「妊婦健診」を受ける理由 妊娠中の健康を守る取組とは?
インタビュー
妊娠・出産
「妊婦健診」を受ける理由 妊娠中の健康を守る取組とは?
妊娠すると、産婦人科などで定期的に妊婦健診を受けるようになります。
妊娠前後にぜひ知っておきたい妊婦健診の意味と内容について、庄内通レディースクリニックの三輪美佐先生に詳しいお話を伺いました。
2018.6.6
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そもそも妊婦健診って何?
妊婦健診とは「妊婦健康診査」というのが本来名です。
“検”ではなく“健”という字を使うことでも示すように、例えば、ガン検診のような病気をターゲットにした“検査”とは違い、妊娠中、“健康”でいるかどうかを確認するための“診査”です。
妊婦健診では問診と内診が行われます。
問診は毎回必須で、内診は12週頃までは毎回、それ以降は必要に応じてとなります。
問診では、本人は異常と思っていないことでも、産婦人科の医師の立場からみると問題と思われることもあり、そこを逃さず聞き出します。
内診では、婦人科的な病気のチェックを行います。
妊娠の経過が順調であるかはもちろん、妊娠中の合併症の有無を確認するのも大きな目的です。
どれくらいのペースでどんな検査をするの?
ペース的には、まず、妊娠3ヶ月(11週目)までに3回程度行います。
その後、4~6ヶ月(12~23週目)は1ヵ月ごと、7~9ヶ月(24~35週目)には2週間ごと、それ以降は1週間ごとというのが、日本産科婦人科学会が取り決めている基本の健診スケジュールです。
毎回、胎児心拍、血圧、尿糖、尿タンパク、浮腫などをチェックし、ハイリスクな妊娠であるかどうかを見極めます。
特に、不妊治療をしていた方は、子宮筋腫などの婦人科的な病気があるとか、高齢妊娠である場合も多いため、ハイリスクなケースではより注意が必要です。
【妊婦健診の時期ごとの主なチェック項目】
初期:ハイリスクであるかないかの見極め
アレルギーや合併症、既往妊娠歴の確認
流産、異所性妊娠(子宮外妊娠)などの除外
初期血液検査
20週頃:胎児形態異常、胎盤異常のスクリーニング、血球算定※1
20週代:早産スクリーニング
30週頃:胎児発育・胎盤・羊水量チェック、血球算定
9ヶ月:GBS検査※2
10ヶ月:胎児well-beingの評価※3、頸管熱化評価※4
※1)
血球算定:採取した血液に含まれる赤血球と白血球と血小板の数から、貧血や感染の有無などを調べる検査
※2)
GBS検査:GBS(Group B Streptococcus)とは「B群溶血性連鎖球菌」の意味。母体がGBS陽性と判明した場合は、分娩時赤ちゃんが感染するリスクがあるため予防処置を行う
※3)
胎児well-beingの評価:「well-being」とは「良好な状態」、つまりお腹の赤ちゃんが元気かどうかを調べる検査。NST(ノン・ストレス・テスト)といわれる、胎児の心拍数の推移を持続的に観察し、その変化のパターンを見る検査が代表的
※4)
頸管熱化評価:子宮頸管組織が胎児を無事通過させて、安全に分娩できる伸展性や弾性を備えているかを確認する検査
妊婦健診で異常がみつかった場合、どうするの?
まず、健診している病院で対応できる異常か否かを判断することが大切になります。
例えば、切迫流産、切迫早産でも飲み薬などで対応できる場合もありますが、それが急激に進行していたり、胎児異常などで対応が難しい場合には、高次病院へ紹介または搬送することになります。
日本の場合、妊娠や分娩時の母児の安全性と健康を維持するための周産期医療制度が整っており、市中病院、地域の周産期センター、県の総合の周産期センターがピラミッド型になって連携し、体の異常や異変の段階に適した施設が即時対応するシステムができあがっています。
健診を行っている個人病院などの地域の施設というのは、その最初のスクリーニングを行う場でもあるのです。
ただ、そもそも妊娠自体は順調に進行することがほとんどです。
だからこそ、小さな異常も見逃さないようにするのが、スクリーニングをする施設の使命だと思います。
妊婦健診は毎回、必ず受けなくてはダメ?
妊婦健診は自分の判断だけで「これぐらいでいいだろう」と思わないで、毎回、しっかり受けてください。
今は、自治体ごとに健診の公費負担も行われているため、未受診妊婦は減少していますが、それでもある一定の率で健診を受けない方もいます。
それによって、さらにハイリスクな妊娠・出産へと向かってしまうこともありますし、未受診妊婦には早産や母児予後不良例が多いのも事実です。
また、妊娠中はホルモンの影響もあって、どうしても精神的な浮き沈みが出てきてしまうものです。
妊婦健診には、妊婦さんに対してのカウンセリング的な要素も十分あるのではないかと思います。
医者や看護師などと話すことで落ち着いたり、不安に思っていることの正否を確かめることで、精神的にケアできているケースは多いと思います。
安心して妊婦生活を送っていただくため、私たちが手助けをするのは、妊婦健診の大きな意味合いでもあります。
三輪美佐先生(庄内通レディースクリニック院長)
名古屋市立大学医学部卒業後、東京女子医科大学病院・名古屋市立大学病院・名古屋市立城北病院・名古屋市立西部医療センターにて、主に分娩や産科系手術などの周産期を専門とする産婦人科医を長年務め、2013年に庄内通レディースクリニック開院。小学生から20歳以下の子供たちの生理不順などを診ることも多く、思春期から更年期以降まで、幅広い世代の女性の健康を守るかかりつけ医として人気。
≫ 庄内通レディースクリニック
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