妊婦健診ではどんなことをして、何がわかるの?
インタビュー
妊娠・出産
妊婦健診ではどんなことをして、何がわかるの?
妊娠すると定期的に受けることになる妊婦健診。どれくらいのペースでどのような検査を受けるのかについて、森永産婦人科の森永康文先生にお話を伺いました。
2018.4.19
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母子手帳が交付されると、妊婦健診が始まる
妊娠すると、排卵日から数えて2週目前後で妊娠検査薬の妊娠反応が陽性に出て、超音波検査を行うと胎嚢(赤ちゃんを包む袋)が確認できます。
この胎嚢が見えてから2週間後、赤ちゃんが1cmぐらいの大きさになった時に心拍が確認できるようになります。
そこからまた2週間後、赤ちゃんは約1.5〜2.5cmになりますが、その時の大きさから出産予定日を確定します。
それから役所に母子手帳を取りに行くよう医師からお話しして(妊娠届出の書類の提出)、それを持って来院していただいた時からが「妊婦健診」ということになります。
当院の場合は、だいたい妊娠8週〜12週の間に第1回目の健診を行い、妊婦さんの血液検査をし、赤ちゃんの発育をチェックします。
そこから妊娠26週目までは4週間に1回、27週ぐらいの妊娠中期〜35週あたりまでは2週間に1回、36週から出産までは1週間ごとの健診になってきますね。
大まかな流れとしてはこういった感じです。
出産までの健診回数は12〜14回程度。その具体的な内容とは?
初期の検査では、母乳から母子感染する恐れのあるB型肝炎やC型肝炎などの感染症や、性行為感染症のチェックも行います。
妊娠中期には早産になる場合もあるので、頚管長(子宮口の長さ)をエコーで測ったり、34週目以降にはGBS(溶連菌)検査、妊娠による糖尿病や貧血など全身状態の検査も行っていきます。
当院では、4週〜12週ぐらいまでは経腟超音波で内診を行い、12週目以降は経腹超音波といってお腹の上から赤ちゃんをチェックしていきます。
37週ぐらいからは、内診をして赤ちゃんの下り具合や子宮口の開きの有無、硬さ、柔らかさなどもチェックします。
一般的に胎児の異常をチェックするためには、超音波で赤ちゃんの大きさや羊水の量、胎盤の位置などをまず中心的にみます。
あとは専門的に、頭部や心臓、内臓、背骨の方の異常がないかだとか、場合によっては口唇口蓋裂の有無など、何週目にどれをみるというわけではなく継続的にチェックしていきます。
当院の場合だと、心臓だけをターゲットにしたりして、胎児ドックのような形でチェックする健診日も設けています。
あとは病院によって違いますが、妊婦さんからは「赤ちゃんの顔や動画が見たい」と言われますから、赤ちゃんの体位や羊水の量など条件が整って4Dが撮影できる時には、なるべく立体的な状態を見せてあげられるようにもしていますね。
妊婦健診の内容はどの病院でもほぼ同じですが、このほか「出生前診断」というものもあります。
現在は、高齢出産が増えています。
出産年齢が高くなると、先天異常を持つ子供が生まれる確率も高くなる傾向があることがわかってきています。
出生前診断の主な種類として、非侵襲的な検査方法である超音波検査があり、赤ちゃんのむくみ(NT)がないか、鼻骨や顔、心臓などをチェックします。
また、お母さんの血液で赤ちゃんが病気を持っている確率を調べる母体血清マーカー検査(クアトロ検査)や、最近では、母体血中の胎児細胞フリーDNAのスクリーニング検査として、無侵襲性出生前検査(NITP)があります。
クアトロ検査は妊娠15週~21週にできる検査で、費用は2万〜2万5千円ぐらいです。
NIPTは、大学病院や特定周産期病院でカウンセリングができるような限られた医療施設で受けることができ、費用は20万円ぐらいかかります。
妊娠10週〜12週の間に行い、クアトロ検査よりもかなり高い精度で確率を導き出します。
海外ではこうしたスクリーニング検査が多く行われていますが、中絶手術を増やしたり倫理的な問題が生ずる場合もあるため、夫婦で十分な理解を深めてからこれらの検査を施行しています。
ただ、これらの検査の精度は100%ではないので、最終診断は羊水検査ということになります。
羊水検査は、15週以降に行い(当院では日帰りで行います)、費用は10万円ほどです。
結果が出るのに3週間程かかり、15週〜18週までに行う方が大半です。
羊水検査の結果も100%ではありませんが、ほぼ確定診断という形で行われています。
<森永先生のまとめ>
妊娠すると、今まで健康な人が、病気ではないですが「妊婦」という特殊な状態になります。(1人だけれど2人になる状態)
妊娠期間中は赤ちゃんと一緒に過ごす特別な期間でもあります。妊婦健診では赤ちゃんの顔や手足を動画でみたり、発育・成長をみていきます。
病院に来て妊婦健診を受けるのがとても楽しくなると思います。また、出生前検査においては、高齢出産が増えていることもあり、お腹の赤ちゃんに先天性の異常がないかが気になる方が多くいます。
検査の結果によっては、中絶手術を増やしたりするケースもありますが、検査をして正常との結果が聞けて、安心して分娩までの期間を過ごせることや、また異常という結果が出たとしても、出生前にある程度正確に胎児の状態を把握することで、産まれてくる前に胎児治療ができたり、出生後にどのように治療するとか、妊娠中から出産までに前向きにその子を受け入れる準備ができます。
このようなメリット・デメリットなどをしっかり検討して、検査を受けてください。
森永 康文 先生(森永産婦人科 院長)
医学博士、日本産婦人科学会専門医、母体保護法指導医
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