重度の生理不順でPCOS。様々な治療を試してもなかなか卵胞が育ちません
コラム 不妊治療
重度の生理不順でPCOS。様々な治療を試してもなかなか卵胞が育ちません
PCOSは卵の質が悪いと聞くので、このまま体外受精に進んでいいのか、他にやれることはないのか、悩んでいます。
なすがままさん(33才)
薬を飲まないと生理がこない重度の生理不順で、PCOSと診断され、クロミッド、自己注射も効かず、1年前にドリリングしましたが自然排卵せず、注射で育て、3回AIH、他の月は卵胞育たずキャンセルに。
今回も75単位で自己注射するも育たず、キャンセルで、体外受精をすすめられました。
年齢のことや、卵が育たないこと、生理期間も3、4日と短くなっていて、PCOSは卵の質が悪いと聞くので、このまま体外受精に進んでいいのか、他にやれることはないのか、悩んでいます。
これまでの治療データ
●検査・治療歴
不妊治療歴5年。人工授精3回。
●不妊の原因となる病名
PCOS、黄体機能不全
●精子データ
少なめといわれている
●漢方・サプリメントの使用
葉酸
PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)であった場合、どのような治療法が有効なのでしょうか?
PCOSだと生理がなかなか来ないことで排卵障害、排卵があっても正常な排卵が来ない黄体機能不全を起こすことも。
排卵が来ないと妊娠に至ることができないので、まずは排卵障害をきちんと治す治療を行います。
当院の場合、治療のファーストチョイスは排卵誘発剤のクロミッド。
これだけで7~8割の人が排卵するといわれています。
クロミッドで排卵しない場合は、この方も使っていたHMGの自己注射や漢方薬、他のお薬も併用することがあります。
クロミッドと芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)という漢方薬を併せて使用すると、PCOSの特徴の1つであるテストステロンという男性ホルモンを下げるといわれているんですね。
また当院ではクロミッドに加え、プレドニゾロンというステロイド薬を処方することがあります。
COSの人は卵巣の皮が固くなる傾向があり、そのため卵を外に出しづらい。
ステロイドを使うと卵巣の皮が少し柔らかくなると考えられており、クロミッドとの併用で排卵がちゃんと起こるようになるケースもあります。
次の選択肢としてはHMGやFSHなど、注射のみによる治療。飲み薬より刺激が強くなるので効果はありますが、その分、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)など副作用のリスクも高まるので使い方には注意が必要です。
クロミッド、注射でも排卵しないという場合は、この方も受けたドリリングという外科的治療の選択肢もあると思います。
これは腹腔鏡下の施術で、固くなった卵巣の表面を焼いて複数の小さな穴を開け、排卵させやすくするというもの。
効果が出る人は多いのですが、半年から1年くらい経つと穴はまた塞がってしまいます。
体外受精に進むべきか悩まれているようですが、他に有効な治療、トライすべき方法はありますか?
まだ試されていないようでしたら、メトフォルミンという経口薬を使ってみてはどうでしょうか。
PCOSはインスリン抵抗性が関与しているケースもあります。
インスリンは卵巣に対して悪い作用があるので、検査をしてインスリン抵抗性をお持ちということなら、糖尿病治療薬であるメトフォルミンを単独、もしくはクロミッドとの併用で使ってみる。2~3ヵ月の服用で効果が出ることが多いといわれています。
また、ご主人の精子も少なめということですから、こちらも漢方薬やクロミッドを使って改善を試みたり、少ない状態が続くようなら男性不妊専門の施設を受診されてみては?
体外受精に進むことになっても、今のうちになるべく排卵や精子を良い状態にしておくことが妊娠への近道だと思います。
Doctor’s advice
●クロミッド+漢方薬やステロイドで効果が上がることも。
●インスリン抵抗性があるならメトフォルミンも有効です。
●女性の治療と併行して精子の改善も今のうちに。
先生から
排卵が起きるようになればPCOSの方でも妊娠の可能性は十分あります。
薬の組み合わせなどで改善が見られることがあるので、あきらめずに治療の継続を。