不妊治療、うつ病を乗り越えて手にした「未来」漢方サロンとの出合いが光をくれた
コラム 不妊治療
不妊治療、うつ病を乗り越えて手にした「未来」漢方サロンとの出合いが光をくれた
「結婚すれば自然に子どもはできる」そう思っていた日常は一変。つらく長い治療のトンネルを抜けた10年を語ってくれました。
「結婚すればいつか自然に子どもはできる」
そう思っていた日常は、突然ストップした生理により一変。
さおりさんが「高プロラクチン血症」と診断された日から
つらく長い治療のトンネルを抜けた10年を語ってくれました。
※2018年5月25日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.38 2018 summer」の記事です。
ある日突然止まった生理。高プロラクチン血症と診断
室内を駆けまわるおてんばな愛娘Kちゃん(1歳8カ月)を追いながら「今は子育てにへとへと」と微笑むさおりさん(39歳)。当たり前に思える「我が子といる幸せ」を手に入れるまでの、つらく長い10年間を語ってくれました。
小学校教諭として大好きな子どもたちに囲まれ過ごしていたさおりさんは、28歳の頃同じ教員として働くひとつ年上のDさんと結婚。「じきに赤ちゃんができるかもね」とコウノトリを待ちながら、仕事に情熱を燃やしていました。しかし、ある日突然、前兆もなくさおりさんの生理が止まります。
「いたって健康で、婦人科系の病気になったこともなかったので驚きました。おかしいな、と思いながら2~3カ月が経過。恐る恐るA病院を訪ねました」
検査の結果は、高プロラクチン血症。下垂体でつくられるプロラクチンというホルモンの値が上がることで、生理不順や排卵異常などを引き起こし、妊娠しにくくなるため、妊娠を希望している女性にとって放っておけない症状でした。さおりさんはすぐに数値を下げる薬を飲み始めました。
「この薬の副作用の吐き気がひどくてつらくて…。でも不思議ですね、子どもたちの前にいると、シャンとしていられるんです。反動で、家に帰ったらぐったり。仕事を休んで家で一人副作用と闘うより、学校にいるほうが私には合っていました」と笑います。
このプロラクチンの数値を正常にするために半年ほど投薬の時間をかけ、いよいよ不妊治療のスタートラインに立ったさおりさんご夫妻。若い二人はまずタイミング法からチャレンジしていきます。
順調にも思えた病院通いですが、さおりさんはA病院のピリピリしたムードがどうしてもなじめなかったそう。
「受診は流れ作業。医師に怒られないよう、事前に勉強して、こう答えよう…ってまるで受験生みたいな診察に嫌気がさして。1年そこそこで友人からのすすめがあったB病院へ転院しました」
長くつらい治療に心が疲弊。ついに「うつ病」を発症
B病院は医師やスタッフが親身に話を聞いてくれ、メンタルケアも充実。いい病院だとわかっていても、通院することにだんだん居心地の悪さを感じるように。
「B病院は不妊治療専門の病院ではなく、普通の産婦人科だったので待合室にたくさんの妊婦さんがおられて…。それを見るのがつらくて」
精神的に疲れたさおりさんはしばらく治療をお休みした後、3軒目となるC病院で不妊治療を再開。初めての人工授精にチャレンジしました。
最初の1~2回は「初めてだからうまくいかなくても仕方ない」と前向きだった治療も徐々にその回数が増え、6回目、7回目となると「ここまでやってもダメなの?」と精神的に追い詰められます。医師から「よい卵が育っていますよ」といわれ、喜んで、そして妊娠できなかった事実にがっかりして――。その繰り返しに、さおりさんの繊細な心を絶望が支配していきました。
そして人工授精10回以上を数え、長くつらい治療に耐えられなくなったさおりさんの心の糸が切れてしまいました。うつ病という診断でした。
しかし、うつ病と診断されても、教員という仕事は天職。さおりさんは休まずに1年半の闘病を続けました。心療内科に通い、抗不安薬を飲む日々。子どもたちの前では笑顔でいても、家に帰れば涙して。今は不妊治療のことは考えられない、考えたくない…そんなふうに過ごしていた時、なんと自然妊娠が発覚。予想していなかったことに驚き、喜ぶさおりさんご夫妻。
「でも、6週目で心音がなくなって…。流産は悲しいことですが、うつ病にもかかわらずその子は私のお腹に来てくれた。『私は妊娠できる、産める』という強い希望をもらいました。その子が命と引き換えに、私に立ち直る強さをくれたんだと思います」
その後、C病院の医師から「もううちでできることはない。この病院を紹介しますからそちらで頑張っては?」と、誰もが知る不妊治療で全国的に有名なE病院への転院をすすめられました。
「私にとって最終宣告を言い渡された気分でした。最後の砦、ここでできなければ私はもう妊娠できないんだ、と」
医師に見捨てられたような気持ちになったといいます。
絶望、希望、絶望を繰り返すさおりさんにとって「自分にとって最後になるかもしれない」という覚悟の治療がD病院で始まりました。
諦めかけた希望。漢方サロンとの運命の出合い
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