chapter1 体質改善
漢方で着床しやすい子宮内膜を
受精卵が子宮内膜に着床できない原因に子宮の問題があります。
ここでは多くの女性にみられる、子宮筋腫と子宮内膜症について取り上げます。
子宮内膜は、受精卵のベッド血流をよくしてフカフカに
子宮筋腫は30~40代の女性に多くみられる、子宮の部位にできる良性の腫瘍です。筋腫ができる部位によって、筋層内筋腫、漿膜下筋腫、粘膜下筋腫の3種類に分けられます。
なぜ子宮筋腫があると、受精卵が着床しづらいかというと、しっかりと着床させるにはフカフカで弾力のある子宮内膜が必要だからです。しかし筋腫があると、それに血をとられたり月経の出血量が多くなるなどで体は貧血状態になります。また、血流も悪くなり「瘀血(おけつ)」にもなります。「瘀血」では良い内膜はできません。
もしも着床できたとしても筋腫が胎児の発育の妨げになることもあります。
中医学では腫瘍が形成される原因は、血流が悪い「瘀血」と気の流れが悪い「気滞」、余計な水分がたまっている「痰湿」であるとされます。とくに筋腫は「瘀血」が主な原因とされています。
西洋医学では低用量ピルでホルモンをコントロールして筋腫を小さくする薬物療法と筋腫を取り除くなどの外科的療法があります。一方中医学では、手術を要するほどでなければ、筋腫の原因である瘀血、気滞、痰湿を取り除き、気血や肝腎を補う漢方薬を服用することで、妊娠しやすい体をつくることもできます。
20〜40代の女性に急増している子宮内膜症は不妊の一因
子宮内膜症は20〜40代の女性の間で急増している疾患です。子宮内膜の組織が子宮以外の部位(卵巣・腹膜・直腸など)にできて、そこから出血を繰り返す病気です。子宮以外で生じた血液は排出できないので、その組織に溜まって増殖・脱落を繰り返し、炎症・癒着を引きおこします。
卵巣に子宮内膜症ができる「チョコレートのう腫」は、卵巣が大きく腫れるため卵胞の発育や排卵に影響が出ます。また、排卵しても、卵管の先にあるラッパ状の組織である「卵管采」が癒着していれば、卵子をつかまえることができません。また、卵管が癒着して狭くなっていたり閉塞していると受精ができません。中医学では子宮内膜症の原因は「瘀血」、「肝鬱」「陽虚」などさまざまな原因を考えます。
周期調節法を用いながら、月経周期を整え、瘀血を改善し、イライラなどのストレスを解消し、
冷えをなくすことが、受精卵を着床させるために有効なことです。また、ホルモンバランスの乱れや子宮発育不全などが原因の流産では、腎の機能低下「腎虚」があると考えます。その場合は、妊娠するまでは腎を補うことを中心とした周期調節法を行い、妊娠して安定期に入るまでは流産を防ぐ漢方薬を服用します。
【気・血・津液(しんえき)】体を循環している気・血・津液
中医学では「気・血・津液」という、3つの要素が身体の機能を動かす源だと考えます。これらがスムーズに体内を回ることで健康が維持されますが、流れが滞ったりすると不調を感じたり、病気になるのです。気・血・津液のそれぞれの役割は次のとおりです。
【 気 】
体の機能を動かすエネルギー源です。これが不足、停滞すると疲労、栄養不足、新陳代謝低下、イライラ、精神衰弱などがおこりやすくなります。
【 血 】
西洋医学の血液のほかに、体に必要な栄養素を運んだり、子宮内膜や母乳をつくる源となります。不足、停滞で月経不順、月経痛、貧血、頭痛、肩こり、冷え、便秘などがおこりやすくなります。
【 津液 】
体内の血液以外の水分(体液)を「津液」といい、リンパ液などが該当します。「津液」は、臓器や骨髄や脳、肌、髪などを潤すほか、関節を動きやすくします。不要な津液は汗や尿などになって排出されます。不足、停滞すると、肌のたるみや髪のつや不足、むくみ、肌の乾燥などがおこりやすくなります。
監修:誠心堂薬局
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