国ISFN認定サプリメントアドバイザー。点滴療法研究会認定医。産婦人科医として様々なキャリアを積み、10年以上の不妊治療経験を持つ。体外受精をメインに、一人ひとりの異なる悩みに合ったオーダーメイドの治療を提案。妊娠しやすい体に整えるためのアドバイスや処置も積極的に行い、不妊に悩む患者さんを統合的にサポート。


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