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ロング法でも採卵数が少なく、 胚盤胞まで育ちませんでした。 次の排卵誘発法の選択は?

専門医Q&A 不妊治療

ロング法でも採卵数が少なく、 胚盤胞まで育ちませんでした。 次の排卵誘発法の選択は?

初めて体外受精を試みたが、移植できず。考えられる原因、そして今後の方針ではどんなことが考えられるのでしょうか。オリーブレディースクリニック麻布十番の院長、山中智哉先生にお話を伺いました。

2018.6.7

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相談者:もあさん(32歳)



初めて体外受精、移植できず
卵管狭窄のため、初めて体外受精をロング法で行いました。
1/13 点鼻薬開始。ナファレリール2/5まで
1/24 生理3日目受診
1/29 エコー。フォリルモンP225注射開始
1/31 フォリルモンP150注射
2/3  フェリング150注射
2/5  卵胞確認
2/6  1時オビトレル注射
2/7  採卵。1個のみ、2個変性卵
2/8  1PN
結局、胚盤胞まで育たず、移植できませんでした。
次回はどのような方法で採卵すると良いですか? なるべく多く質の良い卵子を得たいです。



ロング法でも採卵数が少ないのは、どのような原因が考えられますか?




AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が3.71ng/mlとのこと。 


ロング法を選択した場合、通常なら10~15個程度の卵子が採れてもいい卵巣機能を持っているのでは。変性卵を含め3個というのは、やはり少ないのではないかと思います。
治療過程を見た印象では、刺激を開始するのが少し遅い気がしますね。


「1月29日からフォリルモンP225の注射を開始」とありますが、この日は生理の8日目。普通なら生理の3日目から、遅くても5日目までには刺激をしていくので、8日目というのは遅すぎる気がします。


 8日目となると、すでに内因性のホルモン(LHやFSH)によって「主席卵胞はこれで」という風に体の中で決まった状態で進んでいるので、刺激の効果があまり得られず、卵胞数が少なかったのではないかと思います。


また、注射の量も減らしていっているのは、もしかしたら、卵胞を確認してあまり育っておらず、そんなにたくさん打っても意味がないから減らしたのかもしれません。
ロング法は前の周期から準備をしているので、想定外に卵胞数が少なくても、排卵誘発をやり直しにくいというのもデメリットのひとつになります。


ロング法はスタンダードな排卵誘発法として確立していますが、刺激の開始時期や薬の加減などは施設や先生の考え方で多少違いが出ることもあります。


もしかしたら、この方が治療を受けているクリニックでは、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を防ぐために、ロング法でも5~10個程度と多すぎない卵胞形成を目指し、刺激を弱めにするために遅めのスタートにしたことも考えられます。


患者さんの体質や周期によって、加減をしているのかもしれませんね。


様々なケースがあると思いますが、当院ではほとんどの場合、遅くても生理の3日目から刺激を開始するようにしています。
この時期からなら内因性のホルモンによって胞状卵胞が少し起きかけているタイミングで刺激を与えられるので、うまくいきやすいと思います。


もあさんくらいの年齢と卵巣機能なら10個以上の卵子が採れると思いますね。


 


体質的な原因などもあるのでしょうか?


AMHの値が3.71ng/ml程度だと高度のPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の可能性は低いと思いますが、月経周期が35日と周期が長めです。


生理5日目のホルモン値をみていないのではっきりとは言えませんが、排卵が遅延する傾向が元々あったのでは。となると内因性のホルモンに対して反応が遅く、薬に対する反応性も悪いかもしれません。


もしPCOSなどが原因であれば、グリコランなど糖の代謝を良くするようなお薬を併用していく治療も有効でしょう。HMGの反応性も良くなると思います。


 


次回はどのような方法で採卵すると良いですか?


初回で良い結果が得られなかったら、2回目は排卵誘発法を変えていくという選択もあるかと思います。


当院だったら、「10個以上卵胞が出てきそうだな」という推測ができれば、最初にプラノバールなどの中用量ピルを10~14日間くらい飲んでいただいて、前胞状卵胞のバラつきが起きないように調整した後にアンタゴニスト法で刺激をしていくと思います。


アンタゴニスト法であれば、生理3日目から注射を打っていった時、途中で「4、5回打っているのに卵胞が1、2個しか出ていない」ということがあれば、「では、注射は1日おきにしよう」などその周期の中で刺激のコントロールができるので、患者さんの負担が少なく済むというメリットもあります。


 また、採れた卵子の数が少なかった場合は新鮮胚移植という選択肢がありますが、ロング法やショート法の場合、GnRHアゴニスト製剤の点鼻薬を使った後に新鮮胚移植をすると子宮内膜の成熟が阻害されていて着床がうまくいかないことも。


FSHやHMGしか使っていないアンタゴニスト法であれば、子宮内膜に影響を及ぼすことがないので新鮮胚移植という選択肢も残り、移植の際にも融通が利くと思います。


排卵誘発法の適切な選択、前述したグリコランなどの併用、場合によっては卵子の質を上げるためにサプリメントの服用など、やり方を工夫していけば良質な卵子がしっかり採れて妊娠する可能性は十分にあるので、前向きに治療を続けていただきたいですね。


 


●●●山中先生より まとめ


●注射は遅くとも生理3日目から始めるのが適切なのでは。
●アンタゴニスト法なら途中で刺激のコントロールができます。


 


お話を伺った先生のご紹介

山中智哉 先生


山梨医科大学卒業。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。米国ISFN認定サプリメントアドバイザー。点滴療法研究会認定医。産婦人科医として様々なキャリアを積み、10年以上の不妊治療経験を持つ。体外受精をメインに、一人ひとりの異なる悩みに合ったオーダーメイドの治療を提案。妊娠しやすい体に整えるためのアドバイスや処置も積極的に行い、不妊に悩む患者さんを統合的にサポート。

≫ オリーブレディースクリニック麻布十番

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