顕微授精の受精率71%は低い? 治療継続か転院か悩んでいます
コラム 不妊治療
顕微授精の受精率71%は低い? 治療継続か転院か悩んでいます
「今の病院は私の年齢での顕微授精の受精率が71%と聞き、少し低い気がして転院も検討中。転院候補の病院は金額が2倍になりそうです。」
相談者:じねこビギナーさん(31歳)からの相談
▶2人目の治療について
男性不妊のため28歳から顕微授精で治療。一つ目の病院ではアンタゴニストで採卵し4BBで妊娠するも初期流産。その後の採卵4回は胚盤胞にすらならず自然周期のクリニックに転院しました。そこで最初の採卵で高評価の胚盤胞ができ、29歳で妊娠、出産。第2子希望ですが、主人の転勤があり関西の系列病院に通院しています。今回もクロミッド®のみで2つ採卵し、1つは未受精、1つは初期胚盤胞でストップしたため凍結はゼロという結果でした。治療は採卵3回までと決めています。第1子の経験から顕微は技術が重要だと思っています。今の病院は私の年齢での顕微授精の受精率が71%と聞き、少し低い気がして転院も検討中。転院候補の病院は金額が2倍になりそうです。
今通っている病院は顕微授精の受精率が71%と聞き、少し低いのではと思われているようです。
データはどんな人が顕微授精をしているかによって結果が変わりますので、ほかの病院と比べるのは難しいですね。ですが、一般的には顕微は8~9割の受精率なのではないかと思います。当院も年齢別にはデータ化していませんが、トータルでの顕微授精率は9割くらいです。
一般的な数字と比べると7割というのは少し低く感じますが、こうして数字を教えてくれる病院はきっちりデータを取っていて、誠実にやっていらっしゃる病院だと思うので、信頼していいのではないかと思います。
顕微授精をするのに、技術による差は出るものなのでしょうか。
顕微授精のポイントとして、まず一つ目に精子の選別があります。形のいい精子を選ぶということです。次に精子の不動化をします。精子のしっぽを傷つけて動きを止めるのですが、それが十分でないと卵子活性因子が出ず受精がうまくいかないといわれています。それから細いガラス管で卵子の膜を破って精子を中に入れるのですが、その膜が十分に破れていないと精子が入っていかないことがあります。
慣れている培養士ならこれらの流れをミスなく行えると思いますが、そこに技術の差が出る場合も多少はあると思います。
じねこビギナーさんは今後どのように治療を進めればいいと思われますか?
今の病院は誠実な病院だと思いますし、転院候補の病院は金額も高いとのことですから、このまま頑張ってみるのがいいのではないかと思います。
第1子の時は低刺激で評価の高い胚盤胞ができたとのこと。じねこビギナーさんには低刺激が合っているのでしょうね。次回はクロミッド®に注射を2~3回プラスしてみたらいいのではないでしょうか。うまくいったのかどうかをどこで判断するかについて、もちろん移植して妊娠するところまで行けばベストですが、質の高い胚盤胞を得られたらその方法でOKと考えていただくといいかと思います。
一般的にはグレードがBB以上であればまずまずだとされ、妊娠率も高くなりますが、たとえCがつくグレードの良くない胚盤胞でも妊娠出産まで行くことはあります。特に年齢が若い人はグレードが低い受精卵でも妊娠することが多いと経験から感じています。見た目が良くなくても生命力が強い受精卵が多いのではないかと思います。
いずれにせよ凍結までもっていければ、排卵誘発の方法や顕微授精の技術は問題ないと考えていいと思います。今回の治療では採卵は3回までと決めていらっしゃるとのことですが、2回目でグレードのいい胚盤胞が凍結できたのであれば、3回目も同じ病院で同じ方法で行えばよいのではないかと思います。
ただ、もし今の病院に不信感をもつようだったら、転院されたほうがいいかもしれません。
Doctor’s advice
●低刺激が合っているようなのでクロミッド®+注射2~3回の誘発で。
●グレードの良い胚盤胞が凍結できたら、次も同じ病院、同じ方法で。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
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