妊婦さんにとって恐い病気のひとつ、妊娠高血圧症候群。「なると大変」「ひどくなると入院するらしい」というウワサはよく聞くけれど、じゃあ一体どうしてそうなるの? とぼんやりとした疑問をもっている人がほとんどかもしれませんね。
今回は妊娠高血圧症候群について、わかりやすく解説しているコラムをまとめました。
妊娠中の方も、これから妊娠出産を考えている方もぜひ読んでみてくださいね!
妊娠高血圧症候群とは?
20代~30代の女性で普段から血圧が高い人はそう多くないのではないでしょうか。
しかし、妊娠という体にとっての一大事が起こると、体内の環境は大きく変わります。
妊娠高血圧症候群の定義を示す文章があります。
“1:妊娠高血圧症候群
妊娠中期以降に発症しやすい病気です。高血圧、または高血圧に蛋白尿の症状を伴います。以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていたものですが、「妊娠高血圧症候群」に改定されました。”
“このように、妊娠中にはさまざまな恐ろしい合併症が起こり得る危険性があります。特に、高血圧症という病気は、妊娠中だけではなく、一般的に知られている病気ですが、甘く見てはいけません。高血圧をほったらかしにしておくと、脳の血管が切れて、脳出血やクモ膜下出血を起こす危険性があるのです。 そのために妊娠中、脳出血での死亡率が高くなってしまうのです。”
妊娠高血圧症候群は、目立つ自覚症状があまりないため、検査で発見する必要があるようです。具体的には、妊婦健診で行う検査項目の中で、妊娠高血圧症候群の兆候を捉えるものが複数あります。
“妊婦健診の基本検査は、以下の通りになります。(中略)
浮腫検査
足のすねのあたりを指で押し、むくみの状態を確認。妊娠中は血液中の水分量が増加するため、むくみやすくなっています。むくみがあると腎臓への負担が大きくなり、特に後期にむくみがひどい時は妊娠高血圧症候群の疑いも出てきます。
尿検査
尿たんぱくや尿糖が出ていないかをチェックします。尿たんぱくが出ていると、妊娠高血圧症候群や腎臓機能にトラブルの可能性が。尿糖が出ていると、妊娠糖尿病の検査が必要となることがあります。
(中略)
体重測定
毎回体重を測り、前回との増減をチェックします。極端な体重増加は妊娠高血圧症候群のリスク要因となります。しかし過度に食事制限などをすると胎児に栄養が届かなくなり、低出生体重児の原因になります。”
妊娠中の体重管理はとても難しいものです。わからないことは、妊婦健診などの際に医師や看護師さん、助産師さんに質問して解決し、自宅での食事や運動に生かしたいですね。
"母体の健康状態や赤ちゃんの発育状態を知るために、とても重要な妊婦健診。 どんな検査があるのかを知っておけば、安心して受診することができます。"
妊婦健診の基本検査
ちなみに、妊婦健診の回数や検査項目にはガイドラインがあるとのことです。
“厚労省と産科のガイドラインでは14回ですが、当院は16回としています。健診の項目は概ね、厚労省のガイドラインのとおりです。
●厚生労働省が例示している妊婦健診のガイドライン ”
"ただし、健診で異常や病気が判明したら、保険適応に切り替わり「治療」を行うことになります。その負担は健康保険(自己負担率は3割など、加入保険組合によって異なる)が適応されます。"
妊婦健診ではここをチェック!
妊娠高血圧症候群の症状とは?
妊娠高血圧症候群になると、どんなことが起こるか、知っておきたいですね。
妊婦健診で診断を受けた妊婦さんからのご相談に答えたコラムで、具体的な症状について先生から回答されています。
“相談者:ちょさん(主婦/35歳)
初産の高齢妊婦です。先週土曜、37週で検診に行ったら血圧が158―92と、急に高くなっていました。足の浮腫は少し前からあったのですが、それもかなりひどくなってしまい……。先生には「中毒症だね。これ以上ひどくなったら入院、帝王切開もあります」と言われました。明日また受診する予定です。(中略)今のところ赤ちゃんの発育は順調なのですが、高血圧のせいで急に赤ちゃんの具合が悪くなってしまうこともあるのでしょうか。”
“もともと血圧が高くなかった人が妊娠中に「収縮期血圧140mmHg/拡張期90mmHg」以上のとなった場合、妊娠高血圧症候群と診断されます。 なぜ妊娠中に血圧が高くなってしまうのか、免疫が原因であるという説やいろいろな化学物質が出るからなど、諸説いわれていますが、明確な原因はまだ解明されていません。”
“妊娠前に正常な血圧でも急に上昇することがあり、なかなか予測が難しいというのが実情です。妊娠の20週台になることはそれほど多くないのですが、36週を超えると血圧が上がってしまうというケースは珍しくありません。特に初産の方は経産婦よりリスクが高いといわれています。 また、年齢が高い方も注意が必要ですね。”
“急に悪化することがあり、なかには母子の生命に関わる状態となることもあります。妊娠を終了することが一番の治療となるため、重症の場合には早期の分娩が必要に。そのため、帝王切開となることもあります。 妊娠高血圧症候群は胎盤への血流が悪化するため、赤ちゃんに行く血液も減少してしまい、胎盤機能不全という状態となって、赤ちゃんの心拍数が低下する原因となることも。また、赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれてしまう常位胎盤早期剥離のリスクもあり、この場合、大量に出血してしまうので母子ともに非常に危険な状態となります。このような状況になる前に分娩となることが望まれるでしょう。 いつ悪化するかわからないので、ちょさんは入院が必要になるのではないでしょうか。”
症状が重症化すると、入院や帝王切開が必要になってしまうのですから、赤ちゃんと妊婦さん自身のためにできるだけ避けたい病気であることは間違いありませんね。
妊娠高血圧症候群の予防法と治療法は?
妊娠高血圧症候群の根本的な治療が分娩ということは前の章でもご紹介しましたが、なるべく軽度で抑えつつ妊娠後期を迎えるためにどんな対策があるのでしょうか。
妊婦健診で血圧が高い傾向が見られると、自宅で継続的に血圧を測って記録するよう指示されることがほとんどです。そんな場合には、測り方などに注意が必要です。
“血圧の正しい測り方は?
ちびさんのように、「血圧を測る度に数値が下がる」という方もいらっしゃいます。2回目に測った血圧が1回目に比べて5mmHg以上下がる時は、安定するまで測定をして、差が少なくなったところが最終血圧ということになります。家庭で計測する時も、差が出やすい人は安定するまで何回か測ってみることをおすすめします。”
“【妊娠高血圧症候群】
妊娠20週から分娩後12週まで高血圧が見られる場合、また高血圧にタンパク尿を伴うものです。もともと血圧の高い方や腎機能の悪い方はさらに悪化することがあります。また、BMIの値が25以上の方も注意が必要で、40歳以上ではその確率はさらに高くなります。
発症すると子宮や胎盤の血流が悪くなり、母体と赤ちゃんに大きな負担がかかります。例えば、母体が痙攣を起こす子癇発作、分娩前に胎盤が剥がれる常位胎盤早期剥離などがあり、場合によって帝王切開が必要になることもあります。さらに、肺水腫、脳出血などの合併症を引き起こす可能性もあります。根本的な治療法はなく、軽症であれば安静と食事療法、重症の場合は降圧剤を使用し、早期に出産してもらう場合もあります。”
"ある統計データでは35歳未満の人と比べると流産は3倍、染色体異常は9.9倍、妊娠高血圧症候群は1.1倍、妊娠糖尿病は2.4倍、前置胎盤は2.8倍、先天性奇形は1.7倍、低出生体重児は1.6倍、帝王切開2.0倍という報告もあります。"
高齢妊娠で知っておきたいリスクは何ですか?
軽症の場合には食事の見直しが必要なようですね。
高血圧といえば塩分のとり過ぎというイメージがありますが、妊娠中の食事で塩分をたくさんとってしまうと、影響は大きいのでしょうか?
“塩分の摂りすぎは、むくみの原因に
妊娠中は血流が増えるため、むくみが出やすくなりますが、塩分の過剰摂取もむくみの原因となります。赤ちゃんへの直接の影響はないですが、妊娠中毒症などを引き起こすリスクが高くなるため、塩分の摂りすぎには注意が必要です。
塩分の摂りすぎや、高血圧は指摘されませんでしたか?妊娠中の足のむくみは、血流が増えたことが原因ともいわれますが、塩分(塩化ナトリウム)を摂りすぎると、血中ナトリウムが増加し、それを薄めようと必要以上に体内に水分を摂りこんでしまい、手足がむくみやすくなります。(産科看護師)”
“むくみだけでしたら赤ちゃんへの影響はないですが、塩分の摂りすぎなどで高血圧や妊娠中毒症などがある場合は別です。引き続き、むくみと併せて全身状態も病院で診てもらってください。(消化器科看護師)”
むくみは妊婦さん自身でも判断しやすい、体からのメッセージと言えそうです。
出産までだけでなく、分娩周辺期と呼ばれる産前産後には、塩分や糖分に気をつけながら食事を楽しむ方法を工夫して、健康的なマタニティライフを過ごしましょう!
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