相談者:りこさん(31歳)からの相談
▶D15で生理がきてしまいました
7回の人工授精を経て、初めて凍結胚移植をする予定です。今回、エストラーナテープ®を生理が始まってから、2枚ずつ2日おきに貼り替えて、枚数を増やしていきました。D14に茶オリが出て、D15の朝に生理のような出血が見られて病院に行きました。すると子宮内膜が薄くなり生理になっていると言われました。エストラーナテープ®を貼っている時でも生理になってしまうものなのでしょうか。先生はたまにそんな人がいると言っていましたが、いつもの生理周期は31日で、遅くなることはあってもそんなに早くなることもなかったので不安です。また、いつ移植できるのか教えてください。
エストラーナテープⓇとはどのような薬で、どんな治療に用いられますか?
エストラーナテープ®は、「エストラジオール」を主成分とし、妊娠するために欠かせないエストロゲンという女性ホルモンを補う貼り薬で、凍結胚移植の時に用います。卵胞発育を促さず子宮内膜だけを厚く育て、移植して着床しやすい状態にしていきます。用法は、生理2日目ぐらいから、おもに下腹部などに2枚ずつ貼っていき、医師の指示に従って2、2、2、4、6、8…というようにだんだん枚数を増やしていきます。貼っている期間は定期的に受診して、内膜の厚みや不正出血がないかなどを診てもらいましょう。
エストラーナテープ®は内服薬のように飲み忘れがなく便利ですが、肌がデリケートな方はかぶれたり、汗をかいたり、入浴の際にはがれたりするので、貼り替える時は貼る位置を変えたり、医療用テープで固定するなど、きちんと効果が出るように注意することも大切です。当院では、はがれやすいとお申し出があった患者さんに関しては、テープを数枚多めにお渡しすることもあります。
15日目で出血が見られたということですが、エストラーナテープと関係がありますか?
恐らく関係があると思います。皮膚を通して吸収するエストラーナテープ®の成分が十分に皮膚から吸収されず、血中のエストロゲン濃度が上がらなかったので途中まで育った子宮内膜がはがれ、月経がきてしまったという可能性があります。こういったことは時々起こります。
また、ひょっとすると、りこさんはエストラーナテープ®だけでは十分にエストロゲン濃度が上がりにくい体質なのかもしれません。そこで、プレマリン®など他のエストロゲン剤との併用を考えていきます。まれにかゆみやかぶれなどのアレルギー症状が見られる場合、エストラーナテープ®を使わずに塗布薬や内服薬を使うという選択肢もありますが、とりあえずはテープを使いながら他の薬を合わせて飲んでいただくのがいいかと思います。
このあと、いつ移植ができるでしょうか。
いったんエストラーナテープ®を中止して、生理で子宮内膜がしっかりはがれたかをエコーで確認してから、再び凍結胚移植に向けて準備を開始していただけたらと思います。次回はエストラーナテープ®だけでなく、プレマリン®を併用して血中のエストロゲン濃度をしっかり上げてみてはいかがでしょうか。
凍結胚移植スケジュールには、外因性にホルモン補充をして子宮内膜をつくって移植する方法と、自然排卵周期で凍結胚移植を行う方法があります。ホルモン補充による方法で子宮内膜をつくってもなかなか内膜が厚くならない方もいらっしゃいます。そのような方や、ホルモン補充周期で移植しても結果が出ない方は、排卵後に凍結胚移植をする自然排卵周期凍結胚移植の方法もありますので、ご相談いただけたらと思います。
Doctor’s advice
●テープの成分が十分に経皮吸収されず、エストロゲン濃度が上がらなかった可能性が。
●他のエストロゲン剤とエストラーナテープ®を併用することでエストロゲン濃度を上げては。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
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