未成熟卵、空胞ばかりで移植できません
専門医Q&A 不妊治療
相談者:きりんさん(28歳)
体外受精にステップアップし、1年がたちます。AMHは歳相応、卵管造影も問題なし、子宮内膜症などもありません。生理3日目のFSHは8~13程度です。
低刺激系のクリニックでこれまで5回採卵し、以下の通りの結果です。
また、職業柄、生活も不規則で体型も痩せ型、冷え性なども卵の質に関係しますか?
未成熟卵、空胞とはなに?
卵子は、FSHホルモンの働きにより卵胞内で成熟していき、排卵直前のLHホルモンの一過性上昇により、最終的に受精能力を持つことになるのですが、未成熟卵というのは、卵胞内で十分に成熟できず、LHホルモンにも無反応のまま、結果として受精することができない卵子のことをいいます。
また空胞というのは、十分な大きさに発育した卵胞を穿刺したけれど、何らかの原因で卵子が採取できなかった状態をいいます。
さらに、卵子そのものが変形していたり、小さかったり、中の細胞質が黒ずんで見えるなど、形態的な異常のあるものは変性卵といわれます。
成熟卵が採れなかった原因は?
きりんさんの場合、28歳で年齢的には若く、AMHの数値も年齢相応ですし、残念ながら流産となってしまいましたが、2回目の移植で妊娠してみえるので、体質的に未成熟卵や変性卵しか採れないということはないと思います。確かに3回目、4回目は変性卵しか採れていませんが、治療周期が、流産後から日数的にあまり経っていなかったとしたら、妊娠中のホルモン環境の影響があった可能性も考えられます。
卵胞はもともと1-2mmの大きさから約2か月くらいかけて少しずつ育っていき、排卵する周期で5-6mmの大きさとしてスタートラインに立ちます。治療周期の前の周期、前々の周期が正常なホルモン環境であることはとても重要です。
また、空胞ができるひとつの原因に遺残(いざん)卵胞があります。遺残卵胞とは、本来消えるべき前周期の卵胞が残ってしまい、それが刺激によって膨らんできたもので、十分な大きさの卵胞になったとしても、卵子が採れなかったり、採れても質に問題があることが多いです。
高刺激にした方がいいのか?
一般論として、成熟卵をたくさん採ろうという時には高刺激を行います。若い方でAMHもFSHも問題がなく、注射を毎日打つことが可能であれば、アンタゴニスト法やショート法あるいはロング法をお勧めることになると思います。
ただ、どのような刺激をするにしても、刺激を開始する時点での卵胞の状態を確認することが大切です。リセットされた新しい卵胞がどれくらいあるかによって、質のよい成熟卵がどれくらい採れるか変わってきます。
低刺激法で良い結果が得られないのであれば、リセットされた卵胞であることを確認した上で高刺激法に変えてみるのは、よい手段であると思います。次の刺激方法については、第2子もご希望があることも含め、一度、ドクターとご相談されてはいかがでしょうか。
卵子の質を良くするため、何かできることは?
冷え性で痩せ型ということが、卵子の質に直接影響を及ぼしている可能性は少ないと思いますが、卵巣の血流量と刺激に反応する卵胞の数には、ある程度相関があると考えられており、漢方薬やサプリの内服、適度な運動など血行を良くする試みは意味のあることと思います。
バランスよい食事、適度なカロリー摂取など栄養の面でもいろいろ気を遣ってみえると思います。
お仕事上、不規則な生活を避けるということは難しいかもしれませんが、過度のストレスも血流を悪くする要因になりますので、できる範囲で、休養と気分転換を取りながら、日常を過ごして頂ければと思います。