妊娠中の「便秘」の悩み どうやって解消すればいい?
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妊娠・出産
妊娠中の「便秘」の悩み どうやって解消すればいい?
妊娠すると女性の体にはさまざまな変化が現れますが、そのなかのひとつに「便秘」があります。悩ましい妊娠中の「便秘」について、その原因と対策をごきそレディスクリニックの小川麻子先生に伺いました。
2018.2.1
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妊娠中に便秘になるのはなぜ?
妊娠中の便秘は、妊娠初期が最も多いといわれています。
その原因は、妊娠初期に腸が蠕動(ぜんどう)すると、赤ちゃんがびっくりして腸の動きを止めてしまうから。妊娠を維持する黄体ホルモンは、腸の蠕動を抑える作用があるためです。
つまり、腸の蠕動運動が鈍くなることで、便秘が起こりやすくなります。
また、つわりのときはビタミンB1が欠乏します。ビタミンB1には腸を動かす作用があるので、つわりがひどい人はビタミンB1欠乏症で便秘になりやすく、便秘がひどいとつわりもひどくなることがあります。
お産が近づいた妊娠後期にも便秘に悩むケースがあります。
これは、赤ちゃんがだんだん下がって腸を圧迫し、便がスムーズに進まなくなることが大きな原因です。赤ちゃんが大きくなればなるほど圧迫も強くなるので、妊娠週数が進むにつれてひどくなることもあります。
要するに、妊娠初期にしろ、後期にしろ、妊娠することで便秘になるのは、物理的には仕方のないことなのです。
また、直腸の前に子宮があり、その前に膀胱があるため、頻尿にもなりやすいのですが、それも物理的に仕方ないことと言えます。
妊娠中に下剤を飲んでも大丈夫?
便秘になると子宮が圧迫されて赤ちゃんも苦しくなってしまうので、妊娠中の便秘は積極的に治すべきです。
その場合、気になるのは薬とのつきあい方ですね。
基本的に、妊娠中に下剤は種類を選べば飲んでもかまいません。
どの下剤でも赤ちゃんの奇形の原因になるような成分は使われていませんので、その点は安心してください。漢方薬であれば安全というわけではなく、“大黄末(だいおうまつ)”成分が入っているかどうかを確認してください。大黄末は子宮を収縮させる作用があるため、昔でいう流産薬になってしまいます。
そうなると、妊娠中の下剤はマグネシウム製剤がおすすめになりますが、市販薬ではかなり限られてしまいます。
処方された薬は正しい容量を守って
妊娠初期は、特に薬を飲んだりしなくても約15%の人が流産になるといわれています。
市販の便秘薬を飲むことで必ず流産になるとは限りませんが、もし別の原因で流産になったとしても、市販の便秘薬を飲んでいれば、そのことを後悔するかもしれません。
また、便秘でトイレに長いこと座っていると、腹部に力が入る分、子宮の入り口が腫れてしまう原因にもなりますし、妊娠後期であれば、トイレでいきんで破水ということもありえます。
ですから、妊娠中に便秘になった際には、躊躇せずに婦人科にかかって薬を処方してもらってほしいと思います。そして、婦人科で処方された薬は指示通りに飲んでください。
よく赤ちゃんのために薬の量を半分にしたという人もいますが、それは結果的には赤ちゃんのためにはなりません。便秘をきちんと解消することこそが、大切です。
妊娠中の便秘に、漢方薬はNG
また、漢方薬なら天然の成分だから安心と思われるかもしれませんが、妊娠中の便秘の時に限っては、それは間違いです。
漢方薬で便秘におすすめなのは大建中湯(だいけんちゅうとう)などで、大黄末の入っていないものです。
大黄末は前述したとおり、子宮を収縮させる作用があるため、流産の原因になりかねません。
妊娠中に便秘にならないようにするには
妊娠中の便秘を予防する一番の方法は、適度な運動です。なかでも軽いウォーキングは、妊娠初期でも安心して気軽に行える最もおすすめの便秘解消法です。
歩くと気持ちも晴れて、ストレス解消にもなりますし、お腹もすきます。ストレスは便秘の原因のひとつでもあり、食べないとよけいに胃腸が動かなくなって便秘になりがちですから、歩くことには一石二鳥以上の効果があるといえます。
また、歩くときの靴は、ペタンコのものはおすすめしません。妊娠中はどうしても体の後ろに体重がかかるため、ペタンコの靴では姿勢が悪くなって腰痛症の原因にもなります。
もちろん、あまりにも高いヒールの靴は論外ですが、実は5cmくらいのどっしりヒールやインソールの靴がベストなのです。
出産後も、赤ちゃんを抱っこしたりすることが多く、お母さんはどうしても腰に負担がかかる姿勢になりがちですが、そんな時にも、ペタンコ靴より適度なヒールがある方が、姿勢を自然な形に矯正してくれます。妊娠したら、便秘予防のためにもいい靴を1つ買ってもいいかもしれませんね。
無理せずに歩ける距離や時間でかまいませんので、妊娠中はお腹の赤ちゃんと一緒に散歩する気持ちで、できるだけ歩く習慣をつけましょう。それでも便秘になってしまったら、早めに婦人科で相談することをおすすめします。
小川麻子(ごきそレディスクリニック院長)
愛知医科大学卒業後、臨床研修医を経て医学博士取得。3児の母であり、次女を出産して5年後の1994年に開業。「女性のための女性によるクリニック」をモットーに、自らの子育て経験も生かした親しみのある産婦人科診療に評判が高い。婦人科の思春期・更年期に応じた漢方薬の処方にも定評がある。
≫ ごきそレディスクリニック
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