卵管が詰まっていたらどんな治療法を選択したらいい?
コラム 不妊治療
自然妊娠をするためには欠かせない卵管。詰まっていたり、癒着していた場合、治療にはどんな選択肢があるのでしょうか。かしわざき産婦人科の柏崎祐士先生に伺いました。
※2018年8月27日発刊「女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn」の記事です。
Doctor’s Advice
〜卵管因子の不妊は体外受精での妊娠率が高い〜
不妊は原因不明がほとんどです。前向きにとらえれば卵管の異常が見つかって幸運だったと考えてもいいかもしれません。卵管因子の方はほかの条件が整っていれば体外受精した時も妊娠率は高いので、あまり落胆されることはないと思います。
子宮卵管造影検査は卵管の状態を調べる基本的な検査
卵管には卵子を卵巣から子宮に運ぶ働きがあり、自然妊娠をするためには欠かせない器官です。赤ちゃんを望む方が最初に受ける検査が、その卵管の状態を調べる子宮卵管造影検査で、ほとんどの施設で不妊検査の必須項目となっています。
この検査は腟から子宮の中へカテーテルを通して造影剤を注入し、造影剤の様子をレントゲンで見て、卵管が開通しているかどうか確認するものです。
造影剤が骨盤の中に拡散していれば卵管は問題なく通っているということ。一見通っているように見えても、造影剤がきちんと拡散せず、卵管の先端付近にたまっているような場合は癒着を疑います。
もう少し古典的な検査に通水検査というものがあります。これは造影剤の代わりに生理食塩水を子宮に注入して卵管の通過性を調べるもので、検査だけでなく治療的な目的もあります。水を通すことで詰まりが解消されるという考え方ですね。
子宮卵管造影検査を含め、これらを実施して実際に卵管の通りがよくなり、妊娠につながったという方も確かにいらっしゃいます。しかし、卵管は腹腔内につながっていますから、むやみに異物を入れると細菌に感染して、腹膜炎などを起こす危険もあります。何回も行うと感染の機会が増えますから、その点は注意が必要ですね。
詰まりや癒着の主な原因はクラミジア感染症と子宮内膜症
卵管が詰まったり、癒着してしまう主な原因はクラミジア感染症と子宮内膜症です。
まずクラミジアですが、この感染症は気づかぬ間に感染して、知らないうちに治癒する。その代償として癒着を起こしてしまう。それはどういうことかというと、人の体は炎症を起こすと白血球が集合して細菌を殺します。その後、いろいろな線維素が集まってきて組織を癒着させて感染が広がるのを防ぎます。検査をしてみると、クラミジアの抗体が検出されることは珍しくありません。過去に感染の既往のある方は5人に1人程度いるのではないでしょうか。ほとんどの場合、性行為で感染するので、どうしても卵管で感染が起こりやすく、癒着もそこで起こってしまいます。
もう一つの原因である子宮内膜症は子宮内膜と同じ組織が子宮以外の臓器に飛んで、そこで生理と同じようなことが起こって悪さをする病気。卵管が詰まっている人全員の卵管を調べているわけではないのでまだ仮説の段階ですが、卵管に内膜症が単発的に発生して、それが詰まりの原因になっている可能性があるといわれています。癒着している方の卵管を調べると、確かに内膜症が見られるケースが多くあります。
35歳以上なら外科的治療より体外受精の選択を提案
治療方法は、年齢や病状、妊娠への考え方によって選択が異なってきます。子宮内膜症の場合は、薬物療法で女性ホルモンの分泌を抑えればある程度改善するという報告も。ただ、この治療をしている間は妊娠できないので、年齢が高い方は難しいかもしれません。
病状が重く、それでも自然妊娠を望まれている場合は、腹腔鏡手術やFT法(卵管鏡下卵管形成術)など、外科的な治療で癒着を剝がします。子宮卵管造影検査の結果、卵管は通っているけれど、造影剤が拡散しないという人は腹腔鏡、造影剤が卵管の途中で詰まって先に行かないという人はFT法になることが多いようです。腹腔鏡は卵管の外側から癒着を剝がすだけですが、FT法は卵管の中に内視鏡を挿入し、バルーンを膨らませて広げるので、内部の癒着も治療できます。
このような外科的治療で卵管の詰まりが解消されて、自然妊娠する方もいます。しかし、一度治療しても一定期間経つとまた詰まったりしてしまうことがあるんですね。そのたびに剝がすのは大変ですし、高齢の方だと貴重な時間も費やすことになります。当院では35歳以上の方には、腹腔鏡やFTによる治療より、体外受精という選択をおすすめしています。
出典:女性のための健康生活マガジン jineko vol.39 2018 Autumn
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