相談者:ロコさん(30歳)からの相談
▶男性不妊で結果が出ずに悩んでいます
現在、男性不妊のため顕微授精をしていますが、なかなか結果が出ずに悩んでいます。1年前からショート法で採卵3回、移植は4回行いました。私のほうには原因がないと医師にいわれていますが、4回も移植しているのに妊娠できないので、私も着床不全の検査や子宮鏡検査、子宮内掻爬などを受けたほうがいいのかと考えています。医師からは「男性不妊だから受精卵も質が良くないし、染色体異常があったのだろう。あなたの検査は必要ない。とにかく男性不妊が原因!」といわれ、あまり取り合ってもらえませんでした。毎回同じ誘発法で、採れる卵子が採卵のたびに減ってきているので、本当にこのままで大丈夫か、医師を信頼しきれずにいます。
やはり、男性の精液所見が良くないから妊娠まで至らないのですか。
ご主人の現在の精子数は1500~2900万/ml程度、運動率は20%前後とのこと。1年前と比べて状態は少し良くなっているそうですが、直進運動率が15%と低いようですね。顕微授精をすれば十分妊娠の希望がもてる数値だと思いますが、担当医の先生がおっしゃっているように、確かに精子が良くないと受精卵の質も悪くなるという報告もあります。
ロコさんは4回の移植のうち、2回は4AA、4BBという比較的グレードの良い胚盤胞を戻されています。当院でも女性側に異常がなく、男性の精子が少ないというご夫婦の場合、胚盤胞を移植しても着床しにくい、流産してしまうなど、なかなか妊娠に至らないケースが見られます。見た目ではわかりませんが、精子の質が何かしら受精卵に影響を与えていることがあるのかもしれません。
女性側に問題はないのでしょうか。
そうとはいいきれません。男性だけでなく、女性側だったら着床障害、何かが原因で着床を妨げている可能性も考えたほうがいいでしょう。
受精卵に問題がなくても、それを受け入れる子宮に異常があることも。たとえば子宮内膜にポリープがあるとか、子宮内膜炎を起こしていて炎症があるなど。これらを詳しく調べるには、やはり一度、子宮鏡検査を受けたほうがいいと思いますね。
また、高リン脂質抗体など自己免疫に関する検査、いわゆる不育症の検査で行うようなものも念のため受けられるといいでしょう。検査をして異常がなければ、疑いを1つでも消去できると思います。
不妊に関する治療はこのまま同じ形で続けていってもいいですか。
3回の採卵ではすべてショート法を採用されているようですね。どんな誘発法でも回数を重ねていくと、採れる卵子の数は少なくなっていく傾向があります。
もし次回採卵をするとしたらアンタゴニスト法や、クロミッド®もしくはフェマーラ®などの飲み薬をメインにしたもう少しマイルドな方法で試されてみてはいかがでしょうか。
採卵数は減るかもしれませんが、少なくても質の良いもののほうがいいと思います。強い刺激でどんどん続けるのではなく、3、4カ月治療をお休みしてまず卵巣をゆっくり休ませる。その後、なるべく卵巣を刺激しない形で採っていけば、良い受精卵ができる可能性は十分あると思います。
まだ年齢的にお若いし、2回目の移植では化学流産、つまり妊娠反応があったということですから期待がもてるでしょう。
病院については、治療や検査に対する考え方が偏っていて、あまりにもご夫婦の考え方と食い違うようであれば、ご主人と相談して転院を検討されたり、ご主人も男性不妊の専門医に診てもらってもいいと思います。
Doctor’s advice
●子宮の状態や自己免疫を調べる検査を受けてみる意味はあると思います。
●同じ誘発法を続けるのではなく、次はもっとマイルドな方法でトライを。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.37 2018 Spring
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